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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「私はケイト。無職になったわ」
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もう、腹が立って仕方がないわ。
今まで私がどれだけあなた達を助けたと思っているのよ!
ケイトはそんな気持ちを決して口にせず、潤んだ瞳で睨みつけていた。
「ケイト、ごめんな。でも君のためでもあるんだ」
「ケイト」と呼ばれたのは若草色のローブをまとう女性。
彼女に優しげな口調で申し訳なさそうに告げている青年は仲間であった。
青年の周りには他に三人の仲間がいる。
そのうち二人は太っている割に機敏な武術家、長身禿げ頭の戦士、一緒に旅してきた仲間だ。
そして最後の一人はケイトにとって許すことができない相手。ケイトの代わりの魔法使い。
「おい、やっぱり考え直さないか?ケイトだって頑張ってくれたし、努力もしている。
ワシたちもそれはみてきたじゃないか!才能ならそっちの魔法使いにも負けてないぞ!」
訴えかけるのは禿げ頭の戦士ナルルのみ。
「もう決まったことでやす。あっしなら超級五発は扱える。つまり上級なら二十発近いでやす。
いくら若き天才でも超級一発の使い捨て魔具みたいなのとくらべないでもらいたいでやすね」
「もう、ドグ言い過ぎ」
新しい魔法使いドグは見下す目でケイトをにらみつける。そして言い過ぎといった青年も否定はしない。
それでもナルルはさらに食い下がろうとしたが
「さよなら」
その前にケイトは一言そう告げると身をひるがえしてその場をつかつかと去ってしまった。
その背中に手を伸ばすもナルル自身ドグの言うことが間違っているわけではないことを理解していたため、その手は空を掴んで力なくおろされた。
ケイトは自身が口を開けば、有る事無い事不満やら憎まれ口やら飛び出すことはわかっていた。
険悪になりかけている大切な仲間との不本意な別れを台無しにしないための精一杯の強がりでそう言い放つ。
振り返ることなく、用もなく町を出たケイトは後ろからの視線が届かない距離になると歩幅が縮まっていく。
下を向いてトボトボ歩く情けない姿は仲間に見せたくなかった。
「わかって、るわよ」
今にも泣き出しそうになっているケイトは言い聞かせるように呟いた。
ギルドに入りダンジョンに潜りだして早三年。ケイトは十三歳にして超級魔法を扱えたため当初はチヤホヤされた。
この世界では魔法は下級から始まり中級、上級、そして超級と続く。さらに上に極級も存在するが使えるものは一握りである。
そもそも一人前の魔法使いであっても超級を一つでも扱えればかなりエリートだ。
十三歳で超級を扱えたケイトは偉大な魔法使いになると周りも信じて疑わなかった。
ケイト自身も自分が結構やるやつだと思ってたし、実際初心者だった仲間と最初の一年くらいは上手くやれていた。
(むしろ私の魔法がみんなを救ったこともたくさんある)
けれど潜るダンジョンが深くなり、高いレベルが求められていくとケイトの弱点がはっきりと出てきた。
ケイトは魔力量が周りの他の魔法を扱う者に比べて低いようで、超級魔法を一発打つと魔力切れを起こしていたからだ。
魔力切れとは身体の魔力がほぼ空になり立ちくらむ症状のことを言う。そうなるとその日は少なくとも魔力を扱うのは難しい。
なにしろ身体の危険信号なのだから。
大抵超級魔法を扱えるレベルになると魔力もそれなりに増えて、数発程度は耐えうる魔力量になるのが一般的だった。
ケイトも若さゆえその才に体がついてきていないだけと認識していた。
しかしいつまでたっても超級を放った後の魔力切れは変わらず、上級魔法でさえ三発撃つと限界だった。
そう、ケイトの魔力量はは少なかった。
一般的なまほうつかい程度はあるかもしれないが、ダンジョンに潜り、名を挙げていくには少なすぎた。
パーティーが成熟してくると、ほぼ増えなかった魔力量に比例するようにパーティに迷惑を掛けるようになった。
上級魔法を打たなければ倒せない魔物も多くなり、そうなると次第に威力の高い魔法を打つ機会というのは増えていってしまう。
そして上級魔法でさえ三発が限度だったケイトはパーティーの足を引っ張っているのはわかりきっていた。
だから中級でも威力の増加に努めて工夫するなどしたが、パーティのインフレにはついていくことができなかった。
今日までクビを言い渡されなかったのはパーティーで唯一ケイトの肩を持ってくれていた戦士のナルルがいたからだろう。
そして彼もかばい切れなくなったのだ。
悔しい。ただそれだけだった。
そんなことを悶々と思いながら進めた足は森の中にある「身投げの穴」にきていた。
別に飛び降りる気はなかったが、吸い寄せられるように足を踏み入れていく。
一人で歩くと話し相手もいないのでろくでもない思考はさらに加速する。
ケイトは昔を思い出していた。パーティー結成時は一番年下とはいえ、下級魔法を威力高く扱えたケイトは重宝され、バランスもよく楽しかった。
むしろピンチになったときに自身の上級魔法があれば大抵の困難は打開出来ていた。そんなことを思い出す自身に未練タラタラだなと更に情けなくなる。
やがて身投げの穴と呼ばれる大穴のところまで来た。落ち込んだ今見ると身投げの穴と呼ばれる理由がよく理解できるような気がしていた。
遠目からでも吸い込まれそうなほどの大穴は暗く、先がいつまでも暗いため追い込んだ気分のまま魅入られそうになる。
ケイトはふと周りに視線を配ると他の人がいた。一人の少年が穴付近に進んでいく。
(私が冒険者になった頃よりも若いんじゃないかしら。どうして子どもがいるのだろう)
そんなことを思いつつ穴をボウっと眺め続ける。
今まで私がどれだけあなた達を助けたと思っているのよ!
ケイトはそんな気持ちを決して口にせず、潤んだ瞳で睨みつけていた。
「ケイト、ごめんな。でも君のためでもあるんだ」
「ケイト」と呼ばれたのは若草色のローブをまとう女性。
彼女に優しげな口調で申し訳なさそうに告げている青年は仲間であった。
青年の周りには他に三人の仲間がいる。
そのうち二人は太っている割に機敏な武術家、長身禿げ頭の戦士、一緒に旅してきた仲間だ。
そして最後の一人はケイトにとって許すことができない相手。ケイトの代わりの魔法使い。
「おい、やっぱり考え直さないか?ケイトだって頑張ってくれたし、努力もしている。
ワシたちもそれはみてきたじゃないか!才能ならそっちの魔法使いにも負けてないぞ!」
訴えかけるのは禿げ頭の戦士ナルルのみ。
「もう決まったことでやす。あっしなら超級五発は扱える。つまり上級なら二十発近いでやす。
いくら若き天才でも超級一発の使い捨て魔具みたいなのとくらべないでもらいたいでやすね」
「もう、ドグ言い過ぎ」
新しい魔法使いドグは見下す目でケイトをにらみつける。そして言い過ぎといった青年も否定はしない。
それでもナルルはさらに食い下がろうとしたが
「さよなら」
その前にケイトは一言そう告げると身をひるがえしてその場をつかつかと去ってしまった。
その背中に手を伸ばすもナルル自身ドグの言うことが間違っているわけではないことを理解していたため、その手は空を掴んで力なくおろされた。
ケイトは自身が口を開けば、有る事無い事不満やら憎まれ口やら飛び出すことはわかっていた。
険悪になりかけている大切な仲間との不本意な別れを台無しにしないための精一杯の強がりでそう言い放つ。
振り返ることなく、用もなく町を出たケイトは後ろからの視線が届かない距離になると歩幅が縮まっていく。
下を向いてトボトボ歩く情けない姿は仲間に見せたくなかった。
「わかって、るわよ」
今にも泣き出しそうになっているケイトは言い聞かせるように呟いた。
ギルドに入りダンジョンに潜りだして早三年。ケイトは十三歳にして超級魔法を扱えたため当初はチヤホヤされた。
この世界では魔法は下級から始まり中級、上級、そして超級と続く。さらに上に極級も存在するが使えるものは一握りである。
そもそも一人前の魔法使いであっても超級を一つでも扱えればかなりエリートだ。
十三歳で超級を扱えたケイトは偉大な魔法使いになると周りも信じて疑わなかった。
ケイト自身も自分が結構やるやつだと思ってたし、実際初心者だった仲間と最初の一年くらいは上手くやれていた。
(むしろ私の魔法がみんなを救ったこともたくさんある)
けれど潜るダンジョンが深くなり、高いレベルが求められていくとケイトの弱点がはっきりと出てきた。
ケイトは魔力量が周りの他の魔法を扱う者に比べて低いようで、超級魔法を一発打つと魔力切れを起こしていたからだ。
魔力切れとは身体の魔力がほぼ空になり立ちくらむ症状のことを言う。そうなるとその日は少なくとも魔力を扱うのは難しい。
なにしろ身体の危険信号なのだから。
大抵超級魔法を扱えるレベルになると魔力もそれなりに増えて、数発程度は耐えうる魔力量になるのが一般的だった。
ケイトも若さゆえその才に体がついてきていないだけと認識していた。
しかしいつまでたっても超級を放った後の魔力切れは変わらず、上級魔法でさえ三発撃つと限界だった。
そう、ケイトの魔力量はは少なかった。
一般的なまほうつかい程度はあるかもしれないが、ダンジョンに潜り、名を挙げていくには少なすぎた。
パーティーが成熟してくると、ほぼ増えなかった魔力量に比例するようにパーティに迷惑を掛けるようになった。
上級魔法を打たなければ倒せない魔物も多くなり、そうなると次第に威力の高い魔法を打つ機会というのは増えていってしまう。
そして上級魔法でさえ三発が限度だったケイトはパーティーの足を引っ張っているのはわかりきっていた。
だから中級でも威力の増加に努めて工夫するなどしたが、パーティのインフレにはついていくことができなかった。
今日までクビを言い渡されなかったのはパーティーで唯一ケイトの肩を持ってくれていた戦士のナルルがいたからだろう。
そして彼もかばい切れなくなったのだ。
悔しい。ただそれだけだった。
そんなことを悶々と思いながら進めた足は森の中にある「身投げの穴」にきていた。
別に飛び降りる気はなかったが、吸い寄せられるように足を踏み入れていく。
一人で歩くと話し相手もいないのでろくでもない思考はさらに加速する。
ケイトは昔を思い出していた。パーティー結成時は一番年下とはいえ、下級魔法を威力高く扱えたケイトは重宝され、バランスもよく楽しかった。
むしろピンチになったときに自身の上級魔法があれば大抵の困難は打開出来ていた。そんなことを思い出す自身に未練タラタラだなと更に情けなくなる。
やがて身投げの穴と呼ばれる大穴のところまで来た。落ち込んだ今見ると身投げの穴と呼ばれる理由がよく理解できるような気がしていた。
遠目からでも吸い込まれそうなほどの大穴は暗く、先がいつまでも暗いため追い込んだ気分のまま魅入られそうになる。
ケイトはふと周りに視線を配ると他の人がいた。一人の少年が穴付近に進んでいく。
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