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宅地造成
★妖精さん
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結局、宅地造成のクエストを達成するのに現実時間に換算して3日程かかった。
初日のような事件は特に起きることはなく、採集自体は順調だったものの、調理スキルを上げるための商売人経験値をためるのに時間がかかったのだ。
さすがの彼女も、仕事のある日にゲームに時間を割くことは出来なかったらしい。
クエストの為のアイテムには、彼女が作れないものも含まれていたのでその分は私が作成した。
二人で味見してみたクエスト用のアイテムは結構美味しかったので、また作って欲しいとリクエストさせて貰うと、「アルは、食いしん坊だねー?」と満更でもなさそうな顔をして彼女が笑う。
クエストは進まなかったが、私達の関係は進んでいるようなこそばゆい感じのする3日間で、逆に私としてはそれだけでも満足だ。
今日はやっと、宅地造成のクエストの最終段階。
目の前には、街中に在る造成予定という名の草ボーボーで何故か大きな岩まである空き地の前にある祭壇。
ここに用意したアイテムを並べると、造成術師と言うNPCが祭壇の前に立ってなにやらぶつぶつと呟きだす。
「いまここによーせーさんへのみつぎものをささげます。これをあげるから、おうちをたてられるようにせいちしてもらえないでしょうか?とってもとってもあたまをひくくしておねがいするので、よろしくね?それでは、よーいすたーと!」
造成術師の呟きが終わると、ポンポンと音を立てて祭壇から貢物が消えていく。
そして、一拍置いてから、祭壇がやたらと頭でっかちな子供のような姿のモノが天辺に付いたステッキのような物に変化してその場に2つ転がった。
ころころと転がってきたステッキを握りしめたリリンがポツリと、「妖精さん……」と呟く。
「そう。妖精さんステッキです。」
造成術師は胸を張ってそう言うと、空き地の方へを向き直りステッキを高々と振り上げた。
「妖精さん妖精さん、おいでませー!」
ぽふん!
という、間の抜けた音が上がると、その空き地には私の手の平に乗っかる程に小さい『妖精』が溢れんばかりに現れる。
ワーワーキャーキャーと言う声が上がると、一斉に空き地に生えている草を引き抜き、岩を砕き、土地を平らに均していく。
「よ・妖精さん……!」
リリンは身を乗り出すようにして、ステッキを握り締め、食い入るように彼らを見つめる。
「ふおおおおおおお……! 一匹観賞用に欲しい……!」
「そんなにいいものかね?」
私の目から見ると珍妙な生き物なのだが、彼女の目から見るとどうやら可愛らしく見えるらしい。
彼女が可愛いというネズミも、私には実験用の道具にしか見えないのと似たようなのかもしれないなと思いながらコクコクと頷く彼女を眺める。
5分も経つと、目の前の荒れ果てていたはずの空き地は綺麗に均された状態になっており、1匹だけ残っていた『妖精さん』がペコリと頭を下げるとぽむっと音を立てて消え失せた。
これで、彼らの作業は終わりらしい。
「はい! これで造成は終了です。そちらのステッキは、記念に差し上げますね。」
「スキルは?!」
「はい! では、リリンさん。ハイタッチー!」
彼が軽く片手を上げると、リリンがその手を軽く叩いた。
「スキル来たー!」
私の方を振り返ると、満面の笑みでピョンと首にしがみ付いて来たところを見ると、問題なく『宅地造成』スキルが取得できたらしい。
「これで、アルのご待望のお家、ゲットできそうだねー♪」
「家を建てるのでしたら、各町の大工組合までご用命ください。」
造成術師はそう言うと、一礼してその場を去っていく。
最後に、自らの属する組合の宣伝も忘れない。
彼は仕事が出来る男のようだ。
初日のような事件は特に起きることはなく、採集自体は順調だったものの、調理スキルを上げるための商売人経験値をためるのに時間がかかったのだ。
さすがの彼女も、仕事のある日にゲームに時間を割くことは出来なかったらしい。
クエストの為のアイテムには、彼女が作れないものも含まれていたのでその分は私が作成した。
二人で味見してみたクエスト用のアイテムは結構美味しかったので、また作って欲しいとリクエストさせて貰うと、「アルは、食いしん坊だねー?」と満更でもなさそうな顔をして彼女が笑う。
クエストは進まなかったが、私達の関係は進んでいるようなこそばゆい感じのする3日間で、逆に私としてはそれだけでも満足だ。
今日はやっと、宅地造成のクエストの最終段階。
目の前には、街中に在る造成予定という名の草ボーボーで何故か大きな岩まである空き地の前にある祭壇。
ここに用意したアイテムを並べると、造成術師と言うNPCが祭壇の前に立ってなにやらぶつぶつと呟きだす。
「いまここによーせーさんへのみつぎものをささげます。これをあげるから、おうちをたてられるようにせいちしてもらえないでしょうか?とってもとってもあたまをひくくしておねがいするので、よろしくね?それでは、よーいすたーと!」
造成術師の呟きが終わると、ポンポンと音を立てて祭壇から貢物が消えていく。
そして、一拍置いてから、祭壇がやたらと頭でっかちな子供のような姿のモノが天辺に付いたステッキのような物に変化してその場に2つ転がった。
ころころと転がってきたステッキを握りしめたリリンがポツリと、「妖精さん……」と呟く。
「そう。妖精さんステッキです。」
造成術師は胸を張ってそう言うと、空き地の方へを向き直りステッキを高々と振り上げた。
「妖精さん妖精さん、おいでませー!」
ぽふん!
という、間の抜けた音が上がると、その空き地には私の手の平に乗っかる程に小さい『妖精』が溢れんばかりに現れる。
ワーワーキャーキャーと言う声が上がると、一斉に空き地に生えている草を引き抜き、岩を砕き、土地を平らに均していく。
「よ・妖精さん……!」
リリンは身を乗り出すようにして、ステッキを握り締め、食い入るように彼らを見つめる。
「ふおおおおおおお……! 一匹観賞用に欲しい……!」
「そんなにいいものかね?」
私の目から見ると珍妙な生き物なのだが、彼女の目から見るとどうやら可愛らしく見えるらしい。
彼女が可愛いというネズミも、私には実験用の道具にしか見えないのと似たようなのかもしれないなと思いながらコクコクと頷く彼女を眺める。
5分も経つと、目の前の荒れ果てていたはずの空き地は綺麗に均された状態になっており、1匹だけ残っていた『妖精さん』がペコリと頭を下げるとぽむっと音を立てて消え失せた。
これで、彼らの作業は終わりらしい。
「はい! これで造成は終了です。そちらのステッキは、記念に差し上げますね。」
「スキルは?!」
「はい! では、リリンさん。ハイタッチー!」
彼が軽く片手を上げると、リリンがその手を軽く叩いた。
「スキル来たー!」
私の方を振り返ると、満面の笑みでピョンと首にしがみ付いて来たところを見ると、問題なく『宅地造成』スキルが取得できたらしい。
「これで、アルのご待望のお家、ゲットできそうだねー♪」
「家を建てるのでしたら、各町の大工組合までご用命ください。」
造成術師はそう言うと、一礼してその場を去っていく。
最後に、自らの属する組合の宣伝も忘れない。
彼は仕事が出来る男のようだ。
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