『恋愛短編集①』離縁を乗り越え、私は幸せになります──。

Nao*

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私は家庭を守る良き妻で居たのに、夫の方は外に愛人を作って裏切って居ました。

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 結婚当初からお前は妻として家を守れ、それが妻であるお前の務めだと夫に言われて居た私。

 そして、私は彼の言う通りにして来た。

 元々家事は好きだったし…夫の両親は病気がちだが優しく、家に居るのが苦痛では無かった為だ。

 そしてそんな私に、夫は感謝をしてくれて居た。



 だが…いつからか夫は家の事を全て私に任せ、ほとんど家に帰って来なくなってしまった。

 彼は新しい事業をいくつか手掛けて居るそうで、とても忙しいらしい。
 
 そんな中…夫の両親が相次いで亡くなると、私は家に一人ぼっちに─。

 私はそれがとても寂しく、こんな時こそ夫に傍に居て欲しいと思った。



 これでまだ子供でも居たなら、こんなにも孤独を感じる事は無かったでしょうね…。

 そろそろ、彼との間に子供が欲しいわ。

 その為にも、もう少し家に帰って来て貰わないと─。

 

 そして久々に帰って来た夫に、私は一人で家に居るのが辛い…そろそろ子供が欲しいと訴えた。

 しかし夫は…それがお前の務めなのだから文句を言うな、こんな忙しい時に子供など作れるかと怒鳴った。

 そして、疲れて居るからもう寝ると寝室に向かい…夫婦の会話はこれで終わってしまった。

 私は仕方なく、夫が脱ぎ散らかした服や鞄を片づける事に─。


 
 すると…彼の上着から、一枚の手紙が出て来た。
 
 そこには、あなたが帰って来るのを待って居る…いつか一緒に暮らしましょうと書かれて居た。

 怪しんだ私は…いけないと思いつつも、彼の鞄の中を見る事に─。



 その中には、綺麗な包装紙に包まれた贈り物が入って居た。

 そしてそこにはメッセージカードが添えられ、先程の手紙と同じ字でこう書かれて居た。

『あなたが欲しがっていた時計を贈るわ。これを私だと思い、肌身離さず付けて居てね?』

 そして最後には、女性の名前が入って居た─。



 それを見て…私は、夫が時計を欲しがっていた事を初めて知った。

 思えば…私は今の夫が何が欲しいか、好きか、必要として居るか何も知らない。

 更に…鞄にあった夫の手帳を見れば、そこにはその女性との日々が克明に綴られて居た。

 彼女とどこへ行った、何を食べた、何を話したか…そんな事が幾つも書いてあったのだ。

 それを見た時…まるで、彼女の方が夫の妻ではないかと思った。

 逆に私は…この家を任されて居るだけの管理人で…妻でもなければ、家族でもないのだと─。

 

 そして次の朝早くに家を出た夫は…もうそれきり、居には帰って来なくなった。

 そこで私は…帰る者の居ない家を守って居ても仕方ないと思い、彼の言いつけを破る事に─。

 私は、もうあなたの望む妻じゃない。

 私だって、私の望む生き方をしたいわ─。



 ところがその後…その女と破局する事になった夫は、あの家に戻る事に─。

 しかし…そこにはもう私の姿は無く、しかも家は人手に渡って居た。

 これを見た夫は、大慌てで実家に居る私を訪ねて来た。

 そして俺の家をよくも売りに出したなと私を責めた。

 しかし私は、顔色一つ変える事無くこう言った。



「あの家は、私の物ですよ?それをどうしようが、私の勝手です。それよりあなたとこうして会えたから、離縁したいと直接伝える事が出来ますね。」

 実は…夫の両親は亡くなる前、自分達の面倒を看てくれたお礼にとあの家を私名義にしてくれて居たのだ。
 
 そして、価値のある物は全て私にあげると言われて居たので…私はそれらを売り、お金に換えて居たのだった。

「家も無くなり離縁もされては、俺はこれからどうすればいいんだ…。あの女に騙され持って居た金も奪われたし、事業も手を広げすぎて失敗したし…。」

 そう言って夫はその場に崩れ落ち泣いたが…私は彼を冷たく突き放すと、改めて離縁を求めた。

 私の頑なな態度は変わらず…むしろ、ごねるなら浮気をした事を訴えると言われた夫は、それを受け入れるしかなかった。

 その後…彼には事業で抱えた借金だけが残り、借金取りから逃げ回る辛い日々を送って居る─。



 そして私はと言うと…手にして居たお金で新しい家を買い、そこで恋人と暮らす事に─。

 その相手は、夫の両親を診てくれて居た主治医で…彼は、密かに私に想いを寄せて居たのだ。

 そして夫と離縁した私に想いを伝えてくれ…私も彼の真面目さや優しさを好ましく思って居た事からすぐに彼に惹かれ、その気持ちに応える事にしたのだ。

 彼は、この先結婚して私が家に居たいのならそうすればいいし、自分の助手として外に働きに出たいならそうすればいいと、私の自由にさせてくれた。

 私はそれがとても嬉しく…彼との結婚生活が始まる事を、今から心待ちにして居る─。 
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