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ヒーナス商会へ
しおりを挟む次のターゲットをモリスにしぼり、私とパールはヒーナス商会に向かった。
ほとんと私が商会に行く事はないが、敵情視察のようなものだ。
おそらくあのキャルティもいるが、無視だ。
今はモリスを優先する。
商会での2人の情報が欲しいのだからモリスの協力は絶対だ。
到着し馬車から降りると、モリスが焦って近寄ってきた。
この様子だとシルビオが来ているのかもしれない。
「義姉さん、どうしたの?何かあった?」
「あらあら、モリス挨拶してくれないの?
久しぶりなのに。」
「ああ、お久しぶりです、エルザ義姉さん。
今日はどういったご用件ですか。」
「たまには私だって来ても良いでしょ?
それとも拙い事があるの?」
「いや、拙い事なんてないけど…今、商談中で…」
「じゃあ早く戻らないと!私は勝手に見るから平気よ。」
「いや、その、俺が案内します。」
「商談中なんでしょ?悪いから良いわよ、怒らせてしまうわよ。」
「えーと、そうじゃなくて…」
「良いの良いの、分かってるわ、シルビオがキャルティに会いに来てるのね。
じゃあ、アイツと阿婆擦れが外に行く時はある?」
「昼休憩の時に2、3時間帰って来ない時があるかな・・」
「じゃあその時連絡もらえる?
私、モリスに話しがあるの。良い?」
「良いけど、何?」
警戒心剥き出しのモリスは、あまり私と話しはしたくないようだ。
「ちなみにモリスもキャルティ派?」
「は⁉︎」
「だから、モリスもキャルティの事が好きなの?」
「好きじゃないですよ!最初は真面目に仕事してたから良い子が入って安心してたんですから!なのに最近は他所でやれば良いのに、執務室を宿屋代わりに使うし、本当にあの女大っ嫌いだから!」
「あらあら、モリス、かなり鬱憤が溜まってるのね。
では、私に協力してくれる?
ちなみに最近仲間になったのはジョバンニよ。」
「え⁉︎ジョバンニ⁉︎兄さんを裏切ったの⁉︎」
「裏切ったというより、呆れてるのかな。
ねえ、モリスってヒーナスの隠し部屋の事知ってるの?」
「え⁉︎エルザ義姉さん、知ってるの⁉︎」
「あれじゃあね~気付かないのもどうなのって感じだよね。でもあそこって嫡男に受け継がれてるんじゃないの?」
「嘘・・母上は未だに知らないよ…。
あそこは兄さんに教えてもらった…。」
嘘⁉︎なんで⁉︎あの違和感満載の外観に気付かないの⁉︎
あ…だからメイド達に誘導されて通らないようにするか、何か上手い事やるんだろう。
「なんかヒーナス家の闇って感じね…気持ち悪い…」
「俺は使った事もないし、入った事もないから!」
「分かってる分かってる。あんな空気の悪い所入ってはダメよ、臭いから。」
「え⁉︎入ったの⁉︎」
「ええ、昨日入ったわ」
「昨日⁉︎」
そこからは長くなるから、とりあえず帰って、また明日となった。
しかし、シルビオはこんな真っ昼間からヤってるのかぁ~元気だな。
商会に停まってたヒーナス家のもう一台の馬車の御者が、こちらを冷や汗を流しながら見ていたので、
「大丈夫よ、そんなに怖がらないね。
あ、シルビオには私が来た事は内緒にしてね。そんなに汗をかいては風邪をひいてしまうわ、ハンカチをどうぞ。」
と言って、私のお気に入りの香水がよく香るハンカチを御者に渡した。
シルビオは気付くだろう。
ここに私が来た事を。
なんて言い訳をするのか。
それともしらばっくれるのか。
どっちでもいいけど。
パールと馬車に乗り、屋敷に帰った。
屋敷に着いて、しばらくすると焦って帰ってきたシルビオが私の部屋に駆け込んできた。
「エルザ、商会に来たの?」と目を泳がせながら聞いてきた。
「いえ、行ってないわよ。どうして?」
「だって、御者のハン・・・」
「何?御者のはんって何?」
「いや、何でもないよ。」
「ねえ、シルビオは商会に行っていたの?執務室で仕事するって言ってなかった?」
「き、急に呼び出されて行ってきた。」
「そうなの、お疲れ様。
さあ、戻らないと!大切な方が待っていらっしゃるんでしょ?
さあさあ、もう行かないと!
なんでしたっけ・・・えーと、あ、キャルティさん!キャルティさんが待っているわ。
今度改めて紹介して頂きたいの。だって新しいヒーナス侯爵夫人になる方なんでしょ?
引き継ぎはお義母様にお願いするけど、一応ね、挨拶って大事だから。」
「え、え⁉︎何言ってるの、エルザ⁉︎」
「シルビオ、私、いつでもこんな家出て行く覚悟はあるのよ、そっちがその気なら、こっちも徹底抗戦よ。
だから、キャルティさんを守ってあげてね。
いってらっしゃい。」
シルビオの背中を押しながら、部屋から追い出して鍵をかけた。
急いで続きのドアの鍵もかけた。
ドンドン叩いて喚いているが書斎に篭り、のんびり読書に勤しんだ。
書斎のドアをパールがノックし、
「エルザ様、ジョバンニ様がいらしてます。」
ハァ・・・あのはとこはシルビオに何か頼まれたのだろう…面倒だな…
「は~い、開けます」
ドアを開けると、ジョバンニがため息を吐いて言った。
「お前はホントに短気だよな、少し大人しくしてろよ。俺に聞いてくれたら、商会にシルビオがいるって教えるだろ!」
「あ・・そうか。ジョバンニに聞けばよかったんだね、忘れてた。」
「明日も行くんだろ、モリス様から連絡が来た。」
「行くわよ、今日はシルビオがいたからゆっくり話せなかったからね。」
「何話すんだよ、モリス様と。」
「仲間に引き入れるのよ。ジョバンニが仲間になったから、商会からも1人仲間が欲しかったから丁度良いと思ったんだけど、ダメ?」
「いや、良いと思う。」
「ねえ、なんでシルビオはそんなにキャルティを気に入ってるの?
そんなにあっちの相性が良いの?
名器なの?それともおっぱいが大きいから?」
「知らねえよ!聞いてみれば!」
「聞いても良いけど、教えるかしら?
さっきも次期侯爵夫人になる人だから挨拶させてって言ったら、大騒ぎになっちゃったんだけど。」
「お前なんて事言ったの⁉︎だからあんなに騒いでたのか…」
「ま、天罰よね。」
そうこれくらいでは済まさない。
だって喧嘩を売ってきたのはあっちだもの。
だからこれくらい言ったって文句言われる筋合いはない。
頭を抱えるジョバンニを放って私とパールは優雅にアフタヌーンティーを楽しんだ。
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