sweet sweet pain〜幸せになるためのstory〜

奏 隼人

文字の大きさ
114 / 134

幸せのスープの味

しおりを挟む
ランチ営業がオーダーストップの時間となり、僕は親父さんと後片付けをしながら、コンクールに出すメニューを絞り込んで合わせるソース作りを考えて試行錯誤を繰り返していた。

突然…雪さんが厨房の僕の所に駆け寄って来た。「翔くん、ちょっと…」「どうしたんですか?」

僕は厨房から客席のほうに出た。

窓際の客席の方に目をやると、男女でお越しのお客様が口論をしておられるようだ。

「じゃああなたはこのままで良いって言うの?」

「そんなこと無いけど…ただ、今のままではこの先どうなるか…心配なんだよ。」

「そう…あなたの気持ちは分かったわ!」

そう言って女性が店の外に飛び出して行った。

僕は雪さんと目を合わせた。雪さんは頷いて女性の後を追って外に出て行った。

僕は残された男性に「お客様…大丈夫ですか?」と伺うと「お騒がせしてすみません。お代はちゃんと払います。」とおっしゃった。


「差し出がましいようですが…お客様がよろしければ訳を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」

「全て私が悪いんです…」と彼は重い口調で話し始めた…



彼は一緒に来店された彼女と将来、結婚を考えていた。

しかし…仕事の収入が不安定で、なかなか決断に踏みきれずにいた。

このまま結婚しても彼女を幸せに出来るだろうか?そう思っていると早く彼と結婚したい彼女は、私達そろそろ…と話をした。

二人の気持ちがすれ違ってしまった…という話の内容だった。


僕は「ちょっとお待ち頂けますか?」と厨房に戻ってオニオンスープを作る。


親父さんは何も言わず僕を見つめていた。



「お待たせしました…」

僕は出来上がったスープを彼にお出しした。
彼はスープを口に運んだ…

「シンプルだけど美味しい。ホッとする味ですね。」

「僕、料理を勉強したくて、この店に来ました。入店試験の玉ねぎの皮剥きから色々なことをここの親父さんに教えてもらって、勉強してきました。思うようにいかないこともありました。

でも親父さんと娘さんに温かく見守って頂いて、お客様にスープを提供するお許しを得ました。

僕は〝誰かを幸せにする料理を作りたい〟という最初の気持ちをこのスープを作ると思い出します。」



彼は澄み切ったスープを見つめる…

「最初の…気持ち…」

彼女との出会い、好きになった日のこと、告白して喜んだこと、一緒に暮らし始めた日のこと…色々なことを思い出す…


「もう一皿お持ちしますね。」僕は厨房に向かった。


彼が振り返ると雪さんが彼女を連れてお店に帰って来ていた。

彼は「ゴメン…僕が悪かった。君を幸せに出来る自信がなくて…君と二人で一所懸命に頑張るから僕の側にずっといてくれないか?」と彼女に告げる…


彼女は微笑んで、そして彼の待つテーブルに着いた。

彼女にスープをお出しすると彼女は会釈し、スプーンを手にする…


彼女が涙を浮かべながらスープを口に運ぶ。

「勿論よ…私、あなたとずっと一緒にいます…

このスープ…すごく美味しいです…

私、この味をずっと忘れない。今のあなたの言葉も…」



「ごゆっくりお召し上がりください。」

僕はお二人に一礼してから厨房に戻った。

すると親父さんが笑いながら僕の肩をポンと叩いた…


翔の背中を見つめながら雪も微笑んでいた。






陽子は優花をアンクの近くのカフェに呼び出していた。

「なんやて!!ウチの聞き間違いか?陽子さん!!

…結真がsteedを抜ける?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

妖精王の住処

穴澤空
キャラ文芸
 一人暮らしの会社員葉月弥生は、庭付きの賃貸アパートに住んでいる。そこでガーデニングをするのが、彼女の楽しみだった。  ある日通販で購入したバラの苗に、手のひらサイズの妖精の王が昼寝をしているまま届いてしまう。その妖精王は目を覚ますと「妖精王オベロンの後継である、妖精王オールベロン」と名乗った。彼は弥生の作る庭とご飯を気に入り、弥生と生活を共にすると決めてしまう。そこから、二人の生活が始まり――。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あやかしたちのとまりぎの日常

彩世幻夜
キャラ文芸
吉祥寺は井の頭公園界隈の一画で、ひっそりと営業するダイニング・バー【ペルシュ】に訪れるお客の大半はひとではないもの、いわゆるあやかしたち。 勿論店の店主や店員もまた人ではない。 そんな店でバイトをするとある専門学校生とあやかしたちが織りなす〝日常(?)〟物語

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...