sweet sweet pain〜幸せになるためのstory〜

奏 隼人

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眠りから覚めたギターの旋律

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「え、えーっ!!……私が?」


「サポートギターに入って欲しいんです。もう、雪さんしかいない。お願いします。」


この突拍子も無い話に固まってしまった雪さんを前に僕は一生懸命に頭を下げた。


雪は困ったような素振りを見せていたが、やがて覚悟を決めたような表情で…



「分かったわ。メンバーの所へ連れて行ってくれる?」


「ほ、本当ですか!!

ありがとうございます!!こちらです。」


僕は陽子さんから借りたスタッフ用のパスを首にかけて裏口に雪さんを連れて行った。

「陽子さん、連れてきました。彼女が雪さんです。」

「本当に申し訳ない!助けて欲しいんです。曲は…」

「分かってます。翔くんから言われて何回か動画を見たので。ギターをお借り出来ますか?」


「勿論よ…!!自由に使って!!」


陽子さんは昔、結真が借り物として使っていた青いギターとチューナーを雪さんに渡した。

雪はチューナーを使ってすぐにチューニングを済ませた。

「オッケー!いつでも行けますよ!」





舞台にsteedのメンバーが現れて自分の演奏位置に着く。会場のテンションが一気に上がる。

陽子さんが右手を突き上げた…


「お待たせ~遅れた分、盛り上がって行くよ~!」


すると会場がザワつき出した…



「ねえ…いつものギターの子は…?」

「アタシ…あの子のギターを聴きにきたのに…」



そんな中…

雪は右足でエフェクターのスイッチを…入れた。


ギュゥゥゥ…ン……!!!


「………⁉︎」


青いギターから音が奏でられた瞬間…会場の誰もが驚いた。結真とはまた違った迫力がある音で一音一音がはっきりと響く。


キュウル…キュル…キュルキュルキュルキュル…


そしてそのスピードは目を見張るものがある。




鎮まりかえる会場…


その時……


静寂の空気を裂いたのは優花さんのドラムだった。


いつもながら女性が刻んでいるとは思えないほど迫力がある音だ。


「hey!!!」


そして陽子さんの美しいヴォーカル…


steedのサウンドの迫力はいつもと全く変わらない…

いや…それどころか…




雪さんのギターはフレーズを完璧に抑えていて…正確無比…

それでいて…さらに心に迫ってくるような…


まるで結真がそこにいると錯覚してしまうような感覚に陥ってしまう。









陽子は目を細めながらじっと雪を見つめて…

心の中で呟いていた…



そんな…何回か動画を見たって……

数回聴いただけで耳コピ……

まさか…!!



この子…絶対音感…⁉︎

でも…それだけじゃないわ…

何か…こう…

ずっと締めつけられていたモノから解き放たれたみたいな…





「あっ⁉︎」

突然、優花さんが汗でスティックを落としそうになった。



…アカン!やってもうたわ!


……!!!


その瞬間、雪はフレーズを意識して変えた。

そしてエフェクトを歪ませる…


ギターをうねらせ、ザーッという音でおそらく誰も一瞬ドラムの音が消えたことなど知る由もなかった。

たとえ分かったとしても演出アレンジだとしか思えないだろう…




優花は驚いて…ニヤリと微笑んだ。




…なんや…この姉ちゃん…やるな…!!






「雪さん…」




翔はステージの上で輝く雪の姿を…初めて結真の演奏を聴いたあの日の彼女に重ね合わせていた。





そして…

ギターソロはもう圧巻としか言いようがなかった…


そう…まるで……



雪が溶けて春が来た草原を力強くサラブレッドが駆け抜けていく…



誰にも邪魔されないでその背中に翼を宿してペガサスのように宙を蹴りあげ…空まで駆け上るような…




結真がギターの女王なら…雪さんは風…



爽やかに…しなやかに…

しかし力強く、聴く者全てを包み込む風のようなサウンドだった。




ウワァァァァァァ!!!!!!!






「はぁっ…はぁっ…

ゲホッ!!…ゲホッ!!」



「だ…大丈夫かいな!!姉ちゃん!!」


演奏が終わって大歓声が巻き起こる中…

その場に疼くまる雪に優花が駆け寄る…







こ…この…!!


呼吸のリズムも忘れてしまう程、あんなにギターを弾く事に夢中になって…


あの結真に勝るとも劣らないテクニックソウルだわ…!!





陽子は背筋に冷たいものが走るような想いでその様子を見ていた。





彼女のその言葉通り…

観客達オーディエンスはその音に魂を撫でられ…

感動で暫くその場から動けなかった。



結衣も僕も…その旋律に涙を浮かべていた。
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