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ロジャー将軍

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「さあて…」

ビュン!!

茂みに飛び込んだフェンリルはすごい速さで森の奥深くへと駆けて行く…


そしてジャングルの中央辺り…日があまり差し込まない奥深くまで進んで来た時、彼は足を止めた。

彼の視線は太い幹の木の枝に注がれている…


「アンタがここの親玉かい…?」


フェンリルが声をかけると暗闇に二つの大きな目が浮かび上がった…

「親玉…そういう訳ではないのだが…
昔からの色々な事に詳しいというだけじゃよ…

ホッホッホ…」

声の主は大きな白いミミズクだった。
大きな目を暗闇に光らせてフェンリルを見つめている…

「勝手に上がり込んで申し訳ない…俺は海の向こうの大陸から来た者でな…一つ頼みがあって来たんだ…」

「ほう…お主、魔法使いの棲む大陸から来たのじゃな…」

「そうだ。すまないがこのジャングルの向こう側に用事があって…俺の友人達と一緒に森を通らせて頂きたいのだが…」

「そうか…して、お主の名は…?」

「…申し遅れたな…俺はフェンリル…アンタと同じ、大地の精霊さ…」

「ほう…やはりな…ワシはロジャーだ…みんなが勝手に将軍と呼んでおる…フェンリル殿…一つお主に伺いたいのじゃが…」

「何だい?将軍殿?」

「何故…森の向こう側へ向かおうとしておるのかの?」

「ああ…友人がバビロナ王朝に用があって…」


「…なんと!バビロナ王朝とな…!」


「将軍殿…バビロナ王朝がどうしたんだい?」


「お前さん達…王朝の事を知らないのかな?」


「ああ…バビロナ出身の娘を国まで送って来たんだよ…」

「……!」


フェンリルの話にロジャーは驚きを隠せない様子でしばらく考え込んだ…


そしてゆっくりと口を開いた…「フェンリル殿…悪いことは言わん!!引き返した方が良いぞ…」


「何か訳があるようだな…」


「…伝えなくてはならんな…実はバビロナ王朝はな……」









暫くしてフェンリルは森を出てナギの元へ帰って来た…

「待たせたな…話はつけてきた…ナギ!向こう側へ行こうぜ…!」


「ありがとうございます…」

ナギさんはフェンリルに向かって微笑んだ後、森に正対するように立った…

そして手を前に突き出して全身に気を込めていく…



彼女を緑のオーラが包み込んでいく…

ナギさんの姿と彼女のご先祖で守護霊である伝説の魔女…エクスさんの姿が重なって見えている…


「大いなる母なる大地から生まれし緑よ…我等に道を示し給え…」



ゴゴゴゴゴゴ…


「キャッ!!」「な、なんや…!!」


キャットファイトをしていたティナとジーナさんも大きな地響きに驚いて一時休戦となった…

ナギさんの言葉に呼応するかのように大地の音が聞こえ出す…


森の木々が少しずつ動き出し…僕達の前に一筋の道がひらけた。


「さあ…皆さん行きましょう…」


ナギさんの合図に深いジャングルとジャングルの間に出来た細い道を僕達は歩き始めた…



バビロナ王朝は本当にこの先にあるのだろうか…?
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