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三章 ギルド
第一騎士団 副団長の実力
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ドッケンは乗って来た馬から荷物を下ろし、金属甲冑を身に付けた。如何にも騎士といった質のよい甲冑だ。そして腰には一振りの剣。これも独特の存在感を放っている。具体的な事は何も分からないが、とにかく普通の剣でない事は肌で感じられた。
一方のチューヤはいつもの軽装である。申し訳程度の革製の防具で急所を守るだけ。それすら騎士の一撃に耐えられるようなものではない為、ドッケンは自分が嘲られていると感じたようだ。
そしてさらに、彼は四人を相手にすると言ったはずだが、この場に立っているのはチューヤ一人。他のメンバーはパラソル付きのテーブルと椅子を準備して、完全に催し物を見物するような雰囲気だ。さらにマンセルとマリがお茶や菓子などを準備している。これを見たドッケンが激高しない訳がない。
「この私が随分と舐められたものだ。死んで後悔するなよ?」
「舐めてんのはどっちだ? だいたい、依頼を装って俺達を試そうって魂胆が気に入らねえ。手加減してやるからとっととかかってきやがれ」
「ぐぬぁ!」
ブチッと何かが切れる音がした。その瞬間、ドッケンが立っていた場所に土煙が立ち昇る。
ガイィィン!
まるで瞬間移動したかのようだった。一瞬で間合いを詰めたドッケンが、上段からチューヤの頭を叩き割る勢いで剣を叩きつけていた。しかしチューヤは口角を吊り上げながら、『シンシア』でそれを受け止めている。
「――!!」
まさか受け止められるとは思っていなかったのか、目を見開いたドッケンが後ろに飛んで距離を取った。
「マッチョな見た目だからってゴリゴリの力推しとは限らねえもんなあ? それにしても誇り高き騎士が不意打ちとは泣けてくるぜ」
煽る。とにかく煽る。計算しているのか天然なのか、戦闘時のチューヤはとにかく相手を怒らせる事に長けている。
「初撃を止めたくらいでいい気になるなぁ!」
ドッケンは再びチューヤに飛び込み剣を振るう。突き、薙ぎ、払い、打ちおろし。その太刀筋は変幻自在。傍から見ているカール達も、その剣術には感心していた。
「見た目の割には洗練された剣術だ。さすが近衛の副団長と言ったところか」
「うん。あれは凄いね。ボクの目でもカウンターを入れるチャンスは中々見えないなぁ」
カールもマリアンヌも素直にドッケンの技量を称賛している。しかしスージィはまた別の視点で見ていた。
「あたしは剣術の事はよく分からないけど、あの騎士さんの腕がそんなに凄いなら、受けもせずに全部躱してるチューヤってホントバケモノよね」
「ほっほっほ。そうでございますな。あのお方は見えない攻撃すら躱してしまわれますので。今頃あのドッケンという御仁は、空恐ろしい思いをしているのではないかと」
そんなスージィの言葉に、マンセルは自らが模擬戦で体験したチューヤの底知れない力を思い出していた。
(くっ! なぜ掠りもしない!? 私の筋力と身体強化が生み出すスピードとパワーは騎士団でもトップクラス。それに剣術の腕とて!)
ドッケンは焦りを感じていた。今の所チューヤからの反撃は一切ない。華麗なステップで自分の攻撃を躱し続けているのみ。これをチューヤに反撃する余裕がないからだとは思わないあたり、流石は騎士団幹部といったところか。
「すげえな、騎士の剣術ってのは。こんなに鋭い剣筋は初めてだぜ」
チューヤとしては素直な称賛の言葉だった。しかし、全て躱している彼に言われては、ドッケンにしてみれば嫌味にしか聞こえない。
「くっ! 騎士団の実力がこんなものだとは思わん事だ!」
ドッケンが左手をチューヤに向けて翳す。そこにはオレンジ色の魔法陣が現れた。
「へえ、魔法も使えるのか」
チューヤが初めてまともに剣を構え、自身の身体とシンシアに魔力を纏わせていく。
「あの騎士さんの魔法はただの目くらましだね。本命はあの剣の方だ。あの剣はなんだろう? カールのエストックみたいな魔法発動媒体でもないし、あの剣自体が魔法陣……みたいな?」
魔眼持ちのマリアンヌが覚えたその違和感。しかしその違和感を上手く言葉にして伝える事が出来なくてもどかしい。そんな表情をしている。
「喰らえ! 炎弾!」
左手に浮かべた魔法陣から、炎の塊が射出された。火系統の魔法としてはポピュラーなものだが、腕利きの剣士が放った魔法となるとまた話は違ってくる。
どんな強者でも、放たれた攻撃には何等かの対処が必要だ。ドッケンはそこを狙って必殺の一撃を放とうとする。
「炎弾とか技の名前を詠唱しちゃうとさ、その攻撃が分かっちゃうじゃん?」
「黙れ! フレイムカッター!」
迫る炎弾を前に怯みもせずに講釈を垂れ流すチューヤに、ドッケンが奥の手の一撃を繰り出した。彼の持つ剣の刃が燃え盛り、それを振り抜くと炎を纏った斬撃が飛んでいく。
チューヤは迫る炎弾を左手で受け止めそれを握り潰した。そしてそれを追尾するように飛んできた炎の斬撃を相殺する為の迎撃を放つ。
「なん……だと?」
炎弾を素手で受け止めた事に対しても驚きはあった。しかし方法はともかく、その攻撃に何等かの対応をしてくるのは予測の範囲内であり、本命は後から放ったフレイムカッターの方である。しかしそれすら、チューヤが降り抜いた剣から放たれた水の斬撃によって消されてしまったのである。
「バカな……魔法剣だと?」
「魔法剣? なんだか知らねえが、もうネタ切れならこっちから行くぞ?」
チューヤがニタリと笑いながら殺気を剥きだしにした。
一方のチューヤはいつもの軽装である。申し訳程度の革製の防具で急所を守るだけ。それすら騎士の一撃に耐えられるようなものではない為、ドッケンは自分が嘲られていると感じたようだ。
そしてさらに、彼は四人を相手にすると言ったはずだが、この場に立っているのはチューヤ一人。他のメンバーはパラソル付きのテーブルと椅子を準備して、完全に催し物を見物するような雰囲気だ。さらにマンセルとマリがお茶や菓子などを準備している。これを見たドッケンが激高しない訳がない。
「この私が随分と舐められたものだ。死んで後悔するなよ?」
「舐めてんのはどっちだ? だいたい、依頼を装って俺達を試そうって魂胆が気に入らねえ。手加減してやるからとっととかかってきやがれ」
「ぐぬぁ!」
ブチッと何かが切れる音がした。その瞬間、ドッケンが立っていた場所に土煙が立ち昇る。
ガイィィン!
まるで瞬間移動したかのようだった。一瞬で間合いを詰めたドッケンが、上段からチューヤの頭を叩き割る勢いで剣を叩きつけていた。しかしチューヤは口角を吊り上げながら、『シンシア』でそれを受け止めている。
「――!!」
まさか受け止められるとは思っていなかったのか、目を見開いたドッケンが後ろに飛んで距離を取った。
「マッチョな見た目だからってゴリゴリの力推しとは限らねえもんなあ? それにしても誇り高き騎士が不意打ちとは泣けてくるぜ」
煽る。とにかく煽る。計算しているのか天然なのか、戦闘時のチューヤはとにかく相手を怒らせる事に長けている。
「初撃を止めたくらいでいい気になるなぁ!」
ドッケンは再びチューヤに飛び込み剣を振るう。突き、薙ぎ、払い、打ちおろし。その太刀筋は変幻自在。傍から見ているカール達も、その剣術には感心していた。
「見た目の割には洗練された剣術だ。さすが近衛の副団長と言ったところか」
「うん。あれは凄いね。ボクの目でもカウンターを入れるチャンスは中々見えないなぁ」
カールもマリアンヌも素直にドッケンの技量を称賛している。しかしスージィはまた別の視点で見ていた。
「あたしは剣術の事はよく分からないけど、あの騎士さんの腕がそんなに凄いなら、受けもせずに全部躱してるチューヤってホントバケモノよね」
「ほっほっほ。そうでございますな。あのお方は見えない攻撃すら躱してしまわれますので。今頃あのドッケンという御仁は、空恐ろしい思いをしているのではないかと」
そんなスージィの言葉に、マンセルは自らが模擬戦で体験したチューヤの底知れない力を思い出していた。
(くっ! なぜ掠りもしない!? 私の筋力と身体強化が生み出すスピードとパワーは騎士団でもトップクラス。それに剣術の腕とて!)
ドッケンは焦りを感じていた。今の所チューヤからの反撃は一切ない。華麗なステップで自分の攻撃を躱し続けているのみ。これをチューヤに反撃する余裕がないからだとは思わないあたり、流石は騎士団幹部といったところか。
「すげえな、騎士の剣術ってのは。こんなに鋭い剣筋は初めてだぜ」
チューヤとしては素直な称賛の言葉だった。しかし、全て躱している彼に言われては、ドッケンにしてみれば嫌味にしか聞こえない。
「くっ! 騎士団の実力がこんなものだとは思わん事だ!」
ドッケンが左手をチューヤに向けて翳す。そこにはオレンジ色の魔法陣が現れた。
「へえ、魔法も使えるのか」
チューヤが初めてまともに剣を構え、自身の身体とシンシアに魔力を纏わせていく。
「あの騎士さんの魔法はただの目くらましだね。本命はあの剣の方だ。あの剣はなんだろう? カールのエストックみたいな魔法発動媒体でもないし、あの剣自体が魔法陣……みたいな?」
魔眼持ちのマリアンヌが覚えたその違和感。しかしその違和感を上手く言葉にして伝える事が出来なくてもどかしい。そんな表情をしている。
「喰らえ! 炎弾!」
左手に浮かべた魔法陣から、炎の塊が射出された。火系統の魔法としてはポピュラーなものだが、腕利きの剣士が放った魔法となるとまた話は違ってくる。
どんな強者でも、放たれた攻撃には何等かの対処が必要だ。ドッケンはそこを狙って必殺の一撃を放とうとする。
「炎弾とか技の名前を詠唱しちゃうとさ、その攻撃が分かっちゃうじゃん?」
「黙れ! フレイムカッター!」
迫る炎弾を前に怯みもせずに講釈を垂れ流すチューヤに、ドッケンが奥の手の一撃を繰り出した。彼の持つ剣の刃が燃え盛り、それを振り抜くと炎を纏った斬撃が飛んでいく。
チューヤは迫る炎弾を左手で受け止めそれを握り潰した。そしてそれを追尾するように飛んできた炎の斬撃を相殺する為の迎撃を放つ。
「なん……だと?」
炎弾を素手で受け止めた事に対しても驚きはあった。しかし方法はともかく、その攻撃に何等かの対応をしてくるのは予測の範囲内であり、本命は後から放ったフレイムカッターの方である。しかしそれすら、チューヤが降り抜いた剣から放たれた水の斬撃によって消されてしまったのである。
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