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プロローグ
しおりを挟む庭園に突然現れた夫とキャルティは、月明かりに照らされながら、激しいキスをした後、身体を密着したまま歩いて行った。
これはあれだ。決定的瞬間というものだ。
そして浮気現場というものを目撃したらしい。
ショックだったし悲しかったけど、それ以上に驚いたのは、突然現れた事。
寝苦しさで目が覚めた私は、外の空気を吸いたくてバルコニーに出た。
夏の籠った暑さが溜まっていた部屋とは違い、気持ちが良かった。
するとガタンと重いドアが閉まるような音がした。
バルコニーから下を見ると、夫と夫の愛人と噂されるキャルティ男爵令嬢が庭に立っていた。
何の気配もなく突然現れた二人に呆然としていたら、あんなものを見てしまったという訳だ。
元々いたのなら私がバルコニーに出たのが分かったら隠れるだろう。
なのに私に気付くこともなく、突然現れた。
キャルティは私とは同学年だったがあまり話した事はない。
だが結婚した時に、ヒーナス侯爵家が経営しているヒーナス商会の従業員という事で挨拶した。話したのはそれくらいだ。
結婚して半年ほど経った頃、夫とキャルティの噂を聞いた。
二人で商会の執務室に篭っているのは付き合っているからなのではと。
確かに夫はたまに商会に顔を出している。
キャルティは事務員として夫と接する事もあるのは確かだ。
実質商会を経営、管理しているのは夫の弟モリス。
だったら報告はモリスがする筈なのに、夫に報告するのはキャルティなのだそうだ。
怪しい。
全員がそう思っている。
なのに当の二人は気付いていないのか、平然と二人きりになっているらしい。
それを聞いた私は、
「良いんじゃないかしら。私はシルビオとどうしても結婚したかったわけではないから、そちらの方の方が良いのであればいつでも妻の座はお譲りしますよ」と皆んなの前で言ってやった。
そう。私はシルビオとは結婚なんかしたくなかった。
それでもシルビオが、どうしても私と結婚したいと泣くからなんとなく可愛いと思ってしまい結婚したのだ。
クソッ!やっぱり直感は正しかった。
シルビオは金髪、宝石のような翠緑の瞳、鼻筋が通った男前。そしてセクシーだと言われている泣きぼくろ。私はそのホクロが大嫌いだ。どこがセクシーなのかも分からない。
まあ、そんなわけでモテないわけがない。
そして私は知っている、コイツは来るものは拒まない。
だから結婚なんかしたくなかった。
でも結婚したら絶対裏切らない!と何度も何度も跪いて言うし、泣くから仕方ないなと結婚してしまった。
それがどうだ。
これだよ!
そっちがその気ならこっちにも考えがある!
一人バルコニーで怒りまくっていたら、足音が微かにしたので、バレないようにしゃがんだ。
ソォーと顔を出し下を見ると、シルビオはいなかった。
そう、そういうことなのね。
その喧嘩、買いましょう、買ってやるわよ!
私は真夏のバルコニーで一人拳を突き上げた。
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