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お前のものは俺のもの
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──その日の放課後
今日も裕翔が駅まで送ってくれる事になっていたけれど、周期的に回ってくる掃除当番が裕翔に回ってくる日でもあった。
友達になって、この瞬間だけが二人だけの時間になる訳で、俺は楽しみにしながら裕翔を待っていたその時、部活前の駿が俺の元へやってきたんだ。
「おう、山際!少し話、出来ねぇか?」
「ん…?ああ、俺か?」
「ははっ!山際は、お前しかいないだろうよ!」
お昼に初めて会話を交わしただけなのに、裕翔と関わる時と同じように接してくれる駿。
ただ、その明るさが羨ましいとも感じていたのは事実な訳だ。
俺には無いものを持っている駿のことが羨ましかったから…
「なぁ、山際?なんで裕翔が必死にお前の背中を振り向かせようとしてたのは、ちゃんと理解してるよな?」
「ああ…ちゃんと話も聞いたし、話も聞いてもらった」
「そっか…それならいいんだ。いやさ、アイツと仲良くなって丸二年経ったけどよ、アイツの話聞いてから支えてやりてぇな…もう傷つかないで欲しいなって思ってんだよ」
「ああ、その気持ちはよく分かる…あんなに心から優しいやつが一人になって、苦しんでる姿や悲しんでる姿なんか見たくもないし、そうさせたくないよな」
「お前も俺と同じ気持ちならそれでいいんだ…お前が言っていた、お前のものは俺のものってのがどうしても引っかかってたところはあんだけどよ…?」
「……」
生粋のβの性を持つ駿は、俺がαで裕翔がΩと言う真実を知らずに俺たちに関わりを持ってくれているんだ。
きっと親友である裕翔でさえ、駿にΩだと言うことを伝えられていないはずだ。
Ωの裕翔がβの高校にいるという事は、何かしらの理由があるから嘘を付いているわけで、その嘘を親友にでさえ打ち明ける事は、きっと容易いことではないはずなんだ。
「まぁ、お前のものは俺のものって言う理由も、何かあるんだろうなとも思ってはいる…裕翔も満更じゃ無さそうだし、むしろどことなく嬉しそうな表情も見せてたからよぉ?」
「悪い方向に進ませるつもりはないんだ…ただ、理由だけは教えられなくてな…そこだけはすまない…」
俺も俺でαだと言うことを知られたくない…
いや、知られたとして裕翔に辛い思いをさせてしまうと思えば思う程、隠し通さなければならない。
可愛いあの笑顔を…
優しくて温かい心の持ち主を…
絶対に傷付けたくはなかったんだ…
「でもよぉ?安心しとけっ!俺はアイツを取るつもりはないし、いつかお前のものになるといいな!」
はっ?こいつ急に何言ってんだ…?
「み、水上…?ど、どういう…」
「そういう事だろ?でっ!お前、裕翔のこと好きなんだろ?」
な、なななななっ!?
ば、バレてる…!?
「そ、そそそっ!そんなんじゃねぇっ!!」
「ぶははっ!おいおいっ!強がんなってぇ~!お前のものは俺のものって、本当は裕翔をお前のものにしたいんだろ?」
「…バ、バカ言うなっ!」
「ひひひっ!大丈夫大丈夫っ!安心しろ!俺は裕翔とは付き合わねぇからっ!ってか好きな女の子もいるし、そのうちアタックするつもりだしさっ!」
はははっ…
ま、まぁこれはこれで…結果オーライか…
【お前のものは俺のもの】の本当の理由もなんとか隠し通せそうだし…
で、でもっ!!俺が裕翔の事を好きだって事や一目惚れしちまった事まで駿にバレてるだなんて…くそっ…こ、こいつ…!絶対ただのバカじゃない!
「み、水上っ!!」
「はははっ!駿でいいって!んの代わり、俺にも大和って呼ばせろよなっ!」
「ったく!!す、好きに呼んどけ!」
強がりな俺は、駿にも裕翔の事が好きなんだと言えなかった。
俺だけが裕翔の事を好きならばそれでいいんだ…αとΩがバレないのであればそれだけで…
でも、なんでだろうな…今日初めて話したはずなのに、初めて話したような感じがしない。
これが駿の凄さなのかもしれないな…?
だからみんなにも、こんなに好かれているんだろうと俺は改めて感じる事が出来たんだ。
「どっちにしても、俺と大和で裕翔の事は守ってやろうな?あいつだけは一人にさせないようにさっ!」
「…ああ、駿に言われなくてもそのつもりだ、俺らであいつのこと支えてやろうな?」
また「にししっ!」と笑う駿に俺も自然に笑みが零れ、二人で裕翔を守り続けることを誓ったちょうどその時、可愛い天使の囁きが俺の耳を刺激したんだ。
「わぁ!二人で話してたの!?あはっ!二人ともすっかり仲良しだねっ!?」
掃除当番を終わらせた裕翔が俺たちの元に駆け寄ってきたんだ。
「ああ、裕翔が俺たちを繋いでくれたからな?」
「そうそう!裕翔のおかげってやつだぜっ?!」
俺たちの言葉に頬を赤くしながら照れる裕翔。
ほんと、お前のおかげで俺の生活はどんどんと輝き始めている。
だからこそ、俺はお前を支え続け、決して傷付けないと心に誓ったんだ。
「おわっ!?いっけねぇ、もうこんな時間かよっ!俺、部活に行くわっ!残りは二人で楽しめやぁい!」
「ち、ちょっ…!しゅ、駿?!ど、どういう…」
裕翔の声を最後まで聞かずに、駿は体育館へ駆け出して行ってしまい、取り残された俺たち。
「…裕翔?」
「…ふぇっ!?」
「ふふっ!俺たちも帰ろうぜ?」
どことなく駿の言葉に戸惑う裕翔。
それでも、俺が笑顔で発した言葉に、裕翔も可愛らしい笑顔で頷いてくれて…
その後、なんやかんや俺たちは自転車に跨り、まだどこか肌寒い春風と共に二人仲良く、自転車で駆け抜けていったんだ。
今日も裕翔が駅まで送ってくれる事になっていたけれど、周期的に回ってくる掃除当番が裕翔に回ってくる日でもあった。
友達になって、この瞬間だけが二人だけの時間になる訳で、俺は楽しみにしながら裕翔を待っていたその時、部活前の駿が俺の元へやってきたんだ。
「おう、山際!少し話、出来ねぇか?」
「ん…?ああ、俺か?」
「ははっ!山際は、お前しかいないだろうよ!」
お昼に初めて会話を交わしただけなのに、裕翔と関わる時と同じように接してくれる駿。
ただ、その明るさが羨ましいとも感じていたのは事実な訳だ。
俺には無いものを持っている駿のことが羨ましかったから…
「なぁ、山際?なんで裕翔が必死にお前の背中を振り向かせようとしてたのは、ちゃんと理解してるよな?」
「ああ…ちゃんと話も聞いたし、話も聞いてもらった」
「そっか…それならいいんだ。いやさ、アイツと仲良くなって丸二年経ったけどよ、アイツの話聞いてから支えてやりてぇな…もう傷つかないで欲しいなって思ってんだよ」
「ああ、その気持ちはよく分かる…あんなに心から優しいやつが一人になって、苦しんでる姿や悲しんでる姿なんか見たくもないし、そうさせたくないよな」
「お前も俺と同じ気持ちならそれでいいんだ…お前が言っていた、お前のものは俺のものってのがどうしても引っかかってたところはあんだけどよ…?」
「……」
生粋のβの性を持つ駿は、俺がαで裕翔がΩと言う真実を知らずに俺たちに関わりを持ってくれているんだ。
きっと親友である裕翔でさえ、駿にΩだと言うことを伝えられていないはずだ。
Ωの裕翔がβの高校にいるという事は、何かしらの理由があるから嘘を付いているわけで、その嘘を親友にでさえ打ち明ける事は、きっと容易いことではないはずなんだ。
「まぁ、お前のものは俺のものって言う理由も、何かあるんだろうなとも思ってはいる…裕翔も満更じゃ無さそうだし、むしろどことなく嬉しそうな表情も見せてたからよぉ?」
「悪い方向に進ませるつもりはないんだ…ただ、理由だけは教えられなくてな…そこだけはすまない…」
俺も俺でαだと言うことを知られたくない…
いや、知られたとして裕翔に辛い思いをさせてしまうと思えば思う程、隠し通さなければならない。
可愛いあの笑顔を…
優しくて温かい心の持ち主を…
絶対に傷付けたくはなかったんだ…
「でもよぉ?安心しとけっ!俺はアイツを取るつもりはないし、いつかお前のものになるといいな!」
はっ?こいつ急に何言ってんだ…?
「み、水上…?ど、どういう…」
「そういう事だろ?でっ!お前、裕翔のこと好きなんだろ?」
な、なななななっ!?
ば、バレてる…!?
「そ、そそそっ!そんなんじゃねぇっ!!」
「ぶははっ!おいおいっ!強がんなってぇ~!お前のものは俺のものって、本当は裕翔をお前のものにしたいんだろ?」
「…バ、バカ言うなっ!」
「ひひひっ!大丈夫大丈夫っ!安心しろ!俺は裕翔とは付き合わねぇからっ!ってか好きな女の子もいるし、そのうちアタックするつもりだしさっ!」
はははっ…
ま、まぁこれはこれで…結果オーライか…
【お前のものは俺のもの】の本当の理由もなんとか隠し通せそうだし…
で、でもっ!!俺が裕翔の事を好きだって事や一目惚れしちまった事まで駿にバレてるだなんて…くそっ…こ、こいつ…!絶対ただのバカじゃない!
「み、水上っ!!」
「はははっ!駿でいいって!んの代わり、俺にも大和って呼ばせろよなっ!」
「ったく!!す、好きに呼んどけ!」
強がりな俺は、駿にも裕翔の事が好きなんだと言えなかった。
俺だけが裕翔の事を好きならばそれでいいんだ…αとΩがバレないのであればそれだけで…
でも、なんでだろうな…今日初めて話したはずなのに、初めて話したような感じがしない。
これが駿の凄さなのかもしれないな…?
だからみんなにも、こんなに好かれているんだろうと俺は改めて感じる事が出来たんだ。
「どっちにしても、俺と大和で裕翔の事は守ってやろうな?あいつだけは一人にさせないようにさっ!」
「…ああ、駿に言われなくてもそのつもりだ、俺らであいつのこと支えてやろうな?」
また「にししっ!」と笑う駿に俺も自然に笑みが零れ、二人で裕翔を守り続けることを誓ったちょうどその時、可愛い天使の囁きが俺の耳を刺激したんだ。
「わぁ!二人で話してたの!?あはっ!二人ともすっかり仲良しだねっ!?」
掃除当番を終わらせた裕翔が俺たちの元に駆け寄ってきたんだ。
「ああ、裕翔が俺たちを繋いでくれたからな?」
「そうそう!裕翔のおかげってやつだぜっ?!」
俺たちの言葉に頬を赤くしながら照れる裕翔。
ほんと、お前のおかげで俺の生活はどんどんと輝き始めている。
だからこそ、俺はお前を支え続け、決して傷付けないと心に誓ったんだ。
「おわっ!?いっけねぇ、もうこんな時間かよっ!俺、部活に行くわっ!残りは二人で楽しめやぁい!」
「ち、ちょっ…!しゅ、駿?!ど、どういう…」
裕翔の声を最後まで聞かずに、駿は体育館へ駆け出して行ってしまい、取り残された俺たち。
「…裕翔?」
「…ふぇっ!?」
「ふふっ!俺たちも帰ろうぜ?」
どことなく駿の言葉に戸惑う裕翔。
それでも、俺が笑顔で発した言葉に、裕翔も可愛らしい笑顔で頷いてくれて…
その後、なんやかんや俺たちは自転車に跨り、まだどこか肌寒い春風と共に二人仲良く、自転車で駆け抜けていったんだ。
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