【私は乙女ゲームに似た世界に転生したけど、引き籠りたいのでさっさと離脱します】

In・san・i・ty=DoLL

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【10話】

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【カクタスside】

とても可愛い少女に一目惚れをした。

俺はカクタス・フォッグ。

フォッグ家の三男で、兄達と年が離れていたせいか我が儘に育った。

両親はその日、大事なお客が来るからと、俺に良い服を着せて大人しくしているように言った。

俺は素直に、その日の勉強が無くなったのを喜んだ。

両親の友達だというローズミスト侯爵夫妻に紹介されたのは、妖精が舞い降りたかと思うぐらいとても可愛い少女だった。

彼女の名はミモザ・ローズミスト。

同い年だったので、年齢的に俺の婚約者候補なのだろうとすぐに思った。

ピンクプラチナの髪にトパーズような瞳は、ふさふさの睫毛に縁取られてぱっちり二重。

唇はさくらんぼのように小さくて、肌は真っ白で触ったらスベスベで気持ちいいんだろう。

「はじめましてミモザです」

声も、凛としていて可愛らしい声だった。

「カクタスだ」

無愛想になったけど、何とか自己紹介をして庭を案内する。

繋いだ手に緊張し、この子が自分と夫婦になるのかと、気の早い事を考えながら、母上自慢の庭を歩いていた。

「綺麗ですね」

庭に感動したのか、ミモザが微笑んだ。

あまりの可愛さに驚いた俺は、思わず叫んだ。

「…っ。わ、笑うな!お、お前みたいなブスと結婚なんて絶対にごめんだ!」

天の邪鬼な俺は照れから、そんな言葉を叫んだらしい。

その時は焦っていて何を口走ったかなんて覚えていなかった。

握っていた手を思わず振り払って突き放した。

恥ずかしさから、背を向けた。

それまでサロンで寛いでいたお互いの両親は、真っ青になって駆け付けた。

周りにいた使用人達も慌てていた。

何をそんなにと思った瞬間、後ろでぼちゃんという音がした。

え?っと思って振り替えると、さっきまで手を繋いでいたミモザが池に沈んでいた。

近くに居た執事がすぐに飛び込んで助けたので、大事にはならなかったが、ミモザは気を失っていた。

真っ青な顔で、意識の無いまま帰っていった。

後で両親に自分が何を口走ったのか聞かされて、項垂れたのは言うまでもない。

ミモザとの婚約話は、意識を取り戻したミモザが引き付けを起こす程泣いて嫌がった為、無かった事になった。

その後、この事は屋敷の使用人がどこかで話したらしく、瞬く間に噂が広まった。

フォッグ伯爵家のカクタスは、わがままで傍若無人、気に入らないと暴力を振るい、少女でも池に突き落とす。

と。

それはミモザが引き籠ったりなんかするから、余計に真実味を帯びてしまった。

その噂のせいで、俺に合った家柄でもない家からしか婚約の打診が来なくなった。

俺は婚約者は学園に入ってから探すと言って、送られてくる婚約者候補の釣書を片っ端から送り返してもらった。

そして、まだ両親がミモザとの婚約を諦めてないみたいで、今度の社交界デビューの会場で、もう一度直接交渉すると張り切っているのを見た。

実はあれから一月毎に打診している事も知っている。

ミモザの家も婚約者を探してはいるようだけど、中々条件に合う者がいないらしく、ミモザにも婚約者はまだ居ないと教えてもらった。

ミモザがデビューしたら、あちこちから候補者の釣書が届くんだろうな。

その前に話を取り付けられたら、今度こそミモザと婚約出来るかもしれない。

8年も経ったのだ。

そろそろお互いに水に流してもいいだろう。

あの時の妖精のような可愛い少女は、きっと、可憐に美しく成長しているだろう。

俺は両親の「何としてでもミモザ嬢に了承してもらえるように手を回したから」という言葉に、内心喜んでいた。

…今度は繋いだ手を離さない。
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