24 / 117
第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「たってるから座るんです。ほっといてください」
しおりを挟む
悩みとは、パーティーについて。
ケイトはロットをパーティーに誘う、または入れてもらうつもりでいた。それは身投げの穴で獲得した指輪が理由である。
しかし、よくよく考えてみるとそれはケイトの都合であって、ロットや、ましてや訳ありで妹を連れ、勇者とともに旅をしているロットを自分の都合だけで誘っていいものかと悩んでいたのだ。
「そういえば、ロットはどうして勇者様と一緒にいるの?」
そんな考えを巡らせていると、ロットに旅の理由をまだ何も聞いていないことに気が付いた。
「え? ああ、言ってなかったっけ?」
ロットは何でもないことのようにソイルの病気のこと、寿命のことをケイトに伝える。
「つまり、これからソイルちゃんを救うために勇者様の旅についていくのね?」
「うん。俺、絶対にソイルを助けたいんだ。元気に遊び回れるようにしてあげたいんだよ」
ロットの優しい笑顔と、ソイルを救いたいという純粋な気持ちにケイトの中でやがて決心が固まる。
指輪をはずし、名残惜しそうに一度握り締めてから
「ロット、……これ、あげるわ」
ロットに差し出した。
「どうして?」
「魔力種ってたくさんの魔力が必要なんでしょ?ならこの指輪をソイルちゃんにあげれば病気は乗り越えやすくなるはずでしょ?」
一時とはいえ膨大な魔力を扱う経験が出来、一生使うことはないと思っていた極魔法を使用することが出来た。
それだけでもかなり幸せであり、ずっと持っている分にはロットのような本当に必要としている人が持つべき魔道具である。そんな風に自分に言い聞かせていた。
「……ケイトは一緒に旅してくれないの?」
だからケイトはロットの寂しそうなつぶやきに驚かされる。一緒に行くことなんて考えていなかったから。
身投げの穴からこの町までは成り行きで一緒にいただけであり、自分にはそんな資格はないとも考えていた。そもそも勇者のパーティーに入るという発想は普通の冒険者には生まれないくらい偉大な存在でもあった。
「一緒に行ってもいいの? 勇者様に迷惑じゃない?」
「うーん、勇者様の考えはまだわからないけど、多分大丈夫だと思うよ」
根拠はなさそうな、その一言にケイトは勇気づけられた。せっかくのチャンス、こんなところでお利口にならず、すがれるところは全力ですがるべきだと考えた。
ロットの旅もとても大事だけど、自分の夢も決してないがしろにしていいわけがない。叶えられるチャンスがあるならやって後悔しよう、そう思ったのだった。
町に戻りケイト達は満腹亭で粘液獣について報告した。カンは驚きながらも、追加の報酬まで渡し、二人には無理やり相応の銀貨が支払われた。
そして、勇者が待つ宿屋に戻ると、今日わかった指輪についての話や極魔法の話をケイトから伝える。そして最後に意を決したように
「わ、わたし魔力は少ないですがロットと一緒なら戦えます!冒険者としても活動していたので旅で足を引っ張ることもないと思います。
もちろん身の丈に合わない場所にはついていかないと約束します。なので、ロットとソイルちゃん、そして勇者様の旅についていかせてください!」
と一息に言い切った。途中呼吸も忘れていたので大きく息を吸って整える。そして目をつむり、どんな返答が来てもしっかり受け入れて諦めが付けられるよう待った。
ケイトにとってとても長い時間に感じられ、しばらくしてからケイトの耳にロットの声が入る。
「俺からもお願いします。ケイトは魔力を使うのがとても上手で、さっきも初めての極魔法を成功させてきたんです。俺一人よりケイトがいたほうが何倍も戦力が上がります!」
実際は間髪をほとんど入れずにロットが続けたため勇者はただ聞くだけになっていた。この状況に少し笑みを浮かべて、勇者はあえて間を溜める。
それは二人の頭を下げる必死な姿がいじらしく、もう少し見ていたいというイタズラ心だったがもちろん二人は気が付かず重い空気を背負って待つ。
ソイルだけが少し離れて蚊帳の外だなあといじけつつも勇者の意地悪にほほを膨らませてその後の展開を見守っていた。
「……へぇ、極魔法を一発で? それはすごいね。まあ、戦力については僕一人で十分だから、そこは関係ないとして……ケイトちゃん」
ロットの援護むなしく戦力については否定され、名前を呼ばれたケイトはいよいよ胸がきゅっとなる。
「は、はい」
「僕は料理にはうるさくて、野宿でもそれなりの料理を求めるけど、大丈夫かい?」
「え?」
言っている意味を理解するまで数秒呆けるケイトよりさきにロットが顔を上げて口をほころばせながらケイトを見た。
「やった! ケイト、よかった!」
「……ありがとうございます! ロットもありがとう!」
そこでようやく回路が繋がったようにケイトも喜び、嬉しさのあまりロットに思いっきり抱きついた。
もはやパーティを外された悔しさや腹立たしさはすっかり消え、これからの旅が楽しみで仕方がないケイトであった。
その後長めの抱擁からロットを開放すると、ケイトはソイルにもこれからよろしくと声を掛ける。
勇者は、ケイトとならば少しずつ会話が出来るようになってきたソイルに感心しつつも自身はまだそこまで受け入れられていないので距離を保ったまま立っている。そして先ほどからしゃがんで立ち上がろうとしないロットに、意味も分かったうえで
「ところでロット、どうして座り込んでるの? お腹でも痛いの?」
イヤらしい笑みをのせてそういった。
「ほ、ほっといてぇぇえ!」
ケイトはロットをパーティーに誘う、または入れてもらうつもりでいた。それは身投げの穴で獲得した指輪が理由である。
しかし、よくよく考えてみるとそれはケイトの都合であって、ロットや、ましてや訳ありで妹を連れ、勇者とともに旅をしているロットを自分の都合だけで誘っていいものかと悩んでいたのだ。
「そういえば、ロットはどうして勇者様と一緒にいるの?」
そんな考えを巡らせていると、ロットに旅の理由をまだ何も聞いていないことに気が付いた。
「え? ああ、言ってなかったっけ?」
ロットは何でもないことのようにソイルの病気のこと、寿命のことをケイトに伝える。
「つまり、これからソイルちゃんを救うために勇者様の旅についていくのね?」
「うん。俺、絶対にソイルを助けたいんだ。元気に遊び回れるようにしてあげたいんだよ」
ロットの優しい笑顔と、ソイルを救いたいという純粋な気持ちにケイトの中でやがて決心が固まる。
指輪をはずし、名残惜しそうに一度握り締めてから
「ロット、……これ、あげるわ」
ロットに差し出した。
「どうして?」
「魔力種ってたくさんの魔力が必要なんでしょ?ならこの指輪をソイルちゃんにあげれば病気は乗り越えやすくなるはずでしょ?」
一時とはいえ膨大な魔力を扱う経験が出来、一生使うことはないと思っていた極魔法を使用することが出来た。
それだけでもかなり幸せであり、ずっと持っている分にはロットのような本当に必要としている人が持つべき魔道具である。そんな風に自分に言い聞かせていた。
「……ケイトは一緒に旅してくれないの?」
だからケイトはロットの寂しそうなつぶやきに驚かされる。一緒に行くことなんて考えていなかったから。
身投げの穴からこの町までは成り行きで一緒にいただけであり、自分にはそんな資格はないとも考えていた。そもそも勇者のパーティーに入るという発想は普通の冒険者には生まれないくらい偉大な存在でもあった。
「一緒に行ってもいいの? 勇者様に迷惑じゃない?」
「うーん、勇者様の考えはまだわからないけど、多分大丈夫だと思うよ」
根拠はなさそうな、その一言にケイトは勇気づけられた。せっかくのチャンス、こんなところでお利口にならず、すがれるところは全力ですがるべきだと考えた。
ロットの旅もとても大事だけど、自分の夢も決してないがしろにしていいわけがない。叶えられるチャンスがあるならやって後悔しよう、そう思ったのだった。
町に戻りケイト達は満腹亭で粘液獣について報告した。カンは驚きながらも、追加の報酬まで渡し、二人には無理やり相応の銀貨が支払われた。
そして、勇者が待つ宿屋に戻ると、今日わかった指輪についての話や極魔法の話をケイトから伝える。そして最後に意を決したように
「わ、わたし魔力は少ないですがロットと一緒なら戦えます!冒険者としても活動していたので旅で足を引っ張ることもないと思います。
もちろん身の丈に合わない場所にはついていかないと約束します。なので、ロットとソイルちゃん、そして勇者様の旅についていかせてください!」
と一息に言い切った。途中呼吸も忘れていたので大きく息を吸って整える。そして目をつむり、どんな返答が来てもしっかり受け入れて諦めが付けられるよう待った。
ケイトにとってとても長い時間に感じられ、しばらくしてからケイトの耳にロットの声が入る。
「俺からもお願いします。ケイトは魔力を使うのがとても上手で、さっきも初めての極魔法を成功させてきたんです。俺一人よりケイトがいたほうが何倍も戦力が上がります!」
実際は間髪をほとんど入れずにロットが続けたため勇者はただ聞くだけになっていた。この状況に少し笑みを浮かべて、勇者はあえて間を溜める。
それは二人の頭を下げる必死な姿がいじらしく、もう少し見ていたいというイタズラ心だったがもちろん二人は気が付かず重い空気を背負って待つ。
ソイルだけが少し離れて蚊帳の外だなあといじけつつも勇者の意地悪にほほを膨らませてその後の展開を見守っていた。
「……へぇ、極魔法を一発で? それはすごいね。まあ、戦力については僕一人で十分だから、そこは関係ないとして……ケイトちゃん」
ロットの援護むなしく戦力については否定され、名前を呼ばれたケイトはいよいよ胸がきゅっとなる。
「は、はい」
「僕は料理にはうるさくて、野宿でもそれなりの料理を求めるけど、大丈夫かい?」
「え?」
言っている意味を理解するまで数秒呆けるケイトよりさきにロットが顔を上げて口をほころばせながらケイトを見た。
「やった! ケイト、よかった!」
「……ありがとうございます! ロットもありがとう!」
そこでようやく回路が繋がったようにケイトも喜び、嬉しさのあまりロットに思いっきり抱きついた。
もはやパーティを外された悔しさや腹立たしさはすっかり消え、これからの旅が楽しみで仕方がないケイトであった。
その後長めの抱擁からロットを開放すると、ケイトはソイルにもこれからよろしくと声を掛ける。
勇者は、ケイトとならば少しずつ会話が出来るようになってきたソイルに感心しつつも自身はまだそこまで受け入れられていないので距離を保ったまま立っている。そして先ほどからしゃがんで立ち上がろうとしないロットに、意味も分かったうえで
「ところでロット、どうして座り込んでるの? お腹でも痛いの?」
イヤらしい笑みをのせてそういった。
「ほ、ほっといてぇぇえ!」
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!
たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。
新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。
※※※※※
1億年の試練。
そして、神をもしのぐ力。
それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。
すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。
だが、もはや生きることに飽きていた。
『違う選択肢もあるぞ?』
創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、
その“策略”にまんまと引っかかる。
――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。
確かに神は嘘をついていない。
けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!!
そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、
神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。
記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。
それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。
だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。
くどいようだが、俺の望みはスローライフ。
……のはずだったのに。
呪いのような“女難の相”が炸裂し、
気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。
どうしてこうなった!?
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる