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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「極魔法~風の王者ハリケーン~」
しおりを挟むロットが動けるようになると、妙な距離をあけながらしばらく歩き、そして断崖の下にたどり着いた。断崖の下は、広々とした開けた場所で、町からも離れている。
大きな音を立てても気にする必要がなく、全力で魔法を放てる環境にケイトは思わず舌なめずりをする。
「この広さなら十分だね」
ロットも気に入ったらしく、剣を抜いて軽やかな剣舞を披露した。本人としては少し格好をつけたつもりでもあったが、ケイトの元パーティーには数倍強い剣士がいたので見劣りしてほほえましい程度の感情しかわかなかったが。
「さあ、ロット、検証を始めましょう!」
ケイトの言葉に反応して、ロットは肩を震わせながら剣を止めた。
「まずは、どこからが魔力を受け渡す範囲なのか確かめましょう」
そんなことはお構いなくケイトは進める。お姫様抱っこだけが発動条件ではないと考えていた。密着することが条件であると考えられるけれど、その範囲がどこまでなのか、どのくらいで効果があるのか、知りたいことは山とあった。
「そうですね…またお姫様抱っこですか?」
ロットは少し恥ずかしそうに目をそらしながら言った。というかお姫様抱っこが恥ずかしいのだ。
ケイトは今更恥ずかしがることに疑問を抱きつつも、それで発動するのは確認済みだから、違うパターンを試してみたいと思ってた。
「ハグとかどうかしら?」
「ぶっ!」
だから何気なく、お姫様抱っこと同じくらいの接地面積だけど、触れ合う部分が違う方法を提案する。しかしロットは己の胸の高鳴りの許容をはるかに超えた内容に必死に説得し、最終的には手をつなぐことになった。
「じゃあ、いくわよ」
「はい」
ケイトがそっと手をつかむと、剣を振ってできた豆がある。子どもだと思っていたけれど、手は結構硬くしっかりしているな、そんなことをのんきに考えながら肝心な魔力を待つ。
「……きたわ!」
少し抱きかかえてもらったときより遅かったが、魔力が確実に増えていくのが実感できた。
「次は、肩に手を置いてみて?」
今度はロットに服越しに肩に手を置いてもらう。先ほどよりもさらにゆっくりと魔力が増加するのがわかる。
「増えたけど、かなりゆっくりね。服がいけないのかしら?」
「肌が触れ合っていた方がいいてこと?」
ロットは言ってしまってからそのあとを想像してほほが染まる。
「きっとそうね!なんあら最短を調べるために裸で抱き合ってみる?」
「え?!?な、は!?」
そして予想より過激な提案に慌てるロット。もちろんケイトは冗談のつもりだったが思春期の男の子が受け止められるわけもなく耳まで真っ赤にしている。
「冗談よ冗談……って、なんで屈むのよ」
「き、休憩。少し」
その後もいろいろと試してみた結果をケイトがまとめる。
「どうやら指輪の効果は、接地面積が多ければ多いほど魔力の伝達が速くなるわね。そして、肌同士の方が効果的と。
服と服では時間がかかるけど、それでも時間をかければ魔力増加は可能。面白いことに、私たちが離れても十秒ほどは私の魔力が増加されたままなの。
その後は距離に関係なく一気に失われ、二十秒も経てば私の魔力は元通りになった。逆に言うとつまり、離れて十秒は私も超魔力を一人で扱える。とはいえ、その状態で魔力を消費すると、やはりロットの魔力が少し減ってしまうようだから注意が必要ね」
そうやって分かったことを改めて話し、ロットもそれを聞いて自分の考えと照らし合わせていった。
「じゃあ、この形が一番いいわね」
「うん、俺もそれが一番助かる」
最終的には、手を繋ぐことが魔力増加をもたらすこの指輪を使用するのに一番効果的だという結論に至った。
最初は、ロットにおんぶしてもらうと魔力増加も速く、移動もケイトが楽だと伝えたら、それはやめてくれと懇願され、この形に落ち着いた。
魔力増加の時間だが、試せた最高率で約二十秒の時間があれば最大の量が増加される。そして反対に指一本で服越しだと10分で1割程度だったので、最大で2時間くらいかかるだろう。
結局、裸で抱き合えば接地面積からも1秒以内で増加できるかもしれないという考えも二人に浮かんだが、そこまでになるとお互い恥ずかしいし、戦闘どころではないので試すことはなかった。
ここまでわかったところでかなりの時間は過ぎていたがケイトは最後にロットに付き合ってもらうことにした。手をつなぎ、魔力を増加させる。同時に、右手を前に突き出し魔力変換を始めた。
辺りはすでにケイトが放った超級魔法によって、訪れたときよりも開放感が増す空間へと変質している。そこにさらにもう一発魔法を打ち込もうとしている。
「ロット、私、魔力さえあればってずっと思ってた。そして、あなたのおかげで魔力が一時的にとはいえ使えることになった。
感謝してるわ。今から撃つ魔法は、まほうつかいの最高峰ともいわれる極魔法よ。あこがれのお師匠から教わって今日までイメージはたっぷりしてきたわ。うまくいくかわからないけど、見ててね」
そういうとさらに集中を高める。魔力が風に変わっていく。その量は超級魔法と比べても多く、繊細だ。ケイトは気を抜けば手から逃れて飛び出してしまいそうな風の魔力を必死で手の先に留める。
やがて、超級魔法発五発分ほどの魔力を風に変換し、手の先に留めきった。手の先の魔力の塊はまるで小さな台風のようで、今にも暴れ出しそうだ。
「極魔法、風の王者!」
「うわっ!」
手から放たれた風の王者は、その瞬間から凄まじい風を四方に振りまく。ロットが思わず呻くが、放たれた魔法は猛烈な勢いで膨れ上がり、目の前の森を蹂躙した。まさに風の王者と呼ぶにふさわしく、その魔法が通った先は整地されたように平らな道が出来上がっていた。
「す、すごい……」
「本当にすごい、威力だわ」
ロットも、撃った本人であるケイトも驚くほどの威力だった。
こうして魔力の検証を終えたケイトたちは、帰り道を歩いていた。
「でも本当に凄かったね」
ロットが感激のあまり、ずっと興奮気味で話しかけている。ケイトはというと、悩んでいた。
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