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動き出す運命
★弟子とリリン
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一番弟子であり、もうすぐ義姉になる事になっているリエラを、ゲームの世界に連れて行く事にしたのは、彼女が口にした『夢とは思えない夢の中でアスタールさんと若草色の髪をしたネコ耳族の女性と居るのを見た。』と言う言葉がきっかけだ。
その夢の中で、私は泣いていたらしい。
少し悩んだものの、私の誘いに彼女は大喜びで応じてきて、それに戸惑いながらも嬉しく感じた。
私の最愛の女性を、初めて身近な人間に紹介するという事に、胸が高鳴る。
偶に、本当に実在するのかさえ疑いたくなる事もある彼女を、リエラにも確認して欲しいと言う気持ちも少しだけ……ほんの少しだけあった。
万が一があると困るからと、最初のアバター作りに関してはいじらない様にと伝えた上で、必要最低限の言葉を教えて、彼女を『セカンドワールド』の世界に送り込み、自分もその後を追う。
彼女がアバターを作り終わるまで少し時間はかかるだろうが、その前に最初に降り立つ場所に行っていないとフラフラとどこかに行ってしまいそうな気がして気が急いた。
リリンの元に向かうと、大慌てで説明して現場へ向かったのだがそこで大ポカをやらかしていて、彼女に苦笑混じりの苦言を貰う事になってしまい、しょんぼりとうなだれる。
「説明が全部、異世界語じゃ何が何だか分からんよ、アル~??」
「すまない。」
本当にその通りだと俯くと、彼女の手が伸びてきて頭を撫でてきた。
苦笑しながら慰めてくれる手の優しさに、胸がきゅっと詰まる。
思わず抱きしめると、「抱きつかれたら、撫でづらいよ~?」と文句が返って来て、それに適当に返しながら彼女の抱き心地を堪能した。
今日も、良い匂いがする。
「アスタールさん?」
遠慮がちに掛けられた声は一番弟子のリエラのもので、もう少しこうしていたかったのにと思いながらそちらに目を向けた。
「……何故見た目を弄っているのかね?」
「なんか、面白そうだったんでやってみました。」
どうだと言わんばかりの表情だが、『私は危険があるかもしれないからやらない様に。』と、確かに伝えた筈だ。
それなのに、何故、彼女が狐耳族風の姿になっているのかを問いただすべきだろうか?
腕の中に閉じ込めたままのリリンの目が、リエラのわさわさと揺れる尻尾に釘付けになっているのを見て、私は深く追求するのを諦めた。
「どうやって変更作業をこなしたのかね?」
「身振り手振りでなんとかなりましたよ?」
「そうか……。」
私から追及するのは止めておくにしても、今度機会があったら兄に告げ口しておこうと思う。
過保護な彼の事だ、きっときちんと諫めてくれるに違いない。
5年近く彼女を想い続けてやっと結婚まで漕ぎ着けた兄は、リエラに対してそれはもうベタベタに甘いが、危険を犯したりする場合には容赦がない。
だから、きっと私が言うよりも効果がある筈だ。
……その前に、『そんな危険な事にリエラを巻き込むな!』と怒鳴られるのが先な様な気がする。
藪蛇は突かない事にしよう……。
私がそんな事を考えている間にも、リリンはリエラに対してあれやこれやと身振り手振りを交えて話しかけている。
その身振りじゃ、彼女の意図は伝わらないなと思いながらも、一生懸命なその様子をうっとりと眺めた。
彼女の、「生産施設に連れて行こうか?」という案にも適当に頷いておく。
異世界の事を確信させると言う目的としては、ここに連れてきた時点で既に達成しているから後は別に、特別な何かをする必要はないのだ。
リリンが、何かを見せたいと言うのなら好きにさせよう。
「……こういう場合、自分の欲望よりもきちんと通訳した方が好感度アップにつながりますよ?」
ぽつりと、口を殆ど動かさずにリエラが呟く。
そういえば、彼女には言葉が通じないんだったなと思い、謝罪しようと口を開きかけたその瞬間、リエラに抱きつく隙を狙っていたらしいリリンがパッと喜色を浮かべて彼女に抱きついた。
「ひゃ?!」
驚きの声を上げたリエラの腕を取り、生産施設のある建物に向かおうとする彼女の後を歩きながら、弟子の反応を想像して少し頬を緩める。
きっと、彼女はあの魔力を使わずに使えるという仕掛けは気に入るだろう。
リエラが好むのは、『万人に』使える道具や製法なのだから。
「足踏みミシンと言う方が、彼女は気に入るのではないかと思う。」
「りょうかーい!」
明るいリリンの返事に頷きながら、ゆっくりと2人の後を追う事にした。
その夢の中で、私は泣いていたらしい。
少し悩んだものの、私の誘いに彼女は大喜びで応じてきて、それに戸惑いながらも嬉しく感じた。
私の最愛の女性を、初めて身近な人間に紹介するという事に、胸が高鳴る。
偶に、本当に実在するのかさえ疑いたくなる事もある彼女を、リエラにも確認して欲しいと言う気持ちも少しだけ……ほんの少しだけあった。
万が一があると困るからと、最初のアバター作りに関してはいじらない様にと伝えた上で、必要最低限の言葉を教えて、彼女を『セカンドワールド』の世界に送り込み、自分もその後を追う。
彼女がアバターを作り終わるまで少し時間はかかるだろうが、その前に最初に降り立つ場所に行っていないとフラフラとどこかに行ってしまいそうな気がして気が急いた。
リリンの元に向かうと、大慌てで説明して現場へ向かったのだがそこで大ポカをやらかしていて、彼女に苦笑混じりの苦言を貰う事になってしまい、しょんぼりとうなだれる。
「説明が全部、異世界語じゃ何が何だか分からんよ、アル~??」
「すまない。」
本当にその通りだと俯くと、彼女の手が伸びてきて頭を撫でてきた。
苦笑しながら慰めてくれる手の優しさに、胸がきゅっと詰まる。
思わず抱きしめると、「抱きつかれたら、撫でづらいよ~?」と文句が返って来て、それに適当に返しながら彼女の抱き心地を堪能した。
今日も、良い匂いがする。
「アスタールさん?」
遠慮がちに掛けられた声は一番弟子のリエラのもので、もう少しこうしていたかったのにと思いながらそちらに目を向けた。
「……何故見た目を弄っているのかね?」
「なんか、面白そうだったんでやってみました。」
どうだと言わんばかりの表情だが、『私は危険があるかもしれないからやらない様に。』と、確かに伝えた筈だ。
それなのに、何故、彼女が狐耳族風の姿になっているのかを問いただすべきだろうか?
腕の中に閉じ込めたままのリリンの目が、リエラのわさわさと揺れる尻尾に釘付けになっているのを見て、私は深く追求するのを諦めた。
「どうやって変更作業をこなしたのかね?」
「身振り手振りでなんとかなりましたよ?」
「そうか……。」
私から追及するのは止めておくにしても、今度機会があったら兄に告げ口しておこうと思う。
過保護な彼の事だ、きっときちんと諫めてくれるに違いない。
5年近く彼女を想い続けてやっと結婚まで漕ぎ着けた兄は、リエラに対してそれはもうベタベタに甘いが、危険を犯したりする場合には容赦がない。
だから、きっと私が言うよりも効果がある筈だ。
……その前に、『そんな危険な事にリエラを巻き込むな!』と怒鳴られるのが先な様な気がする。
藪蛇は突かない事にしよう……。
私がそんな事を考えている間にも、リリンはリエラに対してあれやこれやと身振り手振りを交えて話しかけている。
その身振りじゃ、彼女の意図は伝わらないなと思いながらも、一生懸命なその様子をうっとりと眺めた。
彼女の、「生産施設に連れて行こうか?」という案にも適当に頷いておく。
異世界の事を確信させると言う目的としては、ここに連れてきた時点で既に達成しているから後は別に、特別な何かをする必要はないのだ。
リリンが、何かを見せたいと言うのなら好きにさせよう。
「……こういう場合、自分の欲望よりもきちんと通訳した方が好感度アップにつながりますよ?」
ぽつりと、口を殆ど動かさずにリエラが呟く。
そういえば、彼女には言葉が通じないんだったなと思い、謝罪しようと口を開きかけたその瞬間、リエラに抱きつく隙を狙っていたらしいリリンがパッと喜色を浮かべて彼女に抱きついた。
「ひゃ?!」
驚きの声を上げたリエラの腕を取り、生産施設のある建物に向かおうとする彼女の後を歩きながら、弟子の反応を想像して少し頬を緩める。
きっと、彼女はあの魔力を使わずに使えるという仕掛けは気に入るだろう。
リエラが好むのは、『万人に』使える道具や製法なのだから。
「足踏みミシンと言う方が、彼女は気に入るのではないかと思う。」
「りょうかーい!」
明るいリリンの返事に頷きながら、ゆっくりと2人の後を追う事にした。
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