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≪本編≫
【本編41】
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【十夜side】
何もかも終わった。
ちぃに蹴り飛ばされ、馬乗りで殴られ続けた男は、駆け付けた護衛の2人にちぃから引き離されて取り押さえられ、そのまま後から来た警察に連行された。
ぐったりした意識の無い男を見て、正直、ざまぁみろって思ったし、2度と会いたくないと思った。
「ひ…で‥ぉ‥み…」
駆けつけたかったけど、体が痛みすぎて動けなかったし、声が出ない。
竜也が着ていた上着を被せて、そのまま秀臣の傍に抱えて連れていってくれる。
「ひ…で‥ぉ‥みぃ…」
「取り敢えず、気絶しているだけだよ。呼吸もちゃんとしてる。大丈夫」
先に秀臣を見ていたちぃが、秀臣の状態を教えてくれた。
首を絞められていたから最悪の想像をしたけど、ホッとした。
「うぷっ…ぎもぢ悪‥い…」
安心したからか、急に込み上げてきた。
口の中は血の味とヤツの…駄目だ、吐く。
「少し我慢しろ」
竜也は手で俺の口を押さえると風呂場に連れていってくれた。
シャワーをかけてもらいながら吐く。
口の中でされた事を思い出すだけで吐き気が込み上げてくる。
身体の中も洗いたかったが、限界を超えたらしい。
俺はそのまま意識を失った。
次に目が覚めるとそこは病院で、じぃちゃんがいた。
目が赤い。
また、泣いていたんだろう。
俺の身体は綺麗にされ、手当てが済んでいる。
8年前と違って取り乱す事は無かった。
秀臣の事は心配だったけど、怪我が直るまで俺は絶対安静と言われてしまった。
それに、秀臣は別の病院に入院してると言われたので、退院したら無事を確かめたい一心で大人しくベッドに転がっていた。
色んな検査をした。
頭を打ち付けていたから脳の検査もしたし、一番怖かった性病の検査もした。
病気も異常も無い事が解ってホッとした。
怪我が治ったら退院出来ますよと看護婦さんに言われたが、実際、怪我が直るまでに3週間以上もかかった。
うっかりな看護婦さんに秀臣は既に退院して、普通の生活を送っていると教えてもらった。
ああ。
同じ病院に居たんだな?
でも、会う事は無かった。
そういう事か…。
俺は考えて考えて考えて、一つの答えを出した。
退院の日、2人には入院中に考えていた事を話した。
「秀臣が居なかった頃の生活に戻ろう。これ以上あいつの負担にはなりたくない。ただ、現場になったマンションには戻りたくないから引っ越したい」
「それでいいのか?」
俺以上に辛そうにする竜也。
意外と竜也が一番秀臣を可愛がってたよな。
「十夜が決めたなら、構わないよ」
ちぃはそっと抱き締めてくれた。
それから、事務所のマンションに戻って来たのは辺りも暗くなる程の時間だった。
ちぃと竜也にわがままを言って1人にしてもらった。
2人は近くで飯でも食ってるから、気にせずに行ってこいと言って送り出してくれた。
俺が直接、秀臣に謝りたかったから。
エントランスで財布からカードキーを出し、オートロックを開ける。
これも返さないとな。
部屋に着く前に緊張がピークに達した。
ドアを開ける前に深呼吸する。
ガチャンという鍵の音がやたらと響く。
ドアを開ける。
誰も居ないかのように中は人気が無くて真っ暗だった。
いつも点いている玄関の簡易照明すら消えていた。
ちょっと拍子抜けした。
出迎えられるとは思っていなかったけど、部屋中が暗いなら秀臣は自宅に帰ったんだろう。
電話してから会いに行けば良かったか?
秀臣はしないと解っている。
でも、もしも、着拒されてしまったら、二度と会う決心は付けられないから…。
「…お邪魔します」
もう、ただいまとは言えない。
居ないなら2人にも来てもらえば良かった。
一応、リビングを覗く。
ここも暗い。
人が使った形跡が無いように見える。
ホッと息を吐いて洗面所も覗く。
風呂場にも…居ないか。
そこで、俺は竜也に電話を掛けようとして、まだ5分も経っていない事に気が付いた。
2人の事だから今頃どこか近くの店に入ったトコかもしれない。
ゆっくりでいいなら風呂に入ってもいいかな…。
どうしよう。
入院中は風呂に入れなかったしなぁ。
ささっと、入って、片付けといたらばれないかな?
そんな感じで軽く決断した。
風呂桶を洗い、お湯張りボタンを押して蛇口を開ける。
後は勝手に風呂が沸くのを待つだけだ。
10分もしないで入れるだろう。
着替えを取りに自分に割り当てられていた部屋に向かう。
部屋はあの日のままだった。
そうだな。
ここも片付けなきゃな。
解ってる。
元に戻るだけだ。
ガチャ
どこかの部屋のドアが開く音がして、驚いて廊下に出ると暗闇の中に秀臣が立っていた。
居たんだ…。
何もかも終わった。
ちぃに蹴り飛ばされ、馬乗りで殴られ続けた男は、駆け付けた護衛の2人にちぃから引き離されて取り押さえられ、そのまま後から来た警察に連行された。
ぐったりした意識の無い男を見て、正直、ざまぁみろって思ったし、2度と会いたくないと思った。
「ひ…で‥ぉ‥み…」
駆けつけたかったけど、体が痛みすぎて動けなかったし、声が出ない。
竜也が着ていた上着を被せて、そのまま秀臣の傍に抱えて連れていってくれる。
「ひ…で‥ぉ‥みぃ…」
「取り敢えず、気絶しているだけだよ。呼吸もちゃんとしてる。大丈夫」
先に秀臣を見ていたちぃが、秀臣の状態を教えてくれた。
首を絞められていたから最悪の想像をしたけど、ホッとした。
「うぷっ…ぎもぢ悪‥い…」
安心したからか、急に込み上げてきた。
口の中は血の味とヤツの…駄目だ、吐く。
「少し我慢しろ」
竜也は手で俺の口を押さえると風呂場に連れていってくれた。
シャワーをかけてもらいながら吐く。
口の中でされた事を思い出すだけで吐き気が込み上げてくる。
身体の中も洗いたかったが、限界を超えたらしい。
俺はそのまま意識を失った。
次に目が覚めるとそこは病院で、じぃちゃんがいた。
目が赤い。
また、泣いていたんだろう。
俺の身体は綺麗にされ、手当てが済んでいる。
8年前と違って取り乱す事は無かった。
秀臣の事は心配だったけど、怪我が直るまで俺は絶対安静と言われてしまった。
それに、秀臣は別の病院に入院してると言われたので、退院したら無事を確かめたい一心で大人しくベッドに転がっていた。
色んな検査をした。
頭を打ち付けていたから脳の検査もしたし、一番怖かった性病の検査もした。
病気も異常も無い事が解ってホッとした。
怪我が治ったら退院出来ますよと看護婦さんに言われたが、実際、怪我が直るまでに3週間以上もかかった。
うっかりな看護婦さんに秀臣は既に退院して、普通の生活を送っていると教えてもらった。
ああ。
同じ病院に居たんだな?
でも、会う事は無かった。
そういう事か…。
俺は考えて考えて考えて、一つの答えを出した。
退院の日、2人には入院中に考えていた事を話した。
「秀臣が居なかった頃の生活に戻ろう。これ以上あいつの負担にはなりたくない。ただ、現場になったマンションには戻りたくないから引っ越したい」
「それでいいのか?」
俺以上に辛そうにする竜也。
意外と竜也が一番秀臣を可愛がってたよな。
「十夜が決めたなら、構わないよ」
ちぃはそっと抱き締めてくれた。
それから、事務所のマンションに戻って来たのは辺りも暗くなる程の時間だった。
ちぃと竜也にわがままを言って1人にしてもらった。
2人は近くで飯でも食ってるから、気にせずに行ってこいと言って送り出してくれた。
俺が直接、秀臣に謝りたかったから。
エントランスで財布からカードキーを出し、オートロックを開ける。
これも返さないとな。
部屋に着く前に緊張がピークに達した。
ドアを開ける前に深呼吸する。
ガチャンという鍵の音がやたらと響く。
ドアを開ける。
誰も居ないかのように中は人気が無くて真っ暗だった。
いつも点いている玄関の簡易照明すら消えていた。
ちょっと拍子抜けした。
出迎えられるとは思っていなかったけど、部屋中が暗いなら秀臣は自宅に帰ったんだろう。
電話してから会いに行けば良かったか?
秀臣はしないと解っている。
でも、もしも、着拒されてしまったら、二度と会う決心は付けられないから…。
「…お邪魔します」
もう、ただいまとは言えない。
居ないなら2人にも来てもらえば良かった。
一応、リビングを覗く。
ここも暗い。
人が使った形跡が無いように見える。
ホッと息を吐いて洗面所も覗く。
風呂場にも…居ないか。
そこで、俺は竜也に電話を掛けようとして、まだ5分も経っていない事に気が付いた。
2人の事だから今頃どこか近くの店に入ったトコかもしれない。
ゆっくりでいいなら風呂に入ってもいいかな…。
どうしよう。
入院中は風呂に入れなかったしなぁ。
ささっと、入って、片付けといたらばれないかな?
そんな感じで軽く決断した。
風呂桶を洗い、お湯張りボタンを押して蛇口を開ける。
後は勝手に風呂が沸くのを待つだけだ。
10分もしないで入れるだろう。
着替えを取りに自分に割り当てられていた部屋に向かう。
部屋はあの日のままだった。
そうだな。
ここも片付けなきゃな。
解ってる。
元に戻るだけだ。
ガチャ
どこかの部屋のドアが開く音がして、驚いて廊下に出ると暗闇の中に秀臣が立っていた。
居たんだ…。
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