午時葵が咲き 木五倍子編 (高島藤次)

蒼乃悠生

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第二章 木五倍子の花

六.弾を込めて

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 銃声が鳴り響いた。
 一発の銃弾が心臓を貫く。
 これで、全ての終止符が打たれたのだ。
「高島さん‼︎」
 彼女の声が聞こえる。
(ん? 聞こえる?)
 疑問に思った。
 拳銃で撃たれる瞬間を見たくなくて、目を閉じていた。だが、気になる声が聞こえ、そっと目を開ける。
「…………痛くない」
 胸元を抑える。
 血らしき濡れた感触はない。
 恐る恐る服を見てみるが、穴もなければ血も出ていない。
 一体これはどういうことなのだろうと、首を傾げた。
 もしかして、本当に伍賀さんの手元が狂ったのかと思い、身体中をペタペタと触り、傷を探すが、やはりどこにもない。
 頭上にはクエスチョンマークが増える一方だ。
「伍賀、何故だ」
 〝藤次〟の声がした。
 顔を上げると、〝藤次〟の胸元に撃たれた跡がある。しかし、それは心臓と少し離れた場所だった。
 ギュッと腕に掴まる感触。
 隣に九藤さんがいることに気づく。
 心配そうに俺を見る九藤さんに微笑んだ。
「大丈夫」
 九藤さんはこの言葉を聞いて、力が抜けたように顔の表情が和らぐ。
「何故、俺がなんだ」
 〝藤次〟は驚愕しながらも、冷静な顔で拳銃を触る伍賀さんを睨みつける。
 しかし、伍賀さんは全く気にする素振りを見せず、何事もなかったかのようにひたすら拳銃をいろんな角度から眺めていた。
「生前の藤次の約束でね」
 拳銃をまるで玩具のようにクルクルと回したりしている。
「約束?」
「やっぱり今の君は何一つ覚えてないんだね」
 軽く溜め息を吐いて、呆れている様子だった。
「死ぬ一週間前か、そこらで、君は言ったんだ。『見たことのない奴にブドウ糖と言って注射された。その後から幻覚、幻聴に襲われるようになった』」
 突然の告白に、俺は伍賀さんを見つめる。
「詳しいことは割愛。約束は二つ。一つは、これから先、幻覚をもたらす注射を撃たれる兵士が増えるかもしれない。もし弟の広次も苦しむ時が来たら、楽にしてやってくれ」
 楽にする。
 それは死を与えるという意味。
「なら! 尚更俺を撃つのは違うだろう!」
 〝藤次〟は胸を押さえ、顔を苦痛に歪ませていた。
 しかし、彼の体は血が流れるのではなく、氷の姿。少しずつ傷口から広がっていくように、体が凍っているように白くなっていた。
「ふたーつ。先に殺すのは俺、藤次からにしてくれ。以上が交わした約束」
「兄、から?」
 俺は瞬きを繰り返す。
 伍賀さんは俺を見た。
「そ。広次を先に死なせない。そんな兄心が詰まっているんだろ」
「あ……」
「うーん。なかなか時間がかかるね」
 伍賀さんは〝藤次〟を見ながら呟いた。
 周りがざわつく。
 しかし、誰も否定も肯定もしない。ただ俺達の行く末を眺めているようだった。
「じゃあ」
 俺はヘラっと笑ってみせた。
「次は俺の番ですね」
 九藤さんが俺の腕にしがみつく力が強くなった気がする。
「そうだね」
 伍賀さんも笑う。
 そして、まだスライドが完全に引かれていないので必ず球が残っている自動拳銃を構え直す。
 その時だった。
「伍賀ぁぁ‼︎」
 吠えるように、〝藤次〟は名を叫んだ。
 そして、体を引きずるようにゆっくりと伍賀さんに近づく。
「早く、とどめをさせ」
 伍賀さんが握っている拳銃に手を伸ばし、自らの胸元に当てる。更に、空いている左手で、伍賀さんの肩を抱くように持ち、引き寄せる。
 肩に顔を置くように近づけた。
 そして、少しの間が流れる。
「やっと、しずかに、なった」
 〝藤次〟は微笑んだ。
 その瞬間、発砲音が鳴り響く。
「伍賀さん!」
 俺は叫んだ。
 彼の穏やかな表情と最後の言葉で、正気に戻ったのだとすぐに分かった。
 それなのに、躊躇いなく撃つなんて考えられない。叫ばずにはいられなかった。
 〝藤次〟の体がぐらりと傾く。
 そして、ずり落ちるように倒れた。
「なんだかなぁ……」
 その声があまりにも寂しそうで、悲しそうで、一度も聞いたことがない伍賀さんの声色に、俺は開いた口を閉じた。
 倒れた〝藤次〟の体は、撃たれた箇所からパリパリと音を立てて、氷が砕けていく。時間が経つと同時に広がっていった。
 僅かに床を叩く音が聞こえる。
(モールス信号?)
 〝藤次〟の指が微かに上下していた。
 彼の表情は固まってしまっていて、なにも読み取れない。
 全てを指に託していた。
(カ、ン……)
 指が打つモールス信号を読み取っていく。
 音で紡がれる言葉。

 ・-・・ ・-・-・ --・-・ ---・- -・--・ 

 目が見開く。
 彼はずっと苦しんでいた。
 こうなることを最初から望んでいた。
 本心を口に出すことを許されず、やりたくないことをやらされ、ただの操られる人形として歩き続け、そして伍賀さんに全てを託していたから終焉を迎えることができた。
 背負わされた伍賀さんも顔を俯かせて、表情が読み取れない。
「伍賀さん」
「ん?」
 呼ぶと帰ってくる返事。
「例えこの世界から消えたとしても、〝藤次〟は二人もいらないーーいや、偽物は無用ですね」
 そう言うと、伍賀さんはすぐに頭を上げて、俺を見た。
「結局俺はどんな存在か分からないままです」
「高島さん! 死なないで!」
 腕に抱きつき、離れようとしない彼女の腕を掴む。
「痛い‼︎」
 痛みで怯んだ隙をついて、俺は九藤さんの拘束を解き、伍賀さんの前に来た。
「自分が何者か分からないなら、一層のことーー」
「消そう、て?」
「はい!」
 伍賀さんから拳銃を奪う。
「今までありがとうございました」
 そして、集まっている仲間達を向いた。
「今まで世話になりました」
 最期にこの言葉を。
「皆に『感謝する』」
 頭に拳銃を当てて、引き金を引く。
「待ってください‼︎」
 言葉と同時に腕がぐらりと掴まれた。
 拳銃は空を撃った。
「瀬田⁉︎」
 顔と首、胸を白い包帯で巻かれている瀬田が、俺の腕を握って離さない。
 温厚な顔をしている瀬田は、今ばかりは鋭い眼光で俺を睨みつけている。
「自決しようとしてんじゃないっスよ‼︎」
「本物の高島藤次はお前やみんなを傷つけた! 偽物の高島藤次は仲間を欺いた! その罪は俺が全て背負う‼︎」
「仲間を欺いた⁉︎ だからなんだっつーんスか! たかだかそんくらいのことで命投げ出すんスか! 俺より上官のくせに分かっちゃないっスね‼︎」
「高島という存在が迷惑をかけたことに変わりはないだろ‼︎」
 腕を振り解こうとするが、瀬田の力が強い。怪我人とは思えないほどの力だった。
「だからってあんたが背負うことじゃないでしょ‼︎ 仲間傷つけた本人は死んだんでしょ‼︎ それでいいじゃないっスか‼︎」
「馬鹿言うな‼︎」
「そうだ、馬鹿を言うな」
 次に聞こえてきた声は、雛林大佐の声だった。
 落ち着いた声色だが、殺気を隠していない。
 かなりのご立腹とみられる。
(この騒ぎで来たか……もうこれで本当に終わりだな)
 命の終わりを確信する。
「高島藤次が持っている太刀は、俺のコレクションの一つだったのに、よくもまあこんな使い方をしやがって」
 転がっている太刀を拾い上げ、難度が血糊を払うように振り下ろす。
「刃こぼれしてるな。ッたく」
 大切なものを存分な扱いをされ、さぞかしご立腹だろう。
 申し訳ない気持ちで頭が上がらない。
「申し訳ありません」
 謝罪をすると、突然襲ってくる腹の痛み。
 雛林大佐が俺の腹に膝蹴りを入れていた。
 思わず、腹を抱え、その場に蹲る。
「太刀の件はこれでチャラだ」
「へ……?」
 雛林大佐は達を肩で担ぎながら来た道を歩いていく。
「この後始末は貴様らに任す。終わったら報告しに来い」
 雛林大佐に道を開ける群衆。
「ただし、
 一度だけ振り返り、俺達を見た後、再び踵を返した。
「大佐からの命令ならどうにもならないなぁ」
 伍賀さんは茶化すような口ぶりで言った。
「高島隊長、失礼します」
 不意に誰か来たと思ったら、食らう平手打ち。
 そして、作業着姿の隊員は打った手をさすりながら、笑った。
「これで許します」
「え、え?」
 訳がわからなかった。
「ちょっと待ってくれ。もう俺は」
 高島藤次でもなんでもない。
 そう言おうとした時、今度は腰を蹴られた。
「この怪我、痛かったんですからね! これくらい受けてくださいよ!」
 刀傷のある兵士が笑う。
 これじゃあ、まるで、
「みんなが知ってる高島藤次さんは、あなただよ」
 九藤さんは俺の頬を挟む。
 そこに伍賀さんの鉄槌を頭上で受ける。
「そもそも、本当に高島を撃つと思ったの?」
「頭、割れますからやめてください」
「君がバッサバッサとみんなを斬ったんならまだしも、高島はなんもしてないんだから撃つわけないでしょ」
「え、だって、伍賀さん、言ってたじゃないですか」
「嘘ウソうっそぴょーん」
 カチンと来る言い方だ。
「最初に聞いただろ? 『今までどこにいた?』て。で小秋ちゃんのところにいたって言うから、『なら、良い!』て」
「分かりませんよ‼︎」
「それに、高島が偽物だと気づいてたけど、まあ、害はないからいっかなー、て」
「害虫みたいな言い方やめてください」
 元に戻ったような気がして、はにかんでしまう。
「でも、良いんですか? 俺、高島藤次じゃないんですよ。広次であるかさえも怪しいもんです」
「いいかい、よく聞け。高島藤次本人も被害者である。そして、名も無き君も被害者である」
 伍賀さんは口の端を上げた。
「君に新たなに名を授けよう。高島藤次、そう名乗り給え」
 えっへんと、何故か威張り顔な伍賀さん。
「はい?」
 俺は目を丸くした。
「二代目、高島藤次として、これから暮らせば良い」
「でも!」
 食い下がると、瀬田が口を開いた。
「俺達にとっては、あなたが高島隊長っスよ。本物の藤次兄さんには、目を瞑っといてもらいましょ」
「いい、のかな」
「それに大佐も隊員の人数を変えるなーって言ってたじゃないスか」
 そう言って、瀬田はニカッと笑う。
 そして、瀬田は俺に背を向けて歩き出した。
 無駄にキメている気がする。
「瀬田……」
 俺は彼の背中を見つめた。
 と、その時、バサっと雑誌のような物が落ちた音がした。
「落としたぞ」
 手に取ってみると、
「『伍賀くんの高島隊長を泣かせない劇場』……」
 ん?
 台本?
 バッと瀬田に視線を向けると、あたふたする姿が目に移った。
「……瀬田?」
「…………はい」
 涙目だ。
 これはあまり追求しても、泣かれるだけかもしれない。
 次に伍賀さんを見てみる。恐らく首謀者と思われる人物だ。
「伍賀さん? これはどういうことかな?」
 ニコニコニコニコ。
 伍賀さんは口を一文字にして、岩のように固まっている。
 そして、カクカクと機械のように首を回し、俺の視線から逃れる。
「伍賀さーん伍賀さーん伍賀さーん」
 口に手を当てて呼んでみる。
 確実に聞こえている筈なのに、伍賀さんはそっぽを向いたまま。
「よし」
 俺はある決意と言うか、仕返しを思いつく。
 伍賀さんの背後に立つと、ぽんぽんと肩を叩く。
「伍ー賀ーさんっ」
 それでも振り向かない。
 仕方がないので、肩に置いた手の人差し指を立て、そして頬に向けて発射。
「い、いたい」
 容赦なく頬に刺したものだから、伍賀さんはやっと口を開いた。
「あの台本、なんでしょうかねぇ?」
「……」
「いやいや、別に怒ってるわけじゃないんですよぉ?」
「……ああでもしないと、高島、泣くでしょ?」
「どういうことですか?」
 やっと伍賀さんは諦めたように、乱暴に息を吐いてから俺を見た。その眼差しはいつもと変わらないものだった。
「分かったよ、全部話すから指を離せ」
 俺はおとなしく手を引っ込める。
「貴様が高島藤次じゃないって気づいてから、そんなことはどうでもよかったんだけど、繊細な高島のことだから重く受け止めるだろうな、て」
(『そんなことはどうでもよかった』……じゃないだろ、普通)
 ここにいる仲間は戦線たる戦士。
 多少の事では動じない。
 落ち着きを取り戻してから、改めて周りを見渡すと、みんな笑ってこちらを見ている。誰も俺を否定する眼差しではない。
 あの作業着を着た人も、俺に怒鳴ってきた人も、みんながニコニコしている。
 今でも、嘘だったと信じられないくらいだ。役者になれるよ、みんな。
「みんなで演じたわけですか?」
「当たり! 貴様への大劇場だよ☆」
 伍賀さんは腰に手を当てて、自慢げな顔をしている。
「じゃあ、あの高島藤次は……」
「本物! 君は広次クンだと思う」
「……それは嘘じゃないんですね」
「ま、気にしない気にしない~。ね、ちせ!」
 突然振られた九藤さんは、少し口籠もり、苦笑しながらも微笑んだ。
「みんなが演じていたのは知らなくて……演技力凄いね。わたしも騙されちゃった……。教えてくれた方が助かったんだけど」
「ごめーん。高島にバレたくなかったから、いない時にみんなで計画したんだけど、ちせもいなかったもんで教えられなかったんだよ」
 ハハハハハと笑っている。
 強張っていた体は、ようやく力が抜ける。
 力が入りすぎていたようで、今では身体中が痛い。
 崩れるように、その場に座り込んだ。
「疲れた……」
 心底思っている言葉を吐き出して、俺は大の字に転がった。
 兄の存在。
 自分の正体。
 信じて疑わなかったことが、短い時間で覆される。
 それは精神的なものに大きな傷を負わされたような気分だ。
(本当に疲れたな)
 心にも、体にも大きな岩を乗せられたような感覚。力も入らない。体も動かない。
 自然に瞼も落ちてきた。
 これは深い眠りに入りそうだ。




 目を覚ましたのは、次の日の昼間。
 白いベッドに横たわって、なにか考えるもなく天井を見ていた。
 その視界の隅から現れたのは、琴村の顔。
 訝しむように見ていた目は、俺の様子を伺うと、ニッコリと笑った。
「気分はどう? 顔色は悪くないみたいだけど」
 腕に刺さっていた針を抜く。
 長い間点滴をされていたようで、血が逆流していた。
 少し視界が霞むが、何度か瞬きを繰り返すうちに治るので言わないでおこう。
「気分は悪くない」
「気分ね」
 片眉を寄せる。
「長い間寝ていたけど、夢でも見た?」
「いや」
「そう……」
 俺は淡々と質問に答えた。
 それがかえって琴村を心配させたようで、琴村は注射針を片付ける手を止めていた。
「後から聞いたんだけど、伍」
「分かってる。わざとじゃない」
 琴村の言葉を遮る。
 分かっている。分かってはいるんだ。
 問題の焦点はそこでもない。
「俺は、誰なんだろうな」
 天井を一点に見つめる。
「高島広次、か」
 未だに見つけられない広次としての記憶。
 清々しいほど、真っ白だ。
 気づけば、琴村の姿はどこにもなかった。
「!」
 そして、代わりにいる赤い髪の青年。
 窓辺に座って、こちらを見ている。
 ニコニコと少年のような微笑みで。
「えっと、その」
 体を起こそうにも、まだ鉛のように重たい。
 それでも無理に起きようと両腕を動かしていると、青年は右手を前に出して制した。
「起きなくていいよ!」
「……はい」
 怪訝な顔で青年を見る。
 見たことがない顔だ。
「オレは赤兎せきと
 青年は落ち着いた声で名を言った。
「天に選ばれ、弄ばれた、可哀想な人のよ」
 神妙な空気に、俺は声が出せない。
 と、思った瞬間、
「あー! 無理! オレ、こーゆう空気マジで無理!」
 自ら壊す。
 赤兎は頭を乱暴に掻き、髪を整えずににへらと笑った。
「高島隊員」
「はい」
 名を呼ばれて、やって口から音が出る。
「高島隊員に高島広次としての記憶がないのは当たり前なんだよ」
「それは、どういう意味でしょうか」
「この世界の天の一人がね、広次の体から広次の記憶だけを抜き取って、コピーした藤次の記憶を植え付けたから」
「は?」
 天の一人?
 コピー?
 植え付けた?
 なにを言っているんだ。
 これ以上、頭を混乱させないでくれ。
「だから、高島隊員は今の自分のままでいいんだ。他の誰かになんなくていい」
 何故か、この言葉だけは心にスゥーっと入ってくる。
 求めていた言葉だから。
「名前にこだわりを持たなくていいんだよ。大切なのはここでしょ?」
 ニカッと笑う赤兎は、胸に拳をトントンと当てる。
「気持ち、でしょでしょ?」
 赤兎は窓から降り、俺のすぐ横まで来た。
「実験台にされて可哀想に」
 彼は俺の頭に手を当てた。
 それは氷に触れられているかのように酷く冷たい。
 しかし、今はその冷たさが心地よかった。思わず目を細める。
「オレだけはと思うよ」
 目は冴えていた筈なのに、急にトロンと眠気が来る。
 抗えない眠気に、俺は素直に瞼を下ろした。




「あ‼︎」
 意識が急浮上し、ガバッと起き上がる。
 先程まで重たかったのが嘘のように体が軽い。
「トージ! 急に起き上がったら駄目よ!」
 駆けつけてきた琴村と目が合う。
「ど、どーしたの?」
 俺の様子を不審に感じた琴村は、思わず口ごもる。
「赤髪の……人、いなかった?」
 俺は冷たい手が触れていた場所に触れてみる。が、特におかしいところはない。
 変わったことは、明らかに体調が良くなったこと。更にいえば、沈んでいた気持ちも心なしか軽くなった気がする。
「そんな人、いないし、知らないよ。夢でも見たんじゃないの?」
 そう言って、琴村は脚を軽く叩く。
 丁度その場所が怪我したところで、激痛に悶える予定だった。
「あれ、痛くない」
 痛くないのだ。だから悶えることもなく、拍子抜けである。
「え! ほんとに?」
 琴村はバシバシと容赦なく脚を叩いてくる。患者に対する行動ではない。
「そっか、夢か」
 俺は笑った。
 琴村はすっかり元気になった俺に首を傾げつつ、暫く様子を見たいとのことで入院を続けることにした。
 今思えば、頭がかなり混乱していたし、幻覚でも見たのかもしれない。
 と言うよりも、何故足の怪我が治ったのか理解できない。
(もう一回寝よう!)
 俺は考えることに疲れ、もう一度横になった。




 再び起きてみると、窓から西日が差していた。
 寝すぎた。
 とは思うものの、たまにはゆっくりして良いだろうと楽観的に考え、ベッドから降りる。
 西日の眩しさに目を細めつつ、窓から外を見渡す。
 山も建物も、全てがオレンジ色に染まっていた。
 そこに、腹の虫が突然自己主張をする。
「そういえばなにも食ってなかったな」
 引っ込む腹を手で摩りながら、久しぶりに赤とんぼに行こうと医務室を出る。
 一応、琴村に心配かけないよう書き置きはしておいた。
 軽い足取りで歩く。今まで足を引きずっていたのが嘘のようだ。
 気持ちも空気も清々しく、気持ちが良い。
 基地を出て、堀も通り過ぎ、軍人のみならず、みんなが使う道に出る。その瞬間にふっと空気の圧のようなものがなくなり、体が楽になる。
 この感覚は他では味わえない。
 横切る子供達は太陽が沈みきる前に、わーわー言いながら走っていく。
 笑顔で家に帰る姿を見たら、今日も一日楽しかったんだろなと、口元が綻ぶ。
 舗装された道を、一歩一歩踏みしめるように歩き始めた。
 商店街まで来ると、人の賑わいが一層出てくる。
 慣れた道を歩いていると、呉服屋から見覚えのある女性が出てきた。
「あ、藤次くん!」
 右手を大きく横に振り、左の手元には風呂敷に包まれたものを持っていた。
「祥子ちゃん、久しぶり」
「ほんまよねー! いつぶりかなぁ?」
「最近は忙しかったからなぁ」
「またまたー。女、じゃあないんですかい? 色男」
 ニヤニヤと面白そうに笑う祥子ちゃんは、小指を立てて、ひゅーひゅーと言ってくる。
 俺はぽりぽりと頬を掻きながら苦笑した。
「色はないねぇ。でも、そうだなぁ。女性関係と言っても嘘ではないかな」
「ほら! やっぱり。女の勘は当たるね!」
「あ。女性ってどんなお礼をしたら嬉しい?」
「え? あたしにお礼?いやーもーありがとう」
 わざとらしく、大袈裟に反応する祥子ちゃん。
「そうじゃなくて、祥子ちゃんより数倍も若いじょ」

 ドンッ

 気づけば頭を思い切り叩かれていた。祥子ちゃんが持っていた風呂敷包みで。
(思ったより硬い物が入ってる……)
 頭を抑えていると、口元は釣り上げて笑っているが、目が全く笑っていない、恐ろしく怒っている祥子ちゃんが俺を見下ろしていた。
「黙っとれ、餓鬼」
 鬼だ。目の前に鬼がいる。
 目に涙を溜める。
「まあ、いいわ。ちょっと待ってて」
 くるりと身を翻し、再び呉服屋に入っていく。
 俺は頭をさすりながら、戸を背にして待った。
 店内の奥から声が聞こえる。
(祥子ちゃんと、店員さんかな)
 よく聞いてみると、二人の女性が話しているようだ。
 祥子ちゃんは普段の調子で話しているようだが、もう一人の女性は声を潜め、不安そうだった。
『いいんかなぁ、祥子さん』
『なぁに言うてんの。あたしがお願いしとんだから頼むよ~』
『でも、これって……』
『大丈夫大丈夫!』
(二人でなにしてんだろ)
 聞いていると、こちらも心配になってくる。
 一体、祥子ちゃんはなにを持ってくるつもりなんだろうか。
 すると、店内からドタバタと走る足音が近づいてきた。
 ガラガラと音を立てて、俺の横にある戸が開いた。
「ほら! これあげるからさ!」
 俺の目前に出された、着物らしき朱色の端切れ。模様が刺繍されているようだが、布が小さく切られており、元々どんな絵だったのかよく分からない。
「切れ端……?」

「これをどうするんだい?」
 掌位の大きさしかない。こんな切れ端をどうしろと言うのだろう。
 首を傾げていると、祥子ちゃんは笑った。
「御守り、作ってあげたら?」
「ちょっと、俺、針仕事なんてほとんどしたことがないんだけど」
「だから良いんじゃん!」
 祥子さんは興奮気味に鼻の穴を広げで、力説する。
「最近ここらでは大流行しとるんよ!」
「初めて聞いた」
「異性に気持ちがこもった手作りの物をあげるのが流行ってる! ここは流行りに乗っかっていこう!」
「そんなもんかなぁ」
 片眉を寄せると、祥子ちゃんは背中を一発叩いてきた。景気付けと言わんばかりに。
「大事なのはここからよ」
 ふふんと得意げに言う。
「作った御守りに想いを認めた手紙を挟んだり、写真を入れたりするのが、効果抜群なのですよ」
「手紙とか写真か~」
 まじまじと朱色の布を見やる。
 こっそりと御守りに忍ばせることは、なかなか良い案かもしれない。
「うん、ありがとう。明日からやってみるよ」
「どういたしまして! 藤次くん、今から暇?」
 ニッコリと笑う顔に裏表を感じない。
 店内での二人の会話に違和感を抱くが、気にしすぎだろう。
 この切れ端も呉服屋での商品の一部だとしたら、暗黙のルールには反さないだろうし。
 万が一、誰かの遺品の物を使用して贈り物をしてしまったら、大変なことになる。
 やることは決まった。
 次は腹拵えだ。
「お腹が減った」
「じゃあ、赤とんぼうちで食べてく?」
「そのつもり」
 赤とんぼという馴染み深い名前の店に向かって歩き出した。




 次の日。
 自室で一人引きこもる。
 御守りというものをいざ作ってみると大変で、一針一針縫う度に蛇のように糸が要らぬ方向に縫われていく。
 真っ直ぐに縫っているつもりだったのに、どうして上手くいかないのだろう。縫われた糸の長さもバラバラだし、汚いの一言だ。
 苦手だ。
 やはり瀬田に頼んだ方が良かったか。
 そう後悔しかけたが、少しずつ形が出来上がってくると達成感というものが出てくる。そして、苦労した分だけ愛着も出てくるもの。
 正直に言えば、御守りに見えないような気もするが、気にしないでおこう。
「おお!」
 袋状になると歓喜の声すら漏れる。
 用意していた小さな写真と、小さな紙を二枚。
 一枚にはちせちゃんに向けて。
 ちせちゃんに渡すものには必要がないのだが、もしかするとちせちゃんが落としたり、無くしたりするかもしれない。その時の為に、ちせちゃんに渡るようにを、別の紙に書くことにした。
 我ながらよく考えた。自画自賛する。
 そして、机の置いてある枝に視線を向けた。
 知人に貰った金木犀の枝。小さなオレンジ色の花が可愛くて、甘い匂いを漂わせている。
(最後に俺の好きな金木犀を入れたいけど、花とかだと汚くなりそうだしなぁ)
 頭を捻る。
 汚くならず、見た目もよく、この小さな袋に入る金木犀はないだろうか。
 しかし、なかなか思いつかないもの。
 煮えてしまう前に一旦休憩しよう。
 立ち上がろうとした時だった。
「たっかしま隊長ぉぉ‼︎」
 勢いよくドアが開き、空を飛ぶように跳んでくる瀬田の姿。
 怪我が完治するまで時間がかかる筈なのだが、本人はピンピンとしている。
「瀬田、くっ付かないでくれ」
 男同士なのだから、気分がいいわけはない。
 が、弟の様な者だから無理に剥がすこともしない。
「怪我は大丈夫っスか?」
「それは俺の台詞だよ」
 首元に巻きついたまま離れない。
 瀬田は怪我が嘘の様に痛がる素振りを見せない。
「俺、元々治るのが早いタチなんで平気っス」
 そう言って、ウインクをしながら親指を立てる。
「隊長、なんスか、これ」
 机にある物に気づき、瀬田は人差し指で指す。
「御守り。重いから降りて」
 言葉短く答えると、瀬田はパッと手を離し、御守りを勝手に触りだす。
 そして、憐れむような目でニッコリと笑った。
「ドンマイ」
「どういう意味だコラ」
 真顔で返す。
「で、花とか入れるんスか?」
 『で』て、オイ。
 そう言いたくなったが、自分としてはあまり御守りの件を掘り起こしたくないので、瞬き一つで切り替える。
 瀬田は、徐に金木犀の枝を持ち、天に掲げて眺めていた。少しずつ持つ枝を回してみたり、角度を変えたり、綺麗な構図を探しているようにも見えた。
「御守りに入れたいなと思って。でも、どう入れるか模索中」
 花だけ入れるとバラバラにもなるし、汚くなるだろ?
 そう付け足す。
 瀬田は枝を鼻に近づけて深呼吸した。
「花にこだわらないんなら、木を小さな板状に切って入れたらいいじゃないスか。ほら、御守りって、グニャグニャ曲がらないように厚紙とか入ってたりするし」
「ああ、それはありかもな」
 まさか瀬田がまともな案をだすとは思わなくて、多少なりとも面食らうが、納得する。
 折角今時間があるのだから板も作ってしまおうと立ち上がった時、瀬田が片手に御守りを持って呼び止めた。
「隊長、コレ穴が空いてるんで、俺が直してもいいっスか?」
 分かりやすいように穴を広げて見せてくる。
 しかし、それは穴ではない。縫い幅が広すぎて隙間が空いているだけだ。
 俺は目元をキラキラと輝かせて了承を待つ瀬田に、じーと見つめた後、直してくれと頼んだ。
 その時。
 首元でブチッと切れる音がした。
 そして、コロコロと転がっていく青い石。
 九藤さんから貰ったものだ。
 転がる青い石を目で追いかけてながは手を伸ばす。
 不意に心の底がざわつくのを感じた。
(嫌な予感がする)
 それが何なのかは分からない。
 完全な勘というものだ。
 何の前ぶりもなく、止まった青い石にヒビが入り、割れた。
「あ……」
 思わず声が漏れ、伸ばした手が止まる。
 そんな俺の様子を気にすることなく、瀬田は椅子に座り、片足を膝に置く。鼻歌混じりで、縫い目が歪んだ糸を切り、テキパキと再度縫っていく。
 ちょっとの手直しではなく、大掛かりな手直しになっていた。
「瀬田」
「あいよ!」
 合いの手を打つように瀬田は答える。
「時間がかかりそうか?」
「いや、物自体は小さいんで、そろそろ終わりますよ。あ、木を切る作業は隊長がお願いします」
 俺は青い石を手にして立ち上がる。
「分かった。出来上がり次第、持ってくから」
 割れた青い石を丁寧にポケットに入れた。




 基地内に金木犀はない。外まで出て、庭先に金木犀が植えられている家を訪問し、腰を低くし、頼み込んだ。基地の周りに住んでいる住人は軍人に対してあまり嫌悪感がないのか、二つ返事で了承してくれた。
 基地に戻り、持ち帰った金木犀の太い枝をそっと机に置く。瀬田はすぐに終わると言っておきながら、まだ作業を続けていた。拘り始めると、細部まで気になる性格なのかもしれない。
 俺はそんな瀬田の様子を見つつ、椅子に深く腰掛けた。引き出しにしまっていたナイフを持ち、表面を削っていく。薄い木屑を出しながら、平らにしていった。
「なぁ」
 俺は重たい口を開いた。
 が、なにかを察した瀬田は、俺を見ることなく、作業したまま口を開く。
「隊長は隊長っスから」
 言いたいことが伝わっているらしい。
 考えていないようで色々と考えているようだ。
 思わず口元が緩む。
「そっか」
 会話らしくない会話をしながら、丁寧に手を動かす。
 先に出来上がった御守りの大きさを確認しながら、木の大きさを整えていく。
「隊長、紐ないっスか?」
「紐? なにに使うんだ」
「御守り、首から掛けたら、なんかよくないスか? こー、いつもそばにいるよ、ハート! みたいな」
 そう言いながら、瀬田は体をくねらせる。
 気持ち悪い。
 そう思いながらも、俺は「貴様の言うことは理解しかねるが、首から下げるというのも悪くないな」と了承した。
「んじゃ、ちょいと探してきまーす」
 御守りを縛る紐を探しに、瀬田は一時姿を消した。
 ナイフから彫刻刀に持ち替え、木の表面の凹凸を平らにしていく。完璧には無理であるが、多少マシになった気がする。
 その小さな板が御守りの中にすっぽりと入り、心の中で歓喜していたところ、瀬田が帰ってきた。
「たーいちょ!」
 瀬田の軽快な声が聞こえる中、俺は御守りに目を向けたままでいると、再度瀬田の声が聞こえた。
「ついでなんで連れてきました~」
「……『ついで』?」
 言葉の意味を理解するのに時間がかかる。
 ついでとはなんのことだろう。
 面を上げると、瀬田の隣に九藤さんも立っていた。
「お邪魔します」
 少し恥ずかしそうな様子で挨拶をする。
 九藤さんの姿を見て、違和感を抱く。
 両手を後ろにして、前屈み気味に立っている。
 俺は手に持っていたものを後ろに隠しながら立ち上がり、軽く頭を下げた。
 今更隠さなくてもよかったなと思いながらも、己の反射神経はまだ衰えたものでないなと、心の中だけで感心する。
「わざわざ来てもらってごめんね。小秋ちゃんのところに行ってた?」
「うん、三人で遊んだよ」
「三人?」
 九藤さんと小秋ちゃんと、あと一人は誰だろうか?
「有朱だヨ!」
 突然、九藤さんの背中から飛び出してくる小柄な影。
 ニカッとしてやったりと言わんばかりに、爽快に笑う二ノ宮さんがいた。
 九藤さんが二ノ宮さんをおんぶしていたようだ。
「いつの間に仲良くなったんだい……?」
 あんなにぶっきら棒な反応だった二ノ宮さんは、ニコニコと笑って、信頼をしているように体を預けている。
 九藤さんは、俺が先程まで座っていた椅子に近づき、二ノ宮さんを座らせた。
(二人が仲が良いと安心するなぁ)
 ほのぼのと二人の姿を見ていると、瀬田がニヤニヤと不気味な笑みを浮かべながら、俺の肩を揉み出した。
 そして、耳元で囁く。
「九藤さんにあげないんですか?
 言い方に腹が立つ。
 どこがどうと説明はできないが、明らかになにかを期待している目元と口調が癪に触った。
「いででででで」
 俺が眉間にしわを寄せて黙っていると、瀬田の指に力がこもる。
「分かった! 分かったから力を緩めてくれ!」
「よろしい」
 パッと肩から手が離れる。
 何故か上から目線な口調が気になるが、聞かなかったフリをしよう。
「わたしに、何?」
 九藤さんは首を傾げていた。
 改めて彼女の顔を見ると恥ずかしい気持ちがジワジワと出てくる。
 体も少しずつ反応が現れ、緊張で強張ってきた。
 少しでも筋肉をほぐそうと、無意識に頭を指で掻く。
 どう話を切り出そうと悩んでいると、瀬田に脇腹を肘で殴られた。軽く睨まれている。
「九藤さん」
「なに?」
「御守りを……」
「御守り?」
「じれったぁぁぁぁい‼︎」
 なかなか言い出さない俺に歯痒いのか、瀬田は上を向いて叫ぶ。
「ああああもう! はい! 言います! 御守りを作ったんで貰ってください」
 腹をくくり、自棄になるように九藤さんに御守りを差し出す。まだ紐は付けていないことに気付き、すぐに引っ込めることになってしまったが。
「瀬田! 紐!」
「はいっス~」
 瀬田は持ってきた紐を俺に手渡す。
 まさか九藤さんの前で最後の仕上げをすることになるとは思わなかった。
 首からお守りを掛けることができるように紐は長い。
「ん!」
 突きつけるように、再び九藤さんの前まで手を伸ばす。
 さすがにこんな短時間での二回目になると、慙愧ざんきにたえられず彼女の目は見れなかった。
 しかも、こんな子供のような素っ気ない態度。我ながら愚かだと思う。が、何故かしっくりくる。もしかしたら、これが本来の自分自身なのかもしれない。
 なかなか受け取ってくれないことに痺れを切らし、そっと視線を動かすと、涙をポロポロと流す九藤さんがいた。
「え? そんなに嫌だった⁉︎」
 思いもよらぬ反応に慌てふためく。
 九藤さんは首を横に振り、そして泣きながら笑った。
「ありがとう。凄く嬉しい」
(嬉し涙、だったのか)
 安心した。
 悪い意味の涙ではなくて。
 しかし、彼女は受け取らない。
「ねぇ」
 涙を拭き取る。
「高島さんが首に掛けて」
 首を少し傾げると髪がさらりと流れ、細い首がチラリと見える。
(んん⁉︎)
 心臓がドキンと鳴る。
 御守りの紐を持ち、彼女の前に立つ。
 特に何の意味もない。
 筈なのだが、妙に意識してしまう。
 そっと首に掛けた。
「へへっ。ありがとう」
 彼女は屈託無く、幸せそうに笑う。
 そんな笑顔にしてあげられたことに、俺は満足だった。
 この時は心底そう思っていたのに、人間とは欲深い生き物なのだと、後に痛感した。
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みんなの感想(1件)

yuki
2019.03.02 yuki
ネタバレ含む
2019.03.02 蒼乃悠生

yuki様

ありがとうございます。
時間がかかりますが、更新していきますので宜しくお願いします。

解除

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