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動き出す運命
☆進化するNPCと変わらぬ関係
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『セカンドワールド』も、サービスが続く内に随分と変わってきた。
その一つが、いかにもNPC然としていたAIの進化なんじゃないかと思う。
「店主さん、この服の色違いはないかねぇ?」
「ほいほい? 何色が欲しいの?」
「濃いめの青が良いんだけど……」
「んー……。生地の在庫あるから、30分後で良かったら用意できるよー?」
「わ。それじゃ、是非お願いします!」
今は最初に建てた砦の側の土地からお引っ越しをして、王都と呼ばれる町の外周部の城壁内にお店を構えている。
そのお陰もあってか、今みたいなNPCのお客さんも来る様になったのだ。
コレ重要。
今のはプレイヤーじゃないのです☆
NPCも大分増えて、普通の町人の他に冒険者的なのやら騎士団やら多種多様になっている。
今のは普通の町人さん。
町人NPCは、ウチみたいに町からごく近い場所にあるプレイヤーショップには買い物に出てくる事もあって、わたしの店では、現代風のデザインの服はNPCに。
逆にファンタジー感溢れる服はプレイヤーに人気となってる。
装備の耐久のガン減りっぷりは健在だから、定期的に買いに来てくれるお客さんもいて、結構な繁盛ぶりで有難いかぎりだ。
そのお陰もあって、一時はアルと一緒に出掛けていた狩りも最近はめっきり行かなくなってる。
正直に言うなら、足手まといすぎて行くの止めたんだけどねぇ……。
それに、アルにも随分とフレが増えていて、ちょっと話について行けないのもあったりして……。
流石にね?
『巨乳をめでる会』とか『ゲーム内でも触り隊』とかいう会の会合なんかに行く気にはなれない……。
一回ついて行ってしまって、滅茶苦茶怖い思いをしたのはちょっとしたトラウマだ。
お前ら金で解決しろソープにでも行け。
あ、アルは行っちゃあかんけど。
「リリン!」
「お、おかえりー♪」
店舗の方は、スキル効果で雇っているアイちゃん(売り子専門)に任せて、奥の生産スペースで注文を貰った服を作る用意を始めたところでアルが狩りから帰ってくる。
毎日、1時間1日だけフレと狩りをすると後の2時間2日はわたしとお喋りをしながら生産をして、まったり寛ぐのが、最近の彼のスタイルだ。
ちょっぴりわたしとの時間を大目にとってくれるのが、地味に嬉しかったり。
「カイ君、裁断よろしくー!」
「了解しました、先生。」
カイ君は、裁縫を極めると雇えるようになる見習いNPC。
行商を極めて雇えるようになったアイちゃんのお裁縫バージョンだ。
他にも、紡績・料理・採集系で同じ様なNPCが雇えるようになっていて、雇われた子はプレイヤーよりも速度は落ちるものの頼んだ作業をひたすら行ってくれる。
オリジナルレシピの再現も可能なのが大変素晴らしい子達だ。
設定的には『師匠』になるらしいんだけど、呼び方はいくつかの候補から選ぶ事になっている。
売り子のアイちゃんには『オーナー』。
生産系の3人には『先生』。
採集系の3人には『姉さま』。
と呼ばせている。
呼ばれた時点で、大体のやってる事が分かりやすいかなと思って決めたんだけど、『姉さま』は無かったなと反省しているところだ。
もう変えられないんだけど。
「今日も楽しめましたかー?」
「うむ。今日は、ダンジョンに行ってきたのだが中々の収穫だった。」
わたしの事をぎゅうっと抱きすくめ、頬をすりよせながら今日の狩りの報告をしてくれる。
わたしが抱きしめ返すと、嬉しそうに目を細めて耳をたらんとさせるのがまた可愛い。
そっと、その手が離れていくのを少し寂しく思いながら、仲間と交わした会話を語る彼の寛いだ表情を眺めながら、一緒になって今日の狩りの成果を片付ける。
少し、無理をしているかな。
本来の彼らしからぬ、弾むような口調とどこか定まらない視線にそう思う。
最近、そう言う事が増えてきていて、それを不安に感じるようになってきた。
『地球』に来たいと言う彼の希望が、やっぱり叶いそうにないって事なのかもしれない。
それは、彼が最初にその事を語った時(と言っても、メールだけど)からずっと思っている話だ。
『セカンドワールド』が始まって、こうやって疑似的にでも触れ合う事が出来るようになってから、既に4年が経とうとしている。
でも、未だ彼との距離は変わっていない。
めっきり口にしなくなった『地球』へ来る方法の模索は、上手くいっていないんだろう。
多分、これからも上手く行く事は無いんじゃないだろうか?
「ねぇ、アル?」
「うむ?」
「わたしね、アルの事が大大大大だ―い好き。」
彼の腕にコツンと頭を当てて、呟く様に口にすると、彼の仕事が出来ない表情筋が微かに緩む。
「私も……とてもとてもとてもとてもとても君の事が愛おしい。」
エスキモーのキスを交わして、頬笑みあうと、少し重苦しくなりかけていた気持ちが上向きになる。
ねえ、アル?
このまんま、2人きりでいられるのなら。
それは『地球』でも『キトゥンガーデン』でもない別の場所でもいいんじゃないかな?
そう口にしかかって、すんでのところでその言葉を呑み込む。
今は、私とだけ居られればいいって訳じゃないアルに、こんな事を言っちゃいけない。
「今日は、カレーにしようか―?」
「うむ。アレはいいものだ。」
代わりに口から飛び出したのは、まったく別の言葉。
この世界でカレーを食べてから、すっかりハマってしまったアルは嬉しそうに耳をピコピョコさせる。
気分をキッチリ入れ替えて、アルの為に美味しいカレーを作りますか!
その一つが、いかにもNPC然としていたAIの進化なんじゃないかと思う。
「店主さん、この服の色違いはないかねぇ?」
「ほいほい? 何色が欲しいの?」
「濃いめの青が良いんだけど……」
「んー……。生地の在庫あるから、30分後で良かったら用意できるよー?」
「わ。それじゃ、是非お願いします!」
今は最初に建てた砦の側の土地からお引っ越しをして、王都と呼ばれる町の外周部の城壁内にお店を構えている。
そのお陰もあってか、今みたいなNPCのお客さんも来る様になったのだ。
コレ重要。
今のはプレイヤーじゃないのです☆
NPCも大分増えて、普通の町人の他に冒険者的なのやら騎士団やら多種多様になっている。
今のは普通の町人さん。
町人NPCは、ウチみたいに町からごく近い場所にあるプレイヤーショップには買い物に出てくる事もあって、わたしの店では、現代風のデザインの服はNPCに。
逆にファンタジー感溢れる服はプレイヤーに人気となってる。
装備の耐久のガン減りっぷりは健在だから、定期的に買いに来てくれるお客さんもいて、結構な繁盛ぶりで有難いかぎりだ。
そのお陰もあって、一時はアルと一緒に出掛けていた狩りも最近はめっきり行かなくなってる。
正直に言うなら、足手まといすぎて行くの止めたんだけどねぇ……。
それに、アルにも随分とフレが増えていて、ちょっと話について行けないのもあったりして……。
流石にね?
『巨乳をめでる会』とか『ゲーム内でも触り隊』とかいう会の会合なんかに行く気にはなれない……。
一回ついて行ってしまって、滅茶苦茶怖い思いをしたのはちょっとしたトラウマだ。
お前ら金で解決しろソープにでも行け。
あ、アルは行っちゃあかんけど。
「リリン!」
「お、おかえりー♪」
店舗の方は、スキル効果で雇っているアイちゃん(売り子専門)に任せて、奥の生産スペースで注文を貰った服を作る用意を始めたところでアルが狩りから帰ってくる。
毎日、1時間1日だけフレと狩りをすると後の2時間2日はわたしとお喋りをしながら生産をして、まったり寛ぐのが、最近の彼のスタイルだ。
ちょっぴりわたしとの時間を大目にとってくれるのが、地味に嬉しかったり。
「カイ君、裁断よろしくー!」
「了解しました、先生。」
カイ君は、裁縫を極めると雇えるようになる見習いNPC。
行商を極めて雇えるようになったアイちゃんのお裁縫バージョンだ。
他にも、紡績・料理・採集系で同じ様なNPCが雇えるようになっていて、雇われた子はプレイヤーよりも速度は落ちるものの頼んだ作業をひたすら行ってくれる。
オリジナルレシピの再現も可能なのが大変素晴らしい子達だ。
設定的には『師匠』になるらしいんだけど、呼び方はいくつかの候補から選ぶ事になっている。
売り子のアイちゃんには『オーナー』。
生産系の3人には『先生』。
採集系の3人には『姉さま』。
と呼ばせている。
呼ばれた時点で、大体のやってる事が分かりやすいかなと思って決めたんだけど、『姉さま』は無かったなと反省しているところだ。
もう変えられないんだけど。
「今日も楽しめましたかー?」
「うむ。今日は、ダンジョンに行ってきたのだが中々の収穫だった。」
わたしの事をぎゅうっと抱きすくめ、頬をすりよせながら今日の狩りの報告をしてくれる。
わたしが抱きしめ返すと、嬉しそうに目を細めて耳をたらんとさせるのがまた可愛い。
そっと、その手が離れていくのを少し寂しく思いながら、仲間と交わした会話を語る彼の寛いだ表情を眺めながら、一緒になって今日の狩りの成果を片付ける。
少し、無理をしているかな。
本来の彼らしからぬ、弾むような口調とどこか定まらない視線にそう思う。
最近、そう言う事が増えてきていて、それを不安に感じるようになってきた。
『地球』に来たいと言う彼の希望が、やっぱり叶いそうにないって事なのかもしれない。
それは、彼が最初にその事を語った時(と言っても、メールだけど)からずっと思っている話だ。
『セカンドワールド』が始まって、こうやって疑似的にでも触れ合う事が出来るようになってから、既に4年が経とうとしている。
でも、未だ彼との距離は変わっていない。
めっきり口にしなくなった『地球』へ来る方法の模索は、上手くいっていないんだろう。
多分、これからも上手く行く事は無いんじゃないだろうか?
「ねぇ、アル?」
「うむ?」
「わたしね、アルの事が大大大大だ―い好き。」
彼の腕にコツンと頭を当てて、呟く様に口にすると、彼の仕事が出来ない表情筋が微かに緩む。
「私も……とてもとてもとてもとてもとても君の事が愛おしい。」
エスキモーのキスを交わして、頬笑みあうと、少し重苦しくなりかけていた気持ちが上向きになる。
ねえ、アル?
このまんま、2人きりでいられるのなら。
それは『地球』でも『キトゥンガーデン』でもない別の場所でもいいんじゃないかな?
そう口にしかかって、すんでのところでその言葉を呑み込む。
今は、私とだけ居られればいいって訳じゃないアルに、こんな事を言っちゃいけない。
「今日は、カレーにしようか―?」
「うむ。アレはいいものだ。」
代わりに口から飛び出したのは、まったく別の言葉。
この世界でカレーを食べてから、すっかりハマってしまったアルは嬉しそうに耳をピコピョコさせる。
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