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私の婚約者を虜にしようとする義妹ですが、彼の心が靡く事はないのでした。
私には、父の再婚相手の連れ子で血の繋がらない義妹が居る。
そんな彼女は、幼い頃から非常に我儘で…私の持って居る物を何でも欲しがった。
私はそんな彼女の卑しい所が大嫌いだったが、結婚してこの家を出るまでの辛抱だと思っていた。
と言うのも、私にはひそかにお付き合いしている殿方が居たから。
彼は結婚しようと言ってくれていて、真面目で誠実な彼からの申し出に私はもちろんと返事を返していた。
家を出ていくまでは、絶対義妹に彼の存在を知られてはならない。
だってあの子の事だもの…今まで私から奪っていったものと同じく、彼のことを欲しがるに違いないわ。
しかしこのところ、義妹の周りが少しおかしい…。
あの子は今まで私の手にするものばかりを欲しがっていたが、最近では私以外の令嬢の持つものを奪ったり、物だけでなく人をも奪い取り自分の虜にしてしまうのだ。
確かにあの子は可愛らしい顔をしているし、男の前では猫を被っているから気に入られるのは分かるが…でも少し異常な気がする。
とにかく、そんな危険な香りのする義妹に彼を近づけないようにしなければ!
と、思っていたのだが…結局、義妹に私と彼のことが知られてしまった。
私と彼が町のはずれで会っていたのを、出かけていた義妹が偶然見かけ…そして、彼の事を大層気に入ってしまったのだった。
「お姉様の癖に、あんな素敵な人と一緒になろうとしているなんてズルいわ!私もあの人とお話ししたい!家に連れてきて頂戴!」
「い、嫌よ。」
「いずれ義理の兄になろうと言う人に挨拶するのは当然よ?いいからここに連れて!」
義妹があまりに癇癪を起し、それに気づいた父に非難された私は渋々だが言うことを聞くことにした。
だがその前に、私は思い切って義妹の事を彼に相談することにした。
「あの子に合わせたら、あなたは絶対にあの子を好きになってしまう…。最近、義妹の虜になる男性が山ほどいるの。男性に好きな人がいても、必ず義妹を好きになってしまうそうよ。」
「そうなのか…。でも大丈夫、俺はその一人にならない。一度君の妹に合わせて欲しい。」
「わ、分かったわ。」
そう言い切る彼を、私は信じることにした。
それから数日後─。
約束通り、彼は私の家を訪ねて来た。
すると義妹は、私を押しのけ彼を部屋に招き入れ…来てくれて嬉しいと、甘えるように彼の腕にじゃれつくのだった。
あぁ、そんなふうに甘えられたらさすがの彼も義妹を好きになってしまう。
彼は大丈夫と言ったけど、私の心は不安でいっぱいだった。
「お会いできて嬉しいです。あなたのような素敵な方が将来お兄さんになってくれるなんて夢のよう。これ、私が作ったクッキーなんですけど、お近づきのしるしにどうぞ食べて下さい!」
少し前から義妹はお菓子作りにはまっていて、こうして自分が作ったものを気に入った殿方に食べさせるのだ。
可愛い女から心のこもった食べ物を贈られ、悪い気になる男は居ない。
そして、彼も他の男同様にそれに手を伸ばした。
「美味しいですね。君のお姉さんも俺に手料理をふるまってくれたことがあって、とても美味しかったんですよ。こんな人をお嫁さんに出来るなんて、俺は本当に幸せ者だ。」
「え…、あ、はい。」
「あなたのお姉さんはとても素晴らしい人です。優しくていつも心穏やかで…俺は彼女が大好きです。」
そう断言した彼に、何故か戸惑いを見せた義妹が焦りながらも彼にクッキーを再度勧めた。
「え、遠慮なさらずどんどん食べて下さい。お代わりだってあるんです!」
「…いくら俺にこれを食べさせたところで無駄だよ。俺は君の虜にならない。この手の惚れ薬は、俺には一切効かないから。」
「ッ!?」
「え、惚れ薬って…?」
言葉に詰まる義妹と驚く私に、彼は冷ややかな顔で義妹を見ながらこう言った。
「彼女は、今までもこうして手作り菓子の中に自分を好きにさせる惚れ薬を混ぜ込み狙った男に食べさせていたんだろう。君から彼女の話をされた時、もしやと思ってこれまでに彼女の虜になった男たちに話を聞いて来たんだ。すると、皆彼女から手作りの菓子を貰ったと言うじゃないか。それでその中の一人がまだ残りを持っていたから、それを預かって知り合いに成分を調べて貰った。そしたら、そういう成分が検出されたんだ。俺はそれを確かなものにするため、敢えてこの家に来ることにし…そして、そのクッキーを食べたんだ。」
「あなた…そんな恐ろしいことをしてたの!?人として最低な事よ!」
すると私に責められた義妹は、冷や汗を流しながらこう言った。
「も、もしそれが本当なら、どうしてあなたは私の事を好きにならないのよ!?」
「それは、俺が惚れ薬全般に耐性があるからだ。自慢じゃないが、俺は女性に好かれることが多くてね…。違法な手を使い俺に近づいてくる者も居て、過去にそう言う薬を幾度となく盛られた経験から耐性がついてしまったんだよ。」
確かに、彼は家柄もよく頭も顔もいいから女性から人気があるけど…まさかそんな過去があったとは。
「これに惚れ薬が入ってないと言い張るなら、また同じように知り合いに成分を調べて貰ってもいいんだがな。その結果が黒だとして、そしてこれまでの事も世間に明るみになったら…君は、間違いなく破滅だ。」
「あ、あぁ──!」
彼の言葉に、義妹は真っ青な顔で涙を流し…そして、その場に崩れ落ちるのだった。
その後の調べで、やはり義妹が彼に食べさせたクッキーには惚れ薬が入っていたことが明らかとなった。
そして彼だけでなく、他の男たちも全員その餌食になっていたことも確かなものとなった。
すると皆に愛されていた義妹は一転、魔女だの悪女だのと世間から罵られ…そしてそれに耐えきれなくなった彼女は、精神を病んでしまった。
だがそれで許されることはなく…彼女は違法薬物を使った罪で牢へと送られ、毎日厳しい罰に苦しんでいると聞く。
継母は自分の娘の行いを恥じ実家へ帰ったし、父も此度の件で漸く目が覚めたらしく反省し随分性格も大人しくなった。
そして父は私に詫びると、私がこの家を出て彼の元へ行くことを認めてくれた。
今まで私を傷つけ苦しい思いをさせた分幸せになって欲しい、もうこの家の事は忘れ愛する人と生きて行って欲しいと言って─。
こうして私は、彼のゆるぎない愛を手にし…今は彼の下で何不自由のない幸せな日々を送っているわ─。
そんな彼女は、幼い頃から非常に我儘で…私の持って居る物を何でも欲しがった。
私はそんな彼女の卑しい所が大嫌いだったが、結婚してこの家を出るまでの辛抱だと思っていた。
と言うのも、私にはひそかにお付き合いしている殿方が居たから。
彼は結婚しようと言ってくれていて、真面目で誠実な彼からの申し出に私はもちろんと返事を返していた。
家を出ていくまでは、絶対義妹に彼の存在を知られてはならない。
だってあの子の事だもの…今まで私から奪っていったものと同じく、彼のことを欲しがるに違いないわ。
しかしこのところ、義妹の周りが少しおかしい…。
あの子は今まで私の手にするものばかりを欲しがっていたが、最近では私以外の令嬢の持つものを奪ったり、物だけでなく人をも奪い取り自分の虜にしてしまうのだ。
確かにあの子は可愛らしい顔をしているし、男の前では猫を被っているから気に入られるのは分かるが…でも少し異常な気がする。
とにかく、そんな危険な香りのする義妹に彼を近づけないようにしなければ!
と、思っていたのだが…結局、義妹に私と彼のことが知られてしまった。
私と彼が町のはずれで会っていたのを、出かけていた義妹が偶然見かけ…そして、彼の事を大層気に入ってしまったのだった。
「お姉様の癖に、あんな素敵な人と一緒になろうとしているなんてズルいわ!私もあの人とお話ししたい!家に連れてきて頂戴!」
「い、嫌よ。」
「いずれ義理の兄になろうと言う人に挨拶するのは当然よ?いいからここに連れて!」
義妹があまりに癇癪を起し、それに気づいた父に非難された私は渋々だが言うことを聞くことにした。
だがその前に、私は思い切って義妹の事を彼に相談することにした。
「あの子に合わせたら、あなたは絶対にあの子を好きになってしまう…。最近、義妹の虜になる男性が山ほどいるの。男性に好きな人がいても、必ず義妹を好きになってしまうそうよ。」
「そうなのか…。でも大丈夫、俺はその一人にならない。一度君の妹に合わせて欲しい。」
「わ、分かったわ。」
そう言い切る彼を、私は信じることにした。
それから数日後─。
約束通り、彼は私の家を訪ねて来た。
すると義妹は、私を押しのけ彼を部屋に招き入れ…来てくれて嬉しいと、甘えるように彼の腕にじゃれつくのだった。
あぁ、そんなふうに甘えられたらさすがの彼も義妹を好きになってしまう。
彼は大丈夫と言ったけど、私の心は不安でいっぱいだった。
「お会いできて嬉しいです。あなたのような素敵な方が将来お兄さんになってくれるなんて夢のよう。これ、私が作ったクッキーなんですけど、お近づきのしるしにどうぞ食べて下さい!」
少し前から義妹はお菓子作りにはまっていて、こうして自分が作ったものを気に入った殿方に食べさせるのだ。
可愛い女から心のこもった食べ物を贈られ、悪い気になる男は居ない。
そして、彼も他の男同様にそれに手を伸ばした。
「美味しいですね。君のお姉さんも俺に手料理をふるまってくれたことがあって、とても美味しかったんですよ。こんな人をお嫁さんに出来るなんて、俺は本当に幸せ者だ。」
「え…、あ、はい。」
「あなたのお姉さんはとても素晴らしい人です。優しくていつも心穏やかで…俺は彼女が大好きです。」
そう断言した彼に、何故か戸惑いを見せた義妹が焦りながらも彼にクッキーを再度勧めた。
「え、遠慮なさらずどんどん食べて下さい。お代わりだってあるんです!」
「…いくら俺にこれを食べさせたところで無駄だよ。俺は君の虜にならない。この手の惚れ薬は、俺には一切効かないから。」
「ッ!?」
「え、惚れ薬って…?」
言葉に詰まる義妹と驚く私に、彼は冷ややかな顔で義妹を見ながらこう言った。
「彼女は、今までもこうして手作り菓子の中に自分を好きにさせる惚れ薬を混ぜ込み狙った男に食べさせていたんだろう。君から彼女の話をされた時、もしやと思ってこれまでに彼女の虜になった男たちに話を聞いて来たんだ。すると、皆彼女から手作りの菓子を貰ったと言うじゃないか。それでその中の一人がまだ残りを持っていたから、それを預かって知り合いに成分を調べて貰った。そしたら、そういう成分が検出されたんだ。俺はそれを確かなものにするため、敢えてこの家に来ることにし…そして、そのクッキーを食べたんだ。」
「あなた…そんな恐ろしいことをしてたの!?人として最低な事よ!」
すると私に責められた義妹は、冷や汗を流しながらこう言った。
「も、もしそれが本当なら、どうしてあなたは私の事を好きにならないのよ!?」
「それは、俺が惚れ薬全般に耐性があるからだ。自慢じゃないが、俺は女性に好かれることが多くてね…。違法な手を使い俺に近づいてくる者も居て、過去にそう言う薬を幾度となく盛られた経験から耐性がついてしまったんだよ。」
確かに、彼は家柄もよく頭も顔もいいから女性から人気があるけど…まさかそんな過去があったとは。
「これに惚れ薬が入ってないと言い張るなら、また同じように知り合いに成分を調べて貰ってもいいんだがな。その結果が黒だとして、そしてこれまでの事も世間に明るみになったら…君は、間違いなく破滅だ。」
「あ、あぁ──!」
彼の言葉に、義妹は真っ青な顔で涙を流し…そして、その場に崩れ落ちるのだった。
その後の調べで、やはり義妹が彼に食べさせたクッキーには惚れ薬が入っていたことが明らかとなった。
そして彼だけでなく、他の男たちも全員その餌食になっていたことも確かなものとなった。
すると皆に愛されていた義妹は一転、魔女だの悪女だのと世間から罵られ…そしてそれに耐えきれなくなった彼女は、精神を病んでしまった。
だがそれで許されることはなく…彼女は違法薬物を使った罪で牢へと送られ、毎日厳しい罰に苦しんでいると聞く。
継母は自分の娘の行いを恥じ実家へ帰ったし、父も此度の件で漸く目が覚めたらしく反省し随分性格も大人しくなった。
そして父は私に詫びると、私がこの家を出て彼の元へ行くことを認めてくれた。
今まで私を傷つけ苦しい思いをさせた分幸せになって欲しい、もうこの家の事は忘れ愛する人と生きて行って欲しいと言って─。
こうして私は、彼のゆるぎない愛を手にし…今は彼の下で何不自由のない幸せな日々を送っているわ─。
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