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第三部 勇者への道
「手加減してあれ!」
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負傷したクリア者たちも桃塔の勇者に触れられるとすぐに表情が和らぎ、傷が癒えていくのが目に見えてわかった。
そしてクリアを喜び次の試練、塔の中がどんなものなのか各々情報交換などに勤しんでいた。
桃塔の勇者はあらかた治癒し終わるとロットたちに気がつき、孫にでもあったかのように微笑んでやってきた。
「ほっほっほ。突破したんじゃな。しかも無傷とは見事なものじゃ」
雷に打たれたのだ。クリアした者たちもそのほとんどが満身創痍であり、比較的耐久力に自信のあるものも少なからず傷を負っていた。
それなのに無傷で線をくぐってこれたのはロットたちくらいだったのだ。
「はい、と言ってもケイトのおかげですけど」
謙遜するロットに「運も実力じゃよ」と励まし背中を叩いた。
これだけ多くの冒険者が挑んだテスト、その大半が脱落する中無傷でクリアできる者と仲間だったというのも十分強さの証明になると桃塔の勇者は考えていた。
ロットはただのお世辞だと受け流し苦笑いを浮かべるにとどまったが。
「ところで桃塔の勇者様、黄塔の勇者の魔法凄かったですね」
会話が弾み始めたところでケイトがすかさず黄塔の勇者を話題にした。あれだけの規模と威力の魔法を撃つということがどれほど難しいか彼女は知っていた。
だからこそ目の前であの威力をいとも簡単そうに放たれて驚愕していたのだ。そして同じ勇者同士ならそのへんの話を詳しく聞けるのではないかと思っていた。
「あれはまだ手加減しているよ。数少ない最極魔法の使い手じゃからの。でないと倒れている者たちは丸焦げになっておったはずじゃよ」
ケイト自身先程の威力、範囲の魔法は最極魔法ではないかと思っていた。勇者であれば使えても不思議ではなかったからだ。しかしその威力があれでも抑えていたことを知らされて自分との実力差に内心驚いている。
「最極魔法……」
ケイトは考える。自分が放ってきた最極魔法とさっきの雷の魔法、威力は負けていないはずだが規模に関しては明らかに違う。
さらにはその威力さえも本気を出せば未知数ということなのだ。
自分の最極魔法と黄塔の最極魔法、同じであって違うもののような気がしていた。しかしそれがなぜそこまで差が出てしまうのかはわからずにいる。
「ケイトどうしたの?」
そんな内心を知られないよう誤魔化すように笑った。
「いえなんでもないわ」
立ち上がれるものは全員線を渡り、残りは雷に撃たれて哀れに痺れている大勢の冒険者だけとなる。
これだけの数が戦闘不能になっており、このまま放置するわけにも行かない。ただ治癒するにも動ける人が少ないため、どうするのだろうとロットたちは桃塔の勇者をみた。
桃塔の勇者の勇者は特に焦った様子もなく、他の勇者たちも助けに行く気配はなかった。
「ホッホッホ。では哀れな子たちを起こしてやろうかな」
桃塔の勇者は腰をさすりながら黄塔の勇者のところまで行くと、肩をトンと叩いて、「ごくろうさん」と言い入れ替わった。
緊張していたのか入れ替わる時に大きく息を吐く姿が見え、少し離れて桃塔の勇者の魔法を見守った。
「彼は治癒に関しては世界最強だよ」
気がつくとロットの隣に赤塔の勇者が立ち、面白そうに見ていた。同じ勇者に世界最強と言わせるほどの治癒がどんなものか、ケイトは逃すまいと真剣な眼差しで見つめた。
「恵みの雨」
両の手を広げ魔力を天に向かって放出していく。光の粒子が空いっぱいに広がっていき、先程雷を落としたように今度は雨を降らした。
雫が倒れている人たちに触れると淡い光が包みこむ。数秒後何事もなかったかのように立ち上がり始めた。一体何が起こったのか理解できていないものがほとんどで、手を開閉しながら体の自由を確かめるものや、痺れがなくなりホッとしていた。
「す、すごい。みんなあっという間に回復してる!」
「桃塔の勇者様、これって回復の最極魔法なんじゃないですか?」
またしても最極魔法を見ることができたケイトは驚愕する。紛れもなく治癒魔法のスペシャリストであることがわかった。
ただの歳老いた気のいい老人と思っていた自分を恥ずかしく思う。
「そうじゃのお。これも確かに最極魔法じゃよ。まあ歳だから一発で限度じゃがな」
ケイトに向かってウインクしながらそういった。それでも使えるだけで凄すぎるものなのだが、ただ魔力量は平凡であることに安心する。
そしてその規模の魔法を数発撃てるほどのロットの魔力量に改めて異常さと脅威を感じるケイトだった。
そしてクリアを喜び次の試練、塔の中がどんなものなのか各々情報交換などに勤しんでいた。
桃塔の勇者はあらかた治癒し終わるとロットたちに気がつき、孫にでもあったかのように微笑んでやってきた。
「ほっほっほ。突破したんじゃな。しかも無傷とは見事なものじゃ」
雷に打たれたのだ。クリアした者たちもそのほとんどが満身創痍であり、比較的耐久力に自信のあるものも少なからず傷を負っていた。
それなのに無傷で線をくぐってこれたのはロットたちくらいだったのだ。
「はい、と言ってもケイトのおかげですけど」
謙遜するロットに「運も実力じゃよ」と励まし背中を叩いた。
これだけ多くの冒険者が挑んだテスト、その大半が脱落する中無傷でクリアできる者と仲間だったというのも十分強さの証明になると桃塔の勇者は考えていた。
ロットはただのお世辞だと受け流し苦笑いを浮かべるにとどまったが。
「ところで桃塔の勇者様、黄塔の勇者の魔法凄かったですね」
会話が弾み始めたところでケイトがすかさず黄塔の勇者を話題にした。あれだけの規模と威力の魔法を撃つということがどれほど難しいか彼女は知っていた。
だからこそ目の前であの威力をいとも簡単そうに放たれて驚愕していたのだ。そして同じ勇者同士ならそのへんの話を詳しく聞けるのではないかと思っていた。
「あれはまだ手加減しているよ。数少ない最極魔法の使い手じゃからの。でないと倒れている者たちは丸焦げになっておったはずじゃよ」
ケイト自身先程の威力、範囲の魔法は最極魔法ではないかと思っていた。勇者であれば使えても不思議ではなかったからだ。しかしその威力があれでも抑えていたことを知らされて自分との実力差に内心驚いている。
「最極魔法……」
ケイトは考える。自分が放ってきた最極魔法とさっきの雷の魔法、威力は負けていないはずだが規模に関しては明らかに違う。
さらにはその威力さえも本気を出せば未知数ということなのだ。
自分の最極魔法と黄塔の最極魔法、同じであって違うもののような気がしていた。しかしそれがなぜそこまで差が出てしまうのかはわからずにいる。
「ケイトどうしたの?」
そんな内心を知られないよう誤魔化すように笑った。
「いえなんでもないわ」
立ち上がれるものは全員線を渡り、残りは雷に撃たれて哀れに痺れている大勢の冒険者だけとなる。
これだけの数が戦闘不能になっており、このまま放置するわけにも行かない。ただ治癒するにも動ける人が少ないため、どうするのだろうとロットたちは桃塔の勇者をみた。
桃塔の勇者の勇者は特に焦った様子もなく、他の勇者たちも助けに行く気配はなかった。
「ホッホッホ。では哀れな子たちを起こしてやろうかな」
桃塔の勇者は腰をさすりながら黄塔の勇者のところまで行くと、肩をトンと叩いて、「ごくろうさん」と言い入れ替わった。
緊張していたのか入れ替わる時に大きく息を吐く姿が見え、少し離れて桃塔の勇者の魔法を見守った。
「彼は治癒に関しては世界最強だよ」
気がつくとロットの隣に赤塔の勇者が立ち、面白そうに見ていた。同じ勇者に世界最強と言わせるほどの治癒がどんなものか、ケイトは逃すまいと真剣な眼差しで見つめた。
「恵みの雨」
両の手を広げ魔力を天に向かって放出していく。光の粒子が空いっぱいに広がっていき、先程雷を落としたように今度は雨を降らした。
雫が倒れている人たちに触れると淡い光が包みこむ。数秒後何事もなかったかのように立ち上がり始めた。一体何が起こったのか理解できていないものがほとんどで、手を開閉しながら体の自由を確かめるものや、痺れがなくなりホッとしていた。
「す、すごい。みんなあっという間に回復してる!」
「桃塔の勇者様、これって回復の最極魔法なんじゃないですか?」
またしても最極魔法を見ることができたケイトは驚愕する。紛れもなく治癒魔法のスペシャリストであることがわかった。
ただの歳老いた気のいい老人と思っていた自分を恥ずかしく思う。
「そうじゃのお。これも確かに最極魔法じゃよ。まあ歳だから一発で限度じゃがな」
ケイトに向かってウインクしながらそういった。それでも使えるだけで凄すぎるものなのだが、ただ魔力量は平凡であることに安心する。
そしてその規模の魔法を数発撃てるほどのロットの魔力量に改めて異常さと脅威を感じるケイトだった。
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