【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第一部 無駄な魔力と使い捨て魔法使い

「二ヒヒ、あたし初登場」

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勇者と別れて旅を再開したロットたちは、一月ほどの時間をかけてシカァの街を出て、西の果て、秘境とも呼ばれるキノサキにたどり着いた。

山々に囲まれた谷底、そこには樹木が生い茂り、まるで来るもの全てを惑わすように葉は大きく広がり、濃い霧が支配していた。

その奥にエルフの里はあるという。それは勇者から教えられた情報であり、トワのことを知っていたナルルでさえ知らない場所である。

「ちっ、なんて霧だ、ろくに前も見えねえ」

ナルルが先頭を歩きながら苦々しく呟いた。霧のせいで視界はほとんどゼロ、緊張感が一層高まっている。

しかも奥に進むほど霧が濃くなっていくので一歩がさらに遅くなり、ゆっくりとしか進めない現状に疲れも見え始める。

「みんな離れちゃだめよ!」

ケイトが強く呼びかけた。霧の中で迷子になるのは命取りだ。

「エルフの里ってのは濃い霧の中にあるらしいから、目的地はもうすぐかもな」

ナルルは励ますように言ったが、その声にも少し不安が混じっていた。予想よりも濃い霧の中、幼い子供も守りながらの旅路は想像以上に神経をすり減らすものになる。

「ロット、ちゃんとついてきてる?」

それはケイトも同じで、ナルル一人に負担をかけたいと気配りをし、振り向いて心配そうに尋ねる。

「こ、子供扱いしないでくれ。俺はちゃんとついていってる!」

そんな2人に守られながらロットは歩く。おぼろげにしか姿は見えない中、強がるものの声を掛けられて安心感を覚えていた。

「違うわよ、ソイルちゃんよ」

「え?ケイトの近くにいないの?」

ケイトに聞かれて自分の余裕のなさに気が付く。そしてソイルを確認したのはいつが最後だったか、わからなかった。

「え?私の方には来てないわよ!」

お互い、ソイルは相手のそばにいるモノと思い込んでいたことに驚く。いつからいない?そんな不安がロットたちの足を完全に止めた。

「なんだと?ワシの方も来てないぞ」

三人はいよいよ慌てて、これ以上はぐれないように触れ合える位置まで来てから霧に向かって叫びだした。

「そ、ソイル!聞こえたら返事してくれ!」

「ソイルちゃん!声が出せなくてもいいから何か音で知らせて頂戴!」

その時、霧の中から不思議な声が響いた。

「悪しき少女は預かったっす、じゃなくて預かった。お前たちは立ち去れ」

若干調子を崩したその声は森一杯に反響するような耳障りな声だった。

「な、なんだこの声は!」

ロットは驚いて叫んだ。心臓がドキドキと高鳴る。

「ソイルちゃんが悪しき?ふざけんじゃないわよ!」

ケイトも怒りを露わにした。首を振って声の主を探すが当然見当たらない。

「ちっ、どこから聞こえてやがる?」

ナルルも声の出所を探そうとしたが、霧のせいで方向すら定かではない。

「くそ、なんでこんなことになったんだ」

ロットが悔しさにこぶしを握り締めた。

「勇者様に騙されたのかしら?おかしいわよこんなの」

ケイトも不安を感じ始めた。一同は勇者に行き先を教えてもらってここまで来ていたため当然不信感は勇者に向けられる。

こんな事態になるとは二人は想像していなかったから。ナルルだけは焦る二人をよそに自身のカバンを探っていた。

「あっ」

何かを見つけてナルルが声を上げた。

「ナルル、大丈夫!?」

「まさかナルルさんまでさらわれたんじゃないか!」

半ばパニックになりながらナルルを呼ぶ声が森にこだました。二人は既に手をつなぎ、自分たちだけでも離れないよう努めている。

「す、すまん、すっかり忘れておったんだが、勇者様から笛を預かっとったんだ。濃い霧が発生したらこれをふけと言われておった」

気まずそうにとナルルが言う。明らかにそれがなかったせいで起きた事態のように思える二人は、ナルルが何事もなかった安堵よりも、腹立たしく呆れたように睨みつける。

笛に関してはこの旅の保護者としてナルルだけが勇者から後で言い渡されたものなので二人は存在については知らなかった。

「なっ、馬鹿じゃないの」

「早く吹いてください」

きつい言葉を賭けつつもロットたちはナルルが笛を取り出すのを見守った。

笛は細長く、木でできた簡素な代物だった。装飾も特になく、吹き口のみで音の高さも変えられないただの笛に見える。

「すまん、だがこれでソイルも助かるはずだ」

ナルルは言い訳しつつも力いっぱい笛を吹いた。しかし、空気が抜けるシューという音以外何も変わらない。さらに2人の視線が突き刺さるようにナルルを見つめる。

「何も起こらないけど?」

しばらく待ち、痺れを切らしたケイトが言った。

「こんなときにふざけてます?」

二人とも状況の打開に繋がらないナルルの行動に明らかにいら立つ。

そんな様子にナルルも焦り、勇者には濃い霧で吹けとしか聞いていなかったことを思い出しながらしどろもどろになっていく。

「ふ、ふたりとも目が笑ってないぞ。おかしいな、そうだもう一度吹いてみよう」

ナルルが再び笛を吹こうとするその瞬間、風が吹き、霧の中から何かがが現れた。

「ニヒヒ、呼び笛を鳴らしたのはどなたっすかー?」

今の三人の緊迫した状況を跳ね飛ばすような呑気な声だった。
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