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婚約者が愛人と共に家を出て行きました…その後、精霊からの罰を受けるとも知らずに。
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私との婚約を破棄しこの家を出て行く、そう婚約者は告げた─。
そしてそんな彼の隣には、彼の腕に自身の腕を絡め笑みを浮かべる女が─。
「俺はこの家を出て彼女の元で暮らす。この家は、慰謝料替わりにお前にくれてやろう。」
「そ、そんな…。」
「でも中にある調度品や貴金属とか、価値のある物は貰って行くわよ?屋根があって住む処があるんだから、文句言わないでね。」
そう言って、女は家の中を物色しに行ってしまった─。
「…どうしてです?あなたと二人、やっと幸せになれると思ったのに─。」
「貧乏暮らしをして居る時は、お前のような地味でつまらん性格の女でも満足して居たが…今の俺は違うだろう?俺は、誰もが羨むほどの金持ちになった。そうすると、美しい女が次から次に言い寄って来る。その様を見ている内に思ったんだ。今の俺にふさわしいのは、お前のような女ではない。ああ言う、美しく華やかな女だってな─。」
裕福になった事は良かったが、彼がこんな事を考えるようになってしまったとは─。
「そうなったのは勿論私達の努力もありますが、でも本当は─」
「ねぇ、そろそろ行きましょう!別れは告げたんだから、こんな女にもう用は無いでしょう?」
「あぁ、今行く!じゃあ、そういう事だから…お前も、自分にふさわしい相手を見つける事だ─。」
そして二人は、戸惑う私を無視しこの家を出て行った─。
あなたは愚かな人ね…。
そんな心持ちだから、あなたは自分が裕福に…お金持ちになれたという幸運を何故掴めたのか、今も分からないままなのよ。
でも、もういいわ。
あなたみたいな人、この家にはふさわしくない─。
(婚約者視点)
家に着くと、彼女は袋に詰めた戦利品を俺に見せてくれた。
「この水晶の置物、素敵よね!こっちは金の銅像よ。それから…あぁ、全部売りに出したら凄いお金になるわ!」
「その金だけじゃない。今の俺の事業は絶好調だから…君にもこれから、裕福な暮らしをさせてあげるよ。」
「あなたは、本当に商才があるのね!若いのに、素晴らしいわ!」
商才、か…。
彼女はそう言うが…実のところ、俺もどうして事業が軌道に乗ったのか今も分からない。
まぁ、こういうのは時の運みたいなものもあるし…俺はお金の神様にでも愛されて居たんだな─。
ところが…それからすぐに、俺の事業は傾き始めた。
今まで付き合いのあった者達、支援者から次々と縁を切られ…漸く縁を結んだ相手は詐欺師で…俺は今ある財を奪われてしまった。
「ど、どうしてこんな事になるんだ…!」
「まだ大丈夫よ!あの女から奪った戦利品、あれを今こそお金に変えるのよ!」
俺達は、すぐに地下に隠していたそれらを床に並べたが…何故かどの品もヒビが入って居て…触れた途端粉々に砕け散り跡形もなく消えてしまった。
それを見た彼女は絶望…そして、もうあなたとはやって行けないと俺を捨て家を飛び出して行ってしまった─。
(ヒロイン視点)
「…それで、私に何の責任を取れと?」
「お前、密かにあれらの品をただのガラクタに入れ替えていたんじゃないのか!?今すぐ本物をよこせよ!」
「私は、そんな事はしていません!そうなったのは…あの品々が、この家から持ち出されたせいです。この家にあったからこそ、あの品々は価値を持つ事が出来たんです。そして、あなたがお金持ちで居られたのだって…元々はこの家のおかげなのよ?」
私の言葉に、彼は一瞬目を丸くし…そしてお腹を抱えて笑い出した。
「こんな家、元はただの古い空き家だったじゃないか!それを、俺が儲けた金で綺麗にしたんだろう?そもそも、ここは幽霊屋敷と噂され…縁起の悪い場所だっただろう。」
「違うんです…。ここに居るのは、幽霊なんかじゃないの。あなたには何も分からないだろうけれど…ここには、この地の精霊達が住んで居るのよ?私達は、精霊達のおかげで裕福になれたの。」
「何を馬鹿な事を…。もういい、そんなくだらない事を言うお前など知らん。本物の宝は、俺が勝手に探す!」
「あなたは、もうこの家の住人じゃないわ。そんな事したら─」
止める私を突き飛ばし、彼は部屋を出て行こうとしたが…その彼の足が急に動かなくなった。
そして私はと言うと…温かく逞しい腕に抱き止められ、事なきを得たのだった─。
「彼女に乱暴な事をするな!そんな事をするから、精霊達がお前に怒って居るぞ?」
「そ、そいつは誰だ!?」
「彼は、あなたが出て行った直後にこの家にやって来た旅の商人です。彼はこの家の精霊に導かれ、ここに来たそうです。彼も私同様、ちゃんとこの家の精霊達が見えてます。そして彼と過ごす内に…彼の真面目さや誠実さが、そうさせたのだと理解したわ。それからずっと私達は一緒に居るのよ。」
「ここにはもう、お前が触れて良いものは何もない。早く出て行け─!」
その瞬間、元婚約者の身体を突風が襲い…彼は開けられた窓から、庭へと落とされた。
そして二階から落ちた彼はどうも足の骨が折れたらしく、這いずるようにして泣きながら逃げて行った─。
「大地の精霊さん、風の精霊さん…他の皆もありがとう。あなたも…私を助けてくれてありがとう。」
「買い物に出て居る時に、嫌な予感がして…急いで戻って来たんだ。間に合って良かった─。」
そして彼は、私をそのまま胸に抱き締めた。
私と彼はいずれ結婚し、この家でこの先も一緒に生きていく事を誓って居る。
勿論、精霊達も一緒だ。
だから、私達はこれからも一生幸せに生きて行けるとそう信じているわ。
そして、財産を失った挙句に一生足に治らない怪我を負ってしまった元婚約者だが…その後は物乞いをして命を繋いで居たと言うが…今はどこでどうして居るのか分からない。
ただ、この地の精霊達に嫌われてしまったのだから…一生不幸に見舞われるのは確かな事ね─。
そしてそんな彼の隣には、彼の腕に自身の腕を絡め笑みを浮かべる女が─。
「俺はこの家を出て彼女の元で暮らす。この家は、慰謝料替わりにお前にくれてやろう。」
「そ、そんな…。」
「でも中にある調度品や貴金属とか、価値のある物は貰って行くわよ?屋根があって住む処があるんだから、文句言わないでね。」
そう言って、女は家の中を物色しに行ってしまった─。
「…どうしてです?あなたと二人、やっと幸せになれると思ったのに─。」
「貧乏暮らしをして居る時は、お前のような地味でつまらん性格の女でも満足して居たが…今の俺は違うだろう?俺は、誰もが羨むほどの金持ちになった。そうすると、美しい女が次から次に言い寄って来る。その様を見ている内に思ったんだ。今の俺にふさわしいのは、お前のような女ではない。ああ言う、美しく華やかな女だってな─。」
裕福になった事は良かったが、彼がこんな事を考えるようになってしまったとは─。
「そうなったのは勿論私達の努力もありますが、でも本当は─」
「ねぇ、そろそろ行きましょう!別れは告げたんだから、こんな女にもう用は無いでしょう?」
「あぁ、今行く!じゃあ、そういう事だから…お前も、自分にふさわしい相手を見つける事だ─。」
そして二人は、戸惑う私を無視しこの家を出て行った─。
あなたは愚かな人ね…。
そんな心持ちだから、あなたは自分が裕福に…お金持ちになれたという幸運を何故掴めたのか、今も分からないままなのよ。
でも、もういいわ。
あなたみたいな人、この家にはふさわしくない─。
(婚約者視点)
家に着くと、彼女は袋に詰めた戦利品を俺に見せてくれた。
「この水晶の置物、素敵よね!こっちは金の銅像よ。それから…あぁ、全部売りに出したら凄いお金になるわ!」
「その金だけじゃない。今の俺の事業は絶好調だから…君にもこれから、裕福な暮らしをさせてあげるよ。」
「あなたは、本当に商才があるのね!若いのに、素晴らしいわ!」
商才、か…。
彼女はそう言うが…実のところ、俺もどうして事業が軌道に乗ったのか今も分からない。
まぁ、こういうのは時の運みたいなものもあるし…俺はお金の神様にでも愛されて居たんだな─。
ところが…それからすぐに、俺の事業は傾き始めた。
今まで付き合いのあった者達、支援者から次々と縁を切られ…漸く縁を結んだ相手は詐欺師で…俺は今ある財を奪われてしまった。
「ど、どうしてこんな事になるんだ…!」
「まだ大丈夫よ!あの女から奪った戦利品、あれを今こそお金に変えるのよ!」
俺達は、すぐに地下に隠していたそれらを床に並べたが…何故かどの品もヒビが入って居て…触れた途端粉々に砕け散り跡形もなく消えてしまった。
それを見た彼女は絶望…そして、もうあなたとはやって行けないと俺を捨て家を飛び出して行ってしまった─。
(ヒロイン視点)
「…それで、私に何の責任を取れと?」
「お前、密かにあれらの品をただのガラクタに入れ替えていたんじゃないのか!?今すぐ本物をよこせよ!」
「私は、そんな事はしていません!そうなったのは…あの品々が、この家から持ち出されたせいです。この家にあったからこそ、あの品々は価値を持つ事が出来たんです。そして、あなたがお金持ちで居られたのだって…元々はこの家のおかげなのよ?」
私の言葉に、彼は一瞬目を丸くし…そしてお腹を抱えて笑い出した。
「こんな家、元はただの古い空き家だったじゃないか!それを、俺が儲けた金で綺麗にしたんだろう?そもそも、ここは幽霊屋敷と噂され…縁起の悪い場所だっただろう。」
「違うんです…。ここに居るのは、幽霊なんかじゃないの。あなたには何も分からないだろうけれど…ここには、この地の精霊達が住んで居るのよ?私達は、精霊達のおかげで裕福になれたの。」
「何を馬鹿な事を…。もういい、そんなくだらない事を言うお前など知らん。本物の宝は、俺が勝手に探す!」
「あなたは、もうこの家の住人じゃないわ。そんな事したら─」
止める私を突き飛ばし、彼は部屋を出て行こうとしたが…その彼の足が急に動かなくなった。
そして私はと言うと…温かく逞しい腕に抱き止められ、事なきを得たのだった─。
「彼女に乱暴な事をするな!そんな事をするから、精霊達がお前に怒って居るぞ?」
「そ、そいつは誰だ!?」
「彼は、あなたが出て行った直後にこの家にやって来た旅の商人です。彼はこの家の精霊に導かれ、ここに来たそうです。彼も私同様、ちゃんとこの家の精霊達が見えてます。そして彼と過ごす内に…彼の真面目さや誠実さが、そうさせたのだと理解したわ。それからずっと私達は一緒に居るのよ。」
「ここにはもう、お前が触れて良いものは何もない。早く出て行け─!」
その瞬間、元婚約者の身体を突風が襲い…彼は開けられた窓から、庭へと落とされた。
そして二階から落ちた彼はどうも足の骨が折れたらしく、這いずるようにして泣きながら逃げて行った─。
「大地の精霊さん、風の精霊さん…他の皆もありがとう。あなたも…私を助けてくれてありがとう。」
「買い物に出て居る時に、嫌な予感がして…急いで戻って来たんだ。間に合って良かった─。」
そして彼は、私をそのまま胸に抱き締めた。
私と彼はいずれ結婚し、この家でこの先も一緒に生きていく事を誓って居る。
勿論、精霊達も一緒だ。
だから、私達はこれからも一生幸せに生きて行けるとそう信じているわ。
そして、財産を失った挙句に一生足に治らない怪我を負ってしまった元婚約者だが…その後は物乞いをして命を繋いで居たと言うが…今はどこでどうして居るのか分からない。
ただ、この地の精霊達に嫌われてしまったのだから…一生不幸に見舞われるのは確かな事ね─。
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