sweet sweet pain〜幸せになるためのstory〜

奏 隼人

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無作法

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「これはうちとした事が…さあ、二人とも上がっておくれやす。」

僕と優花さんは奥の間に通された。掛け軸に高そうな陶器、障子を開けると庭園が見えるといったそうそうお目にかかれない場所に身を置いている。

無作法な僕が恥ずかしくなる位に完璧な作法で優花さんのお母さんが部屋に入ってこられる。

その後からお手伝いさんだろうか?お茶とお菓子を持ってこられた。

僕は紙袋に入った月餅を見て…風呂敷に包んでお持ちした方が良かったかな?と自分の無作法、礼儀の無さを改めて痛感した。

しかし風呂敷を持ってさえいないのだから後悔しても始まらない。

ここは自分の気持ちを伝えることを大事にしようと思って、「あの…つまらない物ですが、召し上がって頂けると嬉しいです。」

優花さんが「あっ!月餅やん。翔ちゃん、ウチの好物やで。後で一緒に食べよう。翔ちゃんはウチが食べさせてあげるさかい。」

「これ、優花、殿方の前ではしたないどすえ。」

「ええんや。ウチと翔ちゃんは身内みたいなもんやさかい。」

優花さんのお母さんは僕の方を向いて、
「おおきに。改めてご挨拶させてもらいます。
優花の母の千花《せんか》と申します。」と
頭を下げられた。

僕も優花さんのお母さん…千花さんの方を向いて、「こちらこそ改めまして宮田 翔と申します。
今日は優花さんのことで、お話がありましてこちらへ伺った次第です。」

「そうどすか…分かりました。それは単刀直入に言うと、優花との仲を認めろということどすな。」「いや、あの…違うんです。」

優花さんが横から「お母はん、堪忍え。さっきはウチ、調子に乗ってしもて…この人の言うことを聞いてもらえへんやろか?」

千花さんは目を見開いて、「それはどういうことやろ?訳を話しとくれやす。」

僕は千花さんに僕と結衣、結真、優花さんの関係、優花さんの想いを赤裸々に話した。

「そうやったんどすか。えらい誤解してしもてすんまへんなあ…あの時のお嬢はんのこともありますし…えらいおかしい事やなと…そやけど、残念やわ。優花がほんまにええ人連れてきてくれたと思うたから…」

千花さんはかなり落胆しているようだ。

僕も母親のことを思い出して、なんか親不孝をしている気持ちに陥った。優花さんも申し訳無さそうにしているし…

僕は千花さんに「僕はまだ学生です。優花さんと結婚するには知識も経験もありません。

いえ、情け無い話ですが、どの女性がどうとか言う以前に今、ここにいる自分自身にさえ無作法なのを恥じています。

まだまだ優花さんのお母さんに一人の男としてお会い出来るような人間ではないのです。」

僕は〝だから優花さんも見聞を広めてもう少し自分探ししたいのでは?〟いう話をしようとしたのだが、千花さんは違う意味にとったらしく、

「おまはんは優花のことどう思うたはるのやろ?」

僕は正直に「ええ、大好きですよ。」


千花さんは「ちょっと待っとくれやす。」と言い残してその場を離れた。
優花さんが僕の方に来てピッタリくっつく。

「翔ちゃん、やっぱりウチのこと…大好きやなんて。ウチ嬉しいわ。もうホンマに結婚してもええわ。翔ちゃんは何人くらい子供欲しい?ウチはいっぱい欲しいわ。頑張ろな。」

「…また話が違う方面へ向かっていませんか?」

しばらくして千花さんが戻って来ても、構わず優花さんはニコニコ微笑んで僕にピッタリくっついている。

千花さんはその姿を見て頷いた。そして…

「おまはんに頼みがあります。すんまへんけど今、迎えの車が来ますさかい、うちの旦那に会うてもらえまへんやろか?」
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