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ギターの女王
しおりを挟むその日の帰り道…
「お姉ちゃん大丈夫かな?」と悲しげな表情で話す結衣に「お姉ちゃんは…結真は…そんな弱い女じゃないよ。」と励ました。
でも実は…『本当は自分にもそう言い聞かせているんだろうか…?』と僕は自問自答していた。
結衣を駅まで見送ると、僕も家路につく。
駅から地上に出ると雨が降っているのに気づく。
少しは濡れるかもしれないが…仕方なく走って帰った。
シャワーを浴びている時に部屋のインターホンが鳴った。
ドアを開けると…
そこにはずぶ濡れの結真が立っていた。
「結真…」
彼女は「弾けない。弾けなくなっちゃった。」と小さな声で呟いた。
僕はとりあえず結真を部屋にあげた。
シャワーを用意して、結衣のルームウェアを渡した。
彼女が着替えて出てきた。
表情は暗く、いつもの笑顔のかけらも見えない。
僕は結真に問いかけた。
「何かあったの…?誰にも言わないから話してよ…」
しかし…その問いに結真は首を横に振るだけである。
しばらく沈黙が続き、彼女がゆっくり口を開く。
「あたしね、小さな頃、近所のお姉ちゃんが
ギターを弾いててね。その音色が好きだった。
結衣は動物が好きで、動物を飼って世話ばっかりしてたけど、私は誕生日に買ってもらったオモチャのギターをいつも肌身離さず持ち歩いて、寝る時も一緒だった。
将来はギタリストになって、沢山の人に私の音を聴いてもらうのが夢。
ギターの女王になるんだってそう決めてた。
大好きなギターなのに、もう私の言うことを聞いてくれない。
…私はギターに見放されたんだ。」
そういうと、結真が大粒の涙を流した。
「こんなこと、誰にも相談できない。したくない。結衣にも…優花にも。あんたの所へ来たのは迷惑だってわかってる。
でも…もう、あんたしかいないの。私を助けて。」
そういうと結真は僕に近づいて、そしていきなり口唇を重ねてきた。
僕は驚いて結真の両腕を掴んでベッドに倒した。
仰向けになった彼女は僕の目を真っ直ぐに見つめる…
結真のその瞳は冗談や自棄になっているようには思えなかった。
「…結衣には黙っとくよ。」
そう呟いた結真をそっと起こして、ギュッと抱きしめた。
結真はそっと目を閉じた。
抱きしめたまま、僕は結真に、
「ギターが結真を見放す筈は無い。
きっと結真の気持ちに応えてくれる。
僕は信じてる。」
そう言うと台所に行き、コーヒーを入れる…
ブラックにバターをひと塊り落とした。
結真に手渡すとそれを一口含んだ彼女は、
「うえっ!何だこれ!でも効くねえ!
今日は泊まってくよ。服、干しといて。
それからあたしがベッド使うからね!!」
…いつもの結真に戻った。
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