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第二部 最大級の使い捨てパンチ
「こっから新章!活躍するぞ!」
しおりを挟む首都と呼べるほど発展している街、ベウコ。大きな港とそれを支えるシンボルとして塔が建っている。そしてその街には貿易や冒険者など様々な理由で人々が行き交っていた。
そんなベウコの街にある、噴水のある広場のベンチではあまり見かけない種族エルフがいた。手足をだらりと投げ出してだらしなくベンチに横たわっている。
そんな様子にロットはため息をつきつつも歩み寄る。
長い耳は飾りでは無いようで、その足音で察知したエルフは起き上がることも億劫なのかそのまま顎を上に、逆さ向きでロットを視界に入れた。
「やーロットくんお疲れ様っす」
「だらしないなあエレナ」
エレナに対して素直にそういった。褒め言葉だとでも思っているのか気にする様子なく笑みを浮かべる。
「にひー、ロットくんもジュース飲みます?美味しいっすよ」
緩みきった頬だった。器用にも逆さ向きで飲んでいる。咽ないのだろうか。ロットはあることに気がついて必死で目で合図を送る。
「いらないよ。って、のみかけじゃないか!……またケイトに叱られるよ?無駄遣いしてって」
「大丈夫っすよ、姐さんまだギルドあたりにいますよきっとー」
こういうことには鈍感なエレナは忍び寄るケイトには気が付かず、手に持ったジュースを寝そべったまま器用に飲み続ける。
ロットは額に手を当ててその後の展開が予想されるので呆れる。
「そうだったらよかったわね」
特に大声でもないケイトの声はエレナの姿勢を正すのには十分だった。勢いで少しばかりジュースがこぼれたが背筋を伸ばして固まっている。
「ひっ、ね、姐さんいつのまに?」
「『やーロットくんお疲れ様っす。』より少し前、あなたがサンドウィッチを一人だけ食べてこっそりと包み紙を隠したとこかしら」
3人はベウコの街について、早速魔力種の子どもがいないか情報収集を行っていた。そして早々に切り上げたエレナはしばらくダラダラと時間を潰したあと小腹がすいたのでこっそりと自分だけサンドウィッチを買って食べていた。
つまり公園についてから一部始終見られていた。言い訳しようよないエレナはそれでも何か策を探して無駄な足掻きをした後にそれすら面倒になって諦めた。
少し背中が丸くなり、肩もおとして申し訳無さそうな仕草を作る。
「ご、ごめんなさいっすアン」
「ということであなたは昼抜きよ」
もちろん今回が初めてではないのでケイトはそう簡単に許さない。そもそも一人で昼をこっそり食べていたのだからバツにならなさそうだが、大食漢のエレナにとっては死活問題だったりする。
「そ、そんなぁ」
エレナは絶望に地面に手をついてうなだれた。そんな彼女をよそにケイトは取り出したものをロットに渡す。
「ロットはこれ食べなさい」
それはサンドウィッチであり、エレナがケチって買った安い方ではなくハムやチーズをしっかり挟んだ有名店のそれだった。
エレナはよだれが溢れそうになるのを抑え、一人でも道連れを増やすことに奔走する。
「ロット君だけずるいっす!じ、実はロット君も公園でサボってたっすよ!」
これにはロットも慌てて反論しようとするが、ケイトの笑みで背筋が寒くなり口はつぐんだ。ケイトはよろしいと頷いてサンドウィッチをしっかり受け取らせる。
「残念だけどロットはお互いの指輪効果なのか、ぼんやりだけど相手がいる方向とかがわかるのよ。だからサボってるはずがないの」
「え、そうなの?」
初耳のロットは受け取りつつ驚いた。サンドウィッチよりも、その事実に気がいく。かれこれ1年以上一緒に旅をしてきた仲間が、自分の行動先を逐一知っていたかもしれないというのは焦るものだ。
いや、決して怪しいことをしていたわけでないにしても。
「ロットが気が付かないのも無理ないわ。私も最近気がついたし。もちろんプライベートまでしらべないわよ?
今回みたいに練習がてらたまに探ってるだけよ。まあ魔力に敏感じゃないと難しいのかもしれないけどね」
その言葉に感心反面、自身ではケイトの場所を探れないことに落ち込む。そして逐一確認していたわけでないことに安心した。
「サンドウィッチをありがとうケイト」
「いいわよ。ところで何か収穫はあったかしら?」
収穫、というのは聞き込みのことだ。3人で旅を始めてから街につくたびにこうやって手分けして魔力種の子どもがいないか調べていた。
そして毎回空振りに終わっていたため今回エレナはサボるという蛮行に及んだわけだ。
「いや、俺は何も。色々聞き回ったけどだめだったよ」
「私もよ。魔力種って意外といないものなのかしら?それとも気がついていないだけ?」
もう街3つは回ったのでなかなか出会えない魔力種に二人はもしかしたらこの国にはもういないのではないかと思い始めていた。
それでもロットは、妹のソイルのように苦しむ人がいるかも知れない、そしてそれを助ける方法を自分が知っているという事実から旅をやめないでいた。
ケイトはロットにどこまでもついて行く気でいたのでそこに文句はなかった。
二人は収穫はなかったものの減ってしまった腹へ補給するためサンドイッチを口に運ぶ。細長い入れ物に三つほど入っていた。残りは一つ。
「まあ小さい時に亡くなっちゃう子も多いですからね。……隙ありぃ!」
聞き込みをしていないので会話にすら入れてもらえなかったエレナが大口を開けて飛び込みロットのサンドイッチを狙う。
予感していたロットは持っていたサンドイッチを上に掲げたためエレナは猛烈な勢いで顔から転がった。
「あたしもサンドウィッチたべたいです!」
それでも食い意地が勝つあたりエレナらしい。
「あのねぇ、お金が随分少なくなってきているの。我慢なさい」
その様子にケイトは呆れる。
「姐さん意外とケチでいじわ……」
そこまで言いかけてケイトの手が目の前に持ってこられる。サンドイッチが一つ掴まれていて、どう見てもエレナに一つ与える格好であった。
「続きをどうぞ」
「るではなくってあたしたちの旅のことを考えてくれてて素敵っす」
さっきまでのぶーたれた様子はどこかに飛んでいき、エレナはサンドイッチを受け取ると調子よく目を輝かせている。
「よろしい。それじゃあ食べたらギルドの依頼でもこなして宿代稼ぎするわよ」
魔力種をみつけられない3人にとって食い扶持は冒険者稼業である。
「って何か大勢来るわね」
その視線の先には10人ほどの団体がドカドカと足音を立てながら向かってきていた。
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