【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

文字の大きさ
85 / 117
第二部 最大級の使い捨てパンチ

「うちはコルミやで」

しおりを挟む

ロットは同じ人間であるはずなのに魔王種と対峙した時のような悪寒が全身を駆け巡るのがわかり、剣を持つ手に力を込めた。

「仲間じゃないのか!」

奴隷商人を指して言った。悪人であることには違いないが、それでも死んで当然とは思わなかった。簡単に命を奪った目の前の男を睨みつける。

「仲間?人間ごときが吾輩の仲間なわけがなかろう」

低くよく通る声でそう言った。抑揚の少ない話し方で、どこか悪寒を感じさせる。

「何言ってんだ貴族野郎!それにどうしてわざわざうちのお嬢をさらったのはどうしてだ」

宿敵を前に怒りをむき出しにするパンチだったが、そこに割って入るようにケイトが話し出す。

「そ、それは、あなたが魔族で、魔力種を欲しているからかしら?」

「ケイト、動いて大丈夫なの?」

ケイトは朦朧とした様子だったが、レナに支えられて立っている。その表情は苦しそうに歪めていた。

「伊達に魔力コントロールを学んできてないわよ。足手まといにならないよう、自分で歩ける程度は魔力を残したわ」

つまり満身創痍には変わらない。男は突然高笑いをし始めて身体が変容していく。その異様な光景をロットたちは黙ってみるしかなかった。角が生え、肌の色も青黒い魔族特有のものに変わった。その瞳の色は紅くみるものを怯えさせるだろう。

「ほぉ、我輩を魔族と見抜くか。どこでわかった」 

声はさらに唸るような音になった。警戒するロットたちをよそに、魔族の興味はケイトに注がれている。ケイトも怯む様子なく、息は絶え絶えになりつつもしっかり答えた。

「い、以前同じように魔力種を狙った馬鹿な魔族にあったことがあるのよ。あんたも魔力種に仕えて世界征服でも企んでるのかしら?」

魔王種を狙い勇者に化けていた魔族を思い出していた。そしてその魔族の男よりも格段に目の前の魔族が力を持つことを理解していた。

焦りを見せまいとケイトは支えられながらもできるだけ言葉に力を込める。しかし魔族の男は気にもせず優雅に答えた。

「我輩が仕えるだと、馬鹿馬鹿しい。魔力種は発芽をさせれば魔族と成り果てる。我輩はそれを育て上げて我輩のコマとするのだ。それも一つや二つではない軍隊をな」

大げさな身振りで宣言する。魔力種は発芽をしたばかりだとあまり力はない状態だが、一度安定すると恐ろしい強さに発展する。ロット達がソイルの魔王種と戦いを繰り広げられたのは種が発芽したばかりで本来の実力の十分の一も出せていなかったからだった。

もし万全の状態であればあのとき勇者が駆けつける前に全滅は免れなかった。内容の恐ろしさに気がついたロットが驚く。

「戦争でも始める気か!」

「そのとおりだ。我輩は魔王様がいつまでたってもやらぬ世界征服を推し進める。そして魔王様すらも打倒し世界の王となるのだ」

魔王にさえ反旗を翻すという目の前の男。実際魔族や魔物の被害はなくならないものの軍同士の衝突はほとんどなくなっており、それは今の魔王が人間たちの世界に興味を持たなくなったからだと言われていた。

逆を返すと興味がでたり、そもそも魔王が新しくなれば方針はガラリと変わる可能性があるのだった。

「そ、そんなことさせない!」

魔族との戦争はすなわち世界の滅びにつながる可能性がある。それだけは避けなくてはならない。目の前の野望はなんとしても潰さないといけない。ケイトは決意を目に宿して対峙する。

冷めた目つきで魔族の男はケイトに向けて手を振る。そこから斬撃のようなものが出てケイトに向かった。

「虫けらごときに何ができる」

「一閃」

動けないケイトに直撃し、その胴体を2つに分けたかに思えたが直前でレナが槍の衝撃波で相殺することに成功した。いや、消しきれなかった一部はレナの皮膚を切り裂き、わずかにダメージは負っている。

ケイトもレナが離れたため膝をつく。ロットが駆けつけたが何かを伝えながらロットを押し返した。魔族の男からみればケイトが独りよがりに立ち上がろうとしているように見えただろう。

レナはダメージを負ったものの浅く、すぐに立ち上がり挑発を開始する。

「……虫けら相手でも一撃で仕留めることはできないようだね」

適当に放った一撃とはいえ魔族の男はそれを止められて少し不服そうにする。しかし勇者でもない人間が魔族に立ち向かってくるその姿に遊んでやろうという気持ちが笑みとなって現れた。

「言っとくけど俺たちもあんたなんかにやられる気ないからね」

ロットもレナの横に並び魔族の男と対決する意志を見せる。

魔族の男は自身との実力差を理解していないどころか勝てるとさえ思っている人間の姿に試すように魔力を練り上げていく。

「よかろう。地獄の蛇ヘルパイソン

「突獅!」

男の魔法は暗黒の炎となりうねる蛇のように襲いかかったが、ロットは剣撃で獅子の衝撃波を放ち、地面を削り飛ばしてそれをぶつけることによって強引に消し止めた。

「ほぉ、地面を削って我が炎を消し止めたか。ならば貫く影レインシャドー

感心した魔族の男は、次の攻撃に移る。魔法は地面を2つに分けるように炎がレーザーのようにロットとレナの間に通る。

ロットとパンチは右に、レナはケイトを引っ張って左に飛び退いた。

直撃は避けられたが魔法の通った後は黒くえぐれ、当たっていれば人間の体は、いとも簡単に切断されていただろうことがわかる。さらにはそこから黒炎があがり分断されてしまう。

「ケイト、レナさん大丈夫!?」

「こっちは大丈夫だよ!あんたたちは?」

ロットが声を掛けるとかろうじて声は通じた。しかし戦力が別れ、仲間の様子が見れない状況は絶望的だった。

「俺たちも平気。でもこのままじゃジリ貧だよ」

「とりあえず考えながら逃げるよ!」

魔族の男は器用にロットの側もレナの側も魔法で狙い続ける。突破口が開けない中、避け続ける形になり大怪我を負っているパンチと、魔力切れ寸前のケイトはいつ避けきれずにやられてしまうかは時間の問題に見えた。

それをどうにかロットとレナが自分たちの攻撃をぶつけることによって乗り越えている。それでも最初に打ち消しきれずダメージを負ったように、少しずつだが着実に疲弊されていく。

「いや~大変やねー」

「でも、避けられない訳じゃない!」

また飛んできた魔法を相殺しながらロットは答える。その声は聞き覚えがなく、やけに子どものような声。しかし集中しているため気の所為と思い込む。

「せやけどこんなん一撃でも食らったらアウトやで?」

しかし明らかに誰にも当てはまらない話し方で、おまけにこの場にはそぐわない気の抜けた知らぬ声ということに気がついて足元を見ると小さな女の子の人形がひとりでに立っていた。

「言われなくてもわかって……誰?」

「ほら、誰やって聞かれとるで」

人形は先程から静かだったパンチのふくらはぎをトントンと叩いて促す。

「俺はパンチ、ってちげーよ、お前だコルミ」

思わず答えたパンチはノッて突っ込む。目の前の人形は大げさに驚いて見せながら自己紹介を始める。

「あぁうちか。うちはコルミ言います。あっこで捕まっとるルミたんの魔法で動いとる人形の妖精やで」

胸をぽんと叩きながらそう言った。ロットは突如現れた妖精を名乗る人形に驚きから目が点になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

処理中です...