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私と夫
しおりを挟む私、サバーナ侯爵家の長女エルザは、のんびりした両親に育てられたせいか、かなり大雑把な性格なのだが、妙に儚げな印象のせいか勘違いされやすい。
銀髪、紫眼の清楚でおとなしく美しい人形のような令嬢・・・なのだそうだ私は。
全くそんな事はないのだが、元々感情が顔に出にくい私は、見た目も加わりそんな残念な印象を持たれている。
ジョバンニと取っ組み合いをした事もあるように、非常に活発なのである。
読書も好きだが、乗馬や木登りの方が好きだ。
のんびりしている両親も実は活動的な人達だ。
お父様は騎士団副団長、剣の腕はかなりのものだ。
お母様は私よりも見た目が儚げだが、趣味は狩猟だ。
馬に跨り、背中に弓を背負い、夕飯の為にウサギや鹿、鴨を捕まえては自分で血抜きして帰ってくる。
なので私もそこそこなんでも出来るのだよ、皆の者。
まあそんな感じの私は学院でも中身を知らない男性陣に人気があった。
「申し訳ありません」「両親に相談してみます」「心に決めた人がいますので」
その3種類を巧みに使い、面倒な告白を回避し続けた。
そして奴は現れた・・・シルビオ・ヒーナス、私の未来の夫が平穏な生活を壊しまくった。
どこにでも現れ、毎日毎日飽きもせず「好きだ」「結婚してくれ」「エルザがいないと死んでしまう」こればっかり言っては邪魔してきた。
あれ?今日は来ないなと思うと、大概新しい彼女が出来ている。
良かった─────と安心してると、彼女と別れるとまた戻ってきて同じ台詞を繰り返す。
繰り返し聞いていると、朝晩の挨拶のようになる。
「エルザー、好きだー!」
「申し訳ございません」
「エルザ、結婚してくれ!」
「両親に相談してみます」
「エルザがいないと死んでしまう!」
「私、心に決めた人がおりますから」
回りもそれが普通になるが、シルビオのファンは慣れるどころか逆に私への憎悪が膨れ上がり、学院を卒業するまでに何度嫌がらせを受けたか。
教科書を汚されたり、燃やされたり、破かれたりした。
そしてその都度、
「シルビオ、あなたのせいでまた教科書を捨てられたわ。よろしく。」と言うと、
「かしこまりー」とばかりに自分の教科書を私に渡して新しい教科書を注文しに職員室に走って行く。
それを見ていたファンは、
「キィ──────」とハンカチを噛む。
そこまでがワンセットになっている。
シルビオもバカではないらしく、必ず注文する際、2人分頼む。
そうすると、教科書が無くて授業が受けられないという事がない。
けれどファンはバカばっかりなので、また同じ事を繰り返す。
無限ループだ。
階段落ちエピソードは数知れず。
さすがに危険なので、友人達が前後左右を包囲し、護衛のように守ってくれた。
上からバケツの水攻撃は、着替えを用意していたので問題はないが、冬はさすがに風邪をひくのでシルビオに名前を教え、独自の情報網で、その子達がバケツを持ったと知らせを受けると本人達を捕まえて、
「エルザに水をかけるなら君達に俺が水をかけるよ、それを貸して。」とバケツを奪い水をかけていた。
そして悪口。
それくらい気にはしないが、腹は立つ。
言われたら倍にして返していたら、ファンクラブ会長は、ブチギレて令嬢らしからぬ罵詈雑言を私に浴びせかけていた姿をシルビオに目撃されて気絶していた。
そんな学生生活を過ごした学院の最後のイベントで奴はとんでもない醜態をさらした。
公開プロポーズ・・・。
保護者もいる中、跪き、私に手を出して言った。
「エルザ、俺と結婚して「嫌です!」
「エルザ、俺とけ「嫌です」
「エルザ、俺「嫌です」
「エルザ、「嫌です」
「「・・・・・・・・・・」」
「嫌です」
とうとう泣き出し、土下座した。
「エル・・エルザ・・・おれ・・おれと・・・けっこ、ヒク・・結婚・・・ヒク・・して・・・おね、ヒク・・がい・・」
私の両親とシルビオの両親が頼むからせめて婚約だけでもしてやってくれと頼み込まれて渋々頷いたという伝説級のエピソードがある。
婚約して結婚するまでも、すったもんだはあったが、大型犬のようなシルビオに私が絆されて、まあ幸せな結婚生活を送っていた訳なのだが、ここに来て急にミステリー要素が含まれた。
隠し部屋。
そして今日も上を見上げていた。
あの空間の下にある窓…その下にある窓・・
私達の寝室がある3階だけが窓のない空間があり、その下には違和感なく窓がある。
カーテンが閉まっている。
あそこは2階の客室なのか?
1階も見てみるとカーテンが閉まっている。
使っていない客室ならカーテンが閉まっていてもおかしくはないが…。
何かおかしい。
「奥様、どうされました?」
今日はパールではなくジョバンニが声をかけてきた。
「ジョバンニ、貴方は私が嫌いなのよね?
私の味方には決してなってはくれないのよね?」
「藪から棒になんです、私は奥様を嫌ってなどおりませんし、敵にもなりませんけど。」
「でもシルビオの為なら嘘もつくわよね?」
「モノによります。」
「じゃあ、はとことしてなら嘘つかないで正直に答えてくれる?」
「ですからモノによります。」
「じゃあいい。ジョバンニが嘘を付いたか、ついてないか私には今の段階では分からない、嘘をついて隠そうとするなら後々面倒な事になりそう、だから何も言わない。」
「一応聞いてみては?」
「ヤダ。あんたは嘘が上手いから私の謎が解けなくなりそう。」
「謎?」
「そう、謎。
この謎が解けた時、貴方は私の味方なのか敵なのかが分かるって事ね。」
そう言ってジョバンニと別れて歩き出すと、
「そこ!2人で何してるの⁉︎逢引きなんて許さないよ!」
とバカが叫んでいた。
私もジョバンニも無視して逆方向に歩き出した。
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