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簀巻き
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リエラちゃんに服を着る手伝いをして貰って部屋を出ると、真っ先に、ソファに腰掛けてモソモソと食事を摂るアルの姿が目に入る。
彼の正面には、お父さんとお兄ちゃんの姿。
ああ、お母さんも居た。
アルの隣にも食事が用意されているのは、一応私の分って事なのかな?
リエラちゃんにその席に座る様に言われたので、大人しくアルの隣に腰掛ける。
少しほっとした事に、普通のご飯もちゃんと美味しそうに見えた。
今日の朝ごはんは、赤っぽい透明感のあるスープと、3種の具のサンドイッチらしい。
どうしたらいいのかと視線を巡らせると、食べるように勧められたので有難く頂く。
「美味し。」
一口齧ると、みずみずしいキュウリの歯ごたえ。
薄くスライスされたそれを、咀嚼すると口の中でパリポリと音がする。
マヨネーズの酸味も丁度いい感じ。
「……マヨネーズ?」
「うむ。前に作り方を教えてくれただろう?」
アレっと思って、アルを見るとシレっとした顔でそう告げてくる。
うん。
確かに、前にVRゲーム内で教えたねぇ。
「もしかして、醤油とかお味噌とか……。」
「作ってある。」
「神か?!」
「うむ、そんなものだな。」
思わず、その返事に小声で叫んでから『しまった』と後悔して、返ってきた答えに目を丸くした。
この世界の管理者である事は、彼にとって忌むべき事だったはずなのに?
疑問がそのまま顔に出ていたのか、アルはすぐに答えを口にした。
「君が、同等の存在になったのなら別に自分が何者でも問題は無い……らしい。」
自分の口からそんな答えが出た事に、本人もなんだか面喰っているみたいだけれど、返答の内容に思わずリエラちゃんと眼を見合してしまう。
「ああ……うん、さいですか。」
「ブレませんね。」
リエラちゃんのツッコミには、全面的に頷くしかない。
わたしとアルがご飯を食べている間、他の面々は静かにお茶を飲んでいて、静かすぎて何とも居た堪れない。
家族が揃ってる状態な訳だし、普通はなんかしらの会話ってのがあるもんなんじゃないかと思うんだけど、アルの家は機能不全家庭ってヤツらしいから難しいのか?
気分的に、空気が重いよ。
それにしてもマヨネーズがあるというだけで、なんだか異世界的なイメージが減った気がした。
食べ物の調理済みのモノは、地球とあんまり変わらないんだなと少しホッとする。
あんまりそう言う所に、異世界感が満載だとどうしたらいいか分からんよね?
スープの中で何かが蠢いて居たりなんかしたら、絶対悲鳴あげてるし。
なんとなく気まずい雰囲気の中食事を終えると、目の前にアスラーダさんの手でお茶が用意されて行く。
彼は、ひどくマメな人らしい。
「…アスタールの婚姻の儀についてだが……」
咳払いを一つしてそう切り出したフーガさんを、アルは驚いた様子で見つめて、目を瞬く。
そういや、さっきの話しにソレを加えるの忘れてたなと、今になって思い出す。
まぁいいか!
今、聞いてるし。
「私の? 誰と??」
「お前の隣に居る……」
「リリンさんです。」
「そう、その女性とのだ。」
昨日起こりかけた暴動を治めるのに、『輝影の支配者のお相手をお披露目する』って言ってあったなと、それを聞きながら遠い目になる。
そうか。
婚姻……結婚式と言う形になるのか。
『結婚式』に異様なほどの執着を見せるアルの事だ、さぞや喜んでいるんだろうなと横目で窺うと、案の定、耳を赤らめて嬉しげにピコピョコとさせていた。
ほんのりと、ほっぺまで赤くなってる。
そうかそうか。
そんなに嬉しいのか。
メチャクチャ嬉しそうな姿を見たら、わたしだって満更でもないじゃない。
ニヨニヨしながら、彼の表情を眺めていると、お披露目式とやらの日取りがあっという間に決まった。
ちょっぴり、フーガさんとアスラーダさんが困っている風だったのが、お仕事の事。
フーガさんは今日、王都に戻る予定だったそうで最短の日取りだとちょっと厳しいらしい。
アスラーダさんは最短の日取りの当日に出発しないと間に合わないんだって。
「移動関係なら、わたしがちょちょっと送り迎え出来る様にして貰いましたので、ご安心ください。」
という、リエラちゃんの一声でそのお悩みも解消したけれど。
使えるようにしてあげた、『空間移動』が早速活躍するらしい。
彼女も働き者だなぁ……。
そんな訳で、秋の半月の第1黄月の日にお披露目を行う事になった。
秋の半月と言うのは、地球で言う所の10月位かなっていうのがアルの見立て。
割と過ごしやすい季節だねぇ。
日取りが決まると、後の事はフーガさんとアスラーダさんで手配するらしく、2人は慌ただしく部屋を後にする。
イリーナさんは当然の様にフーガさんの後に続いて行った。
「さて、ではアスタールさんとリリンさんの衣装の準備が必要な訳ですが……」
リエラちゃんがそう切り出すと、アルは左手首に着けた美味しそうな腕輪の中から二揃いの衣装を嬉しげに取り出した。
片方は見覚えがある。
VRゲームの中で結婚式を挙げた時と同じ衣装だ。
あの衣装をリアルでも作ってたのかと驚きつつも、懐かしく感じてそれを眺めた。
「……準備が随分といいですね。」
「あちらに行けたら、すぐにでも婚姻を結ぶつもりだったのだ。」
地球の婚姻の衣装とは随分違うので使えなかったと思います。
と言う感想は、取り敢えず黙っておいた。
そう言う気持ちでいたってだけでも十分だし。
「役に立ちそうで良かったですね。」
アルが、長話を始めそうだと思ったのか、彼女はサラリとその話題を脇に避ける。
中々の手慣れた雰囲気に、2人の付き合いの深さを感じてしまう。
ちょっとジェラシー?
「そうしましたら、サイズ合わせを私とセリスさんでしますね。」
「私では駄目なのかね?」
「なんだか、本番の前に駄目にしちゃいそうですから却下です。」
スッパリとアルの希望を切り捨てると、彼女は1人掛けのソファから立ち上がる。
「そう言う訳ですので、リリンさんをお借りしても大丈夫ですか?」
「……多分。」
アルの不安げな声に、リエラちゃんが『どうしようか?』と言う様にわたしの方を見た。
それに肩を竦めて返すと、彼女は彼に確認をとる。
「鏡がある部屋になりますよ?」
アルは、成人するまで自分を育てていた祖父にそっくりな自分の姿を見るのが怖いらしい。
そのせいで、身近に姿を映すものを置かない様にしているという徹底ぶりで、お陰でわたしは未だ、見た目が随分と変わっているらしい自分の今の姿を確認出来てなかったりする。
ともかく、リエラちゃんはそれも慮って遠ざけようとしていたらしいんだけど、それでも構わないと彼は頷いた。
まだ、『藤咲りりん』が死んで1日。
すぐに意識を失ってしまった彼の中では、ほんの数時間前と言う認識だと思う。
少し目を離している隙に、またわたしの身に何かがあるかもしれないと怖いのかもしれない。
もしそうなのだとしたら、サイズ合わせの最中に彼に見られる恥ずかしさを、わたしが我慢すれば良い事だと諦める事にしよう。
露出狂の類じゃないから、見られるのは滅茶苦茶恥ずかしいんだけれども……。
仕方が無い……と言う事にしよう。
うう。
なんか泣きたくなってきたけど、仕方が……ないんだよね?
「見られたくないなら、素直にそう仰った方がいいですよ? あんまり甘やかすのは本人の為にもなりませんし……。」
「部屋に居るのはいいんだけどね……?」
「見るのは駄目なのかね?!」
居るのは良いんだ。
居るのは。
ただね?
さっきからニョキニョキと太くなってく、赤い鎖が不安を煽るのよ。
これって、アルのわたしに対する執着心を表してる様に見えるんだよね。
「目隠し着用で?」
「分かりました。目隠しつけて、簀巻きにしますね。」
「扱いが酷くないかね?!」
わたしの希望に、サラリとリエラちゃんが追加した項目を聞いてアルが抗議の声をあげた。
「でも、目隠しだけじゃすぐに取っちゃうでしょう?」
「とらない。」
「こと、リリンさんが絡んでる時のアスタールさんは信用できませんので却下です。」
がっくり項垂れる彼を見て、『普段の行いって大事だな』としみじみ思う。
自分も気をつけよう……。
と言うか、こんなに信用が無い彼は、一体普段何をやらかしているんだ……?
ちょっぴり、彼の普段の素行が気になった。
なんか、リエラちゃんには『ウチの子がなんかスイマセン』って感じがして仕方ない。
彼の正面には、お父さんとお兄ちゃんの姿。
ああ、お母さんも居た。
アルの隣にも食事が用意されているのは、一応私の分って事なのかな?
リエラちゃんにその席に座る様に言われたので、大人しくアルの隣に腰掛ける。
少しほっとした事に、普通のご飯もちゃんと美味しそうに見えた。
今日の朝ごはんは、赤っぽい透明感のあるスープと、3種の具のサンドイッチらしい。
どうしたらいいのかと視線を巡らせると、食べるように勧められたので有難く頂く。
「美味し。」
一口齧ると、みずみずしいキュウリの歯ごたえ。
薄くスライスされたそれを、咀嚼すると口の中でパリポリと音がする。
マヨネーズの酸味も丁度いい感じ。
「……マヨネーズ?」
「うむ。前に作り方を教えてくれただろう?」
アレっと思って、アルを見るとシレっとした顔でそう告げてくる。
うん。
確かに、前にVRゲーム内で教えたねぇ。
「もしかして、醤油とかお味噌とか……。」
「作ってある。」
「神か?!」
「うむ、そんなものだな。」
思わず、その返事に小声で叫んでから『しまった』と後悔して、返ってきた答えに目を丸くした。
この世界の管理者である事は、彼にとって忌むべき事だったはずなのに?
疑問がそのまま顔に出ていたのか、アルはすぐに答えを口にした。
「君が、同等の存在になったのなら別に自分が何者でも問題は無い……らしい。」
自分の口からそんな答えが出た事に、本人もなんだか面喰っているみたいだけれど、返答の内容に思わずリエラちゃんと眼を見合してしまう。
「ああ……うん、さいですか。」
「ブレませんね。」
リエラちゃんのツッコミには、全面的に頷くしかない。
わたしとアルがご飯を食べている間、他の面々は静かにお茶を飲んでいて、静かすぎて何とも居た堪れない。
家族が揃ってる状態な訳だし、普通はなんかしらの会話ってのがあるもんなんじゃないかと思うんだけど、アルの家は機能不全家庭ってヤツらしいから難しいのか?
気分的に、空気が重いよ。
それにしてもマヨネーズがあるというだけで、なんだか異世界的なイメージが減った気がした。
食べ物の調理済みのモノは、地球とあんまり変わらないんだなと少しホッとする。
あんまりそう言う所に、異世界感が満載だとどうしたらいいか分からんよね?
スープの中で何かが蠢いて居たりなんかしたら、絶対悲鳴あげてるし。
なんとなく気まずい雰囲気の中食事を終えると、目の前にアスラーダさんの手でお茶が用意されて行く。
彼は、ひどくマメな人らしい。
「…アスタールの婚姻の儀についてだが……」
咳払いを一つしてそう切り出したフーガさんを、アルは驚いた様子で見つめて、目を瞬く。
そういや、さっきの話しにソレを加えるの忘れてたなと、今になって思い出す。
まぁいいか!
今、聞いてるし。
「私の? 誰と??」
「お前の隣に居る……」
「リリンさんです。」
「そう、その女性とのだ。」
昨日起こりかけた暴動を治めるのに、『輝影の支配者のお相手をお披露目する』って言ってあったなと、それを聞きながら遠い目になる。
そうか。
婚姻……結婚式と言う形になるのか。
『結婚式』に異様なほどの執着を見せるアルの事だ、さぞや喜んでいるんだろうなと横目で窺うと、案の定、耳を赤らめて嬉しげにピコピョコとさせていた。
ほんのりと、ほっぺまで赤くなってる。
そうかそうか。
そんなに嬉しいのか。
メチャクチャ嬉しそうな姿を見たら、わたしだって満更でもないじゃない。
ニヨニヨしながら、彼の表情を眺めていると、お披露目式とやらの日取りがあっという間に決まった。
ちょっぴり、フーガさんとアスラーダさんが困っている風だったのが、お仕事の事。
フーガさんは今日、王都に戻る予定だったそうで最短の日取りだとちょっと厳しいらしい。
アスラーダさんは最短の日取りの当日に出発しないと間に合わないんだって。
「移動関係なら、わたしがちょちょっと送り迎え出来る様にして貰いましたので、ご安心ください。」
という、リエラちゃんの一声でそのお悩みも解消したけれど。
使えるようにしてあげた、『空間移動』が早速活躍するらしい。
彼女も働き者だなぁ……。
そんな訳で、秋の半月の第1黄月の日にお披露目を行う事になった。
秋の半月と言うのは、地球で言う所の10月位かなっていうのがアルの見立て。
割と過ごしやすい季節だねぇ。
日取りが決まると、後の事はフーガさんとアスラーダさんで手配するらしく、2人は慌ただしく部屋を後にする。
イリーナさんは当然の様にフーガさんの後に続いて行った。
「さて、ではアスタールさんとリリンさんの衣装の準備が必要な訳ですが……」
リエラちゃんがそう切り出すと、アルは左手首に着けた美味しそうな腕輪の中から二揃いの衣装を嬉しげに取り出した。
片方は見覚えがある。
VRゲームの中で結婚式を挙げた時と同じ衣装だ。
あの衣装をリアルでも作ってたのかと驚きつつも、懐かしく感じてそれを眺めた。
「……準備が随分といいですね。」
「あちらに行けたら、すぐにでも婚姻を結ぶつもりだったのだ。」
地球の婚姻の衣装とは随分違うので使えなかったと思います。
と言う感想は、取り敢えず黙っておいた。
そう言う気持ちでいたってだけでも十分だし。
「役に立ちそうで良かったですね。」
アルが、長話を始めそうだと思ったのか、彼女はサラリとその話題を脇に避ける。
中々の手慣れた雰囲気に、2人の付き合いの深さを感じてしまう。
ちょっとジェラシー?
「そうしましたら、サイズ合わせを私とセリスさんでしますね。」
「私では駄目なのかね?」
「なんだか、本番の前に駄目にしちゃいそうですから却下です。」
スッパリとアルの希望を切り捨てると、彼女は1人掛けのソファから立ち上がる。
「そう言う訳ですので、リリンさんをお借りしても大丈夫ですか?」
「……多分。」
アルの不安げな声に、リエラちゃんが『どうしようか?』と言う様にわたしの方を見た。
それに肩を竦めて返すと、彼女は彼に確認をとる。
「鏡がある部屋になりますよ?」
アルは、成人するまで自分を育てていた祖父にそっくりな自分の姿を見るのが怖いらしい。
そのせいで、身近に姿を映すものを置かない様にしているという徹底ぶりで、お陰でわたしは未だ、見た目が随分と変わっているらしい自分の今の姿を確認出来てなかったりする。
ともかく、リエラちゃんはそれも慮って遠ざけようとしていたらしいんだけど、それでも構わないと彼は頷いた。
まだ、『藤咲りりん』が死んで1日。
すぐに意識を失ってしまった彼の中では、ほんの数時間前と言う認識だと思う。
少し目を離している隙に、またわたしの身に何かがあるかもしれないと怖いのかもしれない。
もしそうなのだとしたら、サイズ合わせの最中に彼に見られる恥ずかしさを、わたしが我慢すれば良い事だと諦める事にしよう。
露出狂の類じゃないから、見られるのは滅茶苦茶恥ずかしいんだけれども……。
仕方が無い……と言う事にしよう。
うう。
なんか泣きたくなってきたけど、仕方が……ないんだよね?
「見られたくないなら、素直にそう仰った方がいいですよ? あんまり甘やかすのは本人の為にもなりませんし……。」
「部屋に居るのはいいんだけどね……?」
「見るのは駄目なのかね?!」
居るのは良いんだ。
居るのは。
ただね?
さっきからニョキニョキと太くなってく、赤い鎖が不安を煽るのよ。
これって、アルのわたしに対する執着心を表してる様に見えるんだよね。
「目隠し着用で?」
「分かりました。目隠しつけて、簀巻きにしますね。」
「扱いが酷くないかね?!」
わたしの希望に、サラリとリエラちゃんが追加した項目を聞いてアルが抗議の声をあげた。
「でも、目隠しだけじゃすぐに取っちゃうでしょう?」
「とらない。」
「こと、リリンさんが絡んでる時のアスタールさんは信用できませんので却下です。」
がっくり項垂れる彼を見て、『普段の行いって大事だな』としみじみ思う。
自分も気をつけよう……。
と言うか、こんなに信用が無い彼は、一体普段何をやらかしているんだ……?
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