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第二部 最大級の使い捨てパンチ
「俺達が人さらい?」
しおりを挟む「もしかして魔力種にお困りですか!俺たちが見事取り除きますよ!」
顔をパッと輝かせていロットがいうが、明らかに助けを求めるような表情を誰一人していない。
ていうか怒られるんでは?とエレナひっそり思う。
「それだそれ、やっぱりあんたたちだな、子どもをつけ狙う怪しい集団ってのは!」
「街で変なことするのやめてくれないか?最近いろんな街で病弱な子どもを探して回る連中がいるってあんたらだろ?見たところ人攫いには見えないけど、みんな不安がってるからやめてくれ」
「違うちがう、たしか不治の病を治す代わりに莫大な金品を要求する詐欺師ってきいたぞ」
口々に飛び交うのは怪しい噂。しかしそのどれも自分たちに関わりがありそうだと思ったエレナは二人を見る。ピンときていないのか困った様子を浮かべていた。
「ちょ、どんなふうに言ったんすか。ロットくん、姐さん?」
顔に手を当て、呆れ声でエレナがいう。何もやっていない奴がいうセリフではないが、二人はアタフタしながら、答える。
「俺は、『病弱で困ってる子を教えてください。俺が魔法で見事に治します。俺たちにしかできない秘術だからまかせてください』ってひたすら言って回っただけだよ」
どう考えても怪しい。新手の宗教勧誘と変わらない。
「私は、旅にお金って必要だから、魔力種っていう病気を治す代わりに、それ相応の金額をもらおうとしただけよ」
聞いたことない病気を治す、しかもいきなりお金の話だなんてやっぱり怪しさを引き立てる他なかった。
「そんなのいきなり言われたらどーみても怪しいっすよ。二人共何やってんすか」
結果、こうなってしまっているため、ロットもケイトも、何もやってないエレナに、やれやれと言った仕草をされても文句が言えず喉まで出かかった反論を押し留めることに力を費やした。
「あんた達きいてるのか?」
3人が揉めているのを集団はイライラしながら見ていた。
「あー聞いてるっす。今回はうちのロットくんと姐さんがご迷惑かけたっす。わざわざここまでご足労感謝っす。ただちょっとこっちの伝え方が悪くって大きく誤解させちゃったようなんで説明させてもらっていいっすか?」
文句を言いに来た一行はなんだか妙に偉そうなエルフに面食らう形になる。
「あ?まーいいが、手短にな」
結果先頭の男が他の人達に視線をやり、頷きを経てから答えた。
「ありがとうっす。えーまず、あたしたちは魔力種っていうあまり知られていない、子どもの頃だけの病気を治すために旅してるんす。誕生日あたりになると体調がめちゃくちゃ崩れやすいのと、慢性的な体調不良が特徴です」
エレナは堂々としており、何故か腕を組んでいる。
「それが怪しいって言ってんだよ」
突っかかる男の前に手のひらを突き出し静止させる。待て、のような仕草に男は自然と口をつぐんでしまった。
「その病気にこのロットくんの妹さんが罹って、あたしたちで旅して完治させる方法を学んだっす。それで少しでもこの病気に困っている人を助けられたらと思ったて旅してるんですよ」
「おーわかりやすい」
「エレナあなたそんな才能が!?」
口々に称賛のコメントを飛ばすのは原因の2人だ。集まってきた人々はまだ納得しきれていない。
「でもなんで秘術なんだよ、怪しいじゃないか!それに治療法を広めればもっと多くの人が助かるぞ?」
「それもそうだな」
もはやどっちの味方なのかロットが周りの意見に同調しだす。エレナは睨みつけて
「ロットくん黙って」
と告げた。落ち込むロットはごめんなさいと呟いてお山座りでいじけた。ケイトはヤレヤレと思いつつもここで庇うのは得策ではないと、知らぬふりをした。
「治療法に秘密があるっす。実はあたしがエルフなのはわかると思うんですけど、エルフの里で教わるような内容なんで、膨大な魔力と繊細な魔力コントロールが必要なんすよ。
だから誰でもできるわけでもなくって、変に広めて事故を起こさないために秘密にさせてもらってるっす。見かけによらず姐さんは魔力のスペシャリストだし、ロット君もその補助として最高なんすよ」
なるほど、と今度は押し掛けてきた人々も同意した。もうひと押しだ。エレナはこの場がなんとか収まりそうになることに安堵する。
「むむ、ならばなぜ金を取る!」
コック帽を頭に乗せたあきらかに料理人の姿をしている親父がそう言った。頑固そうに口ひげを蓄えている。
「お金はだいじに決まってんでしょ!あなた馬鹿なの?」
「姐さんも今は黙ってて!」
安心もつかの間、ケイトの発言で揉め事が再加熱しかけて、すかさずエレナが告げた。
ケイトもごめんなさいと呟いて、ロットの隣で座り込んだ。もちろんお山座りで。
もはや気にしないでおこうとエレナは話を淡々と続けた。
「それはおじちゃん考えてもみてください。道具屋は薬草を売ってお金をもらう、武器屋は剣を売ってお金をもらう、それは生きていくためですよね?それと同じであたしたちも治療の代わりにお金がもらえれば生活ができるから仕方ないんすよ。今日だってあたし昼抜きで腹ペコっす」
ぐー、とタイミングよく腹の虫が泣いた
「それは」
あなたの自業自得だし、なんならサンドイッチ分けてあげたじゃない!その言葉はエレナの形相に止められる。これ見よがしにお腹を擦って空腹をアピールするエレナは、もはや周りから同情の視線を送られていた。
「そうだったのかよ、ならそう言ってくれればいいのに」
「そうよ、てっきり最近増えてる人さらいの新手かとおもったわ」
どうやら誤解は解けたようで、人々の表情も和らいできた。そのことにロットとケイトも安堵して立ち上がった。
「ひ、人さらいなんてしませんよ!」
「それなら私たちも知り合いにあなたたちが来てること知らせといてあげるわ。もしその、魔力種?とかだったら宿に行けばいいのよね」
「そ、そうよ!待ってるわね!」
会話が弾んでいく中で、集団の中から先程のコック帽の男性が前に出てきた。
「嬢ちゃんせっかくだしワスの店で食ってけ!酒の肴に旅の話でもしてくれりゃあ飯代はただにしてやるからよ!」
白いはずのエプロンは跳ねた油などでところどころ汚れていて、そして全体的に揚げ物の良い匂いが漂ってくる。それだけで期待度が高いと感じたエレナは二つ返事だ。
「マジっすか!おじちゃんさすが渋いヒゲしてるだけあるっすね!ロットくん、姐さん行きましょう!」
エレナは遠慮する様子なく、コックについていく。二人もサンドイッチを食べたところだったがせっかくの好意を無下にはできず、ついて行った。
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