69 / 80
動き出す運命
★もう少し
しおりを挟む
ゲーム内でリリンと会う様になってから、もうすでに4年。
その間に大分、友人が増えた。
『地球』へ行く方法の模索はまったく進む気配がなく、停滞を続けてる。
せめて、このゲーム内でだけはもう色々とはっちゃける事にした。
ストレスをため込むのは良くないとイカ下足君からも教わった事だし。
一日3時間と決めているゲームの時間は、2時間をリリンと、1時間を他の友人達と過ごす事にしている。
その方が、更に彼女と居る時間が楽しめるからだ。
最初の1時間を彼女とすごして、次の1時間は友人と、最後にリリンとその日になにをして遊んだかを話して現実へ戻るのが一番良い。
友人達とは、主に狩りに行く事が多いが、プレイヤーイベント的な集まりに行く事もある。
初めて連れて行かれたのは『巨乳を愛でる会』で、最初の内は驚きのあまり声も出なかった。
こう、そう言った事は心に秘めておくモノなのではないかと、大変衝撃的だったのだ。
今は楽しくはっちゃけている。
そこに連れて行ってくれた友人は、リリンとわたしが連れ立って歩いているのを見てピンと来たらしいのだが……なにか、彼がピンと来るような事をしていただろうかと今でも謎だ。
もう一つ、良く参加しているのは『厨二病友の会』。
ここだと、私の住む世界の事を話しても、変な顔をされる事がないので気持ちが楽なのだ。
中には、私が話した内容を試してみた者もいて、「再現できなかった……!」と、悔しげにコメントして来る事もある。
『試してみるのか。』と少し面白く思いながら、あちらの世界でも可能なんじゃないかと思われる方法を提示して、実際に出来たという報告が返ってきた時は、なんとも嬉しい気分になるのが不思議だ。
この4年の間に広がったこの世界には、あちこちに迷宮ができている。
最近お気に入りなのは毎日出現モンスターの変わる、『巡り月のダンジョン』。
ゲーム内での1日が変わる毎に、迷宮の形も変化するので割と人気のある狩り場でもある。
難度も高い為、稀にドロップするアイテムの質が良いのも人気の一因だ。
「それにしても、アスタールが居ると一気に狩りが楽になるな。」
「だねー! もう今日の狩りは終わりなの―?」
「うむ。後はリリンのところに戻ってイチャイチャしたら、もうログアウトする時間だ。」
「むむー。私の方がリアルでも若くて可愛いよぉ~?」
「よせよせ。敵わないから!」
今日、一緒に狩りをしたメンバーには友人の友人だと言う女性が混じっていた。
苦笑混じりに友人が諌めてはいるが、聞く気配はない。
でもでもだってと、ゴネているのを他人事のように眺めながら暇を告げる。
「ランディ、次は女性に女性を連れてきたら、パーティは組まないからそのつもりでいて欲しい。」
「うええ。それは勘弁!」
「では、また。」
「えええええ~! あすたーるさぁーーーん!! また遊んでねー!!!」
「御免こうむる。」
私はとっとと逃げ出した。
たまに、今日の娘のようなのが出てくるのだがなんとかならないものなのだろうか……。
リリン以外の女性になど、最初から用は無いのに。
リリンにその話をしたら爆笑された。
どこが面白いのやらと、ムッとすると目の前にイチゴを差したフォークが差し出される。
ソファに隣り合わせで腰掛けた彼女が差し出すソレを、幼い子供の様にそれを口に入れて貰うと、我ながら単純な事に少し気分が良くなってしまった。
リリンの手の上で転がされている様な気がして仕方ないが……良い事にしておこうといつも思ってしまうのは、やはり色々と重症だ。
「アルは、モテるねぇ。」
「狩りの効率だけが目当てらしい。」
「アルって、女の子がいると途端に喋らなくなるから、クールな美系キャラに見えるんだよ。
本当は、口下手で表情筋が死んでるだけのちょっぴり可愛い残念キャラなのに。」
「私の評価が、随分と微妙じゃないかね? そんな事を言うなら、次から食材系アイテムは売りに出す事に……。」
「アルってばいじけないでよ。わたしとしては、残念キャラなところに弱いんだから。」
「む……。」
そう言いながら、今度はお手製のクッキーを口元に差し出されるのを、大人しく受け入れる。
「でも、そろそろ周りの目が厳しくなってきてるんだよねぇ……。」
「周りの目?」
「あと、2年経たずに30だからねぇ。」
私の方を向いているのに、私の向こうを透かして見るかのように遠い目をするリリンを思わず強く抱きしめる。
「もう少し。もう少しだけ、待って欲しい……。」
返事の代わりに、背中に回された腕に力がこもった。
その間に大分、友人が増えた。
『地球』へ行く方法の模索はまったく進む気配がなく、停滞を続けてる。
せめて、このゲーム内でだけはもう色々とはっちゃける事にした。
ストレスをため込むのは良くないとイカ下足君からも教わった事だし。
一日3時間と決めているゲームの時間は、2時間をリリンと、1時間を他の友人達と過ごす事にしている。
その方が、更に彼女と居る時間が楽しめるからだ。
最初の1時間を彼女とすごして、次の1時間は友人と、最後にリリンとその日になにをして遊んだかを話して現実へ戻るのが一番良い。
友人達とは、主に狩りに行く事が多いが、プレイヤーイベント的な集まりに行く事もある。
初めて連れて行かれたのは『巨乳を愛でる会』で、最初の内は驚きのあまり声も出なかった。
こう、そう言った事は心に秘めておくモノなのではないかと、大変衝撃的だったのだ。
今は楽しくはっちゃけている。
そこに連れて行ってくれた友人は、リリンとわたしが連れ立って歩いているのを見てピンと来たらしいのだが……なにか、彼がピンと来るような事をしていただろうかと今でも謎だ。
もう一つ、良く参加しているのは『厨二病友の会』。
ここだと、私の住む世界の事を話しても、変な顔をされる事がないので気持ちが楽なのだ。
中には、私が話した内容を試してみた者もいて、「再現できなかった……!」と、悔しげにコメントして来る事もある。
『試してみるのか。』と少し面白く思いながら、あちらの世界でも可能なんじゃないかと思われる方法を提示して、実際に出来たという報告が返ってきた時は、なんとも嬉しい気分になるのが不思議だ。
この4年の間に広がったこの世界には、あちこちに迷宮ができている。
最近お気に入りなのは毎日出現モンスターの変わる、『巡り月のダンジョン』。
ゲーム内での1日が変わる毎に、迷宮の形も変化するので割と人気のある狩り場でもある。
難度も高い為、稀にドロップするアイテムの質が良いのも人気の一因だ。
「それにしても、アスタールが居ると一気に狩りが楽になるな。」
「だねー! もう今日の狩りは終わりなの―?」
「うむ。後はリリンのところに戻ってイチャイチャしたら、もうログアウトする時間だ。」
「むむー。私の方がリアルでも若くて可愛いよぉ~?」
「よせよせ。敵わないから!」
今日、一緒に狩りをしたメンバーには友人の友人だと言う女性が混じっていた。
苦笑混じりに友人が諌めてはいるが、聞く気配はない。
でもでもだってと、ゴネているのを他人事のように眺めながら暇を告げる。
「ランディ、次は女性に女性を連れてきたら、パーティは組まないからそのつもりでいて欲しい。」
「うええ。それは勘弁!」
「では、また。」
「えええええ~! あすたーるさぁーーーん!! また遊んでねー!!!」
「御免こうむる。」
私はとっとと逃げ出した。
たまに、今日の娘のようなのが出てくるのだがなんとかならないものなのだろうか……。
リリン以外の女性になど、最初から用は無いのに。
リリンにその話をしたら爆笑された。
どこが面白いのやらと、ムッとすると目の前にイチゴを差したフォークが差し出される。
ソファに隣り合わせで腰掛けた彼女が差し出すソレを、幼い子供の様にそれを口に入れて貰うと、我ながら単純な事に少し気分が良くなってしまった。
リリンの手の上で転がされている様な気がして仕方ないが……良い事にしておこうといつも思ってしまうのは、やはり色々と重症だ。
「アルは、モテるねぇ。」
「狩りの効率だけが目当てらしい。」
「アルって、女の子がいると途端に喋らなくなるから、クールな美系キャラに見えるんだよ。
本当は、口下手で表情筋が死んでるだけのちょっぴり可愛い残念キャラなのに。」
「私の評価が、随分と微妙じゃないかね? そんな事を言うなら、次から食材系アイテムは売りに出す事に……。」
「アルってばいじけないでよ。わたしとしては、残念キャラなところに弱いんだから。」
「む……。」
そう言いながら、今度はお手製のクッキーを口元に差し出されるのを、大人しく受け入れる。
「でも、そろそろ周りの目が厳しくなってきてるんだよねぇ……。」
「周りの目?」
「あと、2年経たずに30だからねぇ。」
私の方を向いているのに、私の向こうを透かして見るかのように遠い目をするリリンを思わず強く抱きしめる。
「もう少し。もう少しだけ、待って欲しい……。」
返事の代わりに、背中に回された腕に力がこもった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる