君にこの想いが届かなくとも…

翔(カケル)

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四章 俺の気持ちと秘密、そしてまだ見えぬ君の想い

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 ──その日の夜
 俺はいつも通り弁当とビール、そして一平のために買ったブラックコーヒーを手に、自宅へと辿り着いていた。

『ミャーっ!!』
「ハハっ!クロ、ただいま。今日は嬉しいことがあったんだ」
『ミャオミャオっ!!』

 喜ぶ俺に出迎えてくれたクロも可愛い笑みと鳴き声を零してくれる。

 一平から貰った不意打ちのキス。今になっても残るあの感触とあの温かみ。嬉しくて恥ずかしくてたまらない。それでも、きっとまた一平の顔は明日になったら忘れてしまうのだろう。

 本当にどうして覚えていられないのかな…?
 自分でもよく分からない…どうして?

 そんなことを思いながらも、俺は次回渡せたらとブラックコーヒーを冷蔵庫に入れ直し、今日の疲れと洗い流したくない一平から貰った温もりをシャワーで洗い流していくことにしたんだ。

 ◇ ◇

「クロ?お前にも一平と会わせてあげたいな」
『ニャァ?』
「俺の家族に会わせてあげたいってことさ。クロも最近はずっと一平の話を聞かされてただろ?」
『ニャァニャァ!!』
「ははっ!く、くすぐったいって!!」

 今日も食事とビールを飲みながら、クロと戯れて楽しんでいたその時だった。スマホに映った通知に、俺は驚きを隠せなかった。

【如月 一平】
《今日は本当にごめんなさい。無事に仕事も終わり、とりあえず一段落はしましたが、まだ色々とかかりそうです…早く優太さんに会いたい》

 夜に…今まで一度も返って来なかった夜に一平から連絡が来たんだ。どうして…?でも、連絡が来たからには返してやらないと…

《お疲れ様。少し落ち着いたならほっとしたよ。それと、夜に一平から連絡が来てビックリしたよ》

 思いのままに打ち込んだ。この一ヶ月あまり、一度も夜に返信なんて来たことがなかった。なのに、どうして今日だけは連絡をくれたのだろう。その答えは一平にしか分からない。

《本当に心配をおかけました。実は今日から一週間、彼女は実家に帰ってるんです。》

 そういう事だったのか…だからこんな夜なのに連絡が出来たのかと、連絡が来て嬉しい反面、やっぱり悲しい気持ちがないと言っては嘘になる。

 彼が一人でも、帰る場所があるから…愛する彼女がいるのだから……ん、ちょっと待て?ということは一平、一週間は一人ってことなのか…?

 家に帰っても一人。この週末も一人。
 もしかしたら、一緒に過ごせるんじゃないか…
 一平も一緒にいたいと思ってくれるかな…?

 そして、まだ聞けていない君の気持ちも知りたい。俺は、このチャンスを逃したくないと、そんな淡い期待を持ち、一平に素直な気持ちを書き連ねて送ることにしたんだ。

《もし一人で予定がなら、今週末二人で会わないか?》
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