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信じてくれたお礼
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結真はゲレンデに出ると周りの人の滑り方をじっと観察した。
「なるほど…要は体重移動だね。」
僕は結真にはペンデュラム、いわゆる木の葉滑りを教えるよりも「頭をブレささずに中心にしてボードが8の字を描くようにすると良いよ!」とコツを伝えると、すぐにスラロームが出来る様になった。
流石、音楽をやっているだけあって、そこはリズム感バッチリである。
結衣には両手をつないで、ペンデュラムを教える。谷側に背を向ける方は景色が見えなくて面白く無いかなと思って、僕が引き受ける。僕は結衣の姿だけ見えていれば大満足だ。
「最初はボードを少しずつずらして行けばずらした方向に動き出すよ。」「ホントだ!」
結衣も木の葉の動きを理解して、少しだけど一人で滑れるようになった。
……後はこの人だな。
「ああ~ん。翔ちゃん。助けてぇ。ウチ、ホンマに怖いんや。手ぇ離さんといてな。あっ!」
逆エッジで僕の身体の方に優花さんが倒れこんで二人は雪の上に投げ出されて重なりあった。
優花さんが僕の上で、「なぁ、翔ちゃん。この後、どっかで続きしよう。ウチ、ちゃんとゴムも用意してあるさかい…」
「○★$☆%#✖️〒~!!!!!」
その様子を見ていた結衣がゲレンデ中に響き渡るような剣幕で怒っている。当たり前だが…
何とか優花さんを説得して、ペンデュラムを教えたら結真と同じように方向転換ぐらいは出来るようになった。優花さんもやっぱりリズム感抜群である。
僕らは昼食や何度か休憩を入れながら日が傾くまでスキーやボードを満喫した。
ペンションに戻ると、豪華な夕食で僕らは大満足した。美しい盛り付けの前菜、白身魚のポワレ、最後のデザートのケーキに至るまで本当に最高だった。
……それぞれ入浴も済ませ、僕は暖炉の前で就寝までの間、のんびりしようと二階の部屋から下に降りて行った。
そこには結真が一人で座っていた。
「よう。」「よう。結衣は?」
「まだお風呂。ここ、大浴場が本当に気持ち良くってさ、長湯するんだってさ。」
僕は結真の横に座った。すると結真が
「ちょっと待ってて。」
慌てて階段を駆け上がり部屋の方へ走っていく。そしてまたすぐに僕の所へ戻って来た。
「お待たせ…」そう言って彼女は元の場所に座り直した。
大きな薪ストーブの中の火をお互いに見つめる…
「な、なあ…翔…」彼女は少し改まった様子で口を開いた。
「その…あんたには、オーディションで本当に世話になってしまって…ずっとお礼を言わなきゃって思ってたけど中々機会が無くて…
あの時、あたし…会場でずっとあんたの姿を探してた。
あたしを助けて欲しかったから。
でも…あんたはあたしを助けるよりもあたしを信じて言葉をかけてくれた。会場の音で他の人の声は全く聞こえなかったけど、あんたの言葉は私の心に刺さったよ。
これからもあんたがくれた音を大切にしていくよ…
私からの気持ち。これを受け取って欲しいんだ。」
そう言って結真は僕にプレゼントの袋を渡してくれた。「開けていい?」結真は頷いた。
中の箱を開けると…腕時計が入っていた。
「結真…ありがとう。ずっと大切にするよ。」
結真は真っ赤になって、
「暑い、この部屋暑いなぁ。じゃあ戻るよ。おやすみ!」
「おやすみ!」
二階に上がって行く結真の姿を見送った。
雪山のペンションの静けさの中…さっきの真心のこもった結真の言葉がもう一度僕の中で蘇って涙が一筋、僕の頬を伝った。
「なるほど…要は体重移動だね。」
僕は結真にはペンデュラム、いわゆる木の葉滑りを教えるよりも「頭をブレささずに中心にしてボードが8の字を描くようにすると良いよ!」とコツを伝えると、すぐにスラロームが出来る様になった。
流石、音楽をやっているだけあって、そこはリズム感バッチリである。
結衣には両手をつないで、ペンデュラムを教える。谷側に背を向ける方は景色が見えなくて面白く無いかなと思って、僕が引き受ける。僕は結衣の姿だけ見えていれば大満足だ。
「最初はボードを少しずつずらして行けばずらした方向に動き出すよ。」「ホントだ!」
結衣も木の葉の動きを理解して、少しだけど一人で滑れるようになった。
……後はこの人だな。
「ああ~ん。翔ちゃん。助けてぇ。ウチ、ホンマに怖いんや。手ぇ離さんといてな。あっ!」
逆エッジで僕の身体の方に優花さんが倒れこんで二人は雪の上に投げ出されて重なりあった。
優花さんが僕の上で、「なぁ、翔ちゃん。この後、どっかで続きしよう。ウチ、ちゃんとゴムも用意してあるさかい…」
「○★$☆%#✖️〒~!!!!!」
その様子を見ていた結衣がゲレンデ中に響き渡るような剣幕で怒っている。当たり前だが…
何とか優花さんを説得して、ペンデュラムを教えたら結真と同じように方向転換ぐらいは出来るようになった。優花さんもやっぱりリズム感抜群である。
僕らは昼食や何度か休憩を入れながら日が傾くまでスキーやボードを満喫した。
ペンションに戻ると、豪華な夕食で僕らは大満足した。美しい盛り付けの前菜、白身魚のポワレ、最後のデザートのケーキに至るまで本当に最高だった。
……それぞれ入浴も済ませ、僕は暖炉の前で就寝までの間、のんびりしようと二階の部屋から下に降りて行った。
そこには結真が一人で座っていた。
「よう。」「よう。結衣は?」
「まだお風呂。ここ、大浴場が本当に気持ち良くってさ、長湯するんだってさ。」
僕は結真の横に座った。すると結真が
「ちょっと待ってて。」
慌てて階段を駆け上がり部屋の方へ走っていく。そしてまたすぐに僕の所へ戻って来た。
「お待たせ…」そう言って彼女は元の場所に座り直した。
大きな薪ストーブの中の火をお互いに見つめる…
「な、なあ…翔…」彼女は少し改まった様子で口を開いた。
「その…あんたには、オーディションで本当に世話になってしまって…ずっとお礼を言わなきゃって思ってたけど中々機会が無くて…
あの時、あたし…会場でずっとあんたの姿を探してた。
あたしを助けて欲しかったから。
でも…あんたはあたしを助けるよりもあたしを信じて言葉をかけてくれた。会場の音で他の人の声は全く聞こえなかったけど、あんたの言葉は私の心に刺さったよ。
これからもあんたがくれた音を大切にしていくよ…
私からの気持ち。これを受け取って欲しいんだ。」
そう言って結真は僕にプレゼントの袋を渡してくれた。「開けていい?」結真は頷いた。
中の箱を開けると…腕時計が入っていた。
「結真…ありがとう。ずっと大切にするよ。」
結真は真っ赤になって、
「暑い、この部屋暑いなぁ。じゃあ戻るよ。おやすみ!」
「おやすみ!」
二階に上がって行く結真の姿を見送った。
雪山のペンションの静けさの中…さっきの真心のこもった結真の言葉がもう一度僕の中で蘇って涙が一筋、僕の頬を伝った。
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