【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「俺には刺激が強すぎます」

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「ひぃぃぃいゃああああ!!!」

粘液獣に飛びつかれた瞬間、全身に走った恐怖と悪寒。ねっとりとした粘液が、肌から魔力を吸い出すために、じわじわと侵入してくる感覚に身の毛もよだつ。

ケイトはその不快感から叫び声を上げるが、粘液獣の恐ろしさはここからであった。

この魔物たちはその粘液に毒があり、粘体獣であれば吸われている感覚が薄くなり、気づきにくくなる程度のものだが、粘液獣のそれは比ではない。

全力で拒絶したいこの不快感に、半狂乱になる獲物は必死に払おうとする。しかしそれでも粘液は手や足など、どんどん範囲を広げていく。

そしてその毒はいよいよ効果を発揮する。

「ぁっ……」

ケイトも例外なくやられ、頭がふわつくような感覚に襲われた。大人であれば酩酊状態に似ていることが自覚できたかもしれないが、ケイトは酒を飲んだことはなかった。

それが更にこの毒への耐性のなさにつながる。

(なんだか気持ちいい。つつまれている粘液が生温かく、頭が軽くなっていく。もうこのまま、すべてを任せたい。)

そんな気分に陥り、ほほは赤く染まり、表情もだらしなくなっていく。ケイトも身体の魔力が吸われているのがわかるが、力が抜けてしまい、すでに四分の一ほど吸われた。

「あぇ?ち、ちからがはいんあい……」

身をゆだねてしまいたい感覚に呂律もすでに回っていない。その異常さにロットも慌てる。

「ケイト!」

必死に声を掛けて抜き出そうとする。粘液獣自体は殺傷能力があるわけでも力が強いわけでもないのが幸いだった。

本人もまだ知らないが、ロットは飲んでもあまり酔わない体質であったことがこうじて、顔ごと粘液に突っ込んでもその毒牙にかかることはなかった。

そうして、くてんとなっているケイトをどうにか引っ張り出すとそのままお姫様抱っこの要領で抱えて粘液獣から距離をとった。

「ぁあ、ロット、えへへぇ」

気が付いたケイトはすっかり酔っ払いのように出来上がっている。互いの体についた粘液も気にせず、抱きかかえるロットへ自分からも抱擁しにいく。

「け、ケイトしっかり!」

その何とも言えない感触にロットは顔を真っ赤にして必死な面持ちで冷静を保った。そしてあのダンジョンのときと同じような形であることに気が付いて、ケイトのの魔力が莫大に増えていくのではと思い当たる。

「ケイト!魔力はどお?もし増えてるなら三つ目の巨人みたいにふっとばしちゃってよ!」

ロットの呼びかけに、少し我を取り戻したケイトは魔力の万能感により酔いが少しマシになる。正気とは程遠かったが自分のやるべきことを思い出したケイトは自身の記憶をさかのぼった。

ケイトは一度、粘体獣の倒し方をギルドの先輩に見せてもらったことがあった。魔法を使う要領で、魔力を粘体獣が吸っている部分に集中させる。

すると、急に大量の魔力を吸った粘体獣は、満腹になって破裂してしまう。この要領で今ある膨大な魔力を込めれば破裂までとはいかないまでも引きはがすことは可能かもしれないと思いつく。

どちらにせよ餌として魔力を吸うので満足すれば離れることは明白だった。

ケイトは全身に回る粘液のせいで、集中はかなりしづらかったが、有り余る魔力を存分に全身に行き渡らせるイメージをする。

魔法はその過程で魔力を火や水に変換するのが普通だが、今回は魔力をそのまま身体中に巡らせる。初めての試みではあったが、ケイトの魔力操作の才は自身が思っている以上に飛びぬけている。

効果はすぐに現れた。

「プギィァ」

小さく破裂するような音とともに、そんな声が聞こえた。魔力を吸いすぎた一部分が破裂したのだ。ケイトがさらに魔力を込めていくと、粘液獣の身体が水を入れられているように、みるみる膨らんでいく。

ケイトやロットの服の間から、膨らんだ粘液獣が溢れ、破裂する。

何度も破裂音が聞こえると、次第に鳴き声は消え去っていった。そのまま逃げられれば厄介だったが、魔力は粘液獣としての本能をくすぐるようで、自ら魔力に触れてははじけていく。

そして最後の粘液が核ごとぱちんと弾け、蒸発するように消えていった。

ケイトの身体を覆っていた快感、もとい、ねっとりとした不快感はなくなり、全身の脱力感も抜け落ちていった。それと同時に酩酊感もきれいさっぱりなくなる。

「なんとかなったわね」

乱れた服や髪を整えながらケイトが言った。

「よ、良かったぁ」

そっとおろしながらロットもへなへなと座り込んで安堵した。

ケイトの感覚としては粘液獣は、魔力も超級魔法十発分くらいは吸って破裂していた。それでも感覚的には有り余っていた指輪の魔力の凄まじさに驚いていた。

そしてもしこの魔力なく粘液獣に襲われていたら、並のパーティでは壊滅させられていたことを思うとぞっとした。

「とにかく。ロット、助けてくれてありがとう。助かったわ。でも魔力はまだたくさん残ってるし、さすがに粘体獣でさえ珍しいのに粘液獣なんてもういないはずだからこのまま断崖に向かいましょう」

ロットはその場にへたり込んだままだった。確かにピンチではあったが、ダンジョンのときほどではなかった。それでも、命をかけた戦闘はロットにとって慣れてないから、気をすり減らしたんだろうか。

ケイトはそんな風に受け取った。

「ほらロット、手を貸すわ」

ケイトが微笑んで手を差し伸べるもロットはなぜが動かない。

「い、いいよ。今は」

様子がおかしいロットの気持ちはケイトにはわからなかった。

「何言ってるの?早く行きましょう」

「だだだ、大丈夫です!すすすこし休憩したらお願い待って!」

謎の液体で全身が濡れた女性が頬を染めながら抱きしめてきたのだ。男性なら理解できよう。

前かがみに座るロットは、しばらくそのままで、五分ほどしてようやく立ち上がった
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