【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

文字の大きさ
20 / 117
第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「手をつなぐだけでドキドキですけど」

しおりを挟む
「ひ、ひぃぃい!ケイト、謝って!そんなこと言っちゃダメだ!お、おれたち、ご飯を食べに来て、それで看板があまりにすごいから見惚れてました、すみません!お願いだから食べないでください!」

もはや涙目で必死に訴えるロット。相手がトロルにでも見えているかのごとく、ものすごく失礼なことを言った。

「看板がぁすごいだぁ?」

本人はただ普通に言っているだけなのだが、怯えるロットからはかなり威圧的に聞こえる。

そしてただケイトからロットに視線を移しただけなのに睨みを利かせながら自身をみられた気がしていた。

恐怖というものは事実を捻じ曲げやすく、実のところ男はただ看板を褒められて、喜んで振り向いただけだ。

ロットからは身体からオーラのようなものを放ちながら近づいてくる恐怖そのものにしか見えてはいない。

そして目が悪いので顔をよく見ようと近づけた、ロットから見ると強面の相手がガンつけながら触れるほどの距離に迫った。

「はぅっ……」

恐怖の限界を迎えたロットは、情けない声とともに蛇に睨まれたカエルさながらフルフルと震えながら立ち尽くしている。目には涙さえみえる。

「おまえ!!」

無駄にでかい声が更にロットを追い詰めている。

「ひぃぃい。すみません、すみません、すみません、すみません!」

もうすっかり脅えてしまっているロットは、うさぎみたいに震えていて、なんだかかわいいとケイトは思った。

男に関してはニヤリと強面の笑顔を見せ、

「センスあるじゃねぇか!」

と大きな手でロットの頭をグワシグワシと撫でた。

「……ぇ?」

最悪殴られることさえ覚悟して目を瞑っていたロットは真逆のような対応に、どこから出したのかか細い声が少しだけ漏れ出て、あっけにとられている。

そうとは知らず、強面の男はご機嫌で身振りを加えながら話しだした。

「本物のパンにこだわったこの曲線、そして魂のこもった色使い、来た奴に与えるインパクトどれをとってもいいよなぁ!」

「はい!」

突如看板をほめて恍惚とする男に同意を求められたロットは、否定するとやられるとでも思っているのか、背筋を伸ばして返事した。

それははたから見ると訓練兵と身体に似合わないエプロンをした鬼軍曹に見えなくもなかった。

そんな二人が褒め合う看板を見てケイトは呆れる。
ケイトからすればただのでかいパンの模型にしか見えないが、わざわざ言わない。

「あの看板の良さに気づくたぁ、お前大物になるぜぇ。ほれ、んなとこ突っ立ってないで、中で注文しな!とっておきの飯を作ってやるからよ」

「は、はいぃぃいい!」

笑うのは可哀想だから我慢していたケイトだが、男に肩を抱かれまるで首根っこ掴まれたウサギのように大人しく店に入っていくロットに

「くふっ」

思わずそんな声を漏らした。

実を言うとケイトはこの男と知り合いであり、仲介に入ってやればこんなことにはならなかった。

しかし喜ぶ男と震えるロットがなんだか面白くて、店の中に入ってもしばらくそのまま眺めることにした。

そしてひとしきり怯えるロットを堪能してから目の前の大男はカンと言い、この町一番の料理やであり、前のパーティーの時にご飯を食べに来ていたから顔見知りであることを告げた。 

誤解が解けてなお、カンという男に苦手意識が芽生えたのかロットは小さくなってサラダをうさぎのようにモソモソと食べる。

「くふふっ」

「もう、ケイト、ひどいじゃないか!」

そしてケイトの思い出し笑いを引き金に、ロットが不満を漏らす。

「ごめんごめん、ちょっと助けるタイミングを見失っちゃってね」

ちょっとした嘘を交えつつ答えたが半笑いで効果はない。ロットは不貞腐れてそっぽを向いている。

「それにロットがあんなに怖がるとは思ってなかったのよ」

これは本当のこと。ダンジョンでは数メートルの三つ目の巨体にも怯まず立ち向かっていた彼が、わずか二メートルもないおやじにあそこまでビビるとは、予想外だったのだ。

「おい坊主!機嫌直せや、ほれ、看板パンだ!」

ロットが怖がっていたことを知ったカンは、これでもかとばかりに大きなパンを持ってきた。

巨大なパンが、彼の手によって運ばれてくる。

するとロットの目が一瞬で輝き、まるで子どもがクリスマスプレゼントを見たときのようになった。

「本当に看板の通りだ!いただきます……う、うまい!」

豪快にかじりつき感想を言った。

「だろ坊主!うちの看板パンは最高だろう」

食欲は恐怖を忘れ去ったようで、合間に頷きつつもパンにかじりつくのを忘れない。カンが自賛し、ロットが同意する。そんなやり取りを何度かしたあと

「……しかしなんで注文が入んねぇんだ?」

とカンは呟き首を傾げた。

そんなカンの疑問に、でかすぎるからよ。と一人ツッコミを入れながらケイトは一般的な大きさのパンを食べていた。

普通のパンの何十倍もあるこの巨大なパンに対し、ロットは臆せずに夢中になって食べている。その姿は、勇敢な冒険者というよりも、両頬にパンを詰め込むかわいらしい子どもそのものだった。

「「ごちそうさまでした」」

そして食事を終えた二人は、手を合わせて感謝の意を示した。

「ロット、あなたよく全部食べたわね」

ケイトは若干引きつつ、ロットのきれいになった大皿を眺める。満腹のロットを見ながら、カンも嬉しそうに大皿を下げた。

「ロットぉ、ますます気に入ったぞ!お前にはこの『満腹バッジ』をやろう。魔力で加工した特殊なものだぞ!」

「カンさん、ありがとうございます!」

すっかり仲良くなった二人は名前で呼び合い、カンからバッジを受け取っていた。それを大事そうに懐にしまい込むロットの姿にケイトは微笑ましいと思いつつもゴミにしか思えないそれを見つめた。

欲しがっていると勘違いしたロットを軽くあしらっていると皿を下げて他に客もいないので暇になったカンが席に戻ってきた。

「ところでケイト、あんたパーティをく……抜けたって聞いたけど、この坊主が新しいパーティーっちゅうんじゃねえだろうな??」

クビという発言が出る前にすさまじい速度でにらまれたカンは言い直した。ケイトが再びパーティを結成するつもりでいることに気づいているようだった。

ケイトは今回の魔力の検証が上手くいった場合、ロットにパーティの申し込みをしようと考えている。それはロットにも話していないことだったが、自分の弱点を補える魔道具の所有はケイトとロットの二人にあったので自然とそういう考えに至った。

「ええ、まだ申し込む前だけど考えてはいるわ」

特に隠すこともなかったので、ケイトは正直に答えた。カンは信頼できる人の一人だから、誠実に話したのだ。

「そうか、それなら良かった。パーティ抜けてフラフラ町を出てったって聞いて、身投げでもするんじゃないかって心配してたんだ」

「そそそそんなわけないじゃない」

身投げの穴まで行ったとは口が裂けても言えなかった。

「あの、パーティって?」

ロットは何のことか分からずに首をかしげる。

パーティというのは、ダンジョンなど死ぬかもしれない場所に一緒に行く仲間のことを言う。ケイトもその覚悟で誘うつもりだった。

ロットの指輪の力は絶対に手放したくないものの、効果などを調べた上で譲ってもらうか、パーティーに誘うつもりだったのだ。カンのせいで予定が狂いそうになる。そのことにケイトは乙女とは思えない形相でカンを射抜く。

「まあ、そんなことより美味しいメシを食ったんだし、依頼でもこなしていけ!」

そしてカンの強引な提案に話題が変わる。

「いいじゃない、詳細をお願い」

パーティーについて答える気がなさそうなケイトに、仕方なくロットも依頼の話へと耳を傾けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

処理中です...