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【7話】
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【グレイside】
“バァンッッッ”
その音に驚いて、俺は思わず彼女を背後に隠して臨戦態勢を取ったが、入り口に居たのはローズミスト侯爵様と執事長のコルクさんだった。
ほっとして臨戦態勢を解くと、侯爵様が勢い良く詰め寄って跪いた。
「ミモザぁぁぁぁ!シーツから出てきたのだな!それに、笑ったとコルクから聞いたぞ?一体何があったんだぁぁぁ!?」
そのままの勢いで詰め寄る侯爵様に、彼女は怯えたようにシーツの端を握っている。
「侯爵様、侯爵様、勢い良すぎ。お嬢様が怯えてる。お嬢様も言いたい事ははっきりと!」
俺がそう言えば、前のめりだった侯爵様は彼女から距離を取り、狼狽したように彼女を見た。
「う、あ。すまん」
「…いいえ。驚いただけよ。お父様。何ヵ月もシーツから出てこなくてごめんなさい…」
彼女も握っていたシーツから手を離して、ちゃんと侯爵様を見て返事と謝罪をした。
よしよし。
言いたい事、ちゃんと言えたな。
2人はそのまま静かに話を始め、周りの使用人の中には涙ぐんでいる人もいた。
って、何ヵ月も簑虫だったのか…。
そりゃ、侯爵様の勢いも止まらなかっただろうし、周りの使用人達の態度も頷けるな。
さて、微笑ましい場を壊すのも何だけど、俺の採用は無いだろうから帰るかな。
「それでは、色々やりたい放題やって申し訳ありませんでした。やらかしたのは解ってるので、お咎めは俺だけにして下さい。では、失礼します」
最後にちゃんと挨拶とお辞儀をしてから出入り口に向かうと、後ろから背中に衝撃が走った。
危うくつんのめるトコだったが何とか耐えた。
振り向くと簑虫の中身が背中に張り付いていた。
「あの、ありがとう!貴方のおかげでシーツから出れたわ」
「それは貢献出来たみたいで良かったです。これからは「私、傍に居て貰うなら貴方が良いわ!お願い!」…え?」
「お父様!駄目ですか?」
背中で会話しないで欲しい。
「いや、元々そのつもりでお願いして来て貰ってるのだから、お前が良ければ「ありがとうございます!」…何か、府に落ちん」
チラッと見えた侯爵様の顔が複雑そうだ。
「グレイ様。これからよろしくお願いしますね」
「あ、傍付きの使用人なので呼び捨てと敬語は無しでお願いします。ミモザお嬢様」
彼女が俺から離れてくれたので、向き合って説明する。
勘違いしちゃいけない。
この子は、多分シーツから出るのに切っ掛けが欲しかっただけ。
その切っ掛けになった俺をシーツの代わりにしたいだけだ。
「解ったわ。でも、あのね。畏まらないでさっきみたいに喋って欲しいの。私、友達がいないから、友達が出来たみたいで…嬉しかったの」
彼女はもじもじしながらも、はっきりとした声で言った。
俺は侯爵様や周りの使用人達を見た。
全員が頷いているって事は、そうしろという事だ。
「解ったよ。これから、よろしくな“お嬢”」
俺がそうやって“お嬢”呼びをした後の彼女の笑顔は、全ての人間を魅了しそうな程可愛かった。
ヤバイ。
可愛い…。
「ええ、よろしくね!グレイ」
隣に立っている侯爵様の圧が凄い。
「ぐぬぬぬぬぬ。小僧、ミモザに選ばれたからと言って、勘違「はいはい。馬鹿な事言ってないで、素直にお嬢の笑顔を堪能して下さい。侯しゃ…旦那様」…ぬぅ。いや、ホント、ウチの子可愛いなぁ」
「…そうですね」
彼女は今まで簑虫だった事を使用人達に謝っていた。
その後、同じく採用されたシルバーと2人でお嬢を守っていく訳なんだが。
うん。
腹を括るか…。
“バァンッッッ”
その音に驚いて、俺は思わず彼女を背後に隠して臨戦態勢を取ったが、入り口に居たのはローズミスト侯爵様と執事長のコルクさんだった。
ほっとして臨戦態勢を解くと、侯爵様が勢い良く詰め寄って跪いた。
「ミモザぁぁぁぁ!シーツから出てきたのだな!それに、笑ったとコルクから聞いたぞ?一体何があったんだぁぁぁ!?」
そのままの勢いで詰め寄る侯爵様に、彼女は怯えたようにシーツの端を握っている。
「侯爵様、侯爵様、勢い良すぎ。お嬢様が怯えてる。お嬢様も言いたい事ははっきりと!」
俺がそう言えば、前のめりだった侯爵様は彼女から距離を取り、狼狽したように彼女を見た。
「う、あ。すまん」
「…いいえ。驚いただけよ。お父様。何ヵ月もシーツから出てこなくてごめんなさい…」
彼女も握っていたシーツから手を離して、ちゃんと侯爵様を見て返事と謝罪をした。
よしよし。
言いたい事、ちゃんと言えたな。
2人はそのまま静かに話を始め、周りの使用人の中には涙ぐんでいる人もいた。
って、何ヵ月も簑虫だったのか…。
そりゃ、侯爵様の勢いも止まらなかっただろうし、周りの使用人達の態度も頷けるな。
さて、微笑ましい場を壊すのも何だけど、俺の採用は無いだろうから帰るかな。
「それでは、色々やりたい放題やって申し訳ありませんでした。やらかしたのは解ってるので、お咎めは俺だけにして下さい。では、失礼します」
最後にちゃんと挨拶とお辞儀をしてから出入り口に向かうと、後ろから背中に衝撃が走った。
危うくつんのめるトコだったが何とか耐えた。
振り向くと簑虫の中身が背中に張り付いていた。
「あの、ありがとう!貴方のおかげでシーツから出れたわ」
「それは貢献出来たみたいで良かったです。これからは「私、傍に居て貰うなら貴方が良いわ!お願い!」…え?」
「お父様!駄目ですか?」
背中で会話しないで欲しい。
「いや、元々そのつもりでお願いして来て貰ってるのだから、お前が良ければ「ありがとうございます!」…何か、府に落ちん」
チラッと見えた侯爵様の顔が複雑そうだ。
「グレイ様。これからよろしくお願いしますね」
「あ、傍付きの使用人なので呼び捨てと敬語は無しでお願いします。ミモザお嬢様」
彼女が俺から離れてくれたので、向き合って説明する。
勘違いしちゃいけない。
この子は、多分シーツから出るのに切っ掛けが欲しかっただけ。
その切っ掛けになった俺をシーツの代わりにしたいだけだ。
「解ったわ。でも、あのね。畏まらないでさっきみたいに喋って欲しいの。私、友達がいないから、友達が出来たみたいで…嬉しかったの」
彼女はもじもじしながらも、はっきりとした声で言った。
俺は侯爵様や周りの使用人達を見た。
全員が頷いているって事は、そうしろという事だ。
「解ったよ。これから、よろしくな“お嬢”」
俺がそうやって“お嬢”呼びをした後の彼女の笑顔は、全ての人間を魅了しそうな程可愛かった。
ヤバイ。
可愛い…。
「ええ、よろしくね!グレイ」
隣に立っている侯爵様の圧が凄い。
「ぐぬぬぬぬぬ。小僧、ミモザに選ばれたからと言って、勘違「はいはい。馬鹿な事言ってないで、素直にお嬢の笑顔を堪能して下さい。侯しゃ…旦那様」…ぬぅ。いや、ホント、ウチの子可愛いなぁ」
「…そうですね」
彼女は今まで簑虫だった事を使用人達に謝っていた。
その後、同じく採用されたシルバーと2人でお嬢を守っていく訳なんだが。
うん。
腹を括るか…。
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