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【8話】
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とうとう15歳になった。
何十年分の1回と4年が今年から始まる。
「大変…」
「どうした?お嬢」
「お嬢様?」
そんな中で、暫くお別れになる引き籠り生活を堪能していた私の元に届いた一通の招待状。
社交界デビュー用の王家からの招待状だ。
グレイとシルバーにも届いているが、私のは少し封筒の装飾が違っていた。
そして、そこには厄介な案件が…。
「お父様は?」
「今日は王宮。定時に帰れるか解らないと、朝っぱらから叫んでたぞ」
グレイが遠い目をしながら答えてくれる。
多分、朝からお父様に愚痴を言われたのだろう。
「お母様は?」
「奥様はナイルブルー侯爵家のお茶会に出掛けましたよ」
今度はシルバーが答えてくれる。
シルバーも朝からお母様を送り届ける馬車の準備をしていたのだろう。
「ああああああああ」
今すぐ相談したいのに!
「どうした?」
私は溜め息を吐きながら招待状を見つめた。
「…招待状に書いてあるんだけれど、伯爵家以上の家の婚約者が居ない女性は第三王子の婚約者候補として選抜されるそうなの」
「病弱で表に出てこないというか、誰も見た事がない幻の第三王子ですか?」
「そう、その第三王子」
「幻ってツチノコみたいじゃんw」
グレイはツチノコと馬鹿にしてるけど、その王子がカクタス様なのよ!
曲がりなりにも選ばれてしまったら?
…絶対に嫌!!
また“ブス”と言われたら?
また、殺されかけてしまうかもしれない!
私は、怖くなっていつものようにシーツに潜ろうとすると、シルバーに止められた。
「お嬢様。今日のフィナンシェは会心の出来なので、食べてから丸まって下さい」
「…解ったわ」
シルバーはここ最近お菓子作りに精を出している。
いそいそとテーブルに用意してくれるフィナンシェは色とりどりで、色んな味が楽しめそう。
その横では魔法でお湯を暖めながら、グレイが紅茶の用意をしてくれていたので、私はおとなしくソファーに座り直した。
「ホント最悪だわ。どうしよう…」
机の隅に追いやられた招待状を見つめて思わず呟いた。
「旦那様と奥様が、お嬢に合った人を探してくれてるんだろ?まだ見つかんないのか?」
「それが、難しいらしくて…」
「王家は碌な事しませんね」
シルバーはいつもしれっと王家をディスるけど、外でそれやったら不敬罪で処刑されちゃうからね!
「本来ならデビューして、それから婚約者を探すのが普通だからな。良い物件は押さえておきたいのがみえみえだな」
グレイももうちょっと言葉を選んで!
良い物件とか言わないで!
…ん?
「で、お味はいかがです?」
話をしながら何気なく持ったフィナンシェに目を向けて、しっかりと味わう。
うん。
美味しい。
「確かに良い出来だわ。バターの風味も良いし、しっとり加減も絶妙よ。これならサハラには敵わないけど、オペラと良い勝負ね」
乳母のサハラが作るお菓子は本当に美味しい。
店を出しても行列が出来るレベルなのよね。
あれ?
私、さっき何か考えてたんだけど何だっけ?
もそもそ食べていると、今度は紅茶が目の前に置かれた。
「はー。美味しい」
手に取って一口飲むと、芳醇な香りと、お菓子に合った渋味を感じる。
実はグレイが入れる紅茶はこの家の中で、誰よりも美味しいのだ。
本人は、得意魔法が水属性だからじゃないかと言っていたけど、他の使用人で水属性の者が入れてもそこまで美味しくない。
不思議に思いながらも、美味しいお菓子と紅茶をペロリと平らげた。
2人にお礼を言ってからシーツに潜ろうとして、今度はグレイに止められた。
「お嬢。食べてすぐに転がると太るから、庭で散歩してから簑虫になりな」
「……はい」
私はおとなしく2人と一緒に庭を散歩してから簑虫になった。
結局、夕食後にお父様が帰ってきたので、お母様を交えて相談。
すると、とんでもない提案をしてくれた。
何十年分の1回と4年が今年から始まる。
「大変…」
「どうした?お嬢」
「お嬢様?」
そんな中で、暫くお別れになる引き籠り生活を堪能していた私の元に届いた一通の招待状。
社交界デビュー用の王家からの招待状だ。
グレイとシルバーにも届いているが、私のは少し封筒の装飾が違っていた。
そして、そこには厄介な案件が…。
「お父様は?」
「今日は王宮。定時に帰れるか解らないと、朝っぱらから叫んでたぞ」
グレイが遠い目をしながら答えてくれる。
多分、朝からお父様に愚痴を言われたのだろう。
「お母様は?」
「奥様はナイルブルー侯爵家のお茶会に出掛けましたよ」
今度はシルバーが答えてくれる。
シルバーも朝からお母様を送り届ける馬車の準備をしていたのだろう。
「ああああああああ」
今すぐ相談したいのに!
「どうした?」
私は溜め息を吐きながら招待状を見つめた。
「…招待状に書いてあるんだけれど、伯爵家以上の家の婚約者が居ない女性は第三王子の婚約者候補として選抜されるそうなの」
「病弱で表に出てこないというか、誰も見た事がない幻の第三王子ですか?」
「そう、その第三王子」
「幻ってツチノコみたいじゃんw」
グレイはツチノコと馬鹿にしてるけど、その王子がカクタス様なのよ!
曲がりなりにも選ばれてしまったら?
…絶対に嫌!!
また“ブス”と言われたら?
また、殺されかけてしまうかもしれない!
私は、怖くなっていつものようにシーツに潜ろうとすると、シルバーに止められた。
「お嬢様。今日のフィナンシェは会心の出来なので、食べてから丸まって下さい」
「…解ったわ」
シルバーはここ最近お菓子作りに精を出している。
いそいそとテーブルに用意してくれるフィナンシェは色とりどりで、色んな味が楽しめそう。
その横では魔法でお湯を暖めながら、グレイが紅茶の用意をしてくれていたので、私はおとなしくソファーに座り直した。
「ホント最悪だわ。どうしよう…」
机の隅に追いやられた招待状を見つめて思わず呟いた。
「旦那様と奥様が、お嬢に合った人を探してくれてるんだろ?まだ見つかんないのか?」
「それが、難しいらしくて…」
「王家は碌な事しませんね」
シルバーはいつもしれっと王家をディスるけど、外でそれやったら不敬罪で処刑されちゃうからね!
「本来ならデビューして、それから婚約者を探すのが普通だからな。良い物件は押さえておきたいのがみえみえだな」
グレイももうちょっと言葉を選んで!
良い物件とか言わないで!
…ん?
「で、お味はいかがです?」
話をしながら何気なく持ったフィナンシェに目を向けて、しっかりと味わう。
うん。
美味しい。
「確かに良い出来だわ。バターの風味も良いし、しっとり加減も絶妙よ。これならサハラには敵わないけど、オペラと良い勝負ね」
乳母のサハラが作るお菓子は本当に美味しい。
店を出しても行列が出来るレベルなのよね。
あれ?
私、さっき何か考えてたんだけど何だっけ?
もそもそ食べていると、今度は紅茶が目の前に置かれた。
「はー。美味しい」
手に取って一口飲むと、芳醇な香りと、お菓子に合った渋味を感じる。
実はグレイが入れる紅茶はこの家の中で、誰よりも美味しいのだ。
本人は、得意魔法が水属性だからじゃないかと言っていたけど、他の使用人で水属性の者が入れてもそこまで美味しくない。
不思議に思いながらも、美味しいお菓子と紅茶をペロリと平らげた。
2人にお礼を言ってからシーツに潜ろうとして、今度はグレイに止められた。
「お嬢。食べてすぐに転がると太るから、庭で散歩してから簑虫になりな」
「……はい」
私はおとなしく2人と一緒に庭を散歩してから簑虫になった。
結局、夕食後にお父様が帰ってきたので、お母様を交えて相談。
すると、とんでもない提案をしてくれた。
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