アストレイズ~傭兵二人、世界を震撼さす~

SHO

文字の大きさ
131 / 160
三章 ギルド

第一騎士団 副団長の実力

しおりを挟む
 ドッケンは乗って来た馬から荷物を下ろし、金属甲冑を身に付けた。如何にも騎士といった質のよい甲冑だ。そして腰には一振りの剣。これも独特の存在感を放っている。具体的な事は何も分からないが、とにかく普通の剣でない事は肌で感じられた。
 一方のチューヤはいつもの軽装である。申し訳程度の革製の防具で急所を守るだけ。それすら騎士の一撃に耐えられるようなものではない為、ドッケンは自分が嘲られていると感じたようだ。
 そしてさらに、彼は四人を相手にすると言ったはずだが、この場に立っているのはチューヤ一人。他のメンバーはパラソル付きのテーブルと椅子を準備して、完全に催し物を見物するような雰囲気だ。さらにマンセルとマリがお茶や菓子などを準備している。これを見たドッケンが激高しない訳がない。

「この私が随分と舐められたものだ。死んで後悔するなよ?」
「舐めてんのはどっちだ? だいたい、依頼を装って俺達を試そうって魂胆が気に入らねえ。手加減してやるからとっととかかってきやがれ」
「ぐぬぁ!」

 ブチッと何かが切れる音がした。その瞬間、ドッケンが立っていた場所に土煙が立ち昇る。

 ガイィィン!

 まるで瞬間移動したかのようだった。一瞬で間合いを詰めたドッケンが、上段からチューヤの頭を叩き割る勢いで剣を叩きつけていた。しかしチューヤは口角を吊り上げながら、『シンシア』でそれを受け止めている。

「――!!」

 まさか受け止められるとは思っていなかったのか、目を見開いたドッケンが後ろに飛んで距離を取った。

「マッチョな見た目だからってゴリゴリの力推しとは限らねえもんなあ? それにしても誇り高き騎士が不意打ちとは泣けてくるぜ」

 煽る。とにかく煽る。計算しているのか天然なのか、戦闘時のチューヤはとにかく相手を怒らせる事に長けている。

「初撃を止めたくらいでいい気になるなぁ!」

 ドッケンは再びチューヤに飛び込み剣を振るう。突き、薙ぎ、払い、打ちおろし。その太刀筋は変幻自在。傍から見ているカール達も、その剣術には感心していた。

「見た目の割には洗練された剣術だ。さすが近衛の副団長と言ったところか」
「うん。あれは凄いね。ボクの目でもカウンターを入れるチャンスは中々見えないなぁ」

 カールもマリアンヌも素直にドッケンの技量を称賛している。しかしスージィはまた別の視点で見ていた。

「あたしは剣術の事はよく分からないけど、あの騎士さんの腕がそんなに凄いなら、受けもせずに全部躱してるチューヤってホントバケモノよね」
「ほっほっほ。そうでございますな。あのお方は見えない攻撃すら躱してしまわれますので。今頃あのドッケンという御仁は、空恐ろしい思いをしているのではないかと」

 そんなスージィの言葉に、マンセルは自らが模擬戦で体験したチューヤの底知れない力を思い出していた。

(くっ! なぜ掠りもしない!? 私の筋力と身体強化が生み出すスピードとパワーは騎士団でもトップクラス。それに剣術の腕とて!)

 ドッケンは焦りを感じていた。今の所チューヤからの反撃は一切ない。華麗なステップで自分の攻撃を躱し続けているのみ。これをチューヤに反撃する余裕がないからだとは思わないあたり、流石は騎士団幹部といったところか。

「すげえな、騎士の剣術ってのは。こんなに鋭い剣筋は初めてだぜ」

 チューヤとしては素直な称賛の言葉だった。しかし、全て躱している彼に言われては、ドッケンにしてみれば嫌味にしか聞こえない。

「くっ! 騎士団の実力がこんなものだとは思わん事だ!」

 ドッケンが左手をチューヤに向けて翳す。そこにはオレンジ色の魔法陣が現れた。

「へえ、魔法も使えるのか」

 チューヤが初めてまともに剣を構え、自身の身体とシンシアに魔力を纏わせていく。

「あの騎士さんの魔法はただの目くらましだね。本命はあの剣の方だ。あの剣はなんだろう? カールのエストックみたいな魔法発動媒体でもないし、あの剣自体が魔法陣……みたいな?」

 魔眼持ちのマリアンヌが覚えたその違和感。しかしその違和感を上手く言葉にして伝える事が出来なくてもどかしい。そんな表情をしている。

「喰らえ! 炎弾!」

 左手に浮かべた魔法陣から、炎の塊が射出された。火系統の魔法としてはポピュラーなものだが、腕利きの剣士が放った魔法となるとまた話は違ってくる。
 どんな強者でも、放たれた攻撃には何等かの対処が必要だ。ドッケンはそこを狙って必殺の一撃を放とうとする。

「炎弾とか技の名前を詠唱しちゃうとさ、その攻撃が分かっちゃうじゃん?」
「黙れ! フレイムカッター!」

 迫る炎弾を前に怯みもせずに講釈を垂れ流すチューヤに、ドッケンが奥の手の一撃を繰り出した。彼の持つ剣の刃が燃え盛り、それを振り抜くと炎を纏った斬撃が飛んでいく。
 チューヤは迫る炎弾を左手で受け止めそれを握り潰した。そしてそれを追尾するように飛んできた炎の斬撃を相殺する為の迎撃を放つ。

「なん……だと?」

 炎弾を素手で受け止めた事に対しても驚きはあった。しかし方法はともかく、その攻撃に何等かの対応をしてくるのは予測の範囲内であり、本命は後から放ったフレイムカッターの方である。しかしそれすら、チューヤが降り抜いた剣から放たれた水の斬撃によって消されてしまったのである。

「バカな……魔法剣だと?」
「魔法剣? なんだか知らねえが、もうネタ切れならこっちから行くぞ?」

 チューヤがニタリと笑いながら殺気を剥きだしにした。
しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...