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信じてくれたから…
しおりを挟む僕達は左右両側に森の木々を見ながら先の見えない一本道をひたすらに歩き続けた。
何気なくふと振り返ると左右に分かれていた森が一つに戻っていく…
前を向き直した僕はこの道をひたすら歩いて行く以外にもう後戻りは出来ない事を確信した…
するとジーナが突然叫んだ…
「ああ…懐かしい香りがしてきたわ…
間違いない!ここはウチの故郷や!」
「なあ…姉ちゃん…ちょっといいかい?」
故郷に戻ってきてはしゃいでいるジーナに声をかけたのは意外にもナギさんと一緒にいるフェンリルだった…
「なんや!オオカミちゃんかいな?ウチに何か用か?」
「姉ちゃん…さっきロジャーっていう森の親玉に会ってきたよ…」
「将軍…!!さ、さあ…誰やねん?ウ、ウチは知らんで…!!」
「そう…アンタの知り合いのその将軍がな、バビロナについて教えてくれたよ…」
「な、何て…?」
「バビロナ王朝は確かにこの先にある…しかし王朝は千年以上前に滅びて遺跡が残っているだけ…おかしいよなぁ…バビロナが故郷なんて…姉ちゃん…アンタ何者なんだい?」
「……」
ジーナは黙って俯いてしまった。
すると僕の側にヴァルが実体化して現れた…
「その精霊の言ってる事は本当じゃ…わらわもパルテに調べさせた…かつて千年王国とまで言われたバビロナ王朝はもう…」
ヴァルの言葉が後押しとなり、そこにいる全員がジーナさんをじっと見つめた。
「ちょ、ちょっと待ってよ…」
僕はその場の悪くなった雰囲気を何とか変えたくてジーナさんに歩み寄った。
「ジーナ…君は本当にバビロナの人なんだよね…」
「はい…」
俯いたまま頷くジーナ…
「ご家族…お姉さんが辛い目に遭ってるかもしれないのを何とか助けたいんだよね…」
彼女は目に涙を浮かべながら僕の目を見て言葉を絞り出した…
「…殿…信じてください!ウチは…ウチは…ううう…」
「信じてるよ…」
優也の言葉に皆が一斉に二人の方を見た。
「だって君は例え海に落ちようとも何とかしてバビロナに帰ろうとしてたじゃないか…
人を騙して何とかしようとしている人に見えないよ…」
それぞれが優也の言葉を聞いて…
プラティナは思った…
「そうだ…私が何者だろうとダーリンは変わらない優しさで私を包んでくれた…だから今の私があるんだ…」
ナギは思った…
「そうだわ…私が毒に侵された時、優也さんは何とか助けようとありったけの力で頑張ってくれたわ…だから私、優也さんの事を…」
アイは思った…
「…優也くんは人質を取って自分の国の行く末ばかり考えていた私に決められた未来ではなく自分で切り拓いていく未来を教えてくれたわ…
今、ミラールを良い方向に導けているのだとしたらあの時、彼が私を信じてくれたから…」
フェンリルも…
「そんな優也だから俺は助けてやろうと思ったんだよな…」
口元に笑みを浮かべている…
そしてヴァルプルギスも…
「わらわを怖がったり忌み嫌う者ばかり…優也だけがわらわを一人の魔法使いとして愛してくれた…
ホホホ…わらわとした事が…ちと先走ってしまったかのう…」
そこにいる全員がジーナの肩に手をそっと差し伸べた。
「アンタら…」
「私達…全員…ダーリンが信じてくれたからこうして一緒にいられるの…」
プラティナの言葉にみんなが頷いた。
「そうだよ…君が何者だなんて関係ない。君の大事な人達をジュエラ王を騙《かた》る奴から守らないとね…さあ!バビロナへ向かおう!」
僕達は再び歩き始めた…
ジーナは涙を指で拭って笑顔を見せた…
「やっぱりウチの殿は凄いわ!ウチ…ホンマに好きになって良かった!」
優也の背中に飛びつくようにジーナは思いっきり抱
きついた…
「まぁ…」
ナギやアイはジーナの積極的な行動に驚いたのだが…
とりわけプラティナはそれを見て怒りの沸点が頂点に達した。
「もう!私のダーリンだからね!あーん…やっぱりこんな事に首を突っ込まなきゃ良かった~!」
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