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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い
「いい?泣けば許しもらえるのよ」
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その日は四人はトワのところで泊めてもらった。久しぶりの寝床と風呂にケイトとロットは存分に文明人であることを喜んだ。
そして翌日、トワが発明したという転移魔法陣にひどく驚かされた三人と、その魔法について教えを請おうとしつこく食い下がったケイトはトワの転移の魔法で洞窟の入口まで送ってもらい、シカァの街に戻った。
宿屋に戻ると待ち受けていたのはまだ帰ってきていないはずの勇者だった。トワの言う通り腕を組んで、まるでロットたちが帰ってくるのを予感していたかのように待っていた。
やけににこやかな勇者は何も言わずに宿の方へと向かっていく。その姿に底知れぬ恐怖を感じつつも四人はついていった。
「やあ」
宿の部屋につき、それぞれが椅子に腰かけると勇者が微笑んで手を振った。
「ゆ、勇者様どうして?」
とロットが驚く。勇者は穏やかに答えた。
「どうしてって君たちのために急いで帰ってきたんだよ。」
あまりにも穏やかな反応にそこはかとない悪寒を覚えたケイトは無理に明るく振舞った。
「わ、わー勇者様さすが!」
「ケイト、どういたしまして。ところで街で僕を待ってくれているはずの君たちがどうして街の外から帰ってくるのかな?」
勇者は満面の笑みではあるが怒気を感じた。ロットは思い返してみると、身投げの穴でも待っていろという言いつけを守らず穴に落ち、今回も勝手にトワのところまで行った。
しかもケイトもソイルも、そしてナルルまで巻き込んでだ。普段は穏やかで優しい勇者が珍しく怒っているかもという事実に、ロットの心は重くなった。
勇者の信頼を裏切るような行動をしてしまった自分に、申し訳なさと恐れが入り混じる。
ケイトも似たようなことを感じ、普段怒らない人を怒らせると面倒くさいという思いが頭をよぎった。聞けば身投げの穴の件でもロットは大して怒られていなく、旅の中でも勇者がこんなに怒ることはなかった。
それが今怒っている、ように感じるのだ。ケイトは心の中で冷や汗をかき、どう対処すればいいのか戸惑った。
そしてロットとケイトは互いに視線を本当に一瞬だけかわしてから、ロットが意を決したように、ケイトをかばうかたちで前に出て深く頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
「ご、ごめんなさい!おれ、勇者様からトワさんの話聞いて、行きたくてたまらなくなっちゃったんです。それで一か月が待てなくて、無理を言ってケイトについてきてもらったんです。ケイト達は悪くありません!」
ロットの声は震え、目には涙が浮かんでいた。
「それなのに俺、弱いから、洞窟で遭難しちゃって…」
言葉を紡ぐ度に、ロットの目尻から涙がこぼれ落ちそうだった。
「え、遭難したの!?」
勇者は驚きで目を見開いた。彼の普段の冷静さが一瞬崩れ、戸惑いが顔に現れる。
「それでケイトにも危険な目に合わせて。しかもソイルとナルルさんに助けてもらわなきゃ、今頃もしかしたら…」
ロットの声が震え、とうとう涙が溢れ出した。そんなロットをかばい、隠すようにように前に出る。
「私がいけないんです!私はロットより先輩なのに、ちゃんと教えてあげられてなくて、責任は私にあります!だから、怒らないで、私を叱ってください!」
ケイトの声もまた震えており、涙が彼女の頬を伝う。
「い、いや。別に責め立てたいわけじゃないよ?でもほら、約束したし……」
勇者は動揺していた。なにせ一緒に旅していた最中にこれほどまでにしおらしい二人を見たことがなかったからだ。
特にロットはへこみはするものの泣くなんて恥ずかしいと思っているタイプだと認識していた。そんな予想外の姿に普段は冷静な彼もどう対応すればいいのか分からない様子だった。
「勇者であろうお方が小せえなあ」
「ち、ちいせえなぁ……」
ナルルがすかさず茶々を入れる。ほぼ初対面の人にそういわれた勇者は面喰ってしまう。さらに普段は寡黙で話さないソイルまでが詰まらせながらも自分に対して批判の言葉を口にした。
「うっ…」
勇者は言葉に詰まり、目に見えて動揺する。
「ケイトもかばってくれなくていいよ。俺が悪いんだ。だからどんなお仕置きでも受けます!」
勇者からはケイトに隠れて見えないロット。しかし聞こえてくる嗚咽のような謝罪に痛々しさを想像していしまう。
「あーあ、子ども泣かせて鬼だなこりゃ」
そこにさらにナルルが言う。その無神経さに勇者は顔をしかめつつもなんだか自分が悪いことをしているような気分になってきた。
「お、おにぃ」
「ちょっと外野もうるさいよ!?ていうかあなた誰?それにソイルちゃん無理しすぎて耳真っ赤だからやめておきなよ!」
勇者の中で二人を泣かせていしまった罪悪感が大きくなり、次第に自分が怒っていたことなどどうでもよくなっていく。
勇者の声には焦りと苛立ちが混ざっていた。
「あ、ワシはケイトの元パーティーメンバーで今はソロでフラフラしとりますナルルと言います。ソイルっと一緒にこの二人を助け出してきました」
「あ、あぁ、そりゃどうもです」
ナルルは平然と名乗り、そのペースに勇者も巻き込まれる。泣くはずのないと思っていた二人がなき、見ず知らずのものと、寡黙な少女にののしられ、もう何が何だか分からなくなった勇者に畳みかけるようにロットとケイトは目を合わせて同時に叫んだ。
「「本当にごめんなさい!!」」
二人の謝罪の声は響き渡った。勇者はため息をつき、困ったように頭を掻いた。
「あー、もうわかったよ。この件では別に怒らない。でもせっかく言ってきたんだから話くらいはちゃんと教えてよ?」
実際に怒る気はもうどこかに飛んで行ってしまっていた勇者はそういってロットが落ち着いて話始めるのを待とうとした。
「わかりました!じゃあまず俺から報告です!」
ところがロットは一瞬で涙から笑顔に変わり、元気に言い放った。
「え?泣いてたんじゃ?」
勇者は困惑しながら問いかけた。
「小さいことは気にしないでください」
ケイトが軽く笑いながら言う。
「ケイトちゃんまで!?」
勇者はさらに驚いた。
「もー、勇者様、話ししますよ?」
なぜか自分が話の腰を折って困らせているような反応に勇者も合点がいく。
「あー、君たちさては嘘泣きだったね?……全く。わかった、僕の負けでいいよ。大人しく聞くよ」
怒られずに済んだロットは、演者顔負けでともに演技をしたケイトとハイタッチしたい欲を我慢しながらトワの下で聞いた話を勇者に伝えた。
「というわけで、エルフの里に行ってみたいです」
「なるほど、エルフの里かぁ」
勇者は思案しながら答えた。
「勇者様、行ったことあるんですか?」
「うん、あるけどちょっと閉鎖的なところなんだよね。最極魔法についてもソイルちゃんのことに関しても行ってみる価値はあるかもだけど」
「じゃあ行きましょう!」
ロットはすぐさま決意を固めたように言った。
「でも、ソイルちゃんの魔力種は一筋縄じゃいかないだろうから無駄骨になるかもよ?それなら僕と旅を続けるほうがいいかもよ?」
その言葉に勇者は一緒についてこないと察したロットは不安になる。
「勇者様、来てくれないんですか?」
「うん、次の旅は少し長くかかりそうで君たちも一緒に行こうかと思ってたんだけどね。それに今回の洞窟の件もあるし君たちだけで旅はちょっと危険のような気もするな」
勇者は真剣な表情で答えた。
怒ってはないものの、突かれると痛いところなのでロットは言葉に詰まる。そこに自信満々で助け舟を出したのはケイトだ。
「ナルルがいるわ」
「そうだ!ナルルさんがついてます!」
ロットもケイトの意見に洞窟での様子も含めて希望をもって続いた。
「ワシぃ?!」
突然名前を呼ばれたナルルは驚きの声を上げた。こんなこと台本にはなかったぞ、と口パクで訴えるナルルだが二人はあえてそちらは見ない。
「こう見えて、ナルルは旅のスペシャリストで、私のいたパーティーもナルルがいたおかげで安心して旅ができたくらいなんです!」
ケイトは勇者に熱心に説明する。
「そんなの初耳だが?!」
褒められた本人が驚きながら反論する。
「ナルルは黙ってて!どうせソロなんだし暇でしょ!」
そんなナルルにケイトは邪魔するなと言わんばかりに少し乱暴な言い方で割り込む。
「ひどい言いようだなあ」
と勇者はナルルに同情するが、今さっきまで自分がはめられたことから仕返しをしようと不敵な笑みを浮かべた。
「ナルルさんと言ったね。ソイルちゃんを守りながら洞窟の二人も救うほどのなんだ。実力者なのはわかるよ」
「グッハ、勇者様にそう言ってもらえると光栄ですな」
ナルルは恐縮しながらも満足げに微笑んだ。
「さすがナルルさん。勇者である僕から見ても素晴らしい実力者だねきっと。これなら任せても大丈夫そうだね」
勇者に褒められるという想定外のヨイショに気分が良くなったナルルは二つ返事をする。
「ぐっはっは。儂にできることならなんでも!」
「じゃあ、ナルルさんがこの子達をエルフの里まで送り届けて、僕の仕事が終わってこの子達を迎えに行くときまで一緒にいて見守ってくれるんだね?ありがとう!」
「へ?」
なんだかよくわからない方向に話が進みつつあることを察知したナルルは間抜けな声とともに静止する。そして勇者が更に。
「そしてロットには旅の基礎的なところから戦闘まで面倒見てくれると」
と続けて言った。
「え、ナルルさん本当に!?」
すっかりこの流れを理解したロットも笑顔で乗っかる。
「い、いやワシは」
それでも言いよどみ、困惑しながらも答えようとしたが、勇者はさらに話を進める。
「それにケイトとソイルちゃんには安心安全な旅と料理を約束してくれるんだね」
「あら、ナルル気が利くわね」
ケイトも嬉しそうに言った。
「あ、ありがとう、です」
ソイルに関しては純粋に感謝の言葉を口にする。
「まだ、なにも」
ナルルは言いかけるが、勇者は満足そうに頷く。
「なら僕も安心して任せられるかな。いやぁ助かるよ。正直長い旅だからこの子達がちゃんとついてこられるか心配していたんだよ。ソイルちゃんの魔力種のこともあったからね。いやぁほんとによかった。じゃあ、よろしくね、ナルルさん」
立ち上がってナルルの手を取り両手でガッチリ握手を交わして、期待を込めるようにそう言った。
「あ、はい」
ナルルは少し呆然としながらも頷いた。
こうして、ナルル、ケイト、ロット、ソイルの新たな旅がはじまるのだった。
そして翌日、トワが発明したという転移魔法陣にひどく驚かされた三人と、その魔法について教えを請おうとしつこく食い下がったケイトはトワの転移の魔法で洞窟の入口まで送ってもらい、シカァの街に戻った。
宿屋に戻ると待ち受けていたのはまだ帰ってきていないはずの勇者だった。トワの言う通り腕を組んで、まるでロットたちが帰ってくるのを予感していたかのように待っていた。
やけににこやかな勇者は何も言わずに宿の方へと向かっていく。その姿に底知れぬ恐怖を感じつつも四人はついていった。
「やあ」
宿の部屋につき、それぞれが椅子に腰かけると勇者が微笑んで手を振った。
「ゆ、勇者様どうして?」
とロットが驚く。勇者は穏やかに答えた。
「どうしてって君たちのために急いで帰ってきたんだよ。」
あまりにも穏やかな反応にそこはかとない悪寒を覚えたケイトは無理に明るく振舞った。
「わ、わー勇者様さすが!」
「ケイト、どういたしまして。ところで街で僕を待ってくれているはずの君たちがどうして街の外から帰ってくるのかな?」
勇者は満面の笑みではあるが怒気を感じた。ロットは思い返してみると、身投げの穴でも待っていろという言いつけを守らず穴に落ち、今回も勝手にトワのところまで行った。
しかもケイトもソイルも、そしてナルルまで巻き込んでだ。普段は穏やかで優しい勇者が珍しく怒っているかもという事実に、ロットの心は重くなった。
勇者の信頼を裏切るような行動をしてしまった自分に、申し訳なさと恐れが入り混じる。
ケイトも似たようなことを感じ、普段怒らない人を怒らせると面倒くさいという思いが頭をよぎった。聞けば身投げの穴の件でもロットは大して怒られていなく、旅の中でも勇者がこんなに怒ることはなかった。
それが今怒っている、ように感じるのだ。ケイトは心の中で冷や汗をかき、どう対処すればいいのか戸惑った。
そしてロットとケイトは互いに視線を本当に一瞬だけかわしてから、ロットが意を決したように、ケイトをかばうかたちで前に出て深く頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
「ご、ごめんなさい!おれ、勇者様からトワさんの話聞いて、行きたくてたまらなくなっちゃったんです。それで一か月が待てなくて、無理を言ってケイトについてきてもらったんです。ケイト達は悪くありません!」
ロットの声は震え、目には涙が浮かんでいた。
「それなのに俺、弱いから、洞窟で遭難しちゃって…」
言葉を紡ぐ度に、ロットの目尻から涙がこぼれ落ちそうだった。
「え、遭難したの!?」
勇者は驚きで目を見開いた。彼の普段の冷静さが一瞬崩れ、戸惑いが顔に現れる。
「それでケイトにも危険な目に合わせて。しかもソイルとナルルさんに助けてもらわなきゃ、今頃もしかしたら…」
ロットの声が震え、とうとう涙が溢れ出した。そんなロットをかばい、隠すようにように前に出る。
「私がいけないんです!私はロットより先輩なのに、ちゃんと教えてあげられてなくて、責任は私にあります!だから、怒らないで、私を叱ってください!」
ケイトの声もまた震えており、涙が彼女の頬を伝う。
「い、いや。別に責め立てたいわけじゃないよ?でもほら、約束したし……」
勇者は動揺していた。なにせ一緒に旅していた最中にこれほどまでにしおらしい二人を見たことがなかったからだ。
特にロットはへこみはするものの泣くなんて恥ずかしいと思っているタイプだと認識していた。そんな予想外の姿に普段は冷静な彼もどう対応すればいいのか分からない様子だった。
「勇者であろうお方が小せえなあ」
「ち、ちいせえなぁ……」
ナルルがすかさず茶々を入れる。ほぼ初対面の人にそういわれた勇者は面喰ってしまう。さらに普段は寡黙で話さないソイルまでが詰まらせながらも自分に対して批判の言葉を口にした。
「うっ…」
勇者は言葉に詰まり、目に見えて動揺する。
「ケイトもかばってくれなくていいよ。俺が悪いんだ。だからどんなお仕置きでも受けます!」
勇者からはケイトに隠れて見えないロット。しかし聞こえてくる嗚咽のような謝罪に痛々しさを想像していしまう。
「あーあ、子ども泣かせて鬼だなこりゃ」
そこにさらにナルルが言う。その無神経さに勇者は顔をしかめつつもなんだか自分が悪いことをしているような気分になってきた。
「お、おにぃ」
「ちょっと外野もうるさいよ!?ていうかあなた誰?それにソイルちゃん無理しすぎて耳真っ赤だからやめておきなよ!」
勇者の中で二人を泣かせていしまった罪悪感が大きくなり、次第に自分が怒っていたことなどどうでもよくなっていく。
勇者の声には焦りと苛立ちが混ざっていた。
「あ、ワシはケイトの元パーティーメンバーで今はソロでフラフラしとりますナルルと言います。ソイルっと一緒にこの二人を助け出してきました」
「あ、あぁ、そりゃどうもです」
ナルルは平然と名乗り、そのペースに勇者も巻き込まれる。泣くはずのないと思っていた二人がなき、見ず知らずのものと、寡黙な少女にののしられ、もう何が何だか分からなくなった勇者に畳みかけるようにロットとケイトは目を合わせて同時に叫んだ。
「「本当にごめんなさい!!」」
二人の謝罪の声は響き渡った。勇者はため息をつき、困ったように頭を掻いた。
「あー、もうわかったよ。この件では別に怒らない。でもせっかく言ってきたんだから話くらいはちゃんと教えてよ?」
実際に怒る気はもうどこかに飛んで行ってしまっていた勇者はそういってロットが落ち着いて話始めるのを待とうとした。
「わかりました!じゃあまず俺から報告です!」
ところがロットは一瞬で涙から笑顔に変わり、元気に言い放った。
「え?泣いてたんじゃ?」
勇者は困惑しながら問いかけた。
「小さいことは気にしないでください」
ケイトが軽く笑いながら言う。
「ケイトちゃんまで!?」
勇者はさらに驚いた。
「もー、勇者様、話ししますよ?」
なぜか自分が話の腰を折って困らせているような反応に勇者も合点がいく。
「あー、君たちさては嘘泣きだったね?……全く。わかった、僕の負けでいいよ。大人しく聞くよ」
怒られずに済んだロットは、演者顔負けでともに演技をしたケイトとハイタッチしたい欲を我慢しながらトワの下で聞いた話を勇者に伝えた。
「というわけで、エルフの里に行ってみたいです」
「なるほど、エルフの里かぁ」
勇者は思案しながら答えた。
「勇者様、行ったことあるんですか?」
「うん、あるけどちょっと閉鎖的なところなんだよね。最極魔法についてもソイルちゃんのことに関しても行ってみる価値はあるかもだけど」
「じゃあ行きましょう!」
ロットはすぐさま決意を固めたように言った。
「でも、ソイルちゃんの魔力種は一筋縄じゃいかないだろうから無駄骨になるかもよ?それなら僕と旅を続けるほうがいいかもよ?」
その言葉に勇者は一緒についてこないと察したロットは不安になる。
「勇者様、来てくれないんですか?」
「うん、次の旅は少し長くかかりそうで君たちも一緒に行こうかと思ってたんだけどね。それに今回の洞窟の件もあるし君たちだけで旅はちょっと危険のような気もするな」
勇者は真剣な表情で答えた。
怒ってはないものの、突かれると痛いところなのでロットは言葉に詰まる。そこに自信満々で助け舟を出したのはケイトだ。
「ナルルがいるわ」
「そうだ!ナルルさんがついてます!」
ロットもケイトの意見に洞窟での様子も含めて希望をもって続いた。
「ワシぃ?!」
突然名前を呼ばれたナルルは驚きの声を上げた。こんなこと台本にはなかったぞ、と口パクで訴えるナルルだが二人はあえてそちらは見ない。
「こう見えて、ナルルは旅のスペシャリストで、私のいたパーティーもナルルがいたおかげで安心して旅ができたくらいなんです!」
ケイトは勇者に熱心に説明する。
「そんなの初耳だが?!」
褒められた本人が驚きながら反論する。
「ナルルは黙ってて!どうせソロなんだし暇でしょ!」
そんなナルルにケイトは邪魔するなと言わんばかりに少し乱暴な言い方で割り込む。
「ひどい言いようだなあ」
と勇者はナルルに同情するが、今さっきまで自分がはめられたことから仕返しをしようと不敵な笑みを浮かべた。
「ナルルさんと言ったね。ソイルちゃんを守りながら洞窟の二人も救うほどのなんだ。実力者なのはわかるよ」
「グッハ、勇者様にそう言ってもらえると光栄ですな」
ナルルは恐縮しながらも満足げに微笑んだ。
「さすがナルルさん。勇者である僕から見ても素晴らしい実力者だねきっと。これなら任せても大丈夫そうだね」
勇者に褒められるという想定外のヨイショに気分が良くなったナルルは二つ返事をする。
「ぐっはっは。儂にできることならなんでも!」
「じゃあ、ナルルさんがこの子達をエルフの里まで送り届けて、僕の仕事が終わってこの子達を迎えに行くときまで一緒にいて見守ってくれるんだね?ありがとう!」
「へ?」
なんだかよくわからない方向に話が進みつつあることを察知したナルルは間抜けな声とともに静止する。そして勇者が更に。
「そしてロットには旅の基礎的なところから戦闘まで面倒見てくれると」
と続けて言った。
「え、ナルルさん本当に!?」
すっかりこの流れを理解したロットも笑顔で乗っかる。
「い、いやワシは」
それでも言いよどみ、困惑しながらも答えようとしたが、勇者はさらに話を進める。
「それにケイトとソイルちゃんには安心安全な旅と料理を約束してくれるんだね」
「あら、ナルル気が利くわね」
ケイトも嬉しそうに言った。
「あ、ありがとう、です」
ソイルに関しては純粋に感謝の言葉を口にする。
「まだ、なにも」
ナルルは言いかけるが、勇者は満足そうに頷く。
「なら僕も安心して任せられるかな。いやぁ助かるよ。正直長い旅だからこの子達がちゃんとついてこられるか心配していたんだよ。ソイルちゃんの魔力種のこともあったからね。いやぁほんとによかった。じゃあ、よろしくね、ナルルさん」
立ち上がってナルルの手を取り両手でガッチリ握手を交わして、期待を込めるようにそう言った。
「あ、はい」
ナルルは少し呆然としながらも頷いた。
こうして、ナルル、ケイト、ロット、ソイルの新たな旅がはじまるのだった。
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