【2部まで完結!】使い捨てっ子世にはばかる!?~妹が最強の魔王になるかもしれない~

うろたんけ

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第三部 勇者への道

「私はロットがいればいいの」

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 それを見た男は勝機を見たりと満面の笑みを浮かべた。

「手を離しましたね!こんな弱い命のために! あなた程度の攻撃私に避けられないとでもお思いですか?」

 魔力の源であるロットが離れた今、唯一の脅威であったケイトの魔法は力を無くした。一気に形勢が覆り、勝てると確信した男もアベンをあっさりと手放した。

 もう反撃する力も残っていないアベンは解放されて力なく地面に突っ伏す。

 しかし自分の命を救うために哀れな選択をした仲間を見る。その目は悲しみに溢れていた。

「うおぉぉおお!」

 ロットの一撃は男が飛び退く形で避けられた。十分に距離をとった男は自分の安全を確信したが

「突獅!」

 彼の唯一の剣撃が襲いかかった。一撃目は避けられることを見越してその回避先に渾身の一撃を叩き込んだのだ。

 意表を突くことには成功した。しかし男にとっては脅威になり得ないもので、あっさりと腕を払ってかき消されてしまった。

 男は気がついていない。ロットが不自然なほど遠い距離から剣撃を放ったことを。人質になっていたアベンを手放してしまったのは悪手だったことを。



「避けたわね」

 ケイトが両の手を突き出して魔力を練っている姿が男の目に入る。

「なっ、あなた単体では魔力が足りないはずでは?」

 ハッタリだ。そう思った男はすぐさまニヤリと迎え撃とうとするがその異変に気がつく。

 ケイトを取り巻く驚異的な魔力量は減りつつあるが完全には消失していないことを。

「残念。魔力共有は手を離しても数秒は魔力が残るのよ。ま、足りないとこは気合よ」

 気が付いた時にはもう遅い。背を向けて少しでも遠くへ逃げようと足掻くがどんなに素早く離れたとしても回避することは不可能であった。

風刃波トルネードウェイブセブンス

 今日一番の威力で放たれたケイトの魔法は範囲を広げながら真っ直ぐと男へと近づいていく。凄まじい轟音は一瞬でたどり着き、最後のあがきとして全魔力を持って迎え撃つ男だったが、哀れにも瞬きをするまもなくかき消されて飲み込まれてしまう。

 死を察して表情が絶望に染まる。

「こ、こんなはずでは、私のやぼやぼぁぁぁああ!」

 醜く身体をくねらせて生き延びようとした男だったがやがて暴風に切り刻まれて塵となった。

 魔法の勢いは留まらずそのまま塔の壁を突き破り空の雲を突き抜けて大穴を開けて消えていく。塔の壁は再生能力を持っているらしく傷が癒えるようにあっという間に修復された。

 あたりは静まり生き残ったロット達はしばらく放心していた。それほどケイトの魔法は凄まじく、強かった。

「勝った」

 トリィが腰を抜かしながらようやく呟いた。

「やりましたぁ」

 それを皮切りに他の者も口が動き始める。

「やったぜいロット!」

 喜びを分かち合おうとロットに近づくが、彼は一瞥もくれずに走り出した。

「ケイト!」

 その先には仰向けで倒れ、目鼻口から血を垂れ流しているケイトがいた。

「あ、はは……ちょっと、魔力足りなかったみたい」

 弱々しくそう言うと今にも意識が途切れそうになっている。以前魔族との戦闘で同じような症状になったが、その時よりも明らかに悪いのは目に見えてわかった。

「なんだ、どうしたんだ?」

 事情を知らないアベンたちが集まってくる。四人で心配そうにケイトを覗き込んだ。

「さっきの魔法は魔力が足りなかったんだ。それなのに無理矢理撃ったから体力が削られたんだと思う。前もあったんだ。……死なないとは思うけど早く回復魔法が使える人のところにいかないと」

 ロットは3人にそう説明するとケイトを抱きかかえて帰還石を取り出した。

「ま、まて。勇者はどうすんだよ」

 ケイトの体調も心配だが、あと一歩で勇者となれる。そしてそれがふさわしいのはロットかケイトと思っていたアベンは聞かずにいられなかった。

 ロットは考える素振りもなく

「僕はアベンでいいと思う。あの場で一番勇者らしかったよ」

 と言った。

「わたしもアベンさんが勇者なら文句ないですぅ」

「私もだ。何より私たちを守ってくれたからな」

 同乗するようにクリスとトリィも言った。視線が自分に集まるアベンは自分が選ばれると思っておらず困惑を顔に出した。

「でもそれならケイトさんが一番強いじゃねぇか」

 四天王と名乗るあの実力の魔族を倒してみせたケイト。一方薄い切り傷を作ることが精一杯だった自分と比べればどちらが強いかは一目瞭然だった。

 アベンとしては勇者は強きものが成ると考えていたので納得がいかない。

「や、あね。私は、ロットがいればいい、わ。勇者には、興味ないの」

 息も絶え絶えなケイトがそういった。血を流しながらも笑顔をつくった。真の最極魔法の糸口をつかんだ。それだけで満足していた。

「満場一致だね。僕はケイトと先に帰るから、勇者になった姿を後で見せてね」

「私たちも帰るよ。もしよかったら、せっかくの縁だしアベンさんのパーティーに入れて欲しい」 

「わたしもそれがいいですぅ!勇者パーティーですぅ」

 アベンに勇者を託すことに決定した4人は帰還を決意した。その表情は晴れやかで誰一人文句はなかった。彼ももやがて折れて受け入れた。勇者を目指してやってきたが、一緒に戦った仲間とパーティーになるのも悪くないな、そんなことを思いながら。
「わ、わかったよい。じゃあ、頼んだ。また後でな!」


 光りに包まれて塔から脱出する4人に向かってそう言った。
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