17 / 84
お前のものは俺のもの
8
しおりを挟む
──その日の放課後
今日も裕翔が駅まで送ってくれる事になっていたけれど、周期的に回ってくる掃除当番が裕翔に回ってくる日でもあった。
友達になって、この瞬間だけが二人だけの時間になる訳で、俺は楽しみにしながら裕翔を待っていたその時、部活前の駿が俺の元へやってきたんだ。
「おう、山際!少し話、出来ねぇか?」
「ん…?ああ、俺か?」
「ははっ!山際は、お前しかいないだろうよ!」
お昼に初めて会話を交わしただけなのに、裕翔と関わる時と同じように接してくれる駿。
ただ、その明るさが羨ましいとも感じていたのは事実な訳だ。
俺には無いものを持っている駿のことが羨ましかったから…
「なぁ、山際?なんで裕翔が必死にお前の背中を振り向かせようとしてたのは、ちゃんと理解してるよな?」
「ああ…ちゃんと話も聞いたし、話も聞いてもらった」
「そっか…それならいいんだ。いやさ、アイツと仲良くなって丸二年経ったけどよ、アイツの話聞いてから支えてやりてぇな…もう傷つかないで欲しいなって思ってんだよ」
「ああ、その気持ちはよく分かる…あんなに心から優しいやつが一人になって、苦しんでる姿や悲しんでる姿なんか見たくもないし、そうさせたくないよな」
「お前も俺と同じ気持ちならそれでいいんだ…お前が言っていた、お前のものは俺のものってのがどうしても引っかかってたところはあんだけどよ…?」
「……」
生粋のβの性を持つ駿は、俺がαで裕翔がΩと言う真実を知らずに俺たちに関わりを持ってくれているんだ。
きっと親友である裕翔でさえ、駿にΩだと言うことを伝えられていないはずだ。
Ωの裕翔がβの高校にいるという事は、何かしらの理由があるから嘘を付いているわけで、その嘘を親友にでさえ打ち明ける事は、きっと容易いことではないはずなんだ。
「まぁ、お前のものは俺のものって言う理由も、何かあるんだろうなとも思ってはいる…裕翔も満更じゃ無さそうだし、むしろどことなく嬉しそうな表情も見せてたからよぉ?」
「悪い方向に進ませるつもりはないんだ…ただ、理由だけは教えられなくてな…そこだけはすまない…」
俺も俺でαだと言うことを知られたくない…
いや、知られたとして裕翔に辛い思いをさせてしまうと思えば思う程、隠し通さなければならない。
可愛いあの笑顔を…
優しくて温かい心の持ち主を…
絶対に傷付けたくはなかったんだ…
「でもよぉ?安心しとけっ!俺はアイツを取るつもりはないし、いつかお前のものになるといいな!」
はっ?こいつ急に何言ってんだ…?
「み、水上…?ど、どういう…」
「そういう事だろ?でっ!お前、裕翔のこと好きなんだろ?」
な、なななななっ!?
ば、バレてる…!?
「そ、そそそっ!そんなんじゃねぇっ!!」
「ぶははっ!おいおいっ!強がんなってぇ~!お前のものは俺のものって、本当は裕翔をお前のものにしたいんだろ?」
「…バ、バカ言うなっ!」
「ひひひっ!大丈夫大丈夫っ!安心しろ!俺は裕翔とは付き合わねぇからっ!ってか好きな女の子もいるし、そのうちアタックするつもりだしさっ!」
はははっ…
ま、まぁこれはこれで…結果オーライか…
【お前のものは俺のもの】の本当の理由もなんとか隠し通せそうだし…
で、でもっ!!俺が裕翔の事を好きだって事や一目惚れしちまった事まで駿にバレてるだなんて…くそっ…こ、こいつ…!絶対ただのバカじゃない!
「み、水上っ!!」
「はははっ!駿でいいって!んの代わり、俺にも大和って呼ばせろよなっ!」
「ったく!!す、好きに呼んどけ!」
強がりな俺は、駿にも裕翔の事が好きなんだと言えなかった。
俺だけが裕翔の事を好きならばそれでいいんだ…αとΩがバレないのであればそれだけで…
でも、なんでだろうな…今日初めて話したはずなのに、初めて話したような感じがしない。
これが駿の凄さなのかもしれないな…?
だからみんなにも、こんなに好かれているんだろうと俺は改めて感じる事が出来たんだ。
「どっちにしても、俺と大和で裕翔の事は守ってやろうな?あいつだけは一人にさせないようにさっ!」
「…ああ、駿に言われなくてもそのつもりだ、俺らであいつのこと支えてやろうな?」
また「にししっ!」と笑う駿に俺も自然に笑みが零れ、二人で裕翔を守り続けることを誓ったちょうどその時、可愛い天使の囁きが俺の耳を刺激したんだ。
「わぁ!二人で話してたの!?あはっ!二人ともすっかり仲良しだねっ!?」
掃除当番を終わらせた裕翔が俺たちの元に駆け寄ってきたんだ。
「ああ、裕翔が俺たちを繋いでくれたからな?」
「そうそう!裕翔のおかげってやつだぜっ?!」
俺たちの言葉に頬を赤くしながら照れる裕翔。
ほんと、お前のおかげで俺の生活はどんどんと輝き始めている。
だからこそ、俺はお前を支え続け、決して傷付けないと心に誓ったんだ。
「おわっ!?いっけねぇ、もうこんな時間かよっ!俺、部活に行くわっ!残りは二人で楽しめやぁい!」
「ち、ちょっ…!しゅ、駿?!ど、どういう…」
裕翔の声を最後まで聞かずに、駿は体育館へ駆け出して行ってしまい、取り残された俺たち。
「…裕翔?」
「…ふぇっ!?」
「ふふっ!俺たちも帰ろうぜ?」
どことなく駿の言葉に戸惑う裕翔。
それでも、俺が笑顔で発した言葉に、裕翔も可愛らしい笑顔で頷いてくれて…
その後、なんやかんや俺たちは自転車に跨り、まだどこか肌寒い春風と共に二人仲良く、自転車で駆け抜けていったんだ。
今日も裕翔が駅まで送ってくれる事になっていたけれど、周期的に回ってくる掃除当番が裕翔に回ってくる日でもあった。
友達になって、この瞬間だけが二人だけの時間になる訳で、俺は楽しみにしながら裕翔を待っていたその時、部活前の駿が俺の元へやってきたんだ。
「おう、山際!少し話、出来ねぇか?」
「ん…?ああ、俺か?」
「ははっ!山際は、お前しかいないだろうよ!」
お昼に初めて会話を交わしただけなのに、裕翔と関わる時と同じように接してくれる駿。
ただ、その明るさが羨ましいとも感じていたのは事実な訳だ。
俺には無いものを持っている駿のことが羨ましかったから…
「なぁ、山際?なんで裕翔が必死にお前の背中を振り向かせようとしてたのは、ちゃんと理解してるよな?」
「ああ…ちゃんと話も聞いたし、話も聞いてもらった」
「そっか…それならいいんだ。いやさ、アイツと仲良くなって丸二年経ったけどよ、アイツの話聞いてから支えてやりてぇな…もう傷つかないで欲しいなって思ってんだよ」
「ああ、その気持ちはよく分かる…あんなに心から優しいやつが一人になって、苦しんでる姿や悲しんでる姿なんか見たくもないし、そうさせたくないよな」
「お前も俺と同じ気持ちならそれでいいんだ…お前が言っていた、お前のものは俺のものってのがどうしても引っかかってたところはあんだけどよ…?」
「……」
生粋のβの性を持つ駿は、俺がαで裕翔がΩと言う真実を知らずに俺たちに関わりを持ってくれているんだ。
きっと親友である裕翔でさえ、駿にΩだと言うことを伝えられていないはずだ。
Ωの裕翔がβの高校にいるという事は、何かしらの理由があるから嘘を付いているわけで、その嘘を親友にでさえ打ち明ける事は、きっと容易いことではないはずなんだ。
「まぁ、お前のものは俺のものって言う理由も、何かあるんだろうなとも思ってはいる…裕翔も満更じゃ無さそうだし、むしろどことなく嬉しそうな表情も見せてたからよぉ?」
「悪い方向に進ませるつもりはないんだ…ただ、理由だけは教えられなくてな…そこだけはすまない…」
俺も俺でαだと言うことを知られたくない…
いや、知られたとして裕翔に辛い思いをさせてしまうと思えば思う程、隠し通さなければならない。
可愛いあの笑顔を…
優しくて温かい心の持ち主を…
絶対に傷付けたくはなかったんだ…
「でもよぉ?安心しとけっ!俺はアイツを取るつもりはないし、いつかお前のものになるといいな!」
はっ?こいつ急に何言ってんだ…?
「み、水上…?ど、どういう…」
「そういう事だろ?でっ!お前、裕翔のこと好きなんだろ?」
な、なななななっ!?
ば、バレてる…!?
「そ、そそそっ!そんなんじゃねぇっ!!」
「ぶははっ!おいおいっ!強がんなってぇ~!お前のものは俺のものって、本当は裕翔をお前のものにしたいんだろ?」
「…バ、バカ言うなっ!」
「ひひひっ!大丈夫大丈夫っ!安心しろ!俺は裕翔とは付き合わねぇからっ!ってか好きな女の子もいるし、そのうちアタックするつもりだしさっ!」
はははっ…
ま、まぁこれはこれで…結果オーライか…
【お前のものは俺のもの】の本当の理由もなんとか隠し通せそうだし…
で、でもっ!!俺が裕翔の事を好きだって事や一目惚れしちまった事まで駿にバレてるだなんて…くそっ…こ、こいつ…!絶対ただのバカじゃない!
「み、水上っ!!」
「はははっ!駿でいいって!んの代わり、俺にも大和って呼ばせろよなっ!」
「ったく!!す、好きに呼んどけ!」
強がりな俺は、駿にも裕翔の事が好きなんだと言えなかった。
俺だけが裕翔の事を好きならばそれでいいんだ…αとΩがバレないのであればそれだけで…
でも、なんでだろうな…今日初めて話したはずなのに、初めて話したような感じがしない。
これが駿の凄さなのかもしれないな…?
だからみんなにも、こんなに好かれているんだろうと俺は改めて感じる事が出来たんだ。
「どっちにしても、俺と大和で裕翔の事は守ってやろうな?あいつだけは一人にさせないようにさっ!」
「…ああ、駿に言われなくてもそのつもりだ、俺らであいつのこと支えてやろうな?」
また「にししっ!」と笑う駿に俺も自然に笑みが零れ、二人で裕翔を守り続けることを誓ったちょうどその時、可愛い天使の囁きが俺の耳を刺激したんだ。
「わぁ!二人で話してたの!?あはっ!二人ともすっかり仲良しだねっ!?」
掃除当番を終わらせた裕翔が俺たちの元に駆け寄ってきたんだ。
「ああ、裕翔が俺たちを繋いでくれたからな?」
「そうそう!裕翔のおかげってやつだぜっ?!」
俺たちの言葉に頬を赤くしながら照れる裕翔。
ほんと、お前のおかげで俺の生活はどんどんと輝き始めている。
だからこそ、俺はお前を支え続け、決して傷付けないと心に誓ったんだ。
「おわっ!?いっけねぇ、もうこんな時間かよっ!俺、部活に行くわっ!残りは二人で楽しめやぁい!」
「ち、ちょっ…!しゅ、駿?!ど、どういう…」
裕翔の声を最後まで聞かずに、駿は体育館へ駆け出して行ってしまい、取り残された俺たち。
「…裕翔?」
「…ふぇっ!?」
「ふふっ!俺たちも帰ろうぜ?」
どことなく駿の言葉に戸惑う裕翔。
それでも、俺が笑顔で発した言葉に、裕翔も可愛らしい笑顔で頷いてくれて…
その後、なんやかんや俺たちは自転車に跨り、まだどこか肌寒い春風と共に二人仲良く、自転車で駆け抜けていったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
メビウスの輪を超えて 【カフェのマスター・アルファ×全てを失った少年・オメガ。 君の心を、私は温めてあげられるんだろうか】
大波小波
BL
梅ヶ谷 早紀(うめがや さき)は、18歳のオメガ少年だ。
愛らしい抜群のルックスに加え、素直で朗らか。
大人に背伸びしたがる、ちょっぴり生意気な一面も持っている。
裕福な家庭に生まれ、なに不自由なく育った彼は、学園の人気者だった。
ある日、早紀は友人たちと気まぐれに入った『カフェ・メビウス』で、マスターの弓月 衛(ゆづき まもる)と出会う。
32歳と、早紀より一回り以上も年上の衛は、落ち着いた雰囲気を持つ大人のアルファ男性だ。
どこかミステリアスな彼をもっと知りたい早紀は、それから毎日のようにメビウスに通うようになった。
ところが早紀の父・紀明(のりあき)が、重役たちの背信により取締役の座から降ろされてしまう。
高額の借金まで背負わされた父は、借金取りの手から早紀を隠すため、彼を衛に託した。
『私は、早紀を信頼のおける人間に、預けたいのです。隠しておきたいのです』
『再びお会いした時には、早紀くんの淹れたコーヒーが出せるようにしておきます』
あの笑顔を、失くしたくない。
伸びやかなあの心を、壊したくない。
衛は、その一心で覚悟を決めたのだ。
ひとつ屋根の下に住むことになった、アルファの衛とオメガの早紀。
波乱含みの同棲生活が、有無を言わさず始まった……!
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
僕の恋人は、超イケメン!!
刃
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる