【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第二部 最大級の使い捨てパンチ

「よくこの状況で眠れますわね」

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連れてこられたのは牢屋だった。扉が開かれて目隠しと縄は解かれて放り込まれる。そのときお尻から落ちたため少し痛そうにしたが相変わらず焦った様子はない。

「ここに入ってろ」

いつの間にかごろつきたちはいなくなっており、リーダーらしき人物のみが残っていた。どうやら本当にリーダーだったようだ。

そんな彼も奴隷商人に雇われた身なのか、奴隷商人が階段を下りて牢屋の前にやってくるとすぐに頭を下げて去ってしまった。

「ご飯は表通りにある串焼きがいいっすー」

エレナは奴隷商人の顔を見つけるとやっぱり攫ったのはこの人だったのかと思いながら図々しくご飯の催促をする。呑気な発言とは裏腹に奴隷商人が向けるエルフへの相手を値踏みするような視線には敏感に感じ取り内心鳥肌を立てていた。

奴隷商人はエレナの堂々とした捕まりっぷりに虚をつかれたのか一瞬だけ目を丸くする。それも1秒にも満たない時間ですぐにいやらしい笑みを貼り付ける。

「ほっほっほ、考えておきましょう。1000金貨に比べたら安いものですからね」

昼間に言ったあの言葉は嘘ではなかったようで、本当にエレナのことを1000金貨で売るつもりのようだった。旅を始めてお金の価値を身にしみたエレナは、エルフ一人にそれだけの大金がかけられているならば攫っていく理由に納得がいっていた。

もちろん人攫いは生き物として最低な行為ではあるが、楽して大金はたしかに魅力なのである。だらけることが好きなエレナはな少しだけ気持ちがわかる気がしていた。まさか自分が売られるとは思っていなかったが。

「でもあたしを誘拐だなんて大胆っすね」

昼にあんな会話をしておいて誘拐すれば犯人は自分だと言っているようなものだ。ただ実際はごろつきが誘拐したし、裏路地での出来事であるため気がついている人はいなかった。

だからたとえロット達が奴隷商人に詰め寄ったとしても知らぬ存ぜぬで白を切られて終わるだろう。それでも必ず疑われることは予想できたはずだ。

「ほっほ、それはあなたが不用心すぎるのですよ。エルフという価値がありながら一人で出歩くなんて。それにあの程度の奴らここまでたどり着けませんよ。今朝の所とはまた別にあるとは思わないでしょうからね」

その言葉に昼間立ち寄った奴隷の取引場所とは違うところだと知る。つまりロット達が場所を知る可能性はゼロに近しい。しかしエレナは余裕そうで

「そうっすかー、絶体絶命っすね」

と、全くそうでもない様子で言う。奴隷商人はその姿にエレナの企みを疑ったが、ごろつきたちはああ見えて誘拐のプロであり、後をつけられるヘマはしない。そこだけは信頼していたので、強がりであると判断した。

そして強がっているはずの心を折るために、これからの処遇を伝えた。

「あなたは物好きな貴族に、数千金貨は下らない額で売れるでしょう。馬鹿なことせず大人しく牢屋で過ごすことをおすすめします。そうすれば少なくともここにいる間は手をもがれたり、性の玩具されてボロボロになることはありませんよ。なあに、ここにいる間は好きなだけご飯も上げますからね」

ひどくいやらしい笑みで、目は笑っていなかった。

「働かずご飯が食べられるなんてもしかしてここが桃源郷?!」

目を輝かせながら早速そのへんに寝転ぶエレナ。森ではどこでも寝ていたので慣れていたが、それを知らない奴隷商人はさすが口元をひくひくさせて

「ちょっと肝が座りすぎですねぇ」

と呆れた。

これ以上何を言ってもエレナを怖がらせることはできないと判断した奴隷商人は去った。

完全に気配が消えたのを確認してようやく息を殺して物音を立てないように努めていた存在へと視線をやった。

牢屋の隅であり、そこには子どもがいた。女の子は幼い少女で金髪が長く、しかし相当抵抗したのか数か所殴られたあざのようなあともあり、貴族らしい服も薄汚れてやつれた様子だった。

そんな少女が遠巻きに口を開く。

「あ、あの」

ひどく怯えた様子である。

「ん?もしかしてルミナリアさんじゃないっすか?」

「ど、どうしてわたくしの名前を?」

貴族らしさはほとんどなく酷くやつれた少女はパンチが探すルミナリアだった。

名前を当てられたルミナリアは驚いて、何かされるのではないかと身構えるが牢屋に囚われた今、そんなことをしても無意味だと思い出し、はい、そうですと答える。

「ニヒヒ、あたしはエレナっていいます」

エレナは人懐っこく笑い、悪意がないことを伝える。ルミナリアは悪意のない笑みに少しだけ気持ちが落ち着くのを感じた。

「エレナさん、よろしくお願いします」

「それよりもご飯楽しみですねー」 

あくまでも食事がエレナの思考を支配していて、奴隷商人の好きなだけ食べていいという発言を真に受けていた。

そんなエレナに小さな声で「今日はもう終わったので食事はないと思います」とつぶやきエレナは今日一番の絶望顔を披露した。

地面を叩いて悔しがる呑気な姿に危ない人ではないことがわかり、ルミナリアはオズオズと歩み寄っていく。

「エレナさんはこ、怖くないんですか?」

先程の奴隷商人の脅し文句も聞こえていたのでルミナリアは恐怖していた。

「何がっすか?」

しかしエレナはあっけらかんとしていて、その様子に唖然とさせられる。

「だって、これから知らない人に売られて何をされるか分からないんですよ?」

ルミナリアはこれから自分が変態貴族に売られると思っているようで震えていた。エレナは頭を優しく撫でながら言う。

「んー、まあ大丈夫っすよ多分。なんとかなるんで。とりあえずもう遅いし寝るっすよ」

撫でられて少し安心していたルミナリアは思いの外早く去っていく頭の感触に悲しくなり顔を上げると既にエレナは体を横に目を瞑っている。

「よ、よくこの状況で眠れますのね」

その能天気な姿に先程までの安心感から徐々に自分だけが不安がっていることが馬鹿馬鹿しく思えていた。

「あたしはどこでも眠れるのが特技っす。トリバも早く寝ましょーね。明日はきっと騒がしいっすから。はいおやすみー」

怒るだけ無駄のように見えてきて、不安な気持ちもいつの間にか薄まって目の前の図々しい奴隷仲間に呆れた。

エレナはまだお腹すいたなぁとブツブツ言いつつも本当に寝てしまう。手にはいつもはしていないはずの指輪が光っていて、邪魔そうにポリポリとかいている。その姿に取り残されたルミナリアは

「むぅ」

むくれつつもそっとエレナにひっついて眠った。
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