【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「水がないと人はすぐ駄目になるよ」

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少し時間をさかのぼり五日前、ロットとケイトはソイルを残してシカァの街を後にしていた。

向かったのはもちろん東の洞窟。街を出てひたすら東に森を進み、しばらくすると出てくる洞窟、そこが東の洞窟である。

洞窟の前までは一日程度で到着した。そしてケイトの見掛けでは洞窟を一日も探索すれば抜け出せてトワのところへたどり着き、そして帰宅や少し余裕を持ったとして一週間の旅の準備をしていた。

そのため余裕をもって洞窟へと侵入を開始する。

ロットが自身の実力も鍛えたいという訴えから、戦闘ではロットの剣中心に立ち回った。

ロットでは遅れを取ると心配していたケイトだったが、洞窟に入ってからも魔物は強くなったもののケイトのフォローもあって対等以上に戦えていた。

そのおかげで旅は順調そのものであり、ケイトも油断はしないもののロットの戦闘に関しては任せつつあった。

しかし人の仕事は信用するなとはよく言ったもので、ロットが度重なる戦闘でみるみる自信をつけて余裕をもって戦闘していることに気が付かなかった。

そしてとうとう何度目かの魔物との対峙で事件は起こる。相手は漆黒の、毛並みがまるで夜の闇をそのまままとったかのように黒い魔物だった。

厚い毛皮は鎧のようにしっかりとしており、目は鋭く、琥珀色に輝いていた。それが更に不気味さを増し、二人のたいまつに照らされて見える大きな鼻はわずかに動き、周囲の匂いを敏感に嗅ぎ取っていた。

そして二人を敵として認識したのか後ろ脚で立ち上がり、洞窟の天井一杯いっぱいにその体躯を広げて見せた。

当然ケイト達も気が付いていたため、撃退するために構える。本来であればロットが相手の威嚇の隙に急所に一撃をお見舞いし、ひるんだところでケイトの魔法でさらに追撃、そしてそれでも倒れない場合はロットがとどめを刺すという陣形だった。

そしてここは洞窟内であり、大きな魔法では崩れてしまう恐れがあった。だからこそ下級の魔法を上手く使い対処していたケイトだった。そしてそれはロットにも意図は伝わっていると思い確認せずにいた。

「俺が一撃で仕留めてやる!突獅!!」

ロットが魔力を練りこんだ剣技を放つ。

「待ちなさいロット!」

その状況に気が付いて声を荒げた時にはもう遅かった。ロットから放たれた一撃は野生の本能で避けきった魔物を通り過ぎて壁に激突する。

魔力が獅子のようになった一突きは洞窟を振動させ部分的に崩壊させることはたやすかった。みるみる地響きが二人を包み、天井や壁からぱらぱらと土壁がはがれていくのが聞こえてきた。

崩れる気配を見逃すまいとケイトは神経を張り巡らせて辺りを見回す。そして自身の真上が崩れ去るのを察知して飛びのいた。

同時にロットの近くも崩れそうな雰囲気を感じ取り

「ロット逃げて!」

 そう叫んだ。

ケイトの声に素早く反応したロットは間一発のところで飛びのいて巻き込まれるということは避ける。その様子に信じられないものをみたようにケイトは見つめた。

「ありがとうケイト、おかげで助かったよ」

礼を言うロットだがケイトの耳には届いていない。そしてみるみる表情が歪んで今にも泣きだしそうになっていくケイトをあわあわと見守ることしかできなかった。

「な、なんであなたこっちに逃げるのよお」

どうにかそれだけ漏らしたケイトの言葉にロットもようやく察する。ケイトがいた場所は崩れ去り、ロットのいた場所も崩れ去った。お互いに内側に飛んでしまったため合流、つまり閉じ込められてしまったのだった。

「ご、ごめん。でも掘れば意外とすぐ出られるかも」

震える声でロットが言う。冷や汗が背中を伝い、岩壁を見上げながら必死に策を練ろうとしていた。

「無理よ私たちの力でどうにかできないわ」

ケイトはため息をつきながら、険しい表情で言葉を返した。彼女の髪がかすかに揺れ、彼女の絶望感が痛いほど伝わってくる。

「じゃ、じゃあ魔法でドカンと吹き飛ばしちゃえば」
更に焦ったロットが考えもなく言う。ケイトは厳しい目つきで睨みつけ

「さっきあなたの一撃でこうなったのよ?この岩壁を壊すほどの威力の魔法を使えば今度こそ生き埋めよ」

そう冷たく言い放つ。

どうしようもなくなった二人を洞窟内の静寂が包み込み、ただ遠くで滴る水音だけが響いている。その後も頭をフル回転させるが、どうにも突破口が見つからない。

ロットとケイトは、岩壁に閉じ込められた状況に焦りと不安を隠しきれずにいる。そんな空気を少しでも軽くしようとケイトが少し楽観的な声で言った。

「まあ、鞄に食料と水はあるんだから何とか一週間は持たせましょう。そうすればソイルちゃんが助けを呼んでくれるはずだし」

ロットはその言葉に一瞬安心しそうになったが、ある事実を思い出す。

「そ、そのことなんだけど、俺の分はその前の戦闘で置いた場所が悪くって岩壁の向こうにあるんだ」

ロットの言葉に、ケイトの胸は一気に冷えた。彼女は苛立ちと焦りを隠せずに声を荒げた。

「はぁ?私もさっきので自分が逃げるのに精いっぱいだったわよ」

二人の間に重い沈黙が流れる。ケイトはこの状況の深刻さを理解し、震える声で確認するように言った。

「つ、つまり私たちこれから五日間は飲まず食わずで耐えないといけないってこと!?」

ロットも肩をすくめ、申し訳なさそうにケイトを見つめる。

「そういうことになるね」

絶望的な状況に、ケイトは目の前が真っ暗になりそうだった。それでも、ここで諦めるわけにはいかない。彼女は深呼吸し、気を取り直した。ソイルが助けを呼んでくれるまで、どうにかして生き延びなければならない。

そうして初めに戻るのである。一週間たち、二人が気が付いたのはソイルに

「一週間して帰ってこなかったら助けを呼んでほしい」

と伝えてあった。そうであるならば一週間たった今現在にようやくソイルが心配しだし、おそらく早くても明日に救出の手配がされる。つまりこの洞窟で自分たちを助けに来てくれるとしてもここからさらに三日ほどはかかってしまうということだった。

希望の先に絶望が待っていると人はもろいものである。二人はぽっきり心が折れた。
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