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6話 引き抜き
来訪の本題に入り、仕切り直したように場の空気が整った。
レイナントは姿勢を正し、正面から俺を見た。
強い視線が俺を射抜く。
目を見て話せないのが申し訳なく思うほど、真摯な感情を真っすぐ伝えてくる。
「ルイ殿。今日はお願いがあって来ました」
「お願い、ですか?」
「あなたを第五騎士団へお迎えしたいのです」
「今我々の騎士団にはヒーラーが不足しております。昨日の失態もそのせいです」
失態と口にする声に、わずかな悔しさが滲んでいた。
彼が部下を大切に思っているのが伝わる。
「あれほど大規模な部隊でも、ヒーラーは少ないんですか?」
「ええ。第五は三百を超える団員がいますが、専属のヒーラーはたった二人。危険地帯を担当する分、消耗が激しいのに、補充が追いつかないのです」
応援を頼むにしても、王国騎士付属の治癒士団は貴族ばかりで、平民主体の第五に力を貸そうとする者はほとんどいない。
「我々が担当する南の樹海は魔獣の数が多く、戦力の補充を待つ余裕すらありません。魔獣が出れば、我々は討伐へ向かうしかないのです」
視界に入る騎士団長の膝に置かれた拳が強く握られる。
「民の安全と命がかかっていますから、我々に立ち止まることは許されません」
短く吐き出された息の奥に、焼ける匂いを幻のように感じた。
――きっと、あの戦場の光景が今も瞼に残っているのだろう。
樹海を監視していた騎士から、サラマンダーの集団が森を出ようとしていると報せが入った。
十分に準備を整えて討伐に向かったものの、そこで予想外の特殊個体と遭遇する。
その対処に手を焼き、幾人もの騎士が炎に呑まれて倒れていった。
仲間の悲鳴が次々と上がり、戦線は崩壊寸前にまで追い込まれる。
全滅の二文字が脳裏をよぎり、騎士団長は自ら特殊個体に立ち向かった。
「氷の魔法が使える私が盾となり、騎士たちと力を合わせてようやく討ち取ることができました」
彼が語る声の奥に、あの戦いの光景が透けて見えた。
炎に包まれた森、炎が爆ぜる音、仲間の叫び、焼け焦げた匂い。
そして命を懸けて仲間を守った騎士団長。
その代償があの大火傷だった。
応援が来なかった理由は単純だ。
治癒師団のヒーラーたちは、平民主体の第五に手を貸したくなかった。
貴族が多い彼らにとって、俺たちは替えの利く消耗品にすぎない。
そんな現実を、俺は嫌というほど知っているから、なおさら胸が詰まった。
……だからこそ、拳に力が入った。
助けても助けても力が足りない。
一人癒したその隣で、別の命が燃え尽きる。
その現実を知っているからこそ、彼らの悔しさが痛いほど分かる気がした。
同じ国を守る騎士団なのに、どうしてこの方たちだけが苦労するんだろう。
緊急事態に於いて王宮ではなく、この教会へ支援要請が来た理由もわかる。
「どうか、第五騎士団へ来ていただくことはできませんでしょうか?」
切実な声。
顔は見られないけれど、きっと真剣な目を、しているんだろう。
トラウマの発作さえなければ、即答できたのに。
助けたい時に体が動かない。
その想像だけで、胸が冷たくなる。
この人たちの手助けをしたい。
けれど、今の俺では手を差し伸べられない。
そんなジレンマの中、なんとか必死で考えを巡らせた。
「無理は承知ですが……他のヒーラーの中に、手を貸してくれる方がいるかもしれません。試しに希望者を募ってみるのはどうでしょう?」
志願兵が少ないのは分かっている。けれど、話を通せば「それでも行ってみよう」と思う人だっているかもしれない。
俺と同等だと最低三人は必要だけど、この教会所属のヒーラーは幸運なことに結構腕がいい。
人数次第では俺以上の成果を期待できる。
彼らのことを知ったら手を貸したいと思う人だっているはずだ。
そんな提案をしてみたら、騎士の二人は渋い顔をした。
「第五はただでさえ多くの騎士を抱えていて、維持するだけでもギリギリなのです」
副団長がため息をつきながら、そっと内情を漏らす。
ため息をつく声は穏やかだが、どこか皮肉を含んでいた。
「恥を気にせず言うのであれば、予算が足りません。現状我々が専属ヒーラーとなってくれる方にお支払いできる金額は一人分しかないのです」
一人しか雇えないなら、なおさら能力の高い人材を望む。
それは当然の話だ。
騎士団長の声は淡々としていたが、拳を握る手の甲に白く血が浮かんでいた。
きっと、力の足りなさに苛立っているんだろう。
その悔しさがにじんでいた。
昨日は俺たちが間に合って死者はでなかった。
けれど、そんな成果ばかりでなかっただろう。
回復の手が足りれば、助かった部下の命の炎が消えていくのを見送ったことだってあるはずだ。
けれどどれほど悲しくても悔しくても、民を守るために歩みを止めるわけにはいかない。
彼らのような人たちが、どうして報われないんだろう。
そんな理不尽が、ひどく胸に刺さった。
「ルイ殿、いかがでしょうか? 私どもは専属ヒーラーに、月給銀貨五十枚と、危険手当として銀貨十枚を支給しております」
それは新たに予算を作るのではなく、空席になっている『専属ヒーラー枠』に充てられるものだという。
「うーん……」
前世の感覚でいえば、そこそこ良い中堅サラリーマンくらいの稼ぎだ。
この世界の相場からすれば、かなりの厚待遇と言っていい。
それだけ、本気で迎えたいという意思があるのだ。
俺一人に出す金額を三人に分ければ、この教会の給金と同じくらいは出せる。
けれど、それでは軍へ志願してくる兵士の給金と大差はない。
招いて危険地帯に足を運ばせるなら、相応の給金を払いたい。
この高額な給金は、金で釣るためのものではない。
命を預ける仲間への誠意であり、俺というヒーラーへの確かな信頼の証だと感じた。
考えるように顔を伏せた俺に騎士団長の視線が刺さる。
俺の返事を待っている。
行きたい。
でも、春樹の幻影がまだ胸の奥に居座っていて、足がすくむ。
いざという時、「ルイ」ではなく、何もできなかった「陽」に戻ってしまうのが怖い。
それでも、目の前の彼らを――ヒーラーとして放ってはおけない。
どう答えるべきか、唇が震えた。
レイナントは姿勢を正し、正面から俺を見た。
強い視線が俺を射抜く。
目を見て話せないのが申し訳なく思うほど、真摯な感情を真っすぐ伝えてくる。
「ルイ殿。今日はお願いがあって来ました」
「お願い、ですか?」
「あなたを第五騎士団へお迎えしたいのです」
「今我々の騎士団にはヒーラーが不足しております。昨日の失態もそのせいです」
失態と口にする声に、わずかな悔しさが滲んでいた。
彼が部下を大切に思っているのが伝わる。
「あれほど大規模な部隊でも、ヒーラーは少ないんですか?」
「ええ。第五は三百を超える団員がいますが、専属のヒーラーはたった二人。危険地帯を担当する分、消耗が激しいのに、補充が追いつかないのです」
応援を頼むにしても、王国騎士付属の治癒士団は貴族ばかりで、平民主体の第五に力を貸そうとする者はほとんどいない。
「我々が担当する南の樹海は魔獣の数が多く、戦力の補充を待つ余裕すらありません。魔獣が出れば、我々は討伐へ向かうしかないのです」
視界に入る騎士団長の膝に置かれた拳が強く握られる。
「民の安全と命がかかっていますから、我々に立ち止まることは許されません」
短く吐き出された息の奥に、焼ける匂いを幻のように感じた。
――きっと、あの戦場の光景が今も瞼に残っているのだろう。
樹海を監視していた騎士から、サラマンダーの集団が森を出ようとしていると報せが入った。
十分に準備を整えて討伐に向かったものの、そこで予想外の特殊個体と遭遇する。
その対処に手を焼き、幾人もの騎士が炎に呑まれて倒れていった。
仲間の悲鳴が次々と上がり、戦線は崩壊寸前にまで追い込まれる。
全滅の二文字が脳裏をよぎり、騎士団長は自ら特殊個体に立ち向かった。
「氷の魔法が使える私が盾となり、騎士たちと力を合わせてようやく討ち取ることができました」
彼が語る声の奥に、あの戦いの光景が透けて見えた。
炎に包まれた森、炎が爆ぜる音、仲間の叫び、焼け焦げた匂い。
そして命を懸けて仲間を守った騎士団長。
その代償があの大火傷だった。
応援が来なかった理由は単純だ。
治癒師団のヒーラーたちは、平民主体の第五に手を貸したくなかった。
貴族が多い彼らにとって、俺たちは替えの利く消耗品にすぎない。
そんな現実を、俺は嫌というほど知っているから、なおさら胸が詰まった。
……だからこそ、拳に力が入った。
助けても助けても力が足りない。
一人癒したその隣で、別の命が燃え尽きる。
その現実を知っているからこそ、彼らの悔しさが痛いほど分かる気がした。
同じ国を守る騎士団なのに、どうしてこの方たちだけが苦労するんだろう。
緊急事態に於いて王宮ではなく、この教会へ支援要請が来た理由もわかる。
「どうか、第五騎士団へ来ていただくことはできませんでしょうか?」
切実な声。
顔は見られないけれど、きっと真剣な目を、しているんだろう。
トラウマの発作さえなければ、即答できたのに。
助けたい時に体が動かない。
その想像だけで、胸が冷たくなる。
この人たちの手助けをしたい。
けれど、今の俺では手を差し伸べられない。
そんなジレンマの中、なんとか必死で考えを巡らせた。
「無理は承知ですが……他のヒーラーの中に、手を貸してくれる方がいるかもしれません。試しに希望者を募ってみるのはどうでしょう?」
志願兵が少ないのは分かっている。けれど、話を通せば「それでも行ってみよう」と思う人だっているかもしれない。
俺と同等だと最低三人は必要だけど、この教会所属のヒーラーは幸運なことに結構腕がいい。
人数次第では俺以上の成果を期待できる。
彼らのことを知ったら手を貸したいと思う人だっているはずだ。
そんな提案をしてみたら、騎士の二人は渋い顔をした。
「第五はただでさえ多くの騎士を抱えていて、維持するだけでもギリギリなのです」
副団長がため息をつきながら、そっと内情を漏らす。
ため息をつく声は穏やかだが、どこか皮肉を含んでいた。
「恥を気にせず言うのであれば、予算が足りません。現状我々が専属ヒーラーとなってくれる方にお支払いできる金額は一人分しかないのです」
一人しか雇えないなら、なおさら能力の高い人材を望む。
それは当然の話だ。
騎士団長の声は淡々としていたが、拳を握る手の甲に白く血が浮かんでいた。
きっと、力の足りなさに苛立っているんだろう。
その悔しさがにじんでいた。
昨日は俺たちが間に合って死者はでなかった。
けれど、そんな成果ばかりでなかっただろう。
回復の手が足りれば、助かった部下の命の炎が消えていくのを見送ったことだってあるはずだ。
けれどどれほど悲しくても悔しくても、民を守るために歩みを止めるわけにはいかない。
彼らのような人たちが、どうして報われないんだろう。
そんな理不尽が、ひどく胸に刺さった。
「ルイ殿、いかがでしょうか? 私どもは専属ヒーラーに、月給銀貨五十枚と、危険手当として銀貨十枚を支給しております」
それは新たに予算を作るのではなく、空席になっている『専属ヒーラー枠』に充てられるものだという。
「うーん……」
前世の感覚でいえば、そこそこ良い中堅サラリーマンくらいの稼ぎだ。
この世界の相場からすれば、かなりの厚待遇と言っていい。
それだけ、本気で迎えたいという意思があるのだ。
俺一人に出す金額を三人に分ければ、この教会の給金と同じくらいは出せる。
けれど、それでは軍へ志願してくる兵士の給金と大差はない。
招いて危険地帯に足を運ばせるなら、相応の給金を払いたい。
この高額な給金は、金で釣るためのものではない。
命を預ける仲間への誠意であり、俺というヒーラーへの確かな信頼の証だと感じた。
考えるように顔を伏せた俺に騎士団長の視線が刺さる。
俺の返事を待っている。
行きたい。
でも、春樹の幻影がまだ胸の奥に居座っていて、足がすくむ。
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