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大切な人
しおりを挟む「ねぇ…お店には内緒で私とイイコトしない…?」
春菜さんの顔が段々と僕に近づいてくる…
「へっ…?イイコトって…あ、あれ…?」
…周りを見渡すとトモヤ達の姿はない…
「もう他のお客様はとっくの昔に帰られたわ…
ボーイさん…最後のお客様がお帰りよ…
チェックして!!」
そう言って険しい表情になった彼女は、ボーイから受け取った伝票を僕に渡してきた…
「い、いち…じゅう…ひゃく…せん…まん…!!
じゅうまん…!!」
「払えなかったら…カラダで払ってもらうしか無いわね…」
その時、僕の足元がガラガラと音を立てて崩れ始めた…
…わあぁぁぁぁぁ!……はっ!!
ベッドの上で目が覚めて、ガラステーブルの隅にある名刺を手に取って昨夜のことを思い出す。
…あ、あの時の女の子…
おそらくは春奈さんを忘れていたのは介抱した女の子に無我夢中で顔をあまり見ていなかったのと、髪型や服装が違ったことの二点だろう。
先輩とトモヤは店で自分に付いてくれたのが好みのタイプの女の子だったらしく、終電で帰るための駅への帰り道で…
「カオリちゃんは俺が好きみたい」だの…
「ユミちゃんか今の彼女で悩んじゃう」とか…
幸せな人達が近くにいました。ハイ。
でも、エレベーターを降りる時に見送ってくれた春奈さん、口唇に人差し指を当ててウインクしてた。とても綺麗で可愛いかった…
ピロロン!!
その時、スマホに結衣からおはようのメッセージが届いた。
僕はドキッとした。そして自分の優柔不断さを恥じた。
何やってんだ…これじゃ先輩やトモヤと変わりゃしない。自分には結衣が、大事な彼女がいるじゃないか?
たまたまお店で出会った女の子のことは忘れて、可愛い彼女を大切にしなきゃ。
僕は結衣におはようと返信する時、夏休みに海にでも行かない?と訊いた。
結衣からの返事は「もちろんOK」のスタンプだった。
どこの海に行こうかなぁ。
ふと、足元を見ると春奈さんの名刺がテーブルから落ちていた。
よく見ると裏に携帯番号が書いてあった。
名刺をテーブルに置き直したものの…
所詮彼女とは棲んでいる世界が違う。
僕からはかけることはないよな…
確かにこの番号に自分からかけることはなかったのだが…
ピピピピ…
数日後、僕のスマホに着信があった。
誰だろう?
通話ボタンを押してみる…
「もしもし宮田さんですか?」
表示されている番号には見覚えがあった。
ふと目をやったテーブルの上の名刺に書いてある番号だった。
「はい。そうです。」
「突然のお電話…すみません!!実は…お願いがありまして…」
「はい?」
「チケットを買ってほしいんです!!」
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