25 / 134
私が守らないと…
しおりを挟む次の日、結衣とは三条駅で待ち合わせをして鴨川の河原に向かった。
彼女はもうメイクをしていない…
高校生の彼女にはやはり自然な可愛い素顔の方が似合っていて良いと僕は改めて思った。
河面を揺らす風が心地良く頬を撫でる…
ふと結衣に目を遣ると三条大橋から見える景色にはしゃぐいつもの元気な彼女ではなく、やっぱりまだ昨日のことを気にしている様子だ。
河原に腰を下ろして僕は結衣に昨日の夜のことを話し始めた…
「…昨日、帰りが遅くなったのは実は結衣のお姉ちゃんと夕食を食べながらお話をしていたんだ。
結衣は僕のことが大好きだから大切にしてあげてって言われたよ。」
結衣は少し驚いた表情を見せた後、心配そうに…
「そう…
お姉ちゃん…翔くんに私の事…何か言った?」
「きっとお姉ちゃんは結衣が高校生だと僕が知って、二人の間に何かあったらと気にしてくれたんだと思う。いいお姉ちゃんだね。僕は兄弟がいないから…うらやましいなぁ。
そして結衣が僕のことを好きになってくれたきっかけも話してくれようとしたんだ。」
「翔くん、聞いちゃった?」
「いや、結衣の口から直接聞いた方がいいから断ったよ。結衣と僕のことだからね。」
「…大雨の日…」
「え…?」
彼女は俯き加減のまま、ゆっくりと話し始めた……
「大雨の日に友達と一緒に駅から帰る時にね…鞄の中の折り畳みを探してた…
私…その時、うっかりペンケースを落として、拾おうとして逆に慌てちゃってそのペンケース…自分で蹴飛ばしちゃって…
傘も差せないくらいの激しい土砂降りの雨の中にペンケースが…
どうしよう……
そう思った時、その男の人は躊躇いも無く、ずぶ濡れになるのに雨の中に私のペンケースを取りに…」
「………」
「ずぶ濡れで私のペンケースを…
ニコッと笑って隣にいた私の友達に渡して…
人混みの中へ…」
「…ペンケース…あの子のじゃなかったんだ…」
「私も友達もお礼も何も言えないくらいビックリして…知らない私のために…あんなになって…」
僕の隣で結衣の大きな瞳から今にも涙が溢れ落ちようとしている…
「友達は優しい人がいて良かったね…と言ったけど、私はそうは思えなかった。
もし…知らない人のために心の優しい純粋なあなたがまた酷い目に合うことがあるかもしれないなんて…私、耐えられないよ…
私があなたを守らないと…
ずっと一緒にいて守ってあげないと!!
でも…私は高校生。あなたは…多分、大学生だと思って、私のような子供が相手にされないかなと思ったんだ。
だから…何度も何度も考えて、あなたを探し出して…手紙を渡したの…
もしもあなたとお付き合いすることが出来たなら…
ずっと一緒にいれると思って…
…大学生の男の人って合コンしたり、バイトで出会った綺麗な女の子と付き合ったりするんでしょ?
どうしても…あなたを他の人に渡したくなくて…焦っちゃった!!
お姉ちゃんに教えて貰って…
似合わないお化粧なんかして…
バカだね…私…」
結衣はそこまで言うと人目もはばからず、目から大粒の涙を流した。
「結衣…」
僕も人目を気にせず…
いや、彼女しか目に入らずに強く結衣を抱きしめた…。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
妖精王の住処
穴澤空
キャラ文芸
一人暮らしの会社員葉月弥生は、庭付きの賃貸アパートに住んでいる。そこでガーデニングをするのが、彼女の楽しみだった。
ある日通販で購入したバラの苗に、手のひらサイズの妖精の王が昼寝をしているまま届いてしまう。その妖精王は目を覚ますと「妖精王オベロンの後継である、妖精王オールベロン」と名乗った。彼は弥生の作る庭とご飯を気に入り、弥生と生活を共にすると決めてしまう。そこから、二人の生活が始まり――。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
あやかしたちのとまりぎの日常
彩世幻夜
キャラ文芸
吉祥寺は井の頭公園界隈の一画で、ひっそりと営業するダイニング・バー【ペルシュ】に訪れるお客の大半はひとではないもの、いわゆるあやかしたち。
勿論店の店主や店員もまた人ではない。
そんな店でバイトをするとある専門学校生とあやかしたちが織りなす〝日常(?)〟物語
烏の王と宵の花嫁
水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。
唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。
その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。
ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。
死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。
※初出2024年7月
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる