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28話 思いがけないプレゼント(2)
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市場に出て、屋台で買い食いをしながら街を歩く。
そういえばいつも通り過ぎるばっかりで、こんな風にじっくり露店やお店を覗いたことがなかった。
炙られた肉の香ばしい匂いが空気に混じり、腹の虫が鳴く。
「ナイアさん! 次、あのお肉挟んでるやつ食べたい」
「そんなに食べて大丈夫ですか?」
「まだまだ全然いける!」
奢ってくれるっていうし、遠慮なく食べたい物を買ってもらう。
甘えていいと言われたら全力で甘えるのだ!
そしてお礼も全力で言う!
「はい、どうぞ」
「ありがとう! おいしそー!」
野菜と炙り肉をたっぷり包んだ香ばしい香りを放つケバブっぽいやつにかぶりつく。
「んー! おいしい」
新鮮な野菜と香ばしい肉汁。それが甘辛いソースと絡んで口に広がる。
はぐはぐと大口でかじって顔を上げたら、ナイアさんが笑いながら口元を拭ってくれた。
「元気なのはいいですが、少し落ち着いて食べなさい」
「だって、すごくおいしいよ?」
「ボウズ、うまそうに食ってくれてありがとな! ほれ、おまけに肉やるから出せ」
「やったー! ありがとー!」
「こっちこそありがとよ。お前がうまそうに店の前で食ってくれたから見てくれ、大盛況だ」
他のお客さんの相手をしながら、トングで挟んだ大きな肉の切れ端を、切り落としたパンに載せて渡してくれる。
「うまそー! おじさんありがと!」
「おうよ!」
「タクマ、そろそろ行きましょうか」
「うん、また来るねー!」
屋台のおじさんに手を振ってその場を離れていく。
肉系で腹を満たした後、目に飛び込んできたのはたい焼き!
「たい焼きだー、たい焼き!」
しっかり魚の形をしていた。
中身は色々カスタマイズされていて、あんこはなかったけど。まごうことなきたい焼き!
日本にいた頃は塾へ行く通り道に老舗のたい焼き屋があってよく寄っていたことを思い出す。
懐かしい気持ちでたい焼き屋さんへ近づいて行く。
適当に注文して包んでくれる間にナイアさんに耳打ちして聞いてみる。
「これ作ったのアッシュ様じゃない?」
「よくわかりましたね」
「だって、日本の定番だもん」
買ったのはカスタードのやつで、懐かしくて震えた。
「ナイアさん食べてみる?」
差し出すと、一口齧った。
「……悪くないですね」
「でしょ? 塾の帰りとかさー、こういうの買い食いして夕飯まで食いつなぐの」
説明をする俺を、どこか遠くを見るように見つめ、表情を緩めた。
「タクマ……」
「ん?」
呼ばれて顔を上げると、ナイアさんの視線が、まるで何かを確かめるように俺を見ていた。
「……そろそろ行きましょうか」
「うん」
何かを言おうとしていた感じがしたけど、気のせいかな?
首を傾げながら、たい焼きを食べ終えて歩き始める。
露店ではなく、しっかりとした店が並ぶ商店街を歩く。
アクセサリー、パン、本……様々な物が売られていた。
きょろきょろしている俺が迷子にならないようにと、ナイアさんが俺の手を取って歩いてくれる。
だから俺は安心してよそ見をしながら歩く。
薬草の産地だっていうのもあるのか、薬草屋さんが多い。
見た目ではわからない店の説明を聞きながら、やがてナイアさんは足を止めた。
「ここが、今日の目的地です」
「え、これ。武器屋!?」
ファンタジーでよく見るやつ!!
窓から中に剣や斧が飾られているのが見えた。
ドアを開けて中に入ると、奥から店主が出てきたのが見えた。
「これはナイア様。完成しております」
「ああ」
何かを言う前にナイアさんの顔を見て、一度奥へ引っ込んだ店主が一本の剣を持って戻ってきた。
それを手に取ったナイアさんは俺に向き合う。
「タクマ」
「なに?」
「これを、あなたに」
「え……」
ナイアさんの剣によく似た装飾。
黒と透明な石が嵌め込まれている。
「それには特別な魔石が組み込まれていて、剣を使いながら魔法を使う騎士さまにはうってつけのものですぜ」
二人の視線を浴びながら俺は剣を受け取る。
ずしりとした重みは本物の金属でできた証。
グリップを握ると吸い付くみたいにしっくりと来る。
「タクマの剣です」
鞘から抜くと、少し反りがあり日本刀っぽくもある。
「あなたは直剣よりもその方が使いやすいでしょう?」
「うん」
「グラフィカでは一人前の騎士と認められたら、師匠から剣が送られるんだ」
戸惑う俺に武器屋のおやじさんが説明をしてくれる。
ナイアさんがそれにうなずく。
「私は正確には師匠ではありませんが、この役目を誰にも譲りたくなかったので」
ナイアさんの声は、どこか誇らしく、それでいて少し寂しげだった。
どうしよう。感動で声が出ない。
振らなくても分かる。これは俺のための俺が使うべき剣だ。
「タクマ……?」
何も言わない俺を不安に思ったのか、ナイアさんが顔を覗き込んできた。
「嬉しい! すごく嬉しいよ、ナイアさん。ありがとう!」
鞘に剣をしまって思い切り抱きしめた。
「気に入ってくれてよかったです。ベルトに差すといいですよ」
「うん!」
空いていた帯剣ベルトに剣を装備してみる。
「ボウズ、そこに鏡があるから見てみろ。似合ってるぞ」
言われて隅にあった姿見の前に立ってみる。
この服はこの剣に合わせたものなんだって一目でわかった。
感情があふれて言葉にならない。
目頭が勝手に熱くなって、視界がゆがむ。
「なぜ泣くんですか……」
ナイアさんが困ったような表情で俺の涙をそっと拭う。
その温かさにまた涙がこぼれた。
だって、すごく幸せだから。
「嬉しすぎて」
「ほら、立派な騎士なんですから泣かないで」
「うん」
顔を拭われ、俺は笑った。
歩くと鍔がベルトに当たり独特の音を立てる。
それがなんだか誇らしい。
「俺、この剣でもっともっと強くなるよ」
「ええ。期待しています」
俺を誇らしげに見つめる優しい笑顔。
ずっと覚えていたい。
そんな風に思った瞬間、胸ポケットのジェミが小さく光って「カシャリ」と音を立てた。
きっと、記念に残してくれたんだ。
そういえばいつも通り過ぎるばっかりで、こんな風にじっくり露店やお店を覗いたことがなかった。
炙られた肉の香ばしい匂いが空気に混じり、腹の虫が鳴く。
「ナイアさん! 次、あのお肉挟んでるやつ食べたい」
「そんなに食べて大丈夫ですか?」
「まだまだ全然いける!」
奢ってくれるっていうし、遠慮なく食べたい物を買ってもらう。
甘えていいと言われたら全力で甘えるのだ!
そしてお礼も全力で言う!
「はい、どうぞ」
「ありがとう! おいしそー!」
野菜と炙り肉をたっぷり包んだ香ばしい香りを放つケバブっぽいやつにかぶりつく。
「んー! おいしい」
新鮮な野菜と香ばしい肉汁。それが甘辛いソースと絡んで口に広がる。
はぐはぐと大口でかじって顔を上げたら、ナイアさんが笑いながら口元を拭ってくれた。
「元気なのはいいですが、少し落ち着いて食べなさい」
「だって、すごくおいしいよ?」
「ボウズ、うまそうに食ってくれてありがとな! ほれ、おまけに肉やるから出せ」
「やったー! ありがとー!」
「こっちこそありがとよ。お前がうまそうに店の前で食ってくれたから見てくれ、大盛況だ」
他のお客さんの相手をしながら、トングで挟んだ大きな肉の切れ端を、切り落としたパンに載せて渡してくれる。
「うまそー! おじさんありがと!」
「おうよ!」
「タクマ、そろそろ行きましょうか」
「うん、また来るねー!」
屋台のおじさんに手を振ってその場を離れていく。
肉系で腹を満たした後、目に飛び込んできたのはたい焼き!
「たい焼きだー、たい焼き!」
しっかり魚の形をしていた。
中身は色々カスタマイズされていて、あんこはなかったけど。まごうことなきたい焼き!
日本にいた頃は塾へ行く通り道に老舗のたい焼き屋があってよく寄っていたことを思い出す。
懐かしい気持ちでたい焼き屋さんへ近づいて行く。
適当に注文して包んでくれる間にナイアさんに耳打ちして聞いてみる。
「これ作ったのアッシュ様じゃない?」
「よくわかりましたね」
「だって、日本の定番だもん」
買ったのはカスタードのやつで、懐かしくて震えた。
「ナイアさん食べてみる?」
差し出すと、一口齧った。
「……悪くないですね」
「でしょ? 塾の帰りとかさー、こういうの買い食いして夕飯まで食いつなぐの」
説明をする俺を、どこか遠くを見るように見つめ、表情を緩めた。
「タクマ……」
「ん?」
呼ばれて顔を上げると、ナイアさんの視線が、まるで何かを確かめるように俺を見ていた。
「……そろそろ行きましょうか」
「うん」
何かを言おうとしていた感じがしたけど、気のせいかな?
首を傾げながら、たい焼きを食べ終えて歩き始める。
露店ではなく、しっかりとした店が並ぶ商店街を歩く。
アクセサリー、パン、本……様々な物が売られていた。
きょろきょろしている俺が迷子にならないようにと、ナイアさんが俺の手を取って歩いてくれる。
だから俺は安心してよそ見をしながら歩く。
薬草の産地だっていうのもあるのか、薬草屋さんが多い。
見た目ではわからない店の説明を聞きながら、やがてナイアさんは足を止めた。
「ここが、今日の目的地です」
「え、これ。武器屋!?」
ファンタジーでよく見るやつ!!
窓から中に剣や斧が飾られているのが見えた。
ドアを開けて中に入ると、奥から店主が出てきたのが見えた。
「これはナイア様。完成しております」
「ああ」
何かを言う前にナイアさんの顔を見て、一度奥へ引っ込んだ店主が一本の剣を持って戻ってきた。
それを手に取ったナイアさんは俺に向き合う。
「タクマ」
「なに?」
「これを、あなたに」
「え……」
ナイアさんの剣によく似た装飾。
黒と透明な石が嵌め込まれている。
「それには特別な魔石が組み込まれていて、剣を使いながら魔法を使う騎士さまにはうってつけのものですぜ」
二人の視線を浴びながら俺は剣を受け取る。
ずしりとした重みは本物の金属でできた証。
グリップを握ると吸い付くみたいにしっくりと来る。
「タクマの剣です」
鞘から抜くと、少し反りがあり日本刀っぽくもある。
「あなたは直剣よりもその方が使いやすいでしょう?」
「うん」
「グラフィカでは一人前の騎士と認められたら、師匠から剣が送られるんだ」
戸惑う俺に武器屋のおやじさんが説明をしてくれる。
ナイアさんがそれにうなずく。
「私は正確には師匠ではありませんが、この役目を誰にも譲りたくなかったので」
ナイアさんの声は、どこか誇らしく、それでいて少し寂しげだった。
どうしよう。感動で声が出ない。
振らなくても分かる。これは俺のための俺が使うべき剣だ。
「タクマ……?」
何も言わない俺を不安に思ったのか、ナイアさんが顔を覗き込んできた。
「嬉しい! すごく嬉しいよ、ナイアさん。ありがとう!」
鞘に剣をしまって思い切り抱きしめた。
「気に入ってくれてよかったです。ベルトに差すといいですよ」
「うん!」
空いていた帯剣ベルトに剣を装備してみる。
「ボウズ、そこに鏡があるから見てみろ。似合ってるぞ」
言われて隅にあった姿見の前に立ってみる。
この服はこの剣に合わせたものなんだって一目でわかった。
感情があふれて言葉にならない。
目頭が勝手に熱くなって、視界がゆがむ。
「なぜ泣くんですか……」
ナイアさんが困ったような表情で俺の涙をそっと拭う。
その温かさにまた涙がこぼれた。
だって、すごく幸せだから。
「嬉しすぎて」
「ほら、立派な騎士なんですから泣かないで」
「うん」
顔を拭われ、俺は笑った。
歩くと鍔がベルトに当たり独特の音を立てる。
それがなんだか誇らしい。
「俺、この剣でもっともっと強くなるよ」
「ええ。期待しています」
俺を誇らしげに見つめる優しい笑顔。
ずっと覚えていたい。
そんな風に思った瞬間、胸ポケットのジェミが小さく光って「カシャリ」と音を立てた。
きっと、記念に残してくれたんだ。
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