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【16話】

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こんな作戦、思い付いても賭けの要素が高すぎて普通なら使えないわ。

まず、お父様が陛下に挨拶に行った時に、婚約者にしたい者が決まった旨を伝える。

まだこの時点では婚約は成立していない。

だから、フォッグ伯爵夫妻が部屋に来た時にはまだグレイは婚約者では無かった。

だから、夫妻に言った言葉は嘘ではない。

次に、陛下に婚約を認めてもらう。

お父様が馬車の中で「殺されかけた相手とは結婚させられない。娘はいまだに悪夢に魘されている。今度こそ何かあったら、例えどこかの血筋の者でも八つ裂きにしてしまうだろうし、誤って独立宣言しちゃうかも。ってぐらい脅しとくから!」と、にこやかに言っていた。

多分、本当にそのまま言ったんでしょうね。

そう言われてしまえば、陛下も私とカクタス様の婚約を諦めるしかないだろう。

ローズミスト侯爵家からの兼上品や納税がなければ、王妃様の無駄遣いで消えていく国庫予算が担えなくなるものね。

「それじゃ、第三王子殿下との婚約はどうなるんです!」

「元々ミモザ様には、第三王子殿下と婚約する予定はありませんでしたし“伯爵家以上の家の婚約者が居ない女性を集めて選抜する”という内容でしたので、現在婚約者がいるミモザ様には関係の無い話です」

淡々と話すグレイはとても頼もしい。

「それに、これだけ沢山のご令嬢が居るんですから、その中から選ばれるんじゃないですか?ミモザ様の招待状にしか書いて無かった訳でもあるまいし」

グレイがそう言った時、フォッグ伯爵夫人は真っ青になっていた。

え?

もしかして、本当に私の招待状にしか書いてなかったとか…言わないよね?

「あの、話の途中でごめんなさい。私、モーブ侯爵家の娘でレネットと申します。私もまだ婚約者が居ないのだけど、招待状にはそんな事書いてなかったの…」

第三王子とはいえ、王家と血の繋がりがある者の婚約者候補として選ばれれば泊が付き、例え婚約者になれなかったとしても、その後の婚約に有利になるから、その権利は喉から手が出る程欲しいのだろう。

どうしても気になったご令嬢が訪ねてきた。

「私も!」

「私もなかったわ」

同意するように婚約者が居ない令嬢達が騒ぎだした。

「どれだけのご令嬢を集めて選抜しようとしていたかは存じ上げませんが、ミモザ様の所に来た招待状にはそう書いてありましたよ?」

またざわざわと周りが騒ぎだした。

聞こえる声の中には「私は書いてなかったわ」とか「私のも書いてなかったわ」などと話している。

ちょっと!

本当に私の招待状にしか書いてなかったの!?

どんだけよ!

デキレースにしたって、他の令嬢も招集しなければ格好がつかないでしょう?
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