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チュートリアル⑤

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よぉし…!!


名誉挽回のチャンスとばかりに僕はこの本日の最終レースに臨むことにした。


「ダーリン!!」

「パパ~!!」

「優也さぁん!!」

「優也くん…!!」



スタンド席からのみんなの声援を受けながらスタート位置に着く…



「姉ちゃん…準備は万端やで…」

「ホントに…?あの方と一緒に…⁉︎」

「まあ…黙って見ててーな!!」



「位置について…よーい……ドン!!!」


全速力で第一コーナーを駆け抜けたその少し先に…



カサカサカサカサ……


えーっと………


僕が観覧席から借りてくるものは………





……………可愛い姉妹……⁉︎




姉妹だって⁉︎



き、急に言われても……



……でも、こうしちゃいられない!!!






「す、すいませ~ん……

この中に女の子の………」




「殿~!!!」


「うっ…!!!な、な、なんで……」



可愛いアラビア衣装に身を包んだ可愛い女の子が僕に向かって手を振っている…


「か、彼女がいるということは……」



「優也様…お久しぶりでございます…」



彼女の隣で…よく似た美人の…しかし褐色の肌で少し大人びた女性が会釈している…




「殿!!!早うウチら連れて行かんと1着になれへんよ~!!!」




———というわけで。




……エヘヘヘヘ……!!!



……ハァ……




僕はトラックを走っている…


両腕を満面の笑みの美女二人にガッチリとホールドされながら…




「エヘヘ…殿と一緒に走るの楽しいわぁ!!!」


「すみません…妹が…

ここにくれば優也様と走れると…」



「う…ううん…協力してくれてありがとう…

さあ…一緒にゴールを目指そう!!」





……このソックリな顔の…

しかし正反対の性格の美人姉妹は…


魔界の三国大陸より海を超えたはるかに西の大陸…

バビロナ王朝の双子の王女…


姉で国王のジーニャ王女と妹のジーナ王女だ。



ある日、海を超えて妹のジーナは僕達に助けを求めに来た…







聞けばジュエラ国王を名乗る輩が国を乗っ取ろうとしているらしい…


それを聞いてバビロナに皆で乗り込んだのだが…



「お帰りください!!これ以上は内政干渉です!!」



姉のジーニャは悲しい瞳で優也達を追い返した…



しかしその裏でジュエラ国王を名乗っていたのは優也達が懲らしめて国外追放したはずのイミテであった。



責任は優也達もある事が分かったので奴を懲らしめようとしたのだが…


「これ以上もうバビロナに関わらないで……!!」



実はバビロナ王朝とは千年以上に栄えた王朝で他国に侵略された際、ジーニャと将来を誓い合ったシャブリヤール王子はジーナとジーニャや多くの国民を逃がしたのだが…

皆、侵略国家によって命を奪われてしまった…


あわれに思った精霊の女王…マザーハーロットは自身の裁量で皆を精霊としてこの世に残す事にした。


やがて…その侵略国家も他に侵略されて滅び…


千年近く…忘れられた王朝をずっと守ってきたジーニャとジーナ。


ジーニャはもう二度と国民の生命を危険に晒したくは無かった…


だからイミテを受け入れて彼と自分でこの国を守って行く事が悪い事ではないと思っていた…


しかし…


「君はそれで本当に満足なの…

本当に君は幸せなの…⁉︎」


「シャブリヤール様は皆の幸せを望めばこそ私達を逃がしてくれた…



でも…許して…私の力では…」



姉とは逆に自分達の誇りを取り戻すため、仲間たちと立ち上がるジーナ…



あってはならない姉と妹の対立……



しかし、イミテのジーナやバビロナを踏みにじるような発言にようやくジーニャは優也達と共に戦う事を決意するのだった…





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