秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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大陸へ -第四夜~

☆おノロケ対決?

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 食事後に一晩明かす事になる船室の部屋割は、ハニーちゃんの鶴の一声で男女別に分かれる事になった。

「はーい! リリンちゃんとハニーちゃんは2人っきりの女子会とシャレこみまーす♪」
「んじゃ、アスタール君と僕はこっちな。」
「!?」

 アルの手が、咄嗟に私の方に伸びてきたものの、宙を掴むうちにイカ下足君に襟首掴まれたまま隣の船室に消えていく。最後は入り口で踏ん張ろうとするアルのお尻を蹴飛ばして中に押し込んだ。
ちなみにその間、アルの顔はずーっとこっちを向いたまま『止めて』と顔に書いてある様に見えたのはきっと気のせいだろう。うん、多分そう。

「また後でね~♪」

 隣の部屋に押し込まれる瞬間に、笑顔で手を振るとアルの耳がペタンと肩にくっついた。
どうやら諦めたっぽい。
それにしても、あんな速さで耳が動くとは思わなんだ。
私と別室にされるらしいと気付いた瞬間のアルの耳の動きの激しさには、思わず絶句したよ。
陸に打ち上げられた魚でもあんなに激しく動かないんじゃないだろうか?
アレを動かす筋肉は凄く発達してそうだ。
是非とも、その筋肉を表情筋に分けて上げて欲しい。

「さ、私達も部屋に入りましょっか。」
「ほいほい。」

 ハニーちゃんに促されて、私も船室の戸をくぐる。
さっき、みんなで一緒にお茶をした部屋だから、お茶の道具がそのまんまテーブルに乗っていていつでも使える様な状態のままだ。
さっきと同じ席に着いてお茶を淹れると、彼女も正面に腰掛けた。

「やっぱりちょっと可哀相だったかなぁ……」
「あっちはあっちで盛り上がると思うわよ?」

 隣の部屋の方を見ながら呟くと、苦笑混じりの返事が返ってきた。

「そうかな?」
「女同士で盛り上がる話と同じで、男同士じゃないと出来ない話もあるじゃない?」
「……いわゆる下ネタ系的な?」
「そうそう、そういうの。」

 なんか、あんまりそいう言う話をしている姿は思いつかないんだけど……。
人はみかけによらないとも言うしなぁ?
あの表情の殆ど動かない美形顔で、熱く下ネタを語ってるのを想像したらちょっと笑える。

「まぁ、イカ君が上手く楽しませるわよ。」
「ならいっかな……。アルとはこのゲーム内でしか会えないから、どうしても気になっちゃって。」
「遠距離なんだっけ?」
「そそ。最初は、メル友からなんだけどねぇ……。」

 目をキラキラさせて身を乗り出してくるハニーちゃんの姿に、思わず笑ってしまう。

「イカ下足君との馴初めも話してよね?」
「ふふふ。砂糖を大量に吐かせてあげるわ♪」

 2人で顔を見合わせ、ニヤリと笑うと互いのパートナーとの馴初めを語りはじめる。

「メールでしか交流なかったのに、随分とラブラブだけどいつ頃から意識し始めたの~?」
「うーん……? 高校に上がって、ネットゲーム始めた時にアルも誘ったんだけど、そのゲーム内で結婚システムがあってさ……」
「告白されたと。」
「うんうん。まぁ、アルなら良いかなーって……。」

 2Dのゲームで、キャラはカクカクしてるし可愛さの欠片もないゲームだったんだけど。
あのゲームは結構長くやったなぁ……。
他のに浮気しながらも、このセカンド・ワールドが始まった事で引退したから10年近くやってたのか。
初めてやったゲームって言うのもあるけど、アルとの思い出が詰まっているってのも大きかった。

「相思相愛ってかんじだものねぇ……。アスタール君、リリンちゃんの事になると反応可愛いし分からないでもないわ。」
「アルって、表情は動かないのに耳がビビビ! って動くのか可愛くって♪」
「あ、分かる分かる。耳に全部感情が出てるものね。アレは可愛い。」

 会話はいつしか、萌えポイント談議に移行していくんだけど、中々そういう話を人とする事が無いから結構盛り上がった。
互いに面識のある相手だってのもあるのかね?
しかし、イカ下足君にそんな萌えポイントが……。
明日からちょっと見る目が変わりそうだ。
ちなみに、おノロケ対決の軍配はハニーちゃんに上がった。
流石に30年物の積み重ねには敵わなかったさ。
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