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第三部 勇者への道
「なんだお前も残ったのか」
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強烈な一撃を放った黄塔の勇者は大きく伸びをして「よし!」と気合を入れると狸の団で先頭に立って文句を言っていた男に向かい合った。
その瞬間仲間はあっという間に離れていて、男が振り向くと誰もいなくなっている。
卑怯だぞてめえら!そう叫ぼうとしたが恐怖から言葉を失い口をパクパクと開けるのが精一杯になっていた。それでも震える体に鞭打って、今にも魔法を撃ちそうな黄塔の勇者を見て大慌てで頭を下げた。
もはや額で穴を掘るんではないだろうかというくらい地面に押し付けた。
「ま、ま、ま、待ってくれ!やっぱりあんたらの試験は正しかったよ。文句を言わず俺たちは帰るとするよ」
「あれ、そうですか?では他の方はいますか?」
残念そうにそう言うと黄塔の勇者は他の者も見回した。狸の団に便乗して文句を言っていた者たちも一律に背筋を伸ばして首を横に振った。
解放された狸の団は一目散に逃げていく。
「皆さんどうしたんでしょうか?あれだけ張り切っていたのに」
首を傾げて本当に分からないと言った顔で黄塔の勇者は青塔の勇者に誘導されて後ろに下がった。その間際
「もう少し威力を上げたほうがよかったでしょうか?」
自分に否を探す彼女はそれを聞いていた者たちを震え上がらせることとなる。
「いや、アレで結構だ。だからこれ以上魔力を込めながら離さないでくれ。私も心臓に悪い」
呆れ顔の青塔が唯一彼女に声をかけていた。そして試験は終了を伝えられた。
突破したのは五十名だった。ロットとケイト、そしてアベンも残っていた。他にはロットたちのようにチームで生き残ったのか仲よさげな女性二人組や冒険者でも名のしれたパーティーのリーダー、超がつく荒くれ者、怪しげな笑みを浮かべて一人の話しているもの、貴族のような出で立ちで、髭を生やしたジェントルマンなど様々なものがいた。
「では無事突破した五十名は緑塔に挑戦してもらう。生き残って最上階までたどり着けば勇者となれるはずだ。それまでに力の限界を感じたときは死ぬ前に帰還石を使うように。では武運を祈る」
帰還石は突破後に配られていた。茜色の石で透き通った宝石のようにみえる。これを使用することで登録したポイントに転移できる便利アイテムである。ちなみに一つ金貨10枚はする高価なものになる。
今回はポイントが塔の入口になっているので使用すると塔を抜けられる。今回挑戦者を絞ったのもこれが原因だったりする。
前回黄塔の勇者を選別する時に自由に塔に出入りし、命を落とすものが後を絶たなかった。しかし全員に帰還石を渡すとなるとかなりの金貨が必要となるためテストという形で挑戦者を限定したのだった。
勇者といえども魔王討伐ができない今が常態化してしまっている現状、湯水のように金貨を使うことは許されていなかった。さすがに剣一本買えない支援しかしない国は今はもうないが。
「いよいよね」
「ちょっと緊張してきたな」
高価な帰還石を見つめながら緊張を言葉にする。石は持っているだけで、後は魔力を流し込んで「転移」ということで発動できるため二人は荷物の奥深くにしまっておいた。
「なんだお前らも突破していたのか!」
声をかけられたロットが振り向くとアベンが立っていた。ここにいるということは試験は突破したことになる。雷に直撃したのか髪や服がところどころ焦げていたが、桃塔の勇者の回復により支障はなさそうに見えた。
「まあね、アベン。君もすごいね、あれを耐えたの?」
「まあな、しかしガキだと思ってたけどやるじゃねえか。まさか突破するとは少し見直したぜ。ガキ呼ばわりして悪かったな」
手を差し出すアベン。実際にはケイトのおかげでもあったが再三運も実力と言われていたため「いいよ」とだけ言って握手を交わした。
「ただ勇者になるのはオレっちだぜい」
お互いに顔を見合わせて笑った。
生身で耐えるには相当の耐久がいるため驚くロットと、絶対にクリアできないとふんでいたのに2人して突破したことに感心するアベンは、ライバルとして意識し始めていたのだった。
「僕とケイトも負けないよ」
そして挑戦者たちは塔の中へと足を踏み入れていった。外から見ていたエレナとパンチからは
「きえた?」
挑戦者たちは光りに包まれて輝いたかと思うと次の瞬間には消えていた。
その瞬間仲間はあっという間に離れていて、男が振り向くと誰もいなくなっている。
卑怯だぞてめえら!そう叫ぼうとしたが恐怖から言葉を失い口をパクパクと開けるのが精一杯になっていた。それでも震える体に鞭打って、今にも魔法を撃ちそうな黄塔の勇者を見て大慌てで頭を下げた。
もはや額で穴を掘るんではないだろうかというくらい地面に押し付けた。
「ま、ま、ま、待ってくれ!やっぱりあんたらの試験は正しかったよ。文句を言わず俺たちは帰るとするよ」
「あれ、そうですか?では他の方はいますか?」
残念そうにそう言うと黄塔の勇者は他の者も見回した。狸の団に便乗して文句を言っていた者たちも一律に背筋を伸ばして首を横に振った。
解放された狸の団は一目散に逃げていく。
「皆さんどうしたんでしょうか?あれだけ張り切っていたのに」
首を傾げて本当に分からないと言った顔で黄塔の勇者は青塔の勇者に誘導されて後ろに下がった。その間際
「もう少し威力を上げたほうがよかったでしょうか?」
自分に否を探す彼女はそれを聞いていた者たちを震え上がらせることとなる。
「いや、アレで結構だ。だからこれ以上魔力を込めながら離さないでくれ。私も心臓に悪い」
呆れ顔の青塔が唯一彼女に声をかけていた。そして試験は終了を伝えられた。
突破したのは五十名だった。ロットとケイト、そしてアベンも残っていた。他にはロットたちのようにチームで生き残ったのか仲よさげな女性二人組や冒険者でも名のしれたパーティーのリーダー、超がつく荒くれ者、怪しげな笑みを浮かべて一人の話しているもの、貴族のような出で立ちで、髭を生やしたジェントルマンなど様々なものがいた。
「では無事突破した五十名は緑塔に挑戦してもらう。生き残って最上階までたどり着けば勇者となれるはずだ。それまでに力の限界を感じたときは死ぬ前に帰還石を使うように。では武運を祈る」
帰還石は突破後に配られていた。茜色の石で透き通った宝石のようにみえる。これを使用することで登録したポイントに転移できる便利アイテムである。ちなみに一つ金貨10枚はする高価なものになる。
今回はポイントが塔の入口になっているので使用すると塔を抜けられる。今回挑戦者を絞ったのもこれが原因だったりする。
前回黄塔の勇者を選別する時に自由に塔に出入りし、命を落とすものが後を絶たなかった。しかし全員に帰還石を渡すとなるとかなりの金貨が必要となるためテストという形で挑戦者を限定したのだった。
勇者といえども魔王討伐ができない今が常態化してしまっている現状、湯水のように金貨を使うことは許されていなかった。さすがに剣一本買えない支援しかしない国は今はもうないが。
「いよいよね」
「ちょっと緊張してきたな」
高価な帰還石を見つめながら緊張を言葉にする。石は持っているだけで、後は魔力を流し込んで「転移」ということで発動できるため二人は荷物の奥深くにしまっておいた。
「なんだお前らも突破していたのか!」
声をかけられたロットが振り向くとアベンが立っていた。ここにいるということは試験は突破したことになる。雷に直撃したのか髪や服がところどころ焦げていたが、桃塔の勇者の回復により支障はなさそうに見えた。
「まあね、アベン。君もすごいね、あれを耐えたの?」
「まあな、しかしガキだと思ってたけどやるじゃねえか。まさか突破するとは少し見直したぜ。ガキ呼ばわりして悪かったな」
手を差し出すアベン。実際にはケイトのおかげでもあったが再三運も実力と言われていたため「いいよ」とだけ言って握手を交わした。
「ただ勇者になるのはオレっちだぜい」
お互いに顔を見合わせて笑った。
生身で耐えるには相当の耐久がいるため驚くロットと、絶対にクリアできないとふんでいたのに2人して突破したことに感心するアベンは、ライバルとして意識し始めていたのだった。
「僕とケイトも負けないよ」
そして挑戦者たちは塔の中へと足を踏み入れていった。外から見ていたエレナとパンチからは
「きえた?」
挑戦者たちは光りに包まれて輝いたかと思うと次の瞬間には消えていた。
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