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ホンマか?

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僕の側には実体化したヴァルが立っていた。

「おい!!ゴルドにマサムネ!!お前ら揃いも揃って優也にばかり無理させおって…

優也は今でこそ魔法も使えるが元はと言えばわらわ達が昔、嫌っていた人間じゃぞ…

魔法使いとしての誇りはないのか?恥を知れ…恥を!」

「す、すみません…師匠…」


「じゃが…わらわもお前達のことは言えぬわ…

優也から大切な事を学ばせてもらった一人じゃからの…」




「分かりました!私…ダーリンと一緒に牢屋に入ります!旦那様一人に辛い想いをさせられないもの…」

「それなら私も…」

「いいえ…ここは二人より年上の私が入ったほうが…」


ティナの言葉にナギさんと愛ちゃんが反応した…




ヴァルは大きなため息を一つ吐いた…


「おい!!そこの乳デカコンビとキツイ性格のお前…

今、お前達が国王職を担っているとは思えんほど愚の骨頂じゃ…ハァ…

よいか!お主ら…惚れた男のやる事を黙って見守ってやる器量の女はおらんのか?そんな事でよく国を治めておるな!全く…嘆かわしい…

おい!ダイナ…エクス…パルテ!」



ヴァルが叫ぶと三人の守護…英霊様達が実体化して現れた。

「あの娘達はそれぞれお前達の子孫であろう…もう少し指導してやれ…!」

「ぎょ、御意にございます…」


三人の英霊様達は少し引きつった表情でヴァルの話を聞いておられる…怒られた伝説の三人娘は俯いて黙ってしまった…



お義父さんも苦笑いしながら指で頬を掻かれ、マサムネさんは右手で顔を覆っておられる…



「ヴァル…ありがとう!じゃあ…マサムネさん!お願いします」


「本当にいいのだな…婿殿よ…」


「はい。彼女と向き合って話を聞いてもらえるように頑張ってみます…」



ジーナさんをチラッと見た僕はそっぽを向いているその姿が本当は自分を助けて欲しくて拗ねている…

彼女がまるでそんな妹キャラのような気がして、何だかその可愛さに少し顔がほころんでしまった。


微笑んでいる僕をマサムネさんは不思議そうに見た…


「婿殿?」

「あ、す、すみません…」


マサムネさんがパチンと指を鳴らすと牢屋の鍵が外れた…

「では何かあれば呼んでくれて結構じゃからの…この牢屋は魔法は使えないがテレパシー程度なら可能じゃ…大変心苦しいが…婿殿…任せたぞ…」


「はい。分かりました…」


「ダーリン…頑張ってね…何でも欲しい物があれば言ってね…」

「ティナ…申し訳ないけど彼女の壺を持ってきてもらえるかな?」

「壺を…?分かりました…」

ティナが指を鳴らすと壺がティナの手の中に現れた。

「はい。あなた…」

「ありがとう…ティナ…ミスとリルを頼むよ…」

「ダーリン…ジュエラの…私の故郷の事なのに…あ
なたにこんな辛い想いをさせてしまって…ううう…」


「何言ってるんだよ…夫婦だから当たり前じゃないか…それにここならゆっくりとジーナさんと話し合えるさ…じゃあ、君はジュエラに戻っていて…」

「……」

マサムネさんとナギさん以外の皆さんは名残惜しそうに帰って行った…


「さて…」


僕はジーナさんの側に行くと壺を彼女に差し出した。


「君に返しておくよ…それと僕がジュエラと関係があることを黙っていて悪かった…ゴメンよ…」

ジーナさんは僕の手から壺を強引に取り上げた。

「フン!…もう誰も信用出来んわ…

姉ちゃんの魔法封印の栓…あれは邪気が少しでも感じられる者には抜けんようになってる。アンタはウチの封印を解いてくれてウチが今まで出会った誰よりも優しくしてくれた…

ああ…この人がウチの殿になる人なんやと思った…
嬉しかったんや…

あの方にとても似てたから…」

「…あの方…?」

「そやけどジュエラの身内やったなんて…信じた分、自分が腹立たしいわ!」

「ジュエラ王族にはそんな悪い人はいないよ…誤解なんだ…」

「そんなん信じられる訳無いやろ!ウチをこんな目に合わせておいて…」

「じゃあ君の気の済むようにしたらいい…僕に出来る事なら何でもするよ…」



優也の言葉にジーナは「ホンマか?ホンマに何でもするんか…?」とニヤリと笑った。
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