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負けられない闘い
しおりを挟む「勝負…ですか?」
「そう…勝った方の言う事を受け入れるんだ…
例えば君が勝てば私は優花の事はもう少し長い目で見る。
私が勝てば君は婿養子に入って優花と所帯を持つ。
どうかな?」
お互いに確かに手っ取り早いが…
「それはどんな方法で決着をつけるのですか?」
「今度、英国から我が社が懇意にしている取引先の方々がお見えになる。その方々を接待して欲しい。」
「なるほど…接待が成功すれば会社のためになる。
万一、失敗しても優花さんの結婚が決まる。
どちらも神さんにとっては悪い話にはならないということですね…?」
僕がそう言うと神さんは笑いながら、
「君は頭の回転も良いようだ。是非受けて欲しいよ…」
僕は考えを巡らせたが…どうやら優花さんを自由にしてあげるのはこの方法しかないようだ。
しかし、一つ間違えれば、僕の将来は決まり結衣とも別れなければいけない。
絶対に負けられない闘いになることは間違いない。
でもこのまま逃げることも出来ない。
「分かりました。細かなルールを教えてください。」
神さんによるとルールはこうだ…
桜が咲く四月上旬にお得意先が来日される。
お食事と会場は神さんが用意してくださるそうだ。ただどこにするかは僕の提案によって決める。その場でみんなが喜ぶイベントを行う。喜んでもらえたら成功ということになる。イベントにかかる費用として先程の封筒を渡された。
「一つお願いがあります。」「何かね?」
「この勝負、優花さんにお手伝い頂いて結構ですか?」
「勿論。その他に君が誰をキャスティングしようと自由だ。費用がかかるなら追加で用意しよう。」
「ありがとうございます。ではこれから早速、優花さんと相談いたします。企画の猶予は三カ月と思うとすぐにでも着手したいので…」
「分かった。帰りの車を手配するよ。」
「いえ…優花さんと一緒に電車で帰ります。
彼女はきっと部屋の外で感情に任せたことを反省して僕を待っててくれている筈ですから…」
「君は本当に優しい男だね。優花が夢中になるのが分かるよ。」
「では、また連絡させて頂きます。奥様にもよろしくお伝え下さい。」
そう言って僕は部屋を出た。エレベーターの前で優花さんがポツンと寂しそうに僕を待っていた。
「翔ちゃん、ゴメンな。ウチついカーッとなってしもて。あのオッサンになんか言われへんかった?ウチが翔ちゃんのこと守ったるで。」
「いいえ。僕こそ優花さんをずっと一人で待たせてしまってゴメンなさい。寂しかったでしょう。帰りに一緒になんか食べに行きましょうか。」
僕がそう言うと優花さんはしゃがみ込んでポロポロと泣き出した…
「翔ちゃん、ホンマはウチ怖かったんや。ウチのせいで翔ちゃんが酷いことされてへんかなって。そんな優しい言葉かけられたらウチ、ウチ、ううう…」
「さあ…行きましょう…」と優花さんの肩に手を置いてふと顔を上げると…
奥が見えない程の広いオフィスで働く人達が一斉にこちらに視線を向けていた…
あの…優花さん…みんな見てますから…
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